脳筋はゴリラ廻戦にて最強   作:藍嵐

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次またかなり待たせると思います

0どうするか全く浮かばん


部屋にゴキブリ出た程度のハプニング

「宝火さん! こっちです!」

 

 

まさか術師の私が病院に行くことになるなんて。焦った様子を見せる恵を見ながら現実逃避する。恵から連絡が来てから数時間。任務の途中だったが送りの車の中で呪力を開放してしまった。補助監督は気絶しそうになったし、目的の呪霊もどこかに逃げてしまった。

 

 

「昨日の晩に肝試しに行って…そのまま…!」

 

 

「呪われたか、妙だね。」

 

 

報告書を見せてもらうが納得できない。現場を見に行った術師の証言では呪霊の存在は確認できなかったらしい。ただの田舎の噂から生まれた呪霊がここまで狡猾に動けるだろうか。それに額の呪印。マーキングというならわかるが一緒に肝試しに行った友人にはないらしい。特別呪力が多いわけではない津美紀ちゃんだけ狙われるのはおかしい。となるとー

 

 

「総監部、保守派の人間か。まあありえない話じゃない。」

 

 

五条と夏油は高専卒業後もおとなしくならなかった。今も立派な保守派アンチだし、私もそっち側だ。加えて禪院家次期当主とも仲が良く、禪院家相伝を継ぐ将来有望な子まで引き入れているときた。保守派の人間からすれば面白い話じゃない。

 

 

しかし特級術師二人と御三家のうち二つを相手どれるほど強くない。ならその周りから。よくある、夏油も心当たりのあるクソみたいなやり方だ。虫唾が奔る。

 

 

「よし、解こうか。」

 

 

「すみません、津美紀を…お願いします…!」

 

 

だが私なら出来る。津美紀ちゃんの体にこびり付いた呪いを引きはがすことが。

泉家の相伝、栄華呪法。呪具を生み出すことを生業にしてきたこの家は、厄介な呪物の対処を任されることもあったらしい。まあ呪物を加工し呪具にすることもあるのでそれなりに知見はあったのだろう。

 

 

そう言った中で、一人の相伝使いが良い解決法を生み出した。呪いを込めるのが術式の効果なら、反転すればそれは呪いを解く力になるだろうと。

私がこれを使うのはデメリットがある。体の呪具化がリセットされてしまうのだ。完全に無くなるわけではないが、非術師で無抵抗の津美紀ちゃん相手なら戻すのに三か月はかかるだろう。恵が気を使うので言わないが別にそこまで問題じゃない。ハンデがあるからといって殺されてやるほど、私は優しい人間じゃないので。

 

 

「ー殆闇(たいあん)歪欲(きょうよく)秩序の巨影(ちつじょのきょえい)

 

 

正の呪力を腕に回すたび表現できない痛みが走る。がそんなことおくびにも出さない。津美紀ちゃんの額に手を伸ばし私の呪力を浸透させていく。目で反応を見ていると変な塊が脳の奥にあるのを見つけた。ばれないようにわざわざこんなところに隠すなんて。

確信した。呪霊じゃない、人がやってる。

 

 

狙いを集中して呪力を集める。今まで反転術式で対処したケースの中でもダントツの硬さだ。繭のように呪力をがんじがらめに巡らせて守っているのを、一本ずつ引きちぎっていく。特段の抵抗もなく数分で7割ほどを解き、これで津美紀ちゃんは大丈夫だと安心したとき、

 

 

目が合った。その呪いの塊に潜む誰かと。

 

 

瞬時に出力を上げる。どうやら保守派の嫌がらせで済む話じゃないらしい。だがそんなの知ったことか。ガン飛ばしてきやがって、いい度胸だ。

 

 

「術式反転、よだかの星。」

 

 

ミンチ肉にしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、」

 

 

気づけば私はどこかの屋敷に飛ばされていた。使われている建材も、襖も障子も一目で一級品だとわかる。どこか汚れていたり欠損しているのは私の反転術式の影響か。

 

 

