元勇者の先生日誌   作:Ruve

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大和撫子の修行

 その日、ミモリがシャーレの当番として来ることになった。曰く、花嫁修業の一環としてシャーレの当番も行いたいとのこと。

 ……シャーレとしては生徒が当番になることに何も問題はないのだけど、私相手に花嫁修行ってどうなの?

 と、思ったがそこは飲み込んだ。そもそも彼女は修行部なのだ。あまり気にしすぎてもしょうがない。

 

「おはようございます、先生」

「ん……おはよ」

 

 時刻は6時。就業前である。

 場所も休憩スペースであり、朝食の準備をしようかなと思っていた所だ。

 

「早くない?」

「……その様子なら、朝食はまだですよね?」

「まあ、そうだけど」

「それでは、先生。席におかけください」

 

 ……んー?まさか、朝食を用意してくれたのか?

 確かに花嫁修行だとは言っていたけれど、そこまで力を入れているのか。なるほど、修行部の名は侮れない……のかもしれない。

 

「私のお手製サンドイッチです」

「おー」

「朝ですので、胃に負担をかけないように材料にも気を遣ってみました。脂っこいベーコンの代わりに、レタスとハム、それに卵をベースにしつつ、味の濃いソースに代えて、醤油をさっと塗って焼いてあります」

「……おお?」

 

 もしかしなくても結構気合いれて作ってます?

 元勇者の胃としてはもっとがっつりでも良かったのだが、まあ一般的な胃が相手ならこれくらいが丁度いいだろう。

 

「本当はお味噌汁と焼き魚で伝統的な朝食を作りたかったのですが……」

「それなら、先に言ってもらえば次は待つよ?」

「本当ですか?次が楽しみです」

 

 まあ、セリカとかラーメン作るし。こちらから強制はもちろんしないけれど、ミモリが作りたいと言うのなら遠慮する理由もない。

 と話しつつも、パクリと一口食べてみる。……さっきも言ってた通り、味はあっさりめだな。でも味がしない訳じゃない。むしろ程よい主張のおかげで食べてるって感じする。

 

「ポットに入れてきた温かい茶もありますよ」

「……」

 

 もぐもぐ。かぽっ。ごくごく。

 

「どうですか?」

 

 期待半分、緊張半分といった様子で尋ねてくる。

 どうなんだろう、思ったことを率直に言っていいものか。修行なんでしょこれ。

 ううむと少し考えてから。

 

「うん、美味しいね。まあ私個人としてはもう少し濃い方が好きだけど、これくらいの方がいいって人の方が多いでしょ」

「先生は濃い方が好き、ですか」

「まあ私はね」

 

 落胆させてしまうのではないかと少し心配したが、むしろ興味深そうに観察していた。

 なんだ、私は珍獣にでもなったのか。

 もぐもぐ。

 

「ごちそうさま」

「お粗末さまでした」

 

 ……なんだろう、こうしていると本当に夫婦みたいだな。いやそもそも女同士だし夫婦ってのはないと思うけども。

 

「それでは、先生」

「うん?」

 

 ミモリは両腕を広げる。まるで飛び込んでこいと言わんばかりに。

 

「お仕事前のハグです」

「……」

 

 本当にそうだった。

 いや〜、私は別にハグとかするつもりないけどな〜?

 

「お仕事に行く前のエネルギーを補充するための、オキシトシンハグです」

「……」

 

 いや、なんかそういう文脈なんだなってのは分かるけども。

 

「ふふ、先日ネットで見たのです。大和撫子は普段からこうしていると」

「ネットねえ……」

 

 情報源がネットという時点で信頼度は低いのだが、それ以上にこれをやるとしたら本物の夫婦くらいだろう。

 

「……もしかして、私、間違えてるのでしょうか?」

「いやあ、私たち夫婦どころか付き合ってもないし」

 

 微妙な空気が流れる。

 

「その、先生は……私とハグするのが嫌ですか?」

「……嫌、ってのとは違うけど。ああもう!」

 

 がっと飛びついて、思いっきりハグをする。別に悪いことじゃないし、善意でハグしようとしてくれてるの断りにくいじゃん!

