アビドスへ帰還してからのこと。
「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした」
「ただいま〜」
「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ」
アビドス廃校対策委員会の部室ーーこの部屋は部室ということになっているらしいーーへ返ってきたそれぞれが早速話し始める。
「誰が襲撃の指示を出していたかまでは分かりませんでしたが、火急の事案が一つ片付きましたね」
「ん、そうだね。これで重要な問題に取りかかれる」
「うん!これで借金問題に取りかかれるね!ありがとう先生!」
セリカは先程までとの表情から一転、素直な礼の言葉を言う。
しかし、直後に「あっ」となり、余計なことを言ってしまった、と顔で語り出す。
「……うん?」
何か、問題があったのだろうか。
「あっ、えっと」
「そ、それは……」
1年組が露骨に狼狽え始める。リーリァも何に狼狽えてるんだ?と考えてから、なるほどと思う。
今日リーリァがアビドスに来たのは、補給と不良への対処が名目である。借金問題については話すつもりはなかったのだろう。
「いいんじゃない、セリカちゃん。別に隠すようなことじゃないし。それに……」
ホシノが諭そうとするが、意外なことにセリカは反論という択を選んだ。
「だからといって話すことでもないでしょ!」
「別に罪を犯したとか、おじさん達が悪いことをした訳じゃないよ。それに、今日一日色々助けてもらったでしょ?」
「うん、ホシノ先輩の言う通り。先生は信頼できる」
「そ、そりゃそうだけど、先生だって部外者だし!」
なるほど、確かにセリカの言う通りだ。私は確かに今日初めて会ったばかりの赤の他人でしかない。
そんな赤の他人が来た途端にトントン拍子でことが進み、果てには借金問題も解決されたとあらば面子というものがないだろう。
ーー面子のために、国土と共に滅びますか?
何処かで会って、何処かで聞いた言葉がふと蘇る。あの時は
アビドスがそこまで追い込まれているということはないけれど、僅かばかり似ているのかも、とだけ思った。
「確かに先生がパパッと解決してくれる問題ではないかもしれないよ。でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は先生くらいじゃん?悩みを打ち明けてみたら案外解決策が見つかるかもしれないし。それに……」
「で、でもさっき来たばかりの大人でしょ!今で大人たちが、この学校がどうなるかなんて気にも留めたことないでしょ!」
また、遮った。うむむ、と少し困り気味の表情。
「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更大人が首を突っ込んでくるなんて。私は……!」
「セリカ!」
静観を決め込み黙っていたリーリァの、突然の鋭い叫び声に全員がビクッとする。
今にも部室から飛び出しそうになっていたセリカも、足が止まる。
「プライドの為に、アビドスを無くすの?」
誰かが言っていた言葉を、そっくりそのまま……ではないが、真似て言う。
「……う、うるさいっ!」
ガンッ、バタンッ、ダッダッダッ。
結局、セリカは飛び出していった。
「……私、様子を見てきます」
後を追って、ノノミも出ていってしまった。
「あんまり感心しないな〜、そういうの」
「私、こう見えて悪い大人だから」
にっしっし、と笑って誤魔化す。別に、セリカの気持ちに寄り添うのであればもう少し聞き方というのはあった。何も相手を煽るような言い方はしなくていい。
分かってやってるからこそ、タチが悪い。
「それでさ、先生。借金問題のこと、知ってるんだよね」
