元勇者の先生日誌   作:Ruve

16 / 26
間章 穏やかな時間
平和な一日


 その日、シャーレでのこと。

 

 早瀬ユウカはリーリァに会うために、シャーレへと訪れていた。部室のある階へ向かうためにエレベーターへ乗ろうとして、ボタンを押す指が衝突する。

 

「あっ、ごめんなさい」

「……?」

 

 その人物を見て、何処かで見たな?と感じ少し固まってしまう。

 

「いえ、私の方こそ」

 

 シャーレ内で他の生徒と会うこと自体はそれほど珍しいことではない。一般開放されているフロアがあるためだ。例えば図書館や体育館のような学校らしいエリアもあれば、コンビニやゲームセンターなど幅広い施設が用意されている。

 それはともかくとして、エレベーターが来るのを待ちながら、頭を回転させる。割と最近見たはずだ。確かこの人は……そうだ、アビドス廃校対策委員会の十六夜ノノミだ。

 先生に頼まれて調べ物をしている時に、その顔と名前を見たのだ。

 

「……十六夜ノノミさんで合ってます?」

「え?私のことを知ってるんですか?」

「ええ、先生に頼まれてアビドスのことを少し調べていてね」

 

 話しながらも到着したエレベーターに乗り、行く先を尋ねてみるとどうやら彼女も先生に会いに来たらしい。

 

「私は早瀬ユウカ、ミレニアムサイエンススクールのセミナーよ」

「あのセミナーですか!?……あれ、何処かで聞いた気がしますね、ユウカさんのこと」

 

 ノノミはうーんと考えてから、そういえばアビドスの土地がカイザーに買われているという情報をくれたのは彼女だったと、先生から聞いたことを思い出す。

 

「もしかして、土地の件で……」

「ええ。助けになったようで何よりよ」

「ありがとうございます!」

 

 エレベーターはぐいーんと昇っていき、長話する間もなく到着する。

 

「別に、シャーレの部員として手伝っただけよ。それより、1つ聞きたいことがあるんだけど」

「何ですか?」

「先生がアビドスに向かってから、やけに大きい額のお金が動いてるのよ。それも現金で。モモトークで聞いたけど返事がないし、こうして聞きに来たんだけど」

「うーん……あのことでしょうか?」

 

 ノノミが思い出すのは、先生が柴関ラーメンへ建て直しのための資金を出したことである。シャーレからの経費として落ちたのかと考えていたが、思っていただけで確認していない。

 あとは、便利屋68に依頼していたらしいけれど、そちらはどれくらいの額で雇ったのかは知らないのでノーコメント。

 どちらにせよ、もう目の前にいるので聞けばいいだけなのだが。

 

「おはようございます、先生☆」

「おは………ユウカ?」

「おはようございます。ええ、私です」

 

 部室に入ると、パソコンに向かって何かの作業をしていた先生の姿。……呼んだ覚えのない人物を前に、目を丸くしていたが。

 

 

ーーーーー

 

 

「はい!?」

 

 ユウカの怒号が部室に響く。

 おかしい、全て包み隠さず話したのに何故私は怒られているのだろうか。

 うん、いや本当は分かるよ。 

 

「あれ、全部先生のポケットマネーだったんですか……?」

「だからそう言って」

「おかしいと思ったんです!経費として落としていないですし!」

 

 むしろ、何故ユウカはそれを知っているのか聞きたいくらいである。

 

「いやあ、便利屋への依頼料はともかく、店に出した分は経費として落とせないか相談してみたんだけどね……」

「……そうなの?」

「そうなんだけど、ほら。アビドス対策委員会の承認、あれ無理やり通してもらったのもあってさ」

「却下された、ってことですか?」

「うん。関係のないことの筈なんだけどね」

 

 本来は関係のないことなのだ。しかし、対策委員会の承認をあの早さで、しかも朝に承認してもらうというのはだいぶ大変な行為だったらしく、報酬という形で分どられたことになる。

 まあ、結果としてアビドスを守れたし、1月分食費を我慢すればいいだけなので大したことはない、多分。

 

「……先生、これ」

 

 ユウカがゴミ箱を確認して、とあるモノを取り出していた。もやしの袋である。

 

「もやし、もやし、もやし……もやしばかりじゃないですか!?」

「わあ、限界ギリギリですね☆」

「ほんとに限界すぎでしょ!?」

 

 当然ながら全く腹は満たされないが、最近柴関ラーメンを食べたし案外問題ないものだ。数日水以外まともに取れなかったこともあるし……

 

「いや、私は大丈夫だよ」

「何処がですか!?」

「見ての通りピンピン、超元気」

「そうには見えませんけど……?」

 

 そうかな。私普通に元気なんだけどなあ?

