作者の中には戦闘狂になったマキマさんがいます
具体的な容姿の指定はする気がないんで思い思いの主人公を思い浮かべてください
呪霊操術。文字通り取り込んだ呪霊を使役する術式。
等級換算で2つ以上実力に差があると無条件に取り込むことができ、三級相当の呪霊でも呪力で強化すればそれなりの戦力とすることが出来る、最優の術式の一つ。
迷っていたときに何度もなぞった自分の術式について思い浮かべてみる。しかしどれほど考えても気分の暗い感情を晴らすものにはならなかった。それをどうテコ入れするのか。
「知らないよ。自分で考えな。」
「情緒とかどうなってるんですか。」
バッサリ切られた。まあ簡単に解決するとは思っていなかった。
「お前の力なのだからお前が解決しないと意味がないじゃないか。私が出来るのはせいぜい知恵を貸すくらいだ。」
そういうとグラウンドに落ちていた石を拾い上げる先輩。その手元で呪力が激しく巡り続ける。
「さて、ある程度は知っていると思うがおさらいだ。私の拡張術式、
そういわれて先輩の術式、栄華呪法について考えてみる。生物以外のあらゆるものに呪いを植え込み呪具とすることが出来る術式。その弱点となると必要呪力だろうか。
「正解は術式効果だ。もとから術式効果を持つ呪具を除き、等級の低い呪具やこの石みたいに術式を持たないものを呪力のごり押しで特級相当に格を上げることは出来る。しかし術式は宿らないんだ。」
言われてからハッとなったがこれは当然のことだ。呪具の術式効果とはその物の歴史や由来に由来する。「竜」属性に対して特攻効果をもつ天叢雲剣や地形を操作できる天沼矛のように、万人のイメージによって呪いを宿したものが呪具ならば、グラウンドに転がっていた石がそんなもの持つわけがない。
「上澄みの術師が呪具を使うのは術式効果が有用だからだ。そのレベルになると本人のフィジカルも高いから呪具なんて本当は必要ないからね。実際、呪具職人として活躍してた頃も、買い手はほとんど駆け出しや二級術師だから。」
「となると私の術式で瞬間火力を出すのは難しいわけだ。でもわたしには無尽蔵の呪力があったからね。術式を逸脱しそうな縛りを拡張術式としてまとめてできたのが
先輩の拡張術式にして代名詞、
「他にも縛っているのが回数と時間だな。回数はそのまま、一日の拡張術式の使用制限だな。時間の方は元の術式自体を縛ってるんだが、一瞬でも呪具との接地面積がなくなればどれほど呪力を込めていてもゼロになる。」
「随分重いものを結びましたね。」
「回数の方はそうでもないよ。結ぶ前から
「私教えるのはこの縛りと呪術の儀式についてだ。特にお前は一般家庭出身だし術式自体が鼻から優秀だからね。新しいアプローチの仕方を自分で見つけて見せろ。」
縛り…そう聞いてすぐに思い浮かぶのは呪霊を取り込むたび苦しんで抑えてきたあの味。今までは大志とか信念とかでごまかしてきたが、耳障りの良い理想はさっき粉々になってしまった。あれをこの先も続けていく自信はこれっぽっちもない。
だが、大切な人を守りたいというのも私の本音だ。悟の真の意味での親友になりたいというのも本音。なんとかどの本音も取りこぼさないようにできないか。
場所を移し教室の一角で先輩が持って来てくれた資料を見ながらああでもないこうでもないと頭を悩ませる。ちなみにこの資料って私が見ていい物なんですかと聞くと怒るやつなんていないと真顔で言われた。そうだった。この世ににいなかった。
気づけばもう夕方。流石に性急だったかと先輩が片付け始めたとき。ある本の、本当に基本的な呪術をまとめたページが目に入る。
「なるほど…蟲毒か。」
いける…かもしれない。確証はないが今までのどのアプローチよりも現実的である。そしてそれは私一人では絶対に思いつかなかっただろう。私の術式の利点を捨てるようなものだからだ。最悪私の使役する呪霊が0になる。しかしその危険性を理解しておきながら私の脳が高速で動き続ける。そうだ。なんで気づかなかったんだ。
「どうした?」
先輩が笑いながら聞いてくる、多分。今は先輩の方を見ている暇なんてない。早くこのアイデアをまとめなけば。急かされるように立ち上がる。不摂生で重い体がさっきの問答からさらに軽くなった気がした。去り際、振り替えもせず先輩の問いに答える。
