脳筋はゴリラ廻戦にて最強   作:藍嵐

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なかなかネタが思いつかないんですけど
久々に好きな小説が更新されたので



お揃いの悪夢の中で

このところ、両面宿儺は機嫌がよかった。未熟なガキに己が抑え込まれているという事実に不満はあれど、今までを振り返るとやはり今の状態は機嫌がいい方に入るだろう。

 

 

虎杖悠仁という小僧に取り込まれ訪れた呪術高専の地。所詮は弱者が傷を舐め合う所と一蹴したそこは、宿儺に相対するにふさわしい強者ぞろいだった。

 

 

呪力を一切持たぬ異端児、粘着質な呪いに愛を向ける狂人、熱だの何だのと叫ぶ賭博狂い。そして指一本分の呪力しかなかったとはいえ、自身を完封した五条悟。

 

 

実力で見れば五条悟が抜きんでているが、話によると同等の実力者が後三人もいる。これはかつて生きた呪術最盛の時代でもなかったことだ。小僧の中で五条悟の技術を観察し、そこに至るまでに積み重ねられた研鑽を想起し、いつか相まみえたときを夢想する日々。肝心の小僧が宿儺の水準に達しない弱者なことにたびたび不快感を覚えるが、その後に控える大物のことを思えば些事だった。

 

 

そして、この伏黒恵。いまは未熟だが、生まれ持った術式とその運用センスは光るものがある。呪術界の頂点に君臨する四人から指導を受けたという、超ビップ対応の新星呪術師は、先ほどまでの呪霊戦でもいかんなくその際のを発揮していた。彼もまた鍛えれば、宿儺の前に立ちふさがるだろう。

 

 

ここで死ぬには惜しい。もっともっとその才能の、底の底までしゃぶり尽くしたい。そんな独善的な理由だった。未だ指三本分の呪力しか持たないが、そんな理由で、宿儺は伏黒恵の前に躍り出た。

 

 

「お前は見どころがある。今のところは生かしておいてやろう。」

 

 

「はっ!?なんだそれ?!そんな理由で、っクソ!」

 

 

いくら円鹿の能力を引き継いだとはいえ分割された欠片に過ぎない。伏黒恵には未だ雷撃と凍傷のダメージが残っていた。氷で固まった手では影絵など作れない。信じたわけではないが、回復が終わるまでは宿儺の後ろでおとなしくしておくしかなかった。

 

 

「…何か勘違いをしているな、両面宿儺。確かに貴様は我より強いが、力を割かれ不完全な貴様なぞ敵ではないぞ。」

 

 

しかしそれをおとなしく見守る鐘驪(しょうれい)ではない。そして、今の宿儺になら余裕をもって勝てるなどと甘えたことを考えることもない。相手はあの呪いの王。全身全霊で当たってようやく相対できる相手と考えていた。

 

 

両腕を宿儺に向け、雲を集める。先ほどまでは行わなかった術式の同時行使。ダメージを与える目的で打つわけではなく、あくまで次点につなげるための起点として打つ。今いる領域全体に行き届くように、そして確実に当てるために初見の技で埋め尽くす。

 

 

舞菊(まいぎく)溢梅(こぼれうめ)

 

 

放たれる突風と豪炎。容易に避けられず、互いに威力を殺し合うこともなく空間全体を埋め尽くす炎の渦が両面宿儺に向かって行く。後ろにいる伏黒と釘崎までも焼き尽くさんとする熱を宿儺は一瞥し、

 

 

「下らん。」

 

 

その術式で掻き切った。宿儺にとってはできて当然の技とも言えないもの。しかし伏黒恵と鐘驪にとってはその限りではない。美しい呪力操作と無駄のない術式行使。伏黒恵はその様子に誰かの影を見た。

 

 

なんてことはない、ただ見通しが甘かっただけ。全身全霊で対等など見当違いも甚だしい。鐘驪は全力で打つべきだったのだ。わざわざ声を掛けずに、宿儺の意識が伏黒恵に向いている間に。そんな絶好の機会を自ら潰してしまった。

だから、これからその身に降りかかることは必然だった。

 

 

「良いなぁお前。」

 

 

驚いている間に、既に宿儺は距離を詰めていた。鐘驪の頭をわしづかみ地面に叩きつける。頭に掛かる万力のような力に、たまらずどけようと手を動かすがびくともしない。ミシミシと己の頭から嫌な音がする。鐘驪はその警鐘にすぐさま切り札を切る決断をする。先ほどと同じ、口内に生成した雲による攻撃。その雲に緑色の光が宿った瞬間、