 

「わっ!……うふふ、ぎゅー……」

「……はい、ここまで!」

 

 そして離れる。……なんか、女として負けてる気がして、なんだろう。なんだろうねこの胸の虚しさは。

 

「先生、お顔が真っ赤ですよ?」

「ああもういいから上行くよ!」

 

 もちろんミモリは当番なので、一緒に行くことになるのだが。

 

「先生」

「何?」

 

 エレベーターの中で2人きり。文字通り逃げられない状況で、ミモリが話しかけてくる。

 

「もしよろしければですが、先生の悩みを聞かせてもらえませんか?」

「そんな分かりやすい?」

「以前にお会いした時より隈が増えてますので」

 

 ……なるほど、そう来たか。確かに最近寝付き悪いかなとは思っていたけれど。

 

「んー、悪いけど……これはちょっと話せないな」

「無理にとは言いません。ですが……先生の心の健康を守るのも、大和撫子の役目だと思っておりますので」

「ありがと」

 

 なんというかもう、生徒に心配されるのは慣れてきた。いや、慣れるほど心配されてるのも先生としてはどうなのって話なんだけども。

 

「大丈夫ですよ、先生がお望みならいつでもハグは受け付けてますので」

「いや、それはいいよ……」

 

 それは、私ではなく将来の夫にでもしてあげて、と思うのだが。

 

 いつもの長いエレベーターから降り、それから事務室に入って、違和感。

 

「先生、どうかしましたか?」

「……いや?」

 

 別にいつもみたいにさっさと暴いてもいいのだが、今日はミモリがいる。ミモリが気がつくかどうか試してみるのもいいかもしれない。

 

「さて、まだ少し時間には早いけどどうする?私は始めちゃうけど」

「私もお手伝いしますよ。その為の当番ですから」

 

 ふふ、とミモリは笑い準備をする。時間外労働にならないだろうか、これ。とか割とどうでもいいことーーどうでもよくはないんだけどーーを気にしつつ、壁をチラリと見る。それからミモリの様子を見るが、どうやらまだ気付いてない様子。

 いつもすぐ見つけてしまうからか、段々隠れるのが上手になってる気はするが……さて、ミモリ相手には何分持つのか見ものだ。

 

 

ーーーーー

 

 

「うん、そう……ここは……」

「はい……」

 

 30分経過。特にお互い変なこともなく、作業を進めていく。

 

「ササッ……」

 

 この間、特にミモリからのツッコミはなし。隠れてるのも堪えられなくなってきたのか、ついに動き始めたのだが。

 

「……」

「先生?」

「いや、その……ほんとに気付いてない?」

 

 小声でミモリに聞いてみる。

 

「もしかして、イズナちゃんのことですか?」

「……あ、うん」

 

 気付いてた。いや気付いてたうえでスルーしてたのか。いや、いいのかそれで!?

 

「ふふっ……いえ、イズナちゃんとかくれんぼしてるのかと思いました」

「あながち間違いじゃないんだけども」

 

 と自然な様子で喋りながら隠れてる人物……イズナの元へ近づいていって。

 

「そりゃ!」

「わーっ!?」

 

 壁を模した布を引っぺがすと、バレてないと思っていたのかびっくりした様子のイズナがすっ転んだ。

 

「おはようございます、イズナちゃん」

「お、おはようございます……?」

 

 ぐるぐる頭に輪っかを浮かべてーーいやいつもヘイローは浮かんでるけどそうではなくーー話しかけて来たミモリに挨拶。

 

「はっ!?気付かれてないと思っていましたが、一体いつから……!?」

「最初から」

「ふふ、最初からです」

「そんな!?」

 

 どうやらミモリも最初から気が付いてたようだ。……まあ手とヘイローが見えてたしなあ。

 さっきの反応からして、どうやらお互いにいつ気がつくのかと思って黙っていたことになる。これは、なんというか……30分も頑張って待っていたの、お疲れ様と言うべきか。

 

「主殿だけではなくミモリ殿も気が付いていたなんて!?」

「いやあ、忍者修行もまだまだ遠いねえ」

 

 さて、隠行術の1つでも教えたい所だが今日はミモリの当番の日だ。仕事も足が生えて帰ったりはしてくれない。

 

