脳筋はゴリラ廻戦にて最強   作:藍嵐

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前の話を投稿した二日後には3,000字までかけてたんですけどねー

なんでこんなに時間がかかるのかこれが分からない


これもまた脳筋の教え

栄華呪法。呪いを持たないものに呪いを付与し呪具にする術式。それを最初から呪具だったものに使うと、元の等級によって必要呪力は変わるが一つ等級が上がる。

 

 

二級は準一級に、一級は特級に、そして特級は超特級とでも呼ぶようなものになる。別に術式効果が増えるわけでもないが、元の術式効果が強化される。酔蜂鞭なら振るスピードが同じでも術式有りと無しで約1.3倍の違いが生まれる。

 

 

あとは威力だろうか。パンパンに呪力を込めたものを振り回すのだからその影響は計り知れない。戦闘が始まって体感四分。その圧倒的な力を持つ呪具を周辺の被害を無視して振り回す私は―

 

 

「おいおいマジかよ。ここまでやれるなんて聞いてねぇぞ。」

 

 

目の前の男を仕留めきれないでいた。

身体能力はあっちが上。道具の性能はこっちが上。あとは何だろうか。経験?私もかなりの数を踏んできたと思っていたが質で負けているようだ。わずかには当たる。だがそれは致命傷や動きを阻害する要因にならない程度のもの。実際戦闘が始まってから今に至るまで、男の動きは全く変わっていない。

 

 

こちらは無傷。縦横無尽に走る酔蜂鞭で寄らせず一方的に攻撃出来ている。しかし一体いつまでこの状況が続くか。五条と夏油を打倒した男がそうあっさりとやられるだろうか。

戦況が変わらないお陰で冷静になる時間ができた。身を支配しようとする感情を隔離して思考する。ここからどう勝つか。

 

 

これだけ騒いでいたら応援が来るだろう。しかし目の前の男に数が利となるかと聞かれたら否定する。既に囲んでボコって終わりのフェーズは過ぎている。

 

 

「見えてるよ。」

 

 

「クソっ、なんで分かんだよ。」

 

 

そしてこの男、偶に逃げる素振りをする。それが此方の動揺を誘うものなのか、はたまた本当に逃げようとしているのかは分からない。ただ仮に応援が着てより混戦になったら、本当に逃げを選択するかもしれない。今は鼻で追えているが入り乱れた戦場だったら正直自信がない。

 

 

となると応援が来る前に決着をつけたい。ここで浮かぶ選択肢は三つ。そのうちどれが適しているか。…まあこれだな。多分右手はぶっ飛ぶが確実性は上だ。もとより利き手の欠損などで躊躇うほど可愛い性格はしていない。

 

 

必要なのは仕込み。自然なように、悟らせぬように。私は推理力なんてものはないが演技力なら自信があるんだ。膠着状態に辛抱たまらんくなったといった様相で男に突進する。

 

 

「早く死ね。お前にかまってる暇はないんだ。」

 

 

男の目が冷たく私を映す。さぁ乗ってきてくれよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直哉と遊びながら修行をしていたある日のこと。駄菓子屋で買ったラムネの中のビー玉に、なんとなく私は術式を使っていた。

 

 

別に意味なんてのはない。直哉も帰って反省会をして、さあ後は何をしようかなと考える合間でやった手癖のようなもの。

 

 

ぼーっとしていた私はそのビー玉にどれくらい長く術式を使い呪力を込めたかを認知していなかった。だからだろうか。ビー玉が怪しく光っているのを深く考えなかったのは。

 

 

指先で転がしていたビー玉がふいに光った気がして。私は何の気なしに左目を閉じ、人差し指と親指で挟んだビー玉を右目の前に持ってきた、呪力を依然流しながら。

 

 

呪力を流してやるほどより強く光る気がして。わーきれーなんて馬鹿丸出しで私はずっとビー玉を眺めていた。子供とは馬鹿なものでその光をもっと見てみたいと呪力を流す量を上げたのだ。エンジンペダルを思い切り踏み込む感じで。

 

 

