青衣さんメンテナンス係の日々 作:──
治安局ルミナ分署、その玄関から入り専用のパスで一般人の入れない領域に足を踏み入れる。
前回はどんな話を聞いただろうか?と思い返しながらメッセージで伝えられた部屋を探してノックする。
了承を得てドアを開けるとそこには
「……来たな?まずは椅子に座り、白湯を飲むとよい」
年長者の気品を漂わせた少女然とした見た目の女性が一人。
正確には一人とは数えないかもしれないが、俺には人としてしか数えられないので、一人ったら一人だ。
「おはようございます、青衣さん。いつも通り、定期メンテナンスさせていただきますね」
「うむ、よろしく頼む」
メンテナンス用の端末を青衣さんに繋ぎ、マニュアル通りに機体と中身の確認をしていく。
すると……
「毎回のことだが、手間を掛けてすまんな」
「いえいえ、これが僕の仕事ですから」
「しかし、お主の年頃であれば、所謂青春を追い求める時期ではなかろうか」
メンテナンス中にこうして青衣さんが話しかけてくるのはいつものことだ。
最初はあまりなかったが、いつのまにかこれが習慣になっていた。
「昔からゲームとか好きで、人間相手より機械相手の時間が多かったんで、友情も愛情も芽生えようがないですよ」
「…………お主の世代ならば、そう言うこともあるのか」
「たぶん、あると思います。──まぁ僕は家の事情もあって他よりその傾向が強くて、機械が友人であり恋人、みたいな?」
僕がそう言うと、青衣さんは静かになってしまった。
動きも固まっている。
動きがないのはメンテナンス的に助かるが、何かまずいことを言ってしまったのだろうかと不安になっていると、青衣さんが口を開いてくれた
「……お主、先ほど自分がなんと言ったか自覚はしておるか?」
「…?機械が友人であり恋人って話ですか?」
「──っ、……恥を知れ」
「えっ!?確かに友達いないのは恥かもしれませんけど、その分、機械関連には真摯に向き合ってきたつもりですし、何も恥はありませんよ!」
「真摯に……か。よかろう、とりあえず連絡先を教えよ」
「えっ、急に?まぁいいですけど……」
そうして連絡先を交換し、しばらくするとメンテナンスも終わった。
すると青衣さんがこちらを見て
「……まずは友人から、だな。いつでも連絡するがよい」
「あっ、はい」
青衣さんは心なしか、僕から少し目を逸らしているように見えた。
何か怒らせるようなことを言ってしまっただろうか?と考えるが、先ほど少し怒られた一言以外には原因が思いつかない。
とりあえずその日は問題もなくメンテナンスが終わり、僕は先ほどの会話について考えながら帰路に着いた。
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「なぁ、朱鳶よ」
「……なんですか?先輩」
「親しき仲の男から急に言い寄られたら、お主はどうする?」
「……はい?」
「無論、我の勘違いかもしれぬと思い、一度聞き返した。だが同じような返答が返ってくるのみであった。嫌ではないのだが……機械は恋人などと我の前で……。我は奴の思いにどう答えるべきであろうか」
青衣と朱鳶の間で広がる誤解に、彼は気がついていなかった。