「しゅばっ!今日は主殿も忙しそうなので、帰らさせて頂きます!」

「ん?わざわざ来てくれたのにごめんね?」

「いえいえ、ミモリ殿もまた会いましょう!」

「またね、イズナちゃん」

 

 こちらから何か言う前に、イズナが自分の意思で帰っていった。助かるけど……また今度何かしてあげようかな。ちゃんと時間を作って術を教えてもいいかもしれない。

 

「先生は人気者ですね」

「そうかなあ。先生って珍しいし目立つだけじゃないの?」

「いえ、間違いなく先生の……リーリァさんの人徳ですよ」

 

 嬉しそうな、でも少しだけ寂しそうな笑みを浮かべながらも言う。見ているこっちも複雑な感情になりそうな、何とも言えない表情。

 

「んー……ミモリも何かあるなら言ってくれていいんだよ?」

「先生も話してくれますか?」

「えー?それはズルくない?」

 

 言いたくないことがあるのはお互い様。まあ、そういう距離感でいてくれるのなら私としても凄いありがたいんだけど……

 私は先生で、ミモリは生徒。出来ればミモリからの相談はなるべくして欲しいなとは思うけれど、その気持ちを押し付けるのは卑怯だろうか。

 

 

ーーーーー

 

 

 また少し時間が経ち。

 

「先生、もしよろしければですが……」

「ん?」

 

 動かしていた手を止め、ミモリの方を見る。

 

「昼食、私に作らせてもらえないでしょうか」

「んー?……ふむ」

 

 時計をチラリ。現在11時。……今から準備するとなるとーー内容にも寄るがーー正直遅いのではないだろうか。朝の感じからして、結構気合い入れて料理しそうだし。

 それ以上に1つ問題なのが、料理の間仕事を抜けることになることだろうか。

 

「私は構わないよ。朝食も美味かったし、期待しちゃうな〜」

 

 まあ、昼食が遅くなるのはあまり気にならないし、仕事の方も問題はない。

 

「本当ですか?ふふっ、先生は優しいですね」

「元々私の仕事だし、気にしないで。それに朝のサンドイッチも美味しかったから、期待してくるくらいだよ」

「ありがとうございます。期待に応えられるように、美味しい昼食を用意しますので」

 

 ふふんと強気な笑顔を浮かべながら、作業に使っていた書類等をしっかりまとめてから退室する。

 ……あー、量については言ってなかったけど……まあいいでしょ。弁当より少ないことはないだろうし、今日はそんなに動いてないからそこまで腹も減ってるわけじゃないし。

 

 休憩時間は昼食に合わせようということで、そのまま1人で黙々と……いや独り言を挟みながらも作業をしていると、ミモリからのモモトーク。

 そろそろ用意が出来るので来て欲しいとのこと。時間は12時前……ちょうどいいな。

 

「ん〜、昼飯は何になるかな」

 

 誰に聞いてるわけでもなく独り言を呟きながらも、エレベーターに乗る。……1人になるとつい独り言が増えてしまう。悪い癖だとは思うけれど、困ることではないし今は気にしないでおく。

 居住区エリアで降りて、食堂に向かう。時間的に人が多いが空いてる席はないだろうかと見渡すと、ミモリの姿を発見。

 

「先生、こちらです!」

「ほほう……」

 

 用意されていたのは、白飯に味噌汁、そして肉じゃが。なるほど、これはまさに家庭料理って感じのラインナップだ。大和撫子を目指していると言っている彼女にぴったりだ。

 ……ただ、なんか肉じゃがの量が多いような?

 

「先生はよく食べると聞きましたので、多めにご用意しましたが……これくらいでよろしかったでしょうか?」

「ああ、なるほど」

 

 どうやら私の話は既に聞いていたようで。

 反対側にはミモリの分が置いてあるが、そちらは普通のサイズなのでどうやら普段から多いということはなさそうだ。

 

「それじゃあ、冷める前にいただきますかね」

「はい、先生。どうぞ召し上がってください」

 

 そして早速2人で、とりあえず肉じゃがに手を出して一口。

 

「………」

「………」

 

 瞬間、時が止まった。

 

「……これ」

「……!」

 

 なんか、しょっぱくない?