それと何か違和感がある。高級品なら実家でも禪院家でもさんざん見てきた。だが記憶の中のものと目の前にあるものには違いがある。湯水のように金を使い拵えていた両親の部屋と比較しても違和感が残る。

 

 

その正体を暴こうと部屋を見渡し、火のついていない蝋燭に目が留まった瞬間、しまっていたはずの襖がひとりでに開きだす。その奥もひとりでに動き、おおよそ五メートルほど先の襖が開くと、そこに女が表れた。

 

 

手入れの行き届いた濡羽色の長髪にひき眉、白粉が塗られた顔は昔話のお姫様のよう。

そしてそれらの高貴さを台無しにする、裸に半端に羽織った十二単。

 

 

流石に怒りを忘れて困惑する。いくら呪術界がかび臭い世界だからってそんなコテコテな格好をする奴はもういない。古すぎだ。同時にさっきの違和感も解消する。

全体的に古いのだ。様式も画風も何もかも。洗練されていないように感じるし、今時屋敷にもコンセントやエアコンはある。

 

 

暫定敵だがすぐに仕掛けるわけにもいかない最低でも。今体験しているこれが誰によって行われているのかは聞きださなくては。伏兵を考慮しつつ相手を見据える。女は目が合うと大きくのけぞり、

 

 

「こんの、泥棒猫がぁぁぁぁ!!!?!?!?」

 

 

うわうっさ。

 

 

「私と!宿儺が!出会った!運命の!場所に!アンタみたいなブサイクが!はいってくんじゃないわよぉぉぉ!!」

 

 

女の言葉に体が強張るのを自覚する。その名前は軽々口にしていい物じゃない。

両面宿儺。呪術界に名を遺す呪いの王。数多くの術師が挑み、そのすべてを葬り去った千年前の最強の呪術師。その名前を目の前の女は気が知れた友人を呼ぶように話した。

 

 

千年前、この女が平安を生きた人間なら違和感の辻褄も会う。しかし人目を憚らず呪いの王へ愛を叫ぶこの女が津美紀ちゃんに直接呪いをかけたとは思えない。既に死んでいるはずだし、動けるならわざわざ非術師の脳の中に潜伏する必要がない。

 

 

千年前の人間の魂を呪具に封じそれを津美紀ちゃんに埋めた黒幕がいる。そこまで分かれば十分だ。もうこの女に用はない。できるだけ早く対処して黒幕を探す必要がある。

 

 

口に手を入れ目的のものを吐き出す。それは呪霊。かつて私の喉を貫いた伏黒甚爾が使役していた、体内に呪具を取り込める三級呪霊。取り出したるは、呪霊の温床となっていた墓地の墓石で作ったメリケンサック型の一級呪具。

 

 

女が防御するより早く、私は懐へ飛び込みパンチを振りぬいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しつこいな。かび女。」

 

 

「誰がかび女よ!ブサイクが調子乗ってんじゃないわよ!」

 

 

背後から迫る液体金属をよけながら突っ込んできた女の打撃と打ち合う。ただの呪力強化だけで私と殴り合うことなんてできないが、此奴の体には肉の鎧がかぶさっている。羽も生えていて飛行もできるし、巨大な目は私の移動先を追ってくる。

 

 

人間スケールで再現した虫の鎧による高速戦闘に、呪力を込めた液体金属で遠距離のカバー。なかなか練られた戦い方だ。術式はおそらく構築術式だが、解釈をかなり広げている。私の知っている中で十指に入る実力者。

 

 

だが付け入るスキがないわけじゃない。それだけ大きなものを作り出してパワーはようやく私と五分。動きも直哉ほど早いわけではなく、液体金属も術式で動かしているのではなく絶えず呪力を流すことで制御している。私の目なら戦闘中でも流れを読み取れるし、

 

 

「グッ、クソッ」

 

 

呪力が読めればピンポイントで防御もできる。どれだけ鋭く伸ばそうとも、読めるなら私の体には傷一つつかない。それで動揺した隙をついて顔面に一撃。一番面倒なのは複眼だ。目を割ってしまえばもう私の動きをとらえられない。

 

 