 抗議しようとした所で、ノノミがガサガサと何か取り出す。それは一度だけ見た記憶があるものだった。

 

「先生、私が奢りますよ」

 

 ゴールドカードである。

 ……そういえば、何で持ってるのか聞くの忘れてたっけな。

 

「うーん、別にいいよ」

「駄目です。先生が空腹で倒れたなんて聞いたらホシノ先輩が悲しみます」

「え〜?じゃあさ、そのゴールドカードが何か教えてよ。知らないカードで奢られるの怖いし」

 

 努めて軽いノリで聞いてみる。こうやって取り出している以上、そこまで必死になって隠したいものではないとは思うのだが、しかし事情を知らない以上は地雷を踏んでしまう可能性もある。

 そんなリーリァの反応に、ノノミはそうですね……と呟いてから、話し始めた。

 

「私、こう見えてもお嬢様なんです☆」

「……」

 

 それは、まあ、そうなんだろうけど。まさか裏社会に繋がりがあって、黒い理由のあるカードである……というのは無いだろうし、そうなるとシンプルに金持ちであるというのが納得の行く理由になる。

 

「驚かないんですね?」

「人は見かけによらないってのはよく知ってるしね」

 

 かくいうリーリァも一応は姫様である。ついでに勇者である。しかも先生やってる。

 その上で、そうだと言われてもピンと来ないであろう容姿の、何処にでもいる……とまでは言わなくても、髪の色が派手な点を除けば普通な容姿である。

 

「セイント・ネフティスって知ってますか?」

 

 聞いたことのない固有名詞である。チラリとユウカを見てみると、コホンと咳払いを1つ。

 

「アビドス発祥の大企業です。カイザーグループよりは小さいですが、比較できる程度には大きいです。でも、ネフティスって……」

「はい、鉄道事業の失敗で、アビドスの衰退に大きく関わりました。……ホシノ先輩は、そんな私でも受け入れてくれました」

 

 なるほど、単なる大企業ではなくアビドスと因縁のある企業か。

 しかし、よくホシノが受け入れたものだ。ノノミはユメについて知らないということは、2人があったのはユメがいなくなってからのはず。その頃のホシノがどうなのかは分からないが、隠しきれてない攻撃的な部分とネガティブな思考、そしてユメについて話してくれた時の態度からしてあまりいい状態ではなかったことは予想できるけど。

 ……だからこそ、ノノミが受け入れられたのはそういう背景の問題ではなく、()()()()()()なのだろう。

 

「返済に使ってない理由は……多分、言わなくても分かりますよね?」

「うん。ネフティスの資金で借金の大部分を返すのは、アビドス高校をネフティスに渡すのと大差ないからね」

 

 まあ、多分だけど。ノノミがこれで返済できると主張して、ホシノが蹴ったんだろうなと思う。

 そのことに気が付かないほどホシノも頭が悪いことはない。むしろ回転は早い方だと思う。

 

「……確か、アビドスの借金ておよそ9億ですよね。ノノミさんが使えるだけでもそれだけの額が?」

「はい。まあ実際にそれだけの額を使ったりはしてませんが……」

 

 と、ノノミは主張しているが、ダンベルを大量に買ったりと割と変な使い方をしていることはこの場ではノノミ以外は知らない。

 

「ですので、もちろん先生のお昼ご飯にも使えます☆」

 

 そして話は1周して、スタート地点へ回帰する。

 そもそもがそういう話だったので、それは仕方がないことである。むしろ、ノノミの話を聞く代わりに素直に奢られるという交渉をしたのだからそれは甘んじて受け入れるべきだ。

 

「まあ、私の用事は済みましたので、これで……」

「待ってください。ユウカさんも一緒に食べませんか?」

「えっ、私?」

「はい、お礼も兼ねてということでどうですか?」

 