 

 

キンッ

 

 

その二枚舌ごと切られ潰される。頬が横に裂けた痛みと頭を締め付ける激痛に思わず奥の手を切っていた。鐘驪は空への恐怖から生まれた呪霊。その体は雲でできており、両面宿儺による拘束からでも体を分解し、再構築することができた。

 

 

「なんだ、そんな芸当もできるのか。」

 

 

息を整え、必死で体を再構築する。鐘驪だから抜け出せたが他の仲間たちだったらそのまま殺されていたかもしれない。鐘驪は己の考えの甘さを認め認識を改める。全身全霊などでは足りない。己の命を懸けてようやく同じ戦場に立てる。

 

 

 

「俺の見当違いだったか。良いと思ったのだがな、的としては。」

 

 

しかしこの発言は認められない。先ほどの伏黒恵にかけた言葉とは大違い。そこに含まれるのは嘲笑と侮蔑。こちらを明らかに下に見る発言だった。己は空の化身としてこの世界に生まれ落ちた存在だ。たかだか80年ほどしか生きられないちっぽけなガキ以下と思われるなど、

 

 

「我の矜持が許さんっ!!」

 

 

鐘驪が両手で雲を生成し圧縮していく。その量も込められた呪力量もけた違い。罠を疑うほどの大技の隙を前に、宿儺はどこまでも余裕そうに伏黒に話しかける。

 

 

「伏黒恵、先ほどの戦いは見ごたえがあったが、やはりまだ貴様の呪術は荒削りだ。」

 

 

圧縮された雲の圧に鐘驪の腕が所々で折れ出血する。漏れ出る呪力の影響で空間が歪む。

 

 

「この時代の呪術師に言えることだが、呪術を特別視しすぎだ。呪術なぞ身体能力の延長、使いこなして当然の代物に過ぎん。」

 

 

雲から光が漏れだす。その色は青、赤、緑、黄、水色の五色。ネオンボールのように、あらゆる面からあふれ出す。

 

 

「意識することだ。臓腑が何も言わずとも働くように。考えずとも呼吸ができるように。この身に満ち、易々と振るえるものだと。」

 

 

絶世(ぜっせ)黒実(こくじつ)虚無の信行(きょむのしんこう)、灰の花束」

 

 

「良く見ていろ伏黒恵。手本を見せてやる。」

 

 

呪詞を紡ぎ増幅された呪力がさらに空間を歪ませる。その極光と風圧を受けても宿儺は何も変わらず、何も問題ないといった表情で立っていた。伏黒恵がよく知っている、五条悟達が持つ強者の余裕。

 

 

「極の番、花死(かし)!!」

 

 

鐘驪が操る五つの悪天候、それを乱雑に混ぜ混沌を生み出すのが鐘驪の極の番。相殺や相乗を気にせず子供の書いたクレヨンの絵のようにごちゃまぜにされたそれは、防御など不可能。

 

 

「両面宿儺ぁぁ!!!」

 

 

炎が、風が、雷が、氷が、水が、四方八方から押し寄せる。先ほどとは比べられないほどの殺意をもって放たれたそれは、秩序など無く互いを食らいあいながら殺到する。

それに対して宿儺は、ただ右手を向けただけ。

 

 

「大それた名も呪力も必要ない。ただ当然のように振るえばー」

 

 

「空など容易に切り裂ける。」

 

 

キンッ

 

 

結局伏黒と鐘驪は、宿儺の術式の名前を知ることさえできなかった。方向を絞って術式を発動しただけ。ただそれだけで、特級呪霊の極の番を払い、その四肢を切り飛ばした。崩れ落ちる鐘驪。すぐさま呪力を回し回復すべきだが、そんなことを考える余裕はない。心を埋めるのは驚愕。己の技が破られたことに対する絶望だけだった。

 

 

「ではこれでー、しつこいな。」

 

 

鐘驪を救ったのは突如発生した黒い波。光を一切反射せず飲み込み、空間に孔が開いたように錯覚させるそれは、鐘驪を飲み込んだ後地面に染みて消えていった。

 

 

「ならば、次はお前だ、伏黒恵。手本は見せたのだ、頑張れるだろう?」

 

 

その後に起きたことは、おおよそ想像通り。式神使いとしてかなり成長していたおかげで式神が破壊されることはなく、両面宿儺が表面に出てきていたのもも虎杖悠仁の伏黒を助けたいという意思と指を取り込んだことによる衝動が重なっただけ。