「いや、何とか…できそうです。」
私の思惑のためには等級の高い呪霊が必要だ。そこで私は使えるあらゆる伝手を使った。ときには先輩と悟、後輩たちから任務を奪い取った。今までの貯金は大体冥さんに持っていかれた。先輩は楽しみにしてるよとだけ言い譲ってくれた。
後輩たちと悟は私の心配をしてくれた。誰かに脅されているんじゃないかと。特に悟が相談してくれよ、親友だろと言ってくれたのは嬉しかった。でも本当の意味で親友になるため、何も言わなかった。
それと後輩たちの任務で等級違いの産土神が現れた。先輩が言っていた話が真実だったことを改めて実感した。補助監督もグルだったので感染型の呪いをかけておいた。
そして、都心から遠く離れた田舎の村にて。偶々呪いが見えた二人の女の子が村を襲う災いの原因として虐待していた。頭の血がサーっと抜ける感覚がする。目の前で喚く猿が同じ人間だととてもじゃないが思えなかった。殺してやりたいと思ったが、つい先日に術師の汚い部分を見たばかりだったので踏みとどまれた。
私の本音はとうに決めた。私にとっての大切な人を助ける。それを思い出して一つ深呼吸をすれば落ち着けた。怯えさせないよう呪霊は使わず檻を壊し二人を保護した。喚いていた猿は私が檻を壊すさまを見て絶句していたので無視して高専に急いで帰り寝ていた梢子を叩き起こした。
睨まれたが経緯を話すと、よくやったクズと言われた。翌朝一緒に朝ご飯を食べたが食欲はありそうで安心した。私が面倒を見れればよかったのだが今日も任務があったので事情を夜蛾先生に話し協力を頼んだ。今日の任務は上層部のからの指示を無視して行う。そういう意味でも信頼できる人に傍にいてもらいたかった。
今日の任務は登録済みの特級呪霊「七人御先」を取り込むこと。先に取り込んだ登録済みの「玉藻前」、「だいだらぼっち」と同様に強力な術式を操る凶悪な呪霊だ。一体一体が己の死因に由来する術式を持ち、本体も錫杖を用いた攻撃が得意。一体多の戦場で七つの術式が集中して浴びせてくる。もし負けたら私も彼らの仲間入りだ。順番が来るまで一生苦痛に苛まれる。
あぁ…なんて魅力的なんだ。しゃらんと鈴の音が聞こえてくる。
「はぐれはおらんか!」「むかえにまいった!」
現在の使役呪霊数、3,343体。
私の思惑とは、私の使役している呪霊を用いて蟲毒を行うことだった。私という人間を壺と解釈し腹の中で呪霊に殺し合いをさせる。生き残った呪霊は死んだ呪霊の呪力を啜り強くなる。特級呪霊を上層部を無視して集めていたのも強化元の核にするためだ。
確かに私の術式の強みは手数の多さだ。準一級以上の呪霊を複数使役し、術式を解明・攻略されてもまた新しい呪霊を放てば大抵の術師は完封できる。私の行為は、その強みを投げ捨てるようなものだ。
しかし、私はどうしても想像できなかった。畳みかけられる術式によって押さえつけられる五条悟の姿が。今の悟にとって特級呪霊など敵ではない。例え四方八方を特級呪霊に囲まれても殲滅するだろう。ならば意味がない。
だから私は濃縮することにした。困難な任務と一日は消えない吐瀉物以下の呪霊の味に苦しめられながら集めた計3,600体の呪霊を。この儀式によって呪霊を強化し、残った呪霊だけを生涯使い続ける縛りによってダメ押しすると同時に呪霊を取り込む日々からサヨナラする。それが私の立てた計画。
ただ一つ、この計画には大きな欠点がある。それは、私の術式によって取り込まれた呪霊はその時点で成長が止まることだ。いかに大量に呪霊を集めようと、この術式の仕様がある限り私の計画は無駄である。この仕様を撤廃するには、それ相応の縛りを結ぶ必要がある。
だから過密なスケジュールの中で準備してきた。特に先輩と、先輩が連れてきた禪院直哉との手合わせはかなりありがたかった。両者とも肉体を武器に呪霊と闘う術を熟知していたので多くを教わった。禪院直哉については見返りに何を求められるかひやひやしたが、私の計画を伝えると大笑いして喜んで手伝うと言ってくれた。終わったら本気でやろうともいわれたが。先輩にもばらすことになったがやるじゃんの一言をもらい、悟たちに秘密にするという約束をしてくれた。
ともかく準備は整った。土下座して歌姫先輩に術式を使ってもらい体には力がみなぎっている。万が一のため梢子に今夜はずっと起きているようお願いもした。土下座の写真を撮られたが悟られたのかちゃんと帰って来いとも言われた。いい友人を持った。