光が急に強くなり、点滅の間隔が短くなり、そこでようやく私は何かヤバくね?と思い至ったのだ。まあそこで術式を解かなかった時点でその後の顛末は確定していたのだが。器に水を流し続けるといつかあふれる等、決まっていたことだったのに。

 

 

幸運だった点は周りに人がいなかった点と直哉との術式有りの組手の経験があったことだろうか。危険を察知した時点で防御を固めておかないとアイツの攻撃は防げない。咄嗟に手を放し瞬時に呪力で固める。この動作のラグは0.1秒にも満たなかっただろう。我ながら素晴らしい呪力操作。そしてビー玉が炸裂し内蔵していた呪力があふれ出る。

 

 

自分の呪力であるというところが大きかったのか。それとも器となったビー玉の許容量が少なかったのか。ともかく私は全治一か月程度の傷で済んだ。

いや最初はすごかったのだ。髪は焼き焦げ右目は消滅し体の前面に大やけど。見舞いに来た直哉が死んだか?と真面目なトーンで言ってきた。ぎりぎりセーフと答えておいた。

 

 

まあ暇な時間に体内で呪力を回し続けたお陰で全身の呪具化が早くなり結果一か月で復帰出来たのは怪我の功名だ。直哉に話したらいつかそのままポックリいくで?と言われた。ハイ反省してます一人じゃやりません。

 

 

でも何かに使えるとは思ったのだ。呪力を圧縮させ放出など多くの術師が苦手としていることだから。自爆という結果になるので名前は付けなかったが。まあ恥ずかしいし。

 

 

だから構想だけ練っていた。より強力な呪具で行えば、勝てないが負けない最高に優秀な手札になると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気取られぬように、まるで意識してないようにわずかに顔をしかめる。これでサインも三つ目。もうそろそろいいだろう。接近した分減った選択肢をさらに削ったりもした。なぜ私が自分の優位性を捨てるようなことをしたのか。いい加減男も気づいたようだ。口元が歪む。勝機を見つけたな。

 

 

「そろそろしつこいな。」

 

 

「じゃあ動くなよ。避けてばっかりで。」

 

 

地面に降り立った男が巻き付いた呪霊から妙な呪具を取り出す。歪んだ刀身を持つ短刀。その術式効果は分からないが絶対の自信がないとここで出すわけがない。

間違いない。あの呪具が私の死因だ。

 

 

「じゃあ今度はこっちからいってやる、よっ!」

 

 

四足歩行のような、獣のような構えから愚直に突進してくる男。避ける気など無いと確信した私が上段に構えた酔蜂鞭を全力で振り下ろす。途端に刀身を伸ばして男を真っ二つにしようとする酔蜂鞭に対して男が体を背ける。無駄だ、その程度で避けれる代物じゃない。勝ちを確信した私の目が、遠くの人影を映す。

 

 

男の踏み込みによりたった砂煙のせいで事前に確認できなかった。あれは、夏油だ。瞬間こわばる私の体、男の笑みがより一層深くなる。このまま振り下ろせば男を始末できる。だが伸びた刀身は夏油の場所まで届くだろう。決断に迷いが生まれ一手遅れる。

 

 

いやまだだ。筋力に物を言わせて横ぶりに帰れば間に合う。そう思考しすぐさま体制を変え野球のアンダースローのように私の腕がしなり始める。ここで二手目。

 

 

だがこの二手分の隙は私たちにとっては十分すぎる時間で。男の呪具が私のひじに突き刺さる。途端に普段のような膂力を発揮出来なくなる腕。壁を切り進んでいた酔蜂鞭が止まり瞬時に縮む。何が起きたか分からず硬直する私。これで詰みだ。

 

 

カウンターを危惧したのか、男は新たな呪具を取り出しノーガードの私の喉を突き刺す。全身を走る激痛に思わず持っていた酔蜂鞭が手を離れ地面に突き刺さる。

 

 

「先輩ごっこは他所でやってろ。」

 

 

勝ちを確信した男がそう呟きながらひじに刺さっていた呪具を抜く。腕にあった妙な感覚が消えていくがもう意味がない。神経をズタボロにやられて動かずぶらんと垂れ下がる利き腕。もう落ちた呪具を掴むことなど出来ない。