 

 

時間がたてばその肉体の主導権は虎杖悠仁に戻りー

伏黒恵はまた善人を救えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両面宿儺の生得領域、血の海に浮かぶ牛頭の大骨。虎杖悠仁と縛りを結び首を跳ね飛ばし、静寂が戻った空間に、一人の侵入者。

 

 

「…気味の悪い呪力だ。何者だ?貴様は。」

 

 

「初めまして呪いの王。私は泉宝火、呪術師だ。」

 

 

一級術師でもすくんでしまうほどの重圧を気にせず、まっすぐこちらを見つめてくる女。まずは小手調べ。鐘驪とかいう呪霊に放ったものと同程度の斬撃を一発。

 

 

まっすぐ首に向かって飛んでくる不可視の刃。呪具化した目と宿儺の殺意によってその一を特定した宝火は、構える訳でもなくただ指を一振り。

 

 

「ほう。」

 

 

甲高い音を立てて火花が散る。宿儺が放った斬撃は、確かに指の爪と衝突した。何か特別なことをしたわけでもない、単純な呪力強化しか宿儺の目は捉えなかった。この術師を測るため、さらに繰り出される全方位からの斬撃。その数、48。四肢を乱切りにして、胴を縦に割き、その頭を粉微塵にせんと殺到した斬撃は、

 

 

「痒。」

 

 

今度は何の動作も見せなかった女に弾かれた。確かに見ていたが、やはり呪力強化しか行っていない。無防備の相手に術式を放って傷一つ負わせられない。そこから推測される理由は二つ。指三本分の力しか取り戻していない宿儺が存外に弱かったのか。

それとも、その程度の己など歯牙にもかけないほど、この女が強いのか。現状、両面宿儺は格下に成り下がっていた。

 

 

「ククッ、貴様が伏黒恵を育てた者の一人か。」

 

 

確信する。この女が、あの五条悟と並ぶと言われていた術師の一人だと。異様な呪力に驚異の肉体。それと、此方も傷一つつかない衣服。身に着けた物に呪力を通し強化するというのは誰でもできることだ。だが呪力での強化には上限がある。いくら呪力を注いでもその強化はあくまで底上げ、対象に依存するもの。ただの布切れに防ぐ術はなく、仮に呪具、呪物だとしても易々と弾かれるほど加減したつもりはない。

五条悟もそうだが、まだまだ底が見えない。…だからこそ面白い。

 

 

 

「それで?わざわざ俺の領域まで来て何のようだ?雑談をしに来たわけでもあるまい。」

 

 

「あーお眼鏡にかなったってことかな。それじゃ遠慮なく。」

 

 

気づけば目の前にいた。手を伸ばせば降れる距離。対象に応じて込める呪力量を自動調節する「捌」ならば届くだろうか。今の呪力出力では難しいか。いやそもそも、今の動きができる術師がそう易々と触れさせるだろうか。

 

 

「虎杖悠仁と何か縛りを結んだな?それと暗躍してる顔見知りがいるだろ?人の周りでちょろちょろ動き回りやがって。」

 

 

あふれ出す濃密な殺意。身を刺すような悪感情が、泥のような粘り気をもって宿儺の身を包んでくる。ただの強者のそれじゃない、一度捉えたら逃さないような、まるで呪霊のような殺意だった。

 

 

領域が揺れる。縛りを結んだ時点で虎杖悠仁の肉体は修復されている。本人が起きようとしているので、よそ者の宝火は弾かれそうになっていた。ここでこれ以上問答をする時間はない。

 

 

「残念だったなぁ、無駄足になって。」

 

 

「そうでもないさ。1,000年前を生きた生物に実際に会えた。博物館に来た気分で楽しかったよ。」

 

 

煽りにも乗らず素直に引き下がる。その後ろ姿には、先ほどまでの粘っこい殺意は微塵も感じられない。領域を立ち去る瞬間、友人に一言告げるような気軽さで、

 

 

「覚えとけよ両面宿儺。お前は私が―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対殺す。」

 

 

「え?何、え誰この人?」

 

 

何か起きたら裸だしすごいきれいな人が俺の頭鷲掴みにしてる!?

笑い声聞こえる先生いるんでしょ助けて?!




戦闘描写は短く書きました
かませに割く時間と文字など存在しないので

お前のピークはここ!あとは知らん!

真依について

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