脳筋はゴリラ廻戦にて最強   作:藍嵐

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誤字はコメントで指摘されるもんと思ってた侍
「馬鹿丸出しで草なんよ」

更新を待っていてくれた人、大変申し訳ない
渋谷事変くらいまで展開は考えてはいるんですけど出力する暇がなくて


心歌舞く時まで

高専襲撃後。呪術界の頂点である四人はとある一室に集まっていた。対盗聴、盗撮、呪術特化の帳を丁度部屋の形に収まるよう四角に変え重ね掛けしながら。帳を張っていることすら悟らせない技術と繊細な呪力操作による多重展開。

 

 

「まあこんなものかな。これでものぞき見できるなら大したものだけど。」

 

 

「いやできるわけないやろ。」

 

 

それぞれ特化型の帳を三枚ずつ、計九枚。天元様の補助があるとはいえやりすぎである。自身と、従える呪霊六体の領域を自在に操れる夏油傑だからこそできる芸当。高度な条件を追加するたび天元様の負担も増えていることに気づいた方がいい。

 

 

「まあおいといてさー今回の襲撃なんだけど。やっぱおかしくね?」

 

 

「それは、特級呪霊二体という持ち札を失う危険がありながら、敵のうまみが少ないということかい?」

 

 

「端折りすぎやしなんで伝わっとんねん。え、俺ら要る?」

 

 

「まあそこは共通認識だろうし。わざわざ私たち呼ぶほどかとは思うけど。」

 

 

敵の特級呪霊たちは、まあ強い。現状確実に祓える生徒は秤と乙骨と真希くらいだろう。その他の生徒も惜しいところまで行くだろうが確実なのはこのあたりだ。だからこそ敵も交流戦中に高専にいるのを五条一人にしたのだろう。ただ、それで何とかなると思っているなら認識が甘すぎる。

 

 

一人では勝てないかもしれないが、それでも彼らは五条らが鍛えた呪術界の新星だ。名をあげなかった者たちも二人になればほぼ確実に祓える。それ以上は考えるだけ無駄だ。

しかも今回は戯れで動かなかっただけで、五条が動けば十秒以内に終わった。五条の性格を知っている誰かが計画したのだろうが、賭けをするにはあまりにハイリスクローリターンだ。それで得るものがいくつかの呪物と宿儺の指など。割に合わないにもほどがある。

 

 

「木の呪霊も闇の呪霊も交戦済み。手札はまだあるにしても1番強くて火山頭レベル。それ以上がいるならたぶん恵の時に出してる。これで底が見え始めたってのは甘いかな。」

 

 

「ん~、多分あってる。少なくとも呪霊のは。」

 

 

「せやな。一番裏は過去の術師を受肉させようとしとる奴やろうし。ある時から被呪者がめっきり見つからんくなったのもそいつの仕業ならこれで終わりな訳ないわ。」

 

 

「だとすると猶更わからないな。今回の襲撃に関しても、特級呪霊達は祓われてもおかしくなかった。同一人物と考えるなら綿密さがちぐはぐだ。」

 

 

うーんと頭をかしげる四人。まさか相手が千年以上前から活動する最悪の呪詛師とは思うまい。

 

 

「…少なくとも、呪霊の扱いに関しては捨て駒同然。どこかのタイミングで黒幕と呪霊の協力関係は切られる。呪霊側がこっぴどく振られる形で。」

 

 

「そう。黒幕はその後を考えてる。宿儺の完全復活という明確なゴールがあり、津美紀ちゃんたちの呪いはその練習とも考えられる。」

 

 

「練習にしては人数と規模もやけど手間かけすぎやない?わざわざ俺らから隠すあたり他の目的もありそうやけど。」

 

 

「確認した過去の術師の目的は様々。名を残したいというものもいれば、あーその、宿儺と結婚したいというものもいた。実力もまちまちともなればそこから目的を絞るのは厳しいね。」

 

 

ここにいる四人は己のために力を磨いてきた。出力される言葉には他人の名前が混じるかもしれない。しかしその本質は自己の能力の証明、理想の実現でありその過程に都合の良い大義名分があっただけである。でなければここまで強くなれなかったし味方から人でなしと罵られることはなかっただろう。