 まあ、そういう味付けもあるのかなと一瞬だけ考えたが、ミモリの表情がそうでないことを物語っている。

 

「どうして……?きっちり測ったはずですのに……」

「んー、もしかしてだけど塩入れてない?」

 

 別に料理するタイプではないが、話は聞いたことがある。砂糖と塩を間違えたせいで甘くなったりしょっぱくなったり、なんて話を。

 確かに間違えそうだなあとはなんとなく思ってたけど。

 

「あ、ああ……!」

 

 そして、どうやらその予想は当たったらしい。身に覚えがあるのか、がっくりしている。

 

「ど、どうしてそんなミスを……す、すみません、先生……」

「気にしないでいいよ。まあこういう味付けもあるということにしておこうよ」

「ですが、せっかく先生に家庭料理を食べていただく機会でしたのに……これでは大和撫子失格です」

 

 わざとそんなにミモリの様子を置いておいて、もう一口肉じゃがをいただく。しかも多めに。

 

「せ、先生……そんな無理していただかなくても……」

 

 もぐもぐ。

 

「なーに?私が無理して食べてるように見える?やだなあ、ちょっと変わった味だけど、十分美味しいじゃん」

「先生……」

 

 もぐもぐ。ぱくぱく。

 お世辞でもなんでもなく、十分"美味しい"と言えるだけの味だろう。流石にこの肉じゃがだけだとしょっぱさが気になったかもしれないが、ご飯と合わせるとちょうどいい。

 

「それに、一度のミスでそこまで落ち込んでもしょうがないよ。次はちゃんとミモリの思った通りの肉じゃがを食べさせてくれればいい。そうでしょ?」

「……ありがとうございます。そうですよね、次こそは完璧な肉じゃがをご用意します!」

「いやいや、完璧って……そこまで張り切らなくても」

「いえ、今回の失敗の分も含めて、次こそはしっかりと食べてもらいたいですので!」

 

 なんか思ったよりミモリが張り切ってしまったが……まあ良いだろう。やる気があるに越したことはない。

 ……それに、一度のミスさえ許されないのなら、私は……いや、そういうの考えるのは一人の時でいい。

 

「……先生?」

「ん?」

「いえ、その……本当に無理して食べてないですよね?」

「なんで?」

 

 ミモリの青い瞳が、私の瞳を覗き込む。

 ……しまったと思う。そういえばだけど、ミモリは読心術が使えるという噂があった。それが本当かは分からないけど、少なくとも相手の顔色をうかがうくらいは容易に出来るのではないだろうか。

 さっき食べながらネガティブなことを考えてしまったせいで、少し顔に出てしまったのだろう。

 

「……いえ、ごめんなさい。私の疑いすぎだったようです」

「ふふん、全く。考えすぎだよ」

 

 どうやら見破られてはなかったようで、少しほっとする。あー、ほんとキヴォトスに来てから顔に出ること多くなったよなあ……って待て待て、だからそういう反省は後にして。

 そんな感じで2人とも完食。皿もささっと洗って、事務室に戻り軽く休憩。

 

「んー……と、午後の仕事なんだけどちょっといい?」

「はい、どうしましたか?」

 

 缶コーヒーを置きながら、ミモリに尋ねる。

 

「ちょっと、掃除頼みたいんだけど」

「掃除ですか?」

「うん。午前中仕事が進んだお陰で午後は大丈夫そうだし、代わりお願いしたいけどいいかな?」

 

 少しばかりの沈黙。雑用を押し付けるようで悪かったかなーと思っていたら、なんか1人で納得し始めた。

 

「なるほど、これも花嫁修行の一環……ということですね?」

 

 違うけど……まあそれでもいいかもしれない。本当はただ単に最近掃除があまり出来てなくてやりたいと思ってたというだけの話なんだけどさ。

 

「先ほどの失敗を挽回できるくらい、ピカピカにします!」

「うん……まあ程々にね?」

 

 仕事を再開しながらも、ミモリの清掃の様子は見ていた。溜まっていたゴミの片付けを始め、戸棚を始め高い所に乗っている埃を落とし窓も拭く。

 業者でも呼んだっけなと思うくらい丁寧に清掃をしてくれている。……別途で報酬をあげたほうがいいだろうか。

 と、そんな調子でチラチラと伺っていると何か妙な物を取り出している。霧吹きとスポンジ……はいいのだが、何故か割り箸。何をするかと思ったら、窓のサッシの部分を掃除し始めた。