その他冥さん伝いに得た術師の実力を上げる道具を身に着け床に就く。
瞬間、目の前に広がるのは血の色をした大地とその大地が見えないほどうごめく呪霊の群れ、群れ、群れ。思わず強張る体と自然に上がる頬。どうやらうまくいったらしい。
そう、私が結んだ縛りは蟲毒への強制参加。
私は今から術式なしに私が集めた計3,600体の呪霊と闘い、生き延び、この儀式の終わりを見届けなければならない。私の体に力が入るのを察知したのか、あちこちで戦闘が始まる。うち二割ぐらいは私の方に向かってくる。人間だからか、取り込まれた恨みか。
逃げるなんてしない。これが終われば、私はようやく私が望んだものを得られるのだ。むしろとっとと儀式を終わらせてやると意気込み、私は迫りくる呪霊の群れに走りだし、先頭の呪霊の頭に向かって拳をフルスイングした。
黒い火花が奔り、一帯の呪霊を吹き飛ばす。私にはこの黒い火花がこの先の、困難を抜けた先の幸福を指し示しているように感じた。
一体どれくらいたったのだろう。時間なんてものを自分の腹の中で感じるかはわからないが、もう五時間は不眠不休で戦っている感覚だった。歌姫先輩のバフなんてとっくの昔に切れた。ここまで持ち込んだ道具なんで全て壊れた。初めての黒閃とそれによって会得した反転術式がなければ一時間も持たなかったと思う。それほどに過酷なものだった。
しかし私の目的のために、こんなところで倒れるわけには行けない。何度行ったか分からないが、とにかく何度目かの鼓舞を終え背後からする音に対し素早く臨戦態勢を取る。
しかしそこには襲い掛かろうとする呪霊などおらず。体中にもやを纏った影が六体いた。その姿形も大きさも全てバラバラだが一様に静止し、黙ってこちらを見ていた。慌ててあたりを見渡すが、他の呪霊の姿はおろか、その肉片も血の一滴も見つけられなかった。
つまり…終わったのか。いやまだだ。この儀式の終わりを、儀式を始めた私自身が宣言しなければならない。それをこの呪霊たちは待っている。己の主になる存在がそれにふさわしい格を示せるのかを見定めようとしている。
見渡していた体を呪霊たちの正面に向きなおす。何を言うかなんて決めていなかった。しかし自然に口が開く。まともに音なんて出ないはずのガサガサの喉が震えだす。呪霊たちの身丈が私の目より下に落ちる。
「私に…従え、呪い共。」
頭なんてあるか分からないが、六体の呪霊すべてが私に頭を下げた感覚がした。
急に現実に引き戻されるように寝床から飛び起きる。ベットと寝巻は汗ですごいことになっていたがそんなことまるで気にならなかった。つい先ほどまでの経験が、夢なんかで無いことを確認しなくては。最低限制服に着替え部屋を飛び出す。
「え、悟?」
「あ、傑?じゃあさっきまでの気持ち悪い呪力は、て、え。なんだ傑、その呪力。お前本当に傑か?」
「ようやくお出ましか。」
「おい、ちゃんと説明しろクズ。」
扉を開けた先にいたのは、此方をじろじろ見る悟と不機嫌そうな梢子。そして、暴れそうな悟を抑えてくれたのであろう先輩の姿。悟と梢子は心配そうな顔をしているが先輩の顔は肉食獣のそれだ。禪院直哉と長い仲と言っていたが性格も似ているらしい。
それよりもまず説明しなければ。しかし思いついてから随分と時間をかけた一世一代の計画だ。どう説明したものか。いや、良い言葉があった。禪院直哉が手合わせの際によく言っていた言葉を借りて、未だ心配そうな顔で見つめる悟に告げる。
「悟。私も来たよ、こっち側。」
「夏油。かっこつけているところ悪いが、かなり汗臭いぞ。」
「先輩、情緒。」
七人御先…正しくは自身の死に関する実体験を再現するという術式。術師より一般人の方が死に対して大きな恐怖感を感じるので、再現されるものも強大になるとかいう胸くそ。
誰かを呪い殺すと七人のうち一人と入れ換わる。呪霊なので変わる対象は成仏するとかはなく、他の六体に食われ栄養になる。
モデルはぬ~べ~で出てきたものです。
ぬ~べ~だと人数が減らない限り襲ってこないんですけどね。
真依について
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