「うん、そらね」
「そうだったんですか!?」
どうやらその点について察しがついてたのは、ホシノだけのようだ。
「まあ、詳しいことまでは知らないけど。9億だっけ?」
「……正しくは9億6235万です」
アヤネがそう、情報を付け加える。
6235万、端数として切り捨てるにはあまりにも大きい額だ。しかし、9億あると言われたら、端数と感じてしまうのも分からなくはない。
「もしかして先生、もう対策も考えてきてる?」
シロコの耳がぴょこりと、期待で動く。見れば、他の2人からもーーホシノも込みでーー期待の視線が集中していた。
なるほど、ここは堂々と大人の意見を言おうではないか。
「いや、何も考えてないけど」
「……」
空気が凍った。
「シャーレにあった資料と、あと知り合いから聞いた話。それだけだと、誰からなんの為に借りた金なのか分からなかったしね」
隅から隅まで調べきった、とまでは言わないけれど、アビドスにまつわる資料はどうしても少なかった。何も分かってない状況で解決策を出すというのは、土台無理な話である。
「なるほど……それでは、私が説明します」
アヤネが語り出す。
それは、数十年前に起きた砂嵐が始まりだったそうだ。学区が呑まれてしまったほどの巨大なそれに、アビドスとしては対策を取らざるを得なかった。
しかし、片田舎の学校に巨額の融資をしてくれる銀行は現れず。その中で頼ってしまったのが悪徳金融業者。最初はどういう算段で頼ったのかは分からないが、大規模の砂嵐がその後も何度も発生し借金が増えるばかり。
そして、今のアビドスのような巨大な砂漠になってしまい、人々もいなくなっていった、ということ。
「私たちの力だけでは、利息を返すだけで精一杯でした。その中でカタカタヘルメット団の襲撃に会い、弾薬などの消耗品も底を尽きかけていたんです」
「それで、その悪徳金融様って誰?」
「ん、カイザーローン」
なるほど、確かに巨大な企業だなと思う。カイザーというのは、キヴォトス有数の巨大企業だ。グループの子会社も多く、その中の一つがカイザーローン。
しかし、それでも9億か。
「それで、先生。何か思いついた?」
「う〜ん………つまり、借金そのものは正当な理由での借金でしょ?」
「うん」
「……けれど、それは『アビドス』が背負っている負債であって、君たちが背負っているものではない。皆すっぱり退学すれば、ここにいる誰かに押し付ける必要もなくなる」
「!?先生、もしかして……」
驚愕、落胆、失望。いずれも分かりやすい反応だった。
しかし、今聞いた情報だけだと借金を返す手立てというものはないように思える。コツコツ返すにしても、利子も大きいようだし。
「まあ、話はここで終わりじゃないよ。カイザーローンは、何処かで『アビドスには借金を返済する能力がない』と気がついていた筈。けれど、そんな相手に9億も貸している。ましてや、退学されたら返済の可能性はなくなるのにね?」
「えっと、何の話?」
「いや〜、どう考えても裏があるでしょ、この話」
リーリァは特別政治というものに特別詳しくはないが、政治をする人間との関わりは多かったし、その政治の中心として立てられることも何度もあった。だからこそ、この話はきな臭いなと感じる。
「まあそういうことだから、色々調べてみたほうがいいかもね?」
それが、リーリァの結論であった。
「……そうだね。確かに調べてみたほうがいいかもね。でも、借金が消えるとは限らないよね?」
ホシノは少し考えてから、リーリァに「借金の返済に関しては?」と暗に問いかける。
どうやら相当嫌われてしまったようだ……と、内心苦笑しながらも一応考えた案を出してみる。正当な借金であるなら、コツコツ返すしかない。それなら?