 

「へー、そんなやり方あるんだ」

「せ、先生!?」

 

 よほど集中していたのか、声をかけたら飛び跳ねんばかりに驚いた様子。いや、実際に飛び跳ねはしてないけど。

 

「実は、ネットで見たやり方なんですが……どうですか?ピカピカですよね!」

「ふーん」

 

 またネットか。朝の謎のハグにしてもそうだけど、結局ネットの情報拾ってるんだなあ。変な情報まで仕入れないかちょっと心配になる。

 

「実は、まだ終わりじゃないんです」

 

 そう言って取り出したのは、筆だ。絵画用のものだろう。

 

「スポンジでは拭けない部分でも、筆なら出来ます」

「へえ」

 

 まあ、そう書いてあったということだろうがツッコまないでおく。

 

「見てください、こんなに綺麗になりましたよ」

「……」

 

 笑顔でそう言いながら見せてくる。確かに綺麗になったが、それ以上に気になるのがミモリが楽しそうということである。

 つい先ほどまでは黙々とやっていたのだが、話しかけてみたらこの様子。まさか……うーん、いやまさかね。

 

「ねえ、ミモリって掃除が好きなの?」

「え?……そうですね、確かに好きです。このような家事にも慣れてきたという実感もありますし。ですが……」

 

 そこで少し言い淀み、それから。

 

「いえ、なんでもありません」

 

 ふふ、と笑って誤魔化した。

 ………なーんか嫌な予感、とまではいかなくても、変な感じがするんだけどー?

 

「そう?じゃあ続きよろしくね〜」

「はい!」

 

 特に気にしてないふりをしながら仕事に戻る。

 

ーーいえ、間違いなく先生の……リーリァさんの人徳ですよ。

 

 ミモリはそんなこと言ってたけど、私なんかの何処がそんなに好かれるのだろうか。悪いことではないから良いけどさ……

 

 そんなこんなで掃除が終わったが、時間もいい所だった。手伝ってもらいたい仕事もとりあえずはないし、若干定時より早いけど帰っていいよと伝える。

 そもそもシャーレの活動は私に一任されているので、定刻通りに仕事するか決める権利も私にある訳で。……ということにしておく。

 

「ですが、まだ早いですよ?」

「先生の決めたことだからいーの」

「うーん……」

 

 しかし、納得いかない様子。そうは言ってもあと20分くらいだし、そもそもただの当番なんだからそこまで厳格に仕事する必要もないと思うんだけど。

 

「帰った帰った!」

「わっ、先生!?」

 

 くるっと身体を回して、背中を押す。

 

「もう、強引ですね……」

「大丈夫、早く帰ったことは誰にも言わないから」

 

 扉の前で足を止める。それからミモリが帰るまで動かないぞという意思を仕留めすべく腕を組んで仁王立ちする。

 すると、ミモリはふふっと小さく笑った。

 

「……何よ」

「もう、本当に頑固ですね……」

 

 振り返りながら。

 

「先生の心を動かかすのも、修行……ということですね」

「……はい?」

 

 扉が開いて、それから閉まる。エレベーターが静かに降りていく。

 ……これは、また。大変になりそうだなと内心小さく笑った。




あとがき

連休中にもう1話投稿したかったけど力尽きた人です……
ということでミモリ回でした。あとちょっとだけイズナでした。本当はもうちょっと修行部組の絡みも付けたかったけど展開的に思い浮かばなかったので没になりました。

結構間章の話って、ライブ感強めで書いてる部分が多いんですよね。絆ストーリーべースにしたりしなかったりなのもそれが理由だったりんですけど。
ただちょっと書いてて思ったんですが、間章部分って多い方がいいのと少ない方がいいの、どちらなんでしょう。好きなキャラ優遇(?)しがちな人なので、後者にするとかなり出番に偏りが出来てしまうのですが、その分メインの進行は少し早くなるので。

と思いつつも、とりあえず次の次でvol2 1章の予定なのでお楽しみに!
でも次回の話は書きたい話なので書きます。ここまでの間章でメイン回なかったあの人の話になりますのでそちらもゆるりと楽しみにしていただければです。それでは!
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