 うむむむと、ユウカは停止する。思ったより早く用事が片付いたので、ご飯を食べる程度の時間は存在している。

 ただ、同時に1つ考えることがある。先生の食事の好みについてだ。これまで見てきた弁当などの傾向を見る限り、あまり拘りがあるようには見えない。普通にバランスの取れているものを選んでいるからだ。

 それならそれでいいのだが……あまり、ガッツリ食べられると、体重が心配になるのだ。

 でも、一緒に食べる機会ってそんなにないし、折角だからいいかと心配を蹴り飛ばして。

 

「ええ、問題ないわ」

「ふ〜ん?」

 

 リーリァの視線がユウカを捉える。……ニヤケ顔で。

 

「な、何ですか?」

「なんでもなーい。じゃあ早速行こうか」

 

 時刻は10時。朝にしては遅く昼にしては早い時間だが、まあもやししか食べてない彼女からしたらそんなのは関係ないのだ。

 やっていた資料の作成をキリのいい所で止めて、ついでにスーツから適当な私服へと早着替え。見慣れないリーリァの姿に2人は珍しいものが見れたとこっそり満足。

 

 ところで、シャーレは何処にあるのだろうか。

 答えはD.U.という地区である。ならD.U.が何かという点は、凄いざっくりした言い方をすれば連邦生徒会の自治区ということになる。そして厳密な言い方をするならどの学校の自治区でもない、ということでもある。

 例えるなら、キヴォトスの首都と言ってもいいではないのだろうか。サンクトゥムタワーやシャーレ、ヴァルキューレ警察官学校の本拠地、そういった主要な施設もある重要な地区である。

 そしてそういう場所なので、当然食事ができる場所も多くある。さてどれにしようかと悩む……ことは、なかった。

 

「いやー腹満たすならここでしょ」

「……」

「……」

 

 リーリァが選んだのは、牛丼のチェーン店である。D.U.の外でもよく見る、安くて手軽で量もある、有名な店ではある。

 ……あるの、だが。

 

「え?ほんとにここです?」

「その……もう少し高い所でも大丈夫ですよ?」

 

 絶賛減量中のユウカはまさかのチョイスに固まり、ノノミは値段を気にしてここを選んだのかと考える。

 

「え?」

「えっ?」

「……え?」

 

 そして全員、思考がすれ違う。

 

「え?嫌だった?あたしは好きだけど」

 

 あまりのすれ違い方に、リーリァが()()()一人称で話してしまっていることに誰も気が付かない。本人含めである。

 

「私も嫌ということはないですけれど、良いんですか?」

「やー、あたしは好きで選んだからね。辺に高いやつよりも、ほどほどに安くて味付けが大味なやつの方が美味しいもんじゃない?」

「確かにそれは分かります!高いものが美味しくないということは無いですが、普段から食べるにはちょっと上品な味付けというか」

「……」

 

 そして、リーリァとノノミのすれ違いが解消されていく中、ユウカの頭の中では"計算"が行われていた。

 キヴォトス各地にある有名なチェーン店であるので、新作でもなければメニューは把握済み。当然カロリーも把握済み。もし今日食べれば以降どれほどの我慢が必要になるのか、それが先生と食事できるということと天秤にかけられるものなのか、頭の中で電卓を物凄い勢いで叩く。

 叩いて、叩いて、そしてついに叩き壊した。

 

「なら、ここにしましょう」

「……へ〜」

 

 またもやリーリァがニヤニヤしていたことは、気にしないでおく。

 店内に入ると、少し騒がしかった。何がどう騒がしいかといえば、入店したのに気がついた店員が少しバタバタし始めたことである。

 

「何か忙しそうですね?」

「まーね」

 

 リーリァは毛ほども気にしていない様子。まるでその理由を知っているかのようだ。

 その店は店内にあるタブレットから注文する方式である。ノノミの奢り、つまり一括での支払いなのでまとめて注文することになるのだが、ユウカとノノミはその画面を見て固まる。

 

「……先生?これ、打ち間違えてますよ?」

「合ってるから気にしないで〜」

「い、いやいや、いくらしばらくもやしだったとはいえこれは食べ過ぎじゃないですか?」

 

 ユウカは定食を1つ、ノノミは牛丼を1つ、そしてリーリァは……牛丼が5つである。

 

 5つである。

 

「まああたしはね、食べられるのよ」

「え、ええ……?」

「なんならもう少し頼むし」

「ええ……?」

 