「アビドスの皆が、シャーレの部員になってみたらどう?」
「……?」
「ほら、仕事してくれれば給料出せるからね。他にもシャーレの活動で使った消耗品は、『シャーレでの活動費用』として請求できるし」
特に劇的な策ではないけれど、何もしないよりは稼げるだろう。
「うへ〜、おじさんなんか雇っても大した仕事しないよ〜?」
「でも、何もしないよりはいいかも」
「そうですね。ヘルメット団の襲撃もなくなりましたし、そちらで働くのもいいかもしれません」
こうして、とりあえずの活動方針は決まった。問題を1つ上げるなら……セリカが、納得していないことだろう。
ーーーーー
問題の解決まではアビドスにいたいという要望に、ホシノは意外とあっさり了承をしてくれた。
部室の隣の教室に案内される。あまり使われてはいないのであろうことが、埃の積もり方から想像ができる。
「仕事をする時はここを使ってくれていいからね〜」
「うん、ありがとうね」
これは、遠回しに"ずっと対策委員会の部室にいると邪魔"という意味でもあるような気がするが。そこまで明確な悪意を持って言っている雰囲気ではないし、決して広くはないあそこに居座られても邪魔なのは事実だろう。
持ってきていたもう一つの鞄を開き、処理できそうな仕事を置いていく。まあ実際にするのは明日からだ、でないとユウカに怒られる。
「うへ〜……もしかして、最初からこっちにいるつもりだった?」
「まあね」
「先生も変わり者だね。こんな面倒なことに首を突っ込もうなんて」
「まあ、内容次第ではあったよ。悪いことして作った借金とかなら、それはもう自力でどうにかしてくださいって言って帰ってた」
冗談半分に答えながらも、ホシノを観察する。
おじさん達はそんなことしないよ〜と、こちらも冗談半分の返事。ふにゃっとした雰囲気で、警戒を滲ませながら。
初めて会った直後に比べれば幾分か警戒も薄くなってるように見えるし、それなりの信頼は勝ち取れただろう。でも根っこはそこではない気がする。ただ、誰のことも信用していないかのような。
それから、先生が寝泊まりする場所もないとね〜、とアビドス高等学校の近くの空き家に案内しようとする。
学校から出て振り返ると、そこにはちっぽけに見えてしまう校舎。
「アビドスって昔は繁栄してた……みたいなこと聞いたんだけど」
歩きながら聞いてみる。5人で通うには十分大きすぎる学校ーー実際、あまり使ってないと思われる場所は砂が積もったままになっていたーーである。
しかし、巨大な学校かと聞かれたらそうでもない。
「実はね、あそこって昔は分校だったんだよ」
「本校は別に?」
「うん。まあそこはもう砂に埋もれちゃったし、今はあそこが本校だけどね〜」
なるほど、と思う。アロナに最初に案内された廃墟のような校舎、あそこがかつての本校だったのだろう。シッテムの箱をつんつんして、情報の更新を促しておく。
それからは大した会話はなく、空き家に案内される。ここ、自由に使っていいからね〜とだけ言って、ホシノは帰ろうとする。
「ねえ、ホシノ」
「うへ?」
呼び止められるとは思ってなかったのだろう、変な声を出して止まる。
「ちゃんと寝たほうがいいよ」
「おじさん、昼寝はよくしてるよ〜」
振り返ることなくホシノは歩いていった。
ーーーーー
それは、朝の話である。とりあえずアビドスへ向かおうと歩みを進めていると、黒い獣耳が見える。こちらには気がついてない様子。
「おはよう、セリカ」
「……!?な、何が『おはよう』よ!馴れ馴れしくしないでくれる?」
急に声をかけられて驚いたのだろう。振り返りながらも早速ストレートな拒絶が返ってくる。
「いいでしょ、挨拶くらいしても」
「一々声かけないでくれる?私、先生のこと認めてないから。全くこんな朝からうろうろしてていいご身分だこと」
ふ〜ん……と、思う。特に隠さずに、思う。
「なっ、何ニヤニヤしてる訳?」
「いや〜、セリカちゃんは素直ないい子だね」
「はあ!?」
この流れで"いい子"だと呼ばれるとはこれっぽっちも考えてなかっただろう。困惑気味の叫び。
「〜〜〜っ!悪いけど、私用事あるから」
これ以上話してても、会話の主導権を握られることに気がついたセリカが強引に話を切り上げようとする。
それで逃げられると思うか?にっしっし。
「用事も何も登校中でしょ?私もアビドスに出勤中だし、一緒に行こうじゃない」
「なんであんたと仲良く行かなきゃならないのよ!……それに、今日は自由登校日だから学校に行かなくてもいいんだけど?」
