脳筋はゴリラ廻戦にて最強   作:藍嵐

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うーんこの遅筆


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力の信奉者

「はいおしまい。」

 

 

焦って踏み込んできた夏油にカウンターを食らわせる。彼の呪霊を粉々にして夜蛾先生に怒られて数週間。まさか近接戦を教えるような関係に収まるとは。

 

 

「いったん休憩だけど、同じような感じで組み手を続けようか。格闘技が得意でも対呪霊なら動きが大きく変わるからね。人のような形をしていても奴らには関節とか関係ないし。」

 

 

五条がまた任務先でやらかしたらしく、今日は一人なんですとお願いされた組手も既に一時間経つ。呪霊操術の使い手なら別に優先するものがあると思うが。

 

この前やりすぎたかな。

 

 

「宝火…さんは、どうやってこんなに強くなったんですか?」

 

 

「先輩でいいよ。強くなったってのは近接戦のこと?」

 

 

うなずく夏油に少し考える。数をこなしたからとしか答えようがない。

私は古くからあった呪術師の家系生まれ。夏油は一般の出だ。呪術戦の経験数など比べるまでもないだろう。まあ私の術式敵に近接戦しかできないというのもある。

 

 

あと格闘技をかじっていただけの後輩に負けたら死にたくなる。

 

 

組手で負けたことにショックを受ける夏油に対して返答を悩み、いい案が浮かぶ。

 

 

「悟から聞いたんですが、泉家は呪具の作り手としての側面が強く前線に出ることはほぼなかったとか。」

 

 

「そうだね、その認識で間違いないよ。実際実家には近接指南の人とかいなかったし。」

 

 

「それじゃあ…」

 

 

「まあ、実家にはいなかったけどさ、良い縁に恵まれてね。すごい速さで全方位から殴ってくる奴を相手にしてたら、誰でも強くなるさ。」

 

 

困惑顔の夏油を笑い飛ばしてさあ組み手再開と声をかける。

まあ何が何でも高専に入るとか言ってたし、来年のお楽しみってことで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つまらない、つまらない、つまらない。

 

 

大事な会議と聞いて渋々来てみれば、口を開けばどこぞの誰かが一級呪霊を単独で祓っただの悪名高い呪詛師集団を捕まえただの。

 

 

よくもまあ次から次へと言葉が出るもんだ。どれだけ言葉で着飾ったところで醜く肥え太った腹は隠れないというのに。というか体が資本の呪術師が太るなど訳が分からない。

 

 

此方がうんざりした顔で頬杖をついているのに見えていないのだろうか。他所の呪術師を散々貶した後にこれが続くとか何かの拷問とさえ思える。

 

 

時計を見れば三十分が経過したところだ。もういいだろうと席を立つ。

 

 

「直哉!どこへ行く!勝手に出ていくことは許さんぞ!」

 

 

「なんであんたの許しが必要なん。偉そうに命令すんなや。」

 

 

振り返ると青筋を立てて激昂する扇の姿。禪院家の次の当主の候補の二人。そこに明確な立場の差など無い。しいて言うなら年齢だろうか。直哉はまだ15歳だ。扇との経験の差

など考えるまでもない。

 

 

「自分のが上やとでも思っとるん。ハッ。あんま笑かすなや。」

 

 

だがそれがどうしたと本人に行ってやる。確かに経験の数は大きな差があるだろう。たがその質は確実に此方が上だ。そう確信できるほどの濃密な日々を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん。キミが噂の宝火ちゃん?」

 

 

最初の出会いは彼女が禪院家に顔を見せに来た時のこと。

彼女が当主になったことで無くなったが嫁入りの話を持ち掛けたのは泉家からなのだ。礼儀として禪院家にやってきた。まあ大人どもにいいように騙されて胎にされるだろうと思っていたので興味もなかったが。

 

 

顔合わせの場にいなかったので自分にはわからない。しかしそのような手を使ったのか、彼女を客人としてもてなすよう直毘人からお触れがあった。それが気になり自分がわざわざ見に来てやったのだ。