宝火は違う?他三人と比べたら奇麗だよね、ガワは。

 

 

つまり、自分の外に夢を見せてもらうという発想がない。自身の制御を外れた混沌を作るのではなく、今までの自分を台無しにしてまでもぶち壊し内に混沌を作ろうと考える。

だからこそ黒幕はこの四人を尊敬しているし嫉妬もしている。それは、自分が早々に諦めてしまったものであり、積み上げた千年の結晶はもはや壊せないものになってしまっていたから。呪霊に対してあたりが強いのも此処に起因するかもしれない。本人は否定するかもしれないが。

 

 

有りえたかもしれない自身の未来に目を焼かれながら、彼は思うのだ。流石は私の宿敵、希望だと。歓喜と少しの羨望と、それ以上の期待を抱いて計画を練り直す。この四人がもたらす嵐が己を打ち壊すことを。そしてそれに応えようと奮起する己を夢見て。

 

 

未だ誰も知り得ないことだが、黒幕の手段と目的は既に逆転している。この謀略の果て、小競り合いの末に残った呪術界の精鋭と相対する宿儺。その横にいる自身の姿を。

兆しはある。積み重なった自身の常識が壊される感覚が。そして確信している。一億呪霊などよりそちらの方がずっと面白くなることを。

 

 

「ん、ちょいごめん電w…あぁやっとか。待ちくたびれたわ。」

 

 

「え、何。何かイベント?僕も混ぜてくんない?生徒の成長のためにって自重したけど正直ウズウズしてたんだよね。」

 

 

「こればっかりはダメ。せっかく宝火ちゃんにも手伝ってもらって仕込んだんやから。」

 

 

「あ~、それ?まあ他所様の教育方針に口出ししないけどさぁ~。一応僕の教え子でもあるんだけど。」

 

 

「聞けへん相談やな。お願いするのは俺に対してやないし。ほな。」

 

 

そう言い残して禪院直哉の姿が掻き消える。残穢も音も足跡も残さない、洗練された呪術操作と特殊な歩法。この東京校から京都にある禪院家本邸まで約500km。今の直哉ならどれほどで着くのだろうか。

 

 

「やれやれ、今日のところはお開きか。先輩、この後一杯どうですか。梢子も呼んで。」

 

 

「五条不参加ならいいよ。それかソフトドリンク限定。」

 

 

「授業もないんだし実戦形式でやろーよ。飲みなんて何時でも行けるじゃん。」

 

 

「お前は自分の教え子を心配しろ。」

 

 

えー、と不満の声をこぼす五条。当たり前だが、誰も直哉の勝利を疑わない。だって無理じゃんと五条がこぼす。

 

 

「あんな状態でも平然と術式使えてるやつにどうやって勝つのって話じゃない?」

 

 

五条と宝火は眼で、夏油は帳からの情報で気づいていた。直哉の左目。今や組手以外で傷など追わなくなった直哉が珍しくつけていた眼帯の下。そこから、宝火と同じような呪力が巡っていたのを。

 

 

彼が知れば流石はと喜ぶであろうそこには、直哉が作り出した混沌があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

禪院家本邸、大広間。部屋の奥に当主である全員直毘人専用のスペースがあり、それを全員が聞けるようにと縦に長い形状になっている部屋。本来緊急の要件でも無ければ使用されないその部屋はー

 

 

「があぁぁぁぁ…!」

 

 

「大袈裟だな。たかが腕二本飛んだだけだろ。」

 

 

まさしく地獄といった様相だった。

蹲るのは禪院家次期当主候補、禪院扇と禪院甚一。そして禪院家の精鋭部隊「炳」と「灯」の面々。全員は部屋に入りきれず、幾人かは外の庭園に転がっている。四肢、または五感のうちいくつかの喪失といった共通点を持って。

 

 

途中まではいつも通りの日常だった。呼び出された真希に当主を差し置いて叱咤激励を浴びせる扇。何処か焦ったように唾を飛ばす扇とどこ吹く風の真希。そんな態度に痺れを切らしたのか、愉快そうにニヤついていた直毘人が思わず持っていた酒瓶を落とすほどに、見事に逆鱗に触れた。

