前後編ぽくなってます
栄華呪法を宿した人間は、術式覚醒後まず二着の服と鋏を渡される。
呪具を作るという術式ゆえか、身に着けているものにも少しだが術式の効果が表れるためである。
その術式が重宝された時代。呪詛師や頭の回る呪霊に狙われてきた歴史をもつ泉家では同じ衣服を着まわすことで、その対策を取ってきた。
呪具となった衣服は普通の刃物など通さないため、鋏も同様に呪具化させる。毎日身に着け術式を行使し、成長すれば鋏を使って裁断し調整する、これを繰り返すことによって、術師としてデビューするころにはその身を守る立派な盾となるのである。
その効率は宝火も認めているところである。
当主になってまだ一年も経過していないころ。身内や召使など全く信用していない宝火がこの本家邸宅で爆睡を決められるのも、これによる恩恵のおかげである。
生半可な奇襲などたやすく対処できる宝火にとって次に恐れるべきは遠隔の呪殺であるが、此方もある程度までなら呪具化した衣服によって弾かれるのだ。
まだ当主になった件について御三家をはじめとした歴史ある呪術家系からの接触はない。せいぜいが手紙程度だ。歳を理由にしておけば、取り込もうとして来る輩以外は流せる。
その言い訳が通じなくなったときに相手をけん制できる手札が今求めているもの。止まるわけにはいかない宝火にとって、三歳のころから着続け今やつぎはぎになってしまった衣服と錆びた鋏は、彼女の今までの努力を示していた。
これが、一つ目のきっかけ。
二つ目のきっかけは縛りについて学んでいるときであった。
今まで後方支援に徹してきた過去の相伝術師は栄華呪法の効率を上げるための縛りとして、「作成した呪具を自分で使えない」などの縛りを結んでいた。
しかし宝火の目指す術師はそのようなものではない。よって、今までの相伝術師は参考にならず改めて縛りの勉強をしているときであった。
時間制限はシフトが一定でない術師に向かないし、回数制限も周りにある物を呪具にするという戦闘スタイルとかみ合いが悪い。
戦闘開始から三十分間のみとか一級呪具は一日五個とかかなー、でもいっぱい縛ってやりずらくなるのもなー、と頭を悩ませた経験。縛りについての知識が宝火の術師としての壁をぶち破る。
最もポピュラーで簡単でかつリターンが大きい縛り。それは自死を含んだもの。しかし宝火は呪具に自死など無いとこの縛りには興味を持っていなかった。
しかし二つのきっかけにより宝火に一つのひらめきが生まれる。多量の呪力を消費し生み出される呪具。
その大切な呪具を一回きりで壊れるようにすれば、絶大な力をもつのではないかと
本当ならばもっと洗練させてからお披露目するつもりだった。しかし状況は絶体絶命。他に現状を打破する方法がない以上かけるしかない。このような状況を打破するために力をつけてきた。
目の前の呪霊は此方をなめており隙がある。縛りの内容はある程度決めている。
攻撃の成否に関わらず一度振るうと壊れる縛り
外からの干渉に対してガラスと同様の性質を持つ縛り
ガラスのような見た目に変化し相手に此方の情報を教える縛り
今後調整は必要だろうが、目の前の相手程度なら十分だ。三つの縛りによって爆発するように膨らむ呪力を練り上げ呪具に浸透させていく。
呪霊がようやく異変に気付いたようだ。だがこの距離なら呪詞を詠唱する余裕もある。一遍も残さず消し飛ばしてやる。
「―妖光、鏡壁、運命の振子」
呪具が呪力を飲み込んでいく。収縮する呪力の嵐が収まったとき生まれるのは透明な力の塊。
呪霊もこのまま放置するのはまずいと感じたらしいが、もう遅い。
触れようと走ってきた呪霊にむけて一振り。伸ばし切った呪霊の腕と呪具が触れた瞬間、呪具が砕け、空間が歪み、呪力が黒く輝く。
呪霊はその形を一瞬も保てず、木々や山も吹き飛び、帳も破れる。
これが泉宝火の切り札。あらゆる障害の一切合切を打ち砕く、これまでの相伝術師がたどり着けなった新境地。
拡張術式「
遅筆にもほどがあるって話
真依について
-
クランクアップ
-
キャスティング