「あれ?そうなの?」
これは予想外の返事だった。自由登校日とかあるんだ、アビドス。
「じゃ、そういうことだから。バイバイ」
最後だけ笑顔だった。そんなに私といるのは嫌だろうか。……まあ、煽ったしなあ。
そうして、砂埃を立てながら走っていく。
……ところでだ、
まあ、セリカを追いかけるだけならそこまでやらなくても、もっと一般的な隠形術でもいいだろう。ヴィレムでもあるまい。
ということで、一般的な隠形術の1つ採用してセリカを追いかける。
ーーーーー
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンです!」
セリカが元気のよい声をあげる。
「何名様ですか?空いている席にご案内いたしますね!」
作り物ではなく、本物の笑顔で接客している。
「少々お待ちください!3番テーブル、替え玉追加です!」
看板には、『柴関ラーメン』と書いてある。
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで……」
そして、セリカは固まった。ノノミが先頭に、私を含めた5人が入店したからだ。
追跡の傍ら、ホシノに『セリカってバイトとかしてる?』とモモトークで聞いてみたら、何故かアビドス大集合。そして今に至るということである。
「あの〜☆5人なんですけど〜!」
「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……」
「ん、お疲れ」
「み、みんな……どうしてここを……!?」
どうやらセリカ的には、アビドスのみんなにここでバイトしてることを隠していたようだ。自由登校日にバイトをしてまで少しでも稼ぐ、なるほど彼女なりの努力がこれらしい。
「うへ〜、やっぱここだと思った」
「やっほ、セリカちゃん」
どんどん中に入っていった3人に続き、ホシノと私も入店する。
「せっ、先生まで!?ストーカー!?」
こちらに気がついたセリカが、露骨に嫌そうな顔をする。まあ確かに今朝の流れを考えれば、私が後をつけて来たと考えるのが普通だろう。
実際、途中までは追いかけていたのだが。
「うへ、先生は悪くないよ。セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの」
「ホシノ先輩かっ……!!うぅっ……!」
だから来てみたの、と言われても字面通りに受け取るだけでは意味が通じていない。しかしセリカはよく分かっている様子。
つまり、隠れてバイトしていたことに対するちょっとした意趣返しである、ということだ。
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな」
大将と思われる人物ーー二足歩行している犬、としか表現できない見た目をしている。初めてあの"人種"に会った時はそれはもう驚いたーーが、セリカを促す。
しかし、人も少ないこのアビドスの地域でラーメン屋を開いているとは正直驚いた。アビドス高校周囲の住宅街はまさにゴーストタウンといった様子だったが、この辺りにはまだ多少人はいる。それでも砂に侵食されているこの土地で、よくやるものだ。
「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席に案内します……こちらへどうぞ……」
渋々、といった感じで案内する。個人的に好かなくてもバイトはバイトだ。頑張れセリカ。
と、ことの元凶になった私が応援するのもまたなんともおかしな話であるが。
「はい、先生はこちらへ!私の隣、空いてます!」
「……ん、私の隣も空いてる」
2年生組から隣に座るように促される。そして私はノータイムでシロコの隣に座った。
……ほぼ同年代で
「ふむ……」
ピトッ。幅を取れば3人は余裕で座れるはずの長椅子だが、何故かシロコと私の身体がくっつく。
「狭すぎ!シロコ先輩、そんなにくっついていたら先生が窮屈でしょ!もっとこっちに寄って!」
セリカが顔を赤くしながら言う。そんなにくっついてることが気になるか。私は気になる。
「いや、私は平気。それに先生、私の隣がよかったでしょ?」
ノータイムでシロコの隣に座ったせいか、ものすごく変な解釈をされている。
昨日から1つ印象を持っていたが、確信した。砂狼シロコはかなりのマイペースである。
「流石に食べづらいかな〜」
「ん、残念」
改めて距離を取って座り直した。……残念?