 

 

ここで扇が幸運だったのは、かつての災厄のトラウマからか、明確な立場の違いに甘えず刀の柄に手を置き警戒していたことだろう。その甲斐が実り流麗に、そしてただ無機質に振るわれる殺意に反射し抜刀。致命傷になり得たそれを重傷程度におさえてみせたのだから。

 

 

そこからの対応は流石は一級術師と言えるだろう。自らの傷が戦闘継続に支障をきたすと判断すると術式を解放。真希に対して火炎を散らし牽制しつつ傷を焼き塞いだ。ここまで一秒足らず。あえて欠点を挙げるとすれば、相手が悪かったこと。

そして、一秒というのは、あくまで一級基準の考え方だったことか。

 

 

「乱心!真希がこの私に…傷を…」

 

 

当主候補と喧伝していたくせに我が身に危険が迫ると大声で助けを求める。そんな情けない姿をこれ以上晒さなかったことが扇に許された最後の幸運だった。炎を裂き現れた真希によって両腕を切り落とされた衝撃が恐怖を上回ったから。

 

 

仮に、扇に五条たちのような向上心があれば此処からの復活もあり得たかもしれない。実態のある炎など考え方によっては化けるポテンシャルを秘めていた。

しかしそれは仮定の話。自己保身の化身たる禪院扇はそのような器ではない。真希の理性によって生かされてはいるが、もはやご自慢の剣術も術式も振るえない。このあと生きながらえても、口から己を慰める言葉を垂れ流すだけの老骨となるだろう。禪院扇は確かに死んだ。

 

 

ここからはただの蹂躙だった。術式のあるなしに関わらず、皆恐怖して向かっていった。そして全て奪われた。無事なのは神妙な面持ちで当主の間に座る直毘人のみ。死んではいないが、誰も彼もこの先一人で生きていくのは不可能になる傷をつけられた。これからはきっと、見下していた非術師の助けを借りねば生きていかないだろう。加えて、禪院家の人間は非術師に助けられたからといって考えを改めるような殊勝な性格ではない。一生屈辱感に狂いそうになりながら生きていくしかないのだ。

 

 

扇にしてもその他の面々にしても、生きていくならの話だが。

 

 

「ん?なんか思ってたのとちゃうな。」

 

 

禪院直哉、現着。

 

 

「遅かったじゃねえかよ。次期当主サマ。」

 

 

「どの口が言うとんねん。俺の想定ならパパ以外死んどる筈なんやけど。まさか加減したん?何でそんな面倒なこと。」

 

 

「テメェを殴るまでは死ぬわけにはいかないんでな。呪術界を追われるなん「あぁそういう意味やなくて」」

 

 

「俺の面倒が増えるやん。」

 

 

パキリと軽い音が鳴った。何処から?当然、禪院直哉が足蹴にしていた禪院扇の首から。思わず動揺した真希だが次第に気づく。先程まで聞こえていたはずの呻き声と荒い呼吸音が全くしなくなっていることに。

 

 

「テメェ…」

 

 

「身内のいざこざが加熱して殺し合いに発展。なんて三流サスペンスやけどこの業界ならよくある話や。規模は大きくなったけど俺とパパがいるなら総監部も余計な口出しはせんしそもそもさせん。あとは適当に呪具を幾つか寄与すれば終わりやったんやけどなぁ」

 

 

「なんで生かしてたん?こんなドブカス共。真希ちゃんが思うほどこの家も人間にも価値ないで。」

 

 

真希の徒労を嘲笑うかのように言う。では実父である直毘人は生かすつもりだったのか。そんな訳はない。生きていれば使い道があるから助かるが、死んでいても問題はない程度だろう。此奴、いや此奴らに人間性を求めるなど無意味なのだ。

 

 

「テメェが言うと途端にジョークに聞こえるな。人でなしが人でなしを語るなんてよ。」

 

 

「誤魔化すなやカス。それとも、大切なのは建前でこんなドブカス共よりも価値なかったん真依ちゃんて。冷たいお姉ちゃんやなぁ。」

 