 

 

「そういう君は…誰?さっきはいなかったけど。」

 

 

「禪院直哉。キミの旦那さんになる予定やった男やで。なんで知らんの。」

 

 

「だって嫁入りのことも教えてもらってなかったから。」

 

 

この時点で一度興味を無くした。

まあ顔はいいし親がなんかごねたんやろ。嫁入りもいいとこに嫁がせようとしたとかやろし、今回一人で来たんは謎やけどまあもうどうでもいい。

 

 

ふーんと適当に返して彼女の部屋を去る。覚えておく必要もない女だ。自分はあの人みたいになるのに忙しいのだから。

 

 

そうやって忘れようとしたがその日の夜に再開した。さすがにまだ覚えていた。

 

 

「…何やっとんの。」

 

 

「ちょっと…お花摘みに…」

 

 

「そこ厠やなくて禪院家当主の部屋なんやけどね。」

 

 

まさか禪院家当主の首を狙う刺客だったとは。呪力を回し構える。父には自分が強くなるため、まだいてもらわなければいけない。

 

 

「あー違くて、別に命を狙ってたとかじゃなくて。」

 

 

「じゃあなんなん。それくらいしか用ないやろ。」

 

 

「…いや禪院家秘蔵の書物とががあるなら読んでみたくて。」

 

 

絞りだされた答えは到底納得できるものではない。構えは解かず視線で続きを促す。

 

 

「うちってずっと補助的な役割を担う呪術師しか輩出してこなかったからさ。私は前線に立ちたいんだけど、呪術戦の教本とかが無くて。」

 

 

「やから御三家の一つである禪院家の当主の部屋に忍び込もうとしたって?」

 

 

こいつ馬鹿すぎる。誰にも迷惑かけないからとか言っているがそうではない。自分がなにをしでかそうとしているかわかっていないのか。普通に遺言を残す暇すら与えず処刑されるぐらいには罪を犯している。というか護衛がいるだろうに、考慮していないのか。

 

 

「あんな、普通に考えて当主の部屋に護衛がついてないわけないやろ。ここに来るまでだって…」

 

 

途中まで言って違和感に気づく。そうだ、今いる位置から父の部屋まで廊下で一直線、距離にして約5メートルだ。護衛がこんなところまで近づくのを許すわけがない。

 

 

「…誰かと会ったやろ。口元隠して呪具使うやつ。そいつらどうした?」

 

 

「…殺しては…ないから。」

 

 

つまりこの餓鬼は、訓練された禪院家の呪術師に勝ったのだ。応援すら呼ぶ暇を与えず、屋敷の人間に悟られずに。

 

 

そんなことができるだろうか。この禪院家の屋敷には多くの呪術師がいる。大きな呪力の流れを感知すれば寝ていても飛び起きてくるだろう。それほどの、一流の呪術師達が気づかぬほどの洗練された呪力操作。一体どれほどの鍛錬を積めば…

 

 

恐ろしい。手が震える。自分以外があの人に近づいていくという事実に。ここで殺さねば。あの人と同じ側になるのは自分でありこいつであってはいけない。

 

 

だが気持ちとは裏腹に、自然に重ねてしまう。こちらの気持ちに気づかず呑気に首をかしげているふざけた様子とあの人の傍若無人な立ち振る舞いが重なってしまう。

 

 

自分では…勝てない。

 

 

…いや違う。これは幸運だ。目の前にいるのは大きな潜在能力を秘めた女。そうだ、こいつを使えばいい。そうして、こいつから生み出されるもの全てを吸収して、最後に殺せばいい。

 

 

「…まあ、殺してなくとも大問題やな。言い訳する暇もなく一家丸ごと打ち首やろ。」

 

 

女が焦っている。そうだ、これは幸運だ。これを生かさない手はない。こいつの記憶を消せばワンチャンとか呟いているうちに畳みかける。

 

