レッテバルデンに名だたる貴族数あれど、私のカルデカルン家はそのどれもを圧倒する超名門貴族ですの。御屋敷だって建国王ソレアの時代から代々受け継いだ三千年の歴史を持ち、私の血筋は建国王ソレアから血を分け兄君ガルナの直系、レッテバルデンでカルデカルン家に歯向かう者は逆立ちしたって勝てはしませんのよ。それに私の家に忠誠を誓う者も沢山いましたの、それはそれは沢山いましたのよ? あの竜殺しの戦士や魔族狩りの勇者、大魔法使いだって私には頭が上がりませんのよ。
これが歴史裏打ちされた権力の力ですの! おーっほっほっほ!
「カルデカルン家はやり過ぎた、よって家を取り潰す」
そう、あの日まではね。あの憎き政敵アロイエス家によりカルデカルン家は没落させられたッ! ムキーッ! 今でも腹立だたしいですわーッ!!! なんですの取り潰しの理由が【労働環境が劣悪すぎる】って!!! ブラック労働なんざテメェらでもやってますわよねぇ!!! 自分たちは高い給与を出してる? 詭弁も大概にしやがれゴミカスがぁぁぁぁぁぁっ! そして傀儡王ブリテスはアロイエスとズブズブなの黙ってやってたのによぉぉぉゴミが裏切りやがったナァァァァァァッッッ!
おほん。
といえことがあり、私の家が降り潰されたのは事実、ですがこんなの認められませんわよ、なので私は考えましたの。
「王になりますわ、ありとあらゆる手段でこの国の王に」
もう傀儡王ブリテスもアロイエス家もその他貴族も何もかも全てぶち壊して新たなる【王】となりますの、これは決意ではありませんのよ? 建国王に宣誓する事実ですの!
…………ですがその前にいくつもの問題と課題と負債が山積みですわ。
第一に金ですわ、あのクソ王言うに事欠いて財産全部持っていきやがりましたわ、人も金も代々受け継いだ屋敷も何もかも! 王になったら処刑してやりますわ、ギロチンよギロチン。
第二に人脈ですわね、私が王位継承するに当たって正当性を主張する第三者を立てなければなりませんわ、アロイエス家のいる限り貴族の後援は得られない、そうなると使えるのは民の中で発言権のある有名冒険者や大商人ですの、ですが早々貴族と関わろうとしないクセ者が多いのがネックになりますわね。
上記を満たすには莫大な時間がいりますわ。資金を稼ぎ、それを元手に人脈を作り、また稼ぎ……王になる頃にはヨボヨボのおばあさんですわよ、それをスキップする為には第三の必須項目である『人気』の獲得、カルデカルン家を慕うものは多けれど私を慕うものは居ませんわ。これでは王はまた夢の夢の夢ですの。
さて、これを全部クリアしていきますわよ。ゴミクソボケゴミ王とアロイエスにわからせるまで絶対諦めませんわよ。
【シーン】レッテバルデン冒険者ギルド
来ましたわ、冒険者ギルドですのよ。……正直言って不浄な輩が多く……近寄りたい場所ではありませんのよ……男共の汗臭い空間にこの私がいる事自体大魔法でもなし得ない奇跡ですので。さぁ気合い入れて行きますわよ!
「いらっしゃいませ! ここはレッテバルデン冒険者ギルドでーす!」
扉を開けた先にいたのは男ウケの良さそうな軽装の女性、娼婦よりは清楚で好感の持てる笑顔ぐらいは褒めてあげられますわね。褒められるのはそれぐらいなものでギルドの内装は……ダメですわね、汚いですわ、油汚れや獣臭に血痕がチラホラと……帰りたくなってきましたわ。
「庶民、私はアライア・カーセーヌ・ガルナ・カルデカルンですのよ? 貴女ではなく、ギルドマスターが出迎えるべき人間ですの? おわかり?」
「うーん……そうなんですか?」
小首傾げてそうなんですかとはこの女舐め腐ってやがりますわね、それともカルデカルン家を知らない国民が居るとでも……? そんなことがありえますの……?
「おうおう、ちょっとそこの高圧的なねぇさんよぉ、この国でカルデカルンを名乗るってどういう意味か分かってるか?」
「どういう意味ですの?」
体格のよろしい大男がくたびれた鎧を鳴らしながら私に近寄ってきましたわ、酒臭くて汗臭い不潔な輩でしたが、興味を引く言葉につい反応してしまいましたわ。
「それはなぁ……」
「それは?」
カルデカルン家を名乗る意味をこの下衆が知っているとは思いませんが……答えを聞いてみましょうか。
「笑い者になるってことだよ! ギャハハハハハハ!」
「「「ヒャーハッハッハッ!! 違いねぇ!」」」
…………なんですって?
「おう野郎ども! カルデカルン家はーっ?」
「「「没落貴族ゥー!!」」」
「つまりそういうこった、没落した貴族が偉ぶった所でな~んも怖くねぇ……なんならカルデカルン家は俺たちの中でも特に嫌われてるクソ貴族だ……本当にお前がそうなら、今すぐに慰み者にしたって良いんだぜ」
大男は肩に手を置き、私な体を舐め回すように見て下品な笑みを浮かべ、大男の子分も集まってきたましたわ。このギルド内に止める者は居らずむしろ後押しのように指笛やグラスを叩いて音を出していましたの。
「随分……」
「あん?」
「随分、舐め腐っていますわね」
「まだ分かってねぇのかお貴族様ぁ? お前はもう俺たち餌なんだよ」
荒事はしないつもりでいましたのに……このような下劣で下品な下郎には“オシオキ”が必要ですわね……貴族たるもの舐められたら終わりですのよ?
「最も古い貴族の、その重みをその身に受ける準備はよろしくて?」
「その細腕で何ができるんだよアバズがっ?!」
肩に置かれた手の親指と小指を両手で掴み身体ごと回転し、咄嗟に前につんのめり膝をついた大男の顎に素早く肘鉄を打ち込み、回し蹴りを側頭部へ入れ追い打つ!
「あ、兄貴ッ!」
「女ーッ!」
「我がカルデカルン家は武人の家系、甘く見ては死にますわよッ!」
ゲスのお友達にも同じ目にあってもらいましてよ!
拳を固く握り鳩尾を狙い突き出し怯んだ所を耳を掴んで鼻へ膝蹴り。
「ぐぉぉぉ……」
「相棒ッ?! こ、この女強いじゃねーかっ……!」
「カルデカルン家は没落致しました、確かにそうですわね、ですがその庇護と恩恵を忘れた下民には相応の待遇がまってますのよ? カーッ!」
「正中線ッ!」
眉間ッ鼻ッ喉仏ッ鳩尾ッ下腹部ッ! 怒りの5連撃ッ! 金的は許して差し上げますわっ!
「他愛なし、で? 他に掛かってくる者はいますの?」
あぁ聞こえますわ民のどよめきが……! 細身の女が弱いとでも思って舐めていたのが丸わかりですわ、全く教養のない人達は見る目のないのかしら?
あら、奥の方から一人来ますわね、先程の大男と比べたらかなり小さい老人……あぁこの人ですのね。
「いや失礼したね、若い衆が手を出したようで」
「いえいえ、準備運動にもなりませんわよ」
「ホホホ、結構結構! 儂がお望みのギルドマスターじゃよ」
この気配、あぁ分かりましたわ。
「手合わせ、しようかの」
「望む所ですわ」
__互いに構え、闘気が漲るっ……!!!