 

腸が加熱する。視界が狭まる。五感に感じるこの不愉快な部屋のことなどどうでもよくなる。此奴だったのだ。あのクソ親父が何処か焦っていたのも。唐突に真依の話を出したのも。理性のタガが外れる。代わりに吐き出す殺意に身をまかそうとしてー

気付けば部屋の外に身を投げ出していた。

 

 

「体も感情もマトモに扱えんとか。せっかくお父さんが宝火ちゃんまで呼んでくれたのに親孝行もできんなんてなぁ。」

 

 

「別に呪術の繋がりが全部やないやろ。体でも何でも使えたのに使わんで、自分の妹が何思っとるかも知ろうてせんで、それで逃げ出されたらキレるってもう八つ当たりやん。」

 

 

流れていく風景と痛みから自分が何処かへ蹴り飛ばされていることを自覚する。しかし静止する術を持たないまま、言葉だけが染みていく。

 

 

「妹のために強くなりたいとか思ってもその本人が望んでないならただの自慰行為やん。送った分返ってくるとか思ってたんなら笑えるわ。返ってくるよう努力もしてへんのに。」

 

 

「人でなしとか散々言うてたけど結局真希ちゃんも禪院の人間やったって話やな。あれだけ嫌悪しとって、高専で色んな奴と会っとって。結局変わらんで中途半端。」

 

 

「嫌ってた血のせいで雁字搦め。呪いから解放されたくせして考え方が術師ベースなんて、」

 

 

「真希ちゃんて本当に、不自由やな。」

 

 

「ーそうかもな。」

 

 

気付けば、離れにある訓練場まで来ていた。一通り話し終えた直哉が真希を蹴り飛ばし術式を終了させる。仕切り直しというのもある。それとも何処か似たものを感じたからか。かつての化け物と同じ気配を。

 

 

「なんかスッキリした顔やな。蹴飛ばしてる時に頭でも打ったか?」

 

 

「…あぁ、そうだな。」

 

 

直哉は移動中かなり呪力出力を抑えていた。加えて天与の肉体。今の真希にダメージの蓄積はほぼない。そしてこの開放感。改めてこの世界に生まれ落ちた感覚を覚える。五感によって送られる大量の情報と何でもできる気がする全能感と、こびり着く後悔。

 

 

「最悪の気分だ。」

 

 

天与の暴君、再誕。待ちに待った瞬間を迎えて、禪院直哉のボルテージが上がる。駆け回る呪力と吹き飛ぶ眼帯。その下から現れる目…目?

 

 

「…テメェイカれてんのか?」

 

 

「いい術師やろ?」

 

 

「浴」と言う儀式がある。蠱毒と似た形式であり、厳選された呪いによって呪物を生み出すもの。呪術界ではありふれたものであり、それだけでは言及するに値しない。

禪院直哉の場合は、壺が自身の体で、中の虫がはめ込んだ義眼だっただけのこと。高速戦闘下の情報処理のため直哉が考案した新たな形の「浴」。その実態は、本物の目を取り出し義眼をはめ、そこに濾した呪霊の血を目薬のようにさすというもの。メリットは好転的に呪眼を得られること。デメリットは儀式が完了するまで片目しか機能しないことと脳を貫くような痛みが一生続くこと。

 

 

現在の直哉の呪眼の完成度は七割ほど。戦闘を邪魔してしまう可能性もあるレベルだが、その不利を無視して直哉は笑う。何事もないように、赤色の目で真希を捉える。

 

 

良い術師ほどイカれている。

その考えに則るなら、この戦いの勝敗はすでに決していた。




直哉「昔のことは忘れて今に夢中になろう!(肉体言語)(お手本チラ見)」

という直哉先生のお言葉でした。実際のところは完全体の真希と戦いたいっていうエゴ丸出しのやつなんですけどね

ちなみに置いてかれた直毘人さんは死体の処理をしているので扇ハエルートはありません。意外と甘い直毘人さんですからねぇ、どんな顔して扇の死体を片付けるんでしょうか気になりますねぇ
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