喉に刺さる呪具を持つ男の腕が強張る。このまま引き裂いて終わりと思っているのだろう。あぁ…終わりだ。ありがとう、引っかかってくれて。

 

 

男の顔が驚愕に染まる。びっくりするだろうさ、突き刺した呪具がうんともすんとも言わないのだから。喉でよかった。心臓に刺されていたら面倒だったから。少しやりずらいが、その場から動けない縛りで強化すれば動揺した男との力比べも余裕だ。

 

 

再び酔蜂鞭が光り始める。その透明な刀身が、柄が、全てがまるでガラスになったような見た目に変化した酔蜂鞭が光り始めている。あらかじめ呪力を込め、ダメ押しで発動していた硝子の鉄槌。手から離れたときに割れないよう高さを調整したのが今日一番の頑張りどころ。

 

 

もともと光になって放出されるほど過剰に呪力を込めていたのだ。そこに拡張術式なんて使ってしまえばどうなるかなんて分かりきったこと。男が壁になって夏油に直撃する心配もなし。焦る男に伝えてやる。未だ喉を貫かれているので、声ではなく表情で。精一杯の笑顔で。

 

 

死ね、クソ野郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

一応自分ではそう言ったつもりだ。まあ喉の怪我は治っていないので、実際にはかすれた空気が抜ける音でしかなかったと思うが。いやそんなこと考えている場合じゃない。

 

 

私の目は捉えていた。呪力が炸裂する瞬間、私の喉に刺さっていた呪具ごと酔蜂鞭が空に投げ出されるのを。その後、酔蜂鞭が砕け呪力が迸る。しかし、それさえも完璧に抑え一切の被害を出さなかった。完璧な術式操作。その上目の前にいた男を吹き飛ばした。そんなことが出来るのはー

 

 

「まあ、お前だろうな。」

 

 

目の先、地表から五メートルほど浮いた位置に五条がいた。高専の入り口で見たときに妙な呪力が廻っていたから死んではいないと思っていたが。死に際で習得したのか、反転術式を。

 

 

五条の目に私は写っているのだろう。だが認識していない。それどころか己を一度殺した男のことも見ていない。あいつは初めて反転術式というおもちゃを与えられた子供だ。試したくてたまらなくて自分の相手を、殺意を向けてくれる相手を探している。

 

 

遂に生まれた、時代の寵児が。呪術界の新たな頂点が。

 

 

「せ、先輩…。あれは…本当に悟ですか?」

 

 

物音で夏油が起きてきた。信じられないといった目で男と相対する五条を見ている。まあ夏油の気持ちもわからんでもない。数日前の五条と今の五条では天と地ほどの差がある。つい最近まで横にいた友人が一瞬で手の届かないところに行ってしまった夏油の心境は如何ほどのものか。

 

 

遠くで紫色の光が見える。此方に向けられたものではないのに、ここからでも戦慄するほどの濃密な呪力と殺意。新しく拵えた五条の武器。矛先を向けられたときに対処する夏油を私はイメージ出来ない。

 

 

術師の強さは知識量と解釈に依存するというのが私の持論。術式は脳で回すのだから、脳内でイメージ出来ることは出来るし少しでも不信感を持てば途端にぐずぐずになる。良くも悪くも五条悟を術師の手本にしてきた夏油は、このままだと頭打ちだろう。力の差に打ちひしがれている夏油が強くなれるわけがない。

 

 

でも、ようやく知覚したが私もこいつらはそこそこ認めているので。少し見張っていることにする。それくらいしか私に出来ることはない。後は夏油次第だ。

此方に歩いてくる五条を見ながら、次は間に合わせようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約一年後、うだるような暑い夏。繫忙期のさなか。

高専の一角、自販機のある休憩スペースで夏油と金髪の女の問答に聞き耳を立てていたとき。

 

 

「じゃあ非術師を皆殺しにすればいいじゃないですか。」

 

 

これは、間に合ったのか?




設定上主人公まで4年制、下の代から3年生ということになってます。

作者は甚爾君好きなんですが、変換が面倒なのと扱いづらくて
理子ちゃんと同様に原作のルートで生きました

真依について

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