 

「やから交換条件や。ボクはこのことについて黙っといたる。なんならお目当ての書物も探したるわ。」

 

 

「代わりに、全部ボクの横でやれ。それが条件。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つい思い出にふけってしまった。しかしあの頃の日々はそれほどに輝かしいものだった。

 

 

殺してやるなんて考えていたのも最初の話。古くからある呪術家系に生まれのくせに俗世に染まっていた彼女に、自分も染められてしまったなとぼんやり考える。

 

 

勿論鍛錬はしていた。軽い組手から術式を用いた実戦形式のものまで。最初は弱かった彼女も自分との戦いの中でみるみる成長していった。日々手ごわくなっていく彼女との研鑽はとても充実したものだった。

 

 

だがそれ以外。テレビゲームや安っぽいお菓子もあの子との日々を彩った。禪院家では絶対触れられないであろう品々。テレビの中だけのヒーローや百円以下のキャンディーが自分のかび臭い世界を押し広げてくれた。

 

 

禪院家の人間に言えばそんなもので強くなるわけがないと怒鳴り散らすだろう。そのたびに笑ってやる。だからお前たちは弱いのだ。同じ術式でも使い手によって千差万別。その違いを生む鍵は何処に落ちているかわからない。

 

 

「聞いているのか直哉!!貴様ふざけるのも大概にしろ!!!」

 

 

そうだ忘れていた。こいつがいたな。自分の父の直毘人に呪術師として優っているところがないくせに、自身が当主になれなかった理由を常に外に置いている男。

 

 

率直にって論外だ。自分を慰めるのに必死で停滞している男など何の価値もない。

 

 

「聞いてるか聞いてへんかで言えば聞いてないで。聞いたところで何の価値もないし。」

 

 

「なんだと!!!自分の胎も満足に管理できん男が偉そうな口をきくな!!!」

 

 

「…その胎って宝火ちゃんのこと言うとんの?」

 

 

「それ以外におらんだろう!!!よその女に現を抜かすなど、禪院家当主候補が聞いてあきれるわ!!!」

 

 

驚いた。まさかこの男からあの子についての話題が出るとは。そして同時に哀れだ。

この叔父は、泉宝火の力に気づいていない。ここまでくると怒りも湧かない。

 

 

「叔父さんからあの子の話が出るなんてな。もしかして狙っとん?釣り合わんから止めといたほうがいいで。」

 

 

分かっていないなら教えてやる。お前は、胎と見下したあの子よりも下なのだと。

蔑みながら、口元を歪ませながら、馬鹿めと笑ってやる。

 

 

「貴様!!!!」

 

 

そら顔を真っ赤にしながら刀を抜いてきた。なんともわかりやすい男だ。

術式も発動しているが何の問題もない。この程度なら幾度となく交わしてきた。

 

 

術式を発動させ一歩下がりながら跳躍。そのまま宙を蹴り加速。

 

 

驚愕を浮かべる顔に向かって勢いのまま飛び蹴りを食らわせてはい終わり。

この程度の男との戦闘など一秒もかからない。

 

 

「一つ教えといたるけどな、ボク以外の禪院家総出であの子に向かって行っても傷一つつけられへんよ。」

 

 

まあ聞いてないか。伸びている男を無視して自分の部屋に戻っていく。

もう時間がないのだ。高専に入るまでもう一年を切った。会えていない間にもあの子は強くなるだろう。

 

 

「あの子の横に立つんはオレや。」

 

 

これは約束。自分勝手に生きるあの子を縛るために結んだ大事な呪い。

ボクはこの呪いを背負って一生生きていく。そうあの子と自分自身に誓った。

 

 

怯える見物人共に向けて言ってやる。あの子はオレものだ。

 

 

「やから、あんま邪魔すんなや。カス共。」




といった感じでうちの直哉くんです
いや作者の一番好きなキャラなんで強さモリモリにするつもりです


隣に脳筋いたらまあ移るよねって話

真依について

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