それから今度はノノミが口を開く。
「セリカちゃん。バイトのユニフォーム、とってもカワイイです☆」
「いやぁー、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」
更にホシノも乗ってセリカを弄りだした。弄りがいのある可愛い後輩というわけだ。
「ち、ち、ち、違うって! 関係ないし! こ、ここは行きつけのお店だったし……」
「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲けできそうだねー。どう? 一枚買わない、先生?」
「変な副業はやめてください、先輩……」
てんやわんやと大騒ぎ。しかし人のいないこのアビドスでこれだけ明るくいられるのなら、それは周りにとってもいいことではないだろうか。
「バイトはいつから始めたの?」
「い、一週間くらい前から……」
「そうだったんですね☆ 時々姿を消していたのは、バイトだったということですか!」
「も、もういいでしょ! ご注文はっ!?」
「『ご注文はお決まりですか』でしょー? セリカちゃーん、お客様には笑顔で親切に接客しなきゃー?」
「あうう……ご、ご注文は、お決まりですか……」
先輩達のセリカ弄りが終わり、肝心のラーメンを頼み始める。
「私は、チャーシュー麺をお願いします!」
「私は塩」
「えっと……私は味噌で……」
「私はねー、特製味噌ラーメン!炙りチャーシュートッピングで!」
「私も特製味噌ラーメンにしちゃおうかな?大盛りって出来る?」
セリカは注文をメモに取りながら、何かに気がついたようで軽く停止した。
「……ところで、みんなお金は大丈夫なの?もしかして、またノノミ先輩に奢って貰うつもり?」
金銭面の問題である。今の雰囲気だと忘れてしまいそうになるが、ここにいるメンバーは9億以上の借金を背負っているのである。
……何故そこで"ノノミ先輩に奢ってもらう"ということになるのかは分からないが。
「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら、限度額までまだ余裕がありますし」
「……うん?」
ノノミはそう言ってカードを取り出すが、何か引っかかる。別にノノミが払おうがなんだろうが、別に借金とは関係ないような。
「いやいや、またご馳走になるわけにはいかないよー。きっと先生が奢ってくれるはず。だよね、先生?」
ホシノが悪戯半分期待半分といった表情で私を見る。その他皆さんからの視線もまあだいたい同じ。
「よーっし!今日は私からの奢りだー!」
「おお!先生太っ腹!」
幸い、特に金の面では問題ない。どうせ生活費以外の出費は大したことがない。それに、金銭面で手助けするという話を昨日した手前、ここで断るという選択肢はない。
「お〜、大人のカード持ってるね〜。ここから出しちゃうのかな?」
見ると、いつの間にホシノが私の荷物を漁っていた。なんとも手癖の悪い。
「大人のカードを使うような場所でもなさそうですが……先輩、最初からこうするつもりで、私たちをご飯に誘ってくれたんですね」
やっぱり、ホシノは油断のできない相手だな〜と再認識。
そんなこんなで食事を済ませ、会計して出ていく。……少し、大将の視線が気になったけど。
「いやぁー!ゴチでしたー、先生」
「ご馳走様でした」
「うん、お陰様でお腹いっぱい」
みんなが満足そうにしている裏腹に、セリカだけは激怒だった。
「早く出てって!二度と来ないで!仕事の邪魔だから!」
「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね」
同学年ということもあり、1人だけ罪悪感を感じてそうなアヤネがなんとも微妙な笑顔で言った。
「ほんと嫌い!!みんな死んじゃえー!!」
「先生、セリカちゃんをそんな口の悪い子に育てた記憶ないんだけどなあ」
「……!バカーッ!!」
捨て台詞(?)を残して、セリカは柴関ラーメンへと戻っていった。
ーーーーー
『先生、セリカちゃんが帰ってこないんです!』
アヤネからの悲痛な連絡が届いたのは、日が落ちた後の話である。