 さっき叩き壊した電卓を用意し直して、リーリァの頼んだ牛丼5杯分のカロリーと、それを消費するために必要な運動量をサッと計算する。

 

「……ほんとに?ほんとに食べるんですか?その、カロリーとか……」

「気にしない気にしない!どうせしばらくまともに取ってないし」

 

 ノノミは1つ考える。ホシノ先輩に、リーリァを食事に誘うなら気をつけた方がいいという話を持ち帰った方がいいだろうかと……

 それから少しして。量的に当然ユウカとノノミの方が先に食べ終わり、残りは談笑しながらもリーリァの食べっぷりを見ていた。掻き込む勢いで、いやもう吸い込んでるかのような勢いでガツガツと食べていく。

 なるほど、店員がザワついたのは、これが1度目ではないからなのだろう……

 

「アビドスでもこんな感じ……ではなかったのよね」

「初めて見ました。柴関ラーメン……アビドスにあるラーメン屋なんですけど、そこでも大盛り1杯だけでしたし」

「どうなってんのよ、あのお腹……」

 

 ゲーム開発部でチラリと見たピンクでまんまるなやつを、なんとなく連想する。いや、流石にそこまでは食べないか。

 そして、リーリァが4杯目を食べ終わると同時にまたタブレットを触りだした。もう少し頼むと言っていたけど、はて何を……と注文の履歴を見てみると、追加で牛丼3杯である。

 

「……」

「……」

 

 2人は顔を見合わせる。

 

「せ、先生?ほんとにこんなに食べるの?」

 

 食べる手を止めて、答える。

 

「ほんとは5杯にしようかと思ったけど、いやー久々に沢山食べたからかちょっと厳しそうでねえ」

「………はあ?」

 

 そこまで行くと2杯分とか変わらない気がするのだが、とツッコもうとしてやめる。もう未知の世界に入っているのだから。

 

「でも、そう考えると先生って相当我慢してたんじゃないですか?」

「確かに。普段からこの量、っていうのも違いそうですし」

 

 ユウカはシャーレの金の動きは定期的に確認しているのだが、それらしいクレジットの消費はあまりしていない。見返せば1回か2回くらいあるかもしれないが。まさかこんな食べるとは知らなかったし。

 そんなこんなで計8皿が机の上に置かれる。本当に食べきってしまった、その事実に頭を抱える。

 

「いやー、噂の大食漢の正体が先生なんてねー?」

 

 すると横から誰かが声を掛けてきた。小柄な体型にふわふわのツインテール、尖った耳にトカゲのようなーー或いはドラゴンのようなーー尻尾が生えている少女。

 私服のせいで気が付くのが遅れたが、よく見れば連邦生徒会所属の由良木(ゆらき)モモカである。

 

「あれ?モモカが外で食べるなんて珍しいじゃん」

「ここにとんでもない大食漢が現れると聞いて、見に来たんだけど」

「なるほど?それはいいけど仕事したら?リンに怒られるよ」

「あー、それなんだけどね。ちょうど先生にお願いしたい案件があってさー」

 

 リーリァとモモカの態度を見る感じ、そこそこ仲はいい様子。シャーレは一応連邦生徒会所属の組織ではあるし、何かと交流があるのだろう。

 

「ここの道路が不良共に占領されてさ、しかも動ける人がいないんだよねー」

「そんな急に頼まれても、こっちも動ける人いないけど……」

 

 リーリァがチラリと、ノノミとユウカを見る。

 

「私は大丈夫ですよ!元々手伝いのために来ましたので」

「でもノノミだけだとキツいでしょ。誰か前衛張れる人いないと」

 

 今度はユウカだけを見る。

 

「い、いや私は……」

「ふーん?」

 

 モモカはニヤニヤと笑い3人を見て、それじゃ頼んだよ〜と言って離れていく。

 

「よし、行きますか」

「待って、私はまだ」

「いやいや、朝からこっちに来れるくらい暇だったんでしょ?シャーレの部員1号として頑張ってくれたまえ」

「も、もう!」

 

 食べた分の運動ができるということで、諦めて付き合うことにした。……ノアには一言連絡入れておこう。

 

 

ーーーーー

 

 

 戦闘は滞りなく終了した。ノノミのミニガンの制圧力は流石といった所である。

 そして昼過ぎ、シャーレに戻りモモカに連絡だけ入れて終わる。

 

「あーあ、結局色々出来なかったし」

 