構築術式で作り直す暇なんて与えない。時々顔面に、あとは全身に満遍なく拳を打ち込み鎧をはいでいく。一切躊躇わない。時々飛んできていた拳も、何とか此方を崩そうとする液体金属も、気づけば無くなっていた。

 

 

この女にはどこか慢心があった。まあ呪術最盛期を生きた人間からすれば今を生きる私たちなんて平和ボケしているように見えたのだろう。

だが今の此奴からはそんな様子微塵も感じない。なんの罪悪感もなく非術師を呪い、助けようとした此方をみて嘲笑う。そんな奴が舐めていた相手に手も足も出ずにボコボコにされるなんて、

 

 

「滑稽だな。」

 

 

「いいえ、いいえ!まだよ!愛は不滅なんだから!」

 

 

掌印ともとに浮かび上がる玉。いまいち何をしたいのかわからないが、ここで出してくるからには意味があるのだろう。まあ、こうなったら関係ないが。

 

 

「見てなさい宿儺!これが、あなたのお嫁さんよ!」

 

 

結ぶは毘沙門天の掌印。あらゆる困難を打ち砕き、武運長久をもたらし給え。

 

 

「「領域展開」」

 

 

三重疾苦(しっくしっくしっく)」 「 膏跋宝座(こうばつほうざ)」 

 

 

最終ラウンドだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展開スピードは同じくらい。押し合いは私の方が優勢。となるとこの空間はあいつの生得領域のようなものだったのかもしれない。押し合いで勝っているのに展開スピードが同じなのは、生得領域内のバフがあったからと考えられる。

 

 

押し合いの領域内に現れる神経、おそらくは虫のもの、と武器の山。構成する武器は刃が欠けていたり、錆びていたり、朽ちていたり。何とも私らしい領域だ。前もこんなデザインだったかな。

 

 

「クソっ、なんでよ!」

 

 

「お生憎様、特別製でね。」

 

 

 

飛来する玉が私の領域のシンボルたちを削り取っていく。ただ何らかの能力で強化したってわけじゃないな。必中だったらヤバかったかも。なんて思いながら躱す。この勝負に持ち込んだ時点でかなり余裕ができた。

 

 

「私の領域はね、最初はよくあるものだったんだ。必中効果で相手に硝子の鉄槌を発動して終わり。発動すれば勝ちの、オーソドックスな必中必殺の領域。」

 

 

元々本気じゃなかった。あの屋敷が津美紀ちゃんによって生成されたもの出ない以上暴れても問題ないとは思っていた。でも脳は現代医学でも解明できていないブラックボックス。万が一があるかもしれない。

 

 

「でも私に追いすがる奴らを見て思ったんだ。こいつらに私の必中効果は通るのかってね。答えは否だ。私は五条や夏油、直哉がガラスの彫刻になる所をイメージ出来なかった。」

 

 

だから抑えた。周囲を大きく破壊するような戦い方をせず、拡張術式も使わなかった。でも領域内なら話が別だ。領域内なら私は遠慮なく力を行使できる。

 

 

「だから捨てた、必中も必殺も。その分私に与えた。領域内のシンボルが示す通り、私はもう呪具に対してそこまで信頼を置いていない。」

 

 

女の領域が押されていくたび、私の拳がきらめいていく。光を通し、偶に跳ね返す。脆くてきれいな、硝子のようになっていく。

 

 

「この世で一番馴染む武器は私の腕だ。この世で一番鋭い武器は私の足だ。」

 

 

私の領域で完全に満たされる。女が悪あがきか球をこちらに飛ばしてくる。それを、完全に硝子になった腕で殴り壊した。領域の効果による縛りからの解放。今私は縛りの代償を払わずともその恩恵を受けていた。

 

 

「この世で一番の武器は、私だ。」

 

 

足掻き逃げようとする女の腹を、私の拳がぶち抜いた。




やっと出ました、主人公の領域展開

縛りからの解放とか言いながら見た目は硝子になるという
ご都合領域ですが、そっちの方がかっこいいから仕方ないよね


万さんの悪辣さをもっと出したかったのですが
まあ本編で満足そうに死んだしちょい雑に使ってもええやろ

真依について

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