青衣さんメンテナンス係の日々 作:──
さて、青衣が男の部屋を漁っていたのがバレて数分後。
彼の部屋では一人が正座、一人がそれを説教という構図となっていた。
ただし、正座しているのは男の方である。
発覚した直後の
「……なんじゃこの仕事量は?しかも冷蔵庫の中身も酷いぞ」
「あ〜、いや、その……」
という会話によって、立場が逆転してしまったのである。
冷蔵庫の中身についての言及と、今後はもう少し改善するように半ば強制的に約束をさせた青衣。
だが当然、そこでこの説教と追求が止むわけでもない。
「では次に、なんじゃこの仕事の量は?お主はいつ休んでおる?」
「仕事の量は一週間で全部ってことです。曜日ごとに決まった機械を見て、一週間のうちに全部見終わるようになってるんです。機械いじりは趣味みたいなものですから毎日が休みみたいなものですよ」
「ふむ、門外漢の我にはその発言は、毎日休みなく働いている……と聞こえるのだが?」
「あ、あはは」
「笑って誤魔化されるモノではないぞ、治安局が労働基準法を無視していたとなれば反感は免れん。さらに言えば、働き詰めではお主が保たん、過ぎたるは猶及ばざるが如しという言葉を知らんのか?」
呆れた声で言う青衣。
男は少し焦った様子で
「すいません。けど、まだあの仕事を続けさせてくれませんか?給料も多いし、働いていて楽しいし、あの仕事をしてないと青衣さんのメンテナンスも出来ないですから」
「……む」
ここに来て青衣は言葉に詰まった。
確かに、今のところ青衣のメンテナンスは常に男が行っていた。
彼女の周囲にあった機械はほとんど全てが彼の手によって調整されたものであったことも今日判明した。
足りないパーツは自分の貯金を切り崩して購入してでも機械を完璧な状態にする、そんな彼の執念は異常だが、その異常さに救われてきたのは他ならぬ青衣である。
そんな彼に
『青衣さんのメンテナンスをしたいので、この仕事を辞めたくない』
と言われると、青衣も何も言えない。
少なくとも彼女には、そう聞こえている。
「……はぁ、わかった。もう何も言わん。その代わり、定期的に医師の診察を受けること、不調があれば包み隠さず言うこと。良いな?」
「……えぇ〜」
「──譲歩したのだから頷かんか!」
「……お気遣いありがとうございます。青衣さん」
にへらと情けなく笑ったその笑みを見て、許してしまおうと思った自分を少しだけ不思議に思いながら青衣は、僅かに口角を上げてため息を吐くと
「我にここまでさせたのだから、茶の一杯くらいはあるのだろうな?」
「入れてきます。ちょっと待っててください」
キッチンへとフラフラ歩いて行くその情けない背中を、ただ見つめていた。