 食後の運動にはちょっと物足りなかったな、とは思いつつも不良の掃討が無事完了したことには安心する。ただ、元々やろうと思っていた仕事が終わらなかったことだけは残念だ。

 

「この仕事、どれくらいの給料になりますかね」

「さー?連邦生徒会次第でしょ」

 

 リーリァと同じくノノミもピンピンである。ユウカが視線を引くように上手く立ち回ったお陰で景気よくぶっ放せたのだ。

 

「はあ……」

 

 そして、囮役という疲れる役回りをしていたユウカは疲れ気味である。セミナーの方をほっぽってしまったという点も含めて、色々と疲れ気味。

 

「……あ、そういえばですけど」

 

 疲れて回転が鈍っている頭ながらも、1つ確認してなかったことを思い出した。

 もやしを食べていた限界リーリァなのだが、実はそこまで金が底を尽きている訳ではないーー計算通りならーーのだ。

 

「まだ少し貯金がありますよね?なのにどうしてもやし生活を?」

「ん?……いや、何で知ってるのさ」

 

 むっ、とした顔になってから、まあ隠すようなことでもないかと思い直す。

 

「水族館のチケット2枚分、残しておかないといけないからね」

「はあ……?」

 

 何故に水族館、しかも2枚。……いや、この趣味無し人間が身を削ってまで残している資金で水族館。いやいやまさか。

 

「……!」

 

 デート。どう考えてもデートではないかそれは。

 

「ホシノ先輩を誘うんですね☆」

「うんうん、ノノミにはバレるかあ」

 

 小鳥遊ホシノ。現在のアビドス高校では唯一の3年生。まさかそんなに仲良くなっていたのか……!?

 そんなユウカの内心を知ってか知らずかあっけらかんとリーリァは言う。

 

「別にデートとかじゃないよ。行きたそうにしてたけど、アビドスには金銭的な余裕はない。だから誘っておこうかなって思っただけ」

 

 そう、デートな訳ないのだ。生前好きだった男を、まあ色々理由あったとは言え突き放し続けた純情お馬鹿女のリーリァという人物が、そんな気軽にデートなんてできる訳ないのだ。

 ……というのは本人の主観であり、その事情を含めて客観的な視点で見ればデートのようにしか見えないが。

 

「ふふっ、これは……」

「もちろん言っちゃ駄目だよ?」

「はーい☆」

 

 そこまでむむむとしていたユウカは、そもそも何故リーリァがデートをするということにここまで動揺しているのかと思考を切り替える。別にそれで危険がある訳でもないし、好きな人が出来たとしてユウカ自身にとって悪いことは……

 ない、筈だけど?

 

「よし、もう時間だしノノミもユウカも帰っていいよ。急な仕事だったし、連邦生徒会にはそれなりの給料出すように言っておくからさ」

「あまり期待はしないでおきますね」

「ちょっと、それは酷くない?」

「だって、生徒には甘いじゃないですか」

「それとこれは違うよ……ってユウカ?さっきからやけに静かじゃない?」

 

 2人の視線はユウカへと。

 

「いえ、その……少し疲れただけです。もう、こんな時間まで拘束された訳ですし期待はしておきますからね」

「そもそもユウカが勝手に来たじゃん」

「それはそうですけど……はあ」

 

 そしてノノミとユウカは帰っていく。

 リーリァは椅子に深く腰掛けながらも、こんな日常のような日々が続けば楽なんだけどねー……と、叶わない願いを考えていた。




あとがき

ザ・日常回です。アビドス編で金ばかり出したリーリァの顛末、そんな話でした。
日常回ということで、リーリァもvol1の時よりは気が抜けているイメージです。ここまで描写してこなかったんですが、実は大食いキャラなんですよねリーリァさん。これを執筆してる途中で公開された、すかすか10周年のも読ませてもらったんですけれど、現パロでもあの食事量なのでもう勇者とか関係なく大食いキャラなのは固定なんでしょうね……
ちょっと文章量が少なめだったですが、関章の間はバラつくと思います。書きたい内容を考える→最低限の登場人物を考える→実際に書きながら肉付けするって順番でやってるので。
というわけで暫くは小話をお楽しみください、みたいな感じです。ではまた次回!

……ユウカとノノミにしたのは、現時点で登場しているキャラで太ももが太そうなうわなにをするやめ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。