一人の男が眠っている。見た目は長身でやせ形、青い髪を腰まで伸ばしている。その顔は名画に出てくる天使のように美しい。
そんな彼の眠りを邪魔する存在がいた。
「起きんか! 馬鹿もん!」
その許されざる罪を働いたのは目の前にいる男だった。
「ふぁあ、あれ先生?」
「あれ先生ではない! これで五回目だ」
彼はこの授業中にすでに四回居眠りについて注意されている。
彼とて反省しているのだが、あまりにも退屈な授業であるため(すでに知り尽くしていることを習っているのだから彼は退屈になってしまい)眠ってしまう。
「すいません」
「まったく、そろそろ授業参観であるというのに。え~ここはXを……」
頭をまたコックリコックリ揺らしながら彼は授業を受けていた。
そんな彼の名をリデル・マーガトロイドという。
「はあ~、また課題の追加か」
とぼとぼと彼は学校から帰宅する。
彼が住んでいるのは埼玉県にある麻帆良学園という場所だ。そこの寮を彼は借りている。
「そもそもこんな簡単な問題を延々と回答するなんて意味ないだろう」
その手に握るは彼が先ほどの授業で彼にだけ出された課題だ。
彼にとってこれくらいは簡単に終わってしまうががゆえに逆に面倒くさいのだ。
元々は世界を見たいと思いここに来た彼だが、すでに堕落し、なかば引きこもった中学生のような生活をしている。そんな彼には一番重要なことはどうやって時間をつぶすかなのだが、この程度の問題は時間をとるほどの質も量もない。
「はあ~、新作のゲームも完全にクリアしたし何か興味を引くようなことはおきないかな」
彼は知らない。この言葉通りになり、面倒くさいことが起きる事を。
麻帆良学園には夜に魔物が現れる。魔物といってもどこにでもいるような魔であり、簡単に退治できるような魔だった。しかし、今日は違った。
「くっ! なんでこんな場所にケルベロスが!?」
「メデューサ!? ギリシャ神話の怪物がなぜここに!?」
麻帆良は現在危機に陥っていた。
どこからか現れた伝説の魔物や強力な力を持つ魔物たちによって麻帆良は全戦力を投入し、防衛戦を行うしかなかった。
もし、それでも高畑・T・タカミチがこの戦いに参加できたのならまだましな状況だったろう。しかし、今彼はたった一人の女性に押され続けている。
「この程度か人間。先ほどから言っているだろう。
私はこの地に用はない。ただ人を探していると」
彼女はそう言い、色とりどりの魔力で構成された弾丸を撃つ。
それをタカミチは相殺、いやなんとか自身の居合拳で打ち消してギリギリ避けられているだけだ。
青い髪をサイドテールにまとめて、赤い服を着た彼女は余裕を見せて戦い続けている。
「くっ、それが本当かわからないし君のような存在を通すわけにはいかない!!」
タカミチが放つ攻撃だけでは相殺できなくなってきた頃にほかの二人が参戦する。
「すまぬタカミチ君。遅くなった」
「幸い今夜は満月だ。多少はまともな魔力を使える」
学園長とエヴァが助けに入ったのだ。
三人になったことに戦力は一気に増えた。そのために反撃を行おうとして、関東魔法教会は絶望を知る。
「邪魔をするか、人間。ならばお前らは私がたおすとしよう」
その身から放たれる魔力に黒い翼。今まですら規格外だった魔力がさらに膨れ上がる。世界樹と同じほど、いや、それを越える量の魔力が彼女から放たれる。
「本当の魔法を教えてやる」
その身から放たれる魔弾は数を増やして密度を増す。避けるスキマなど作らずに敵を圧殺するための弾幕。彼女が黒い翼をはためかせながら魔力を練り上げていく。
彼女が放つ攻撃の動きが変わった。
黒い翼をはためかせ彼女が放った魔力は赤いトゲのような魔力弾を前面に放射中に放ち、四か所から魔力を一直線に撃ち、後方を白い弾幕でカバーしている。さらには一定の間隔で黒い魔力球を放ってくるのだ。
「なっ!!」
「バカな!? これほどの魔力の制御など不可能だ!」
「くっ!」
それぞれが何とかよけようとする。瞬動を使い、結界を使い、防壁を張る。だがそれらの抵抗はすべて無意味。なぜなら彼らが相対するは魔界を作った絶対的な力を持つ神なのだから。
「ふん、その程度」
あまりの密度に一撃でも受けてしまえばもう二度と脱出できなくなりなぶり殺しにされる。
「マズイ! 防壁が!」
エヴァの張った防壁にひびが入り壊れる寸前になったところで、
「魔符 魔界神の親衛隊」
突然空間に響いた声。その声のした方向から放たれる色とりどりの魔力球。
赤い玉は小さく速く、黒い玉は大きく中間の速度で、白い玉は小さく遅く。それぞれが決まったルートを通り、神綺を襲う。今の攻撃をした人物が暗がりから出てくる。それはリデル・マーガトロイドだった。
「酷くない!? 私が何をしたっていうのリデルちゃん!?」
「その言い方はやめろって言っているだろう!! 母さん!」
その一言に全ての動きが止まった。
「えっ? 母?」
若い女性とみられていた彼女にまさか高校生に入りそうな子供がいるとはだれも思わなかったのだ。
「そんな!? 私のかわいいリデルちゃんならそんなことは言わなかったのに!」
「千年前の子供の頃の話だろうが!! そもそも魔界の神である母さんがここに何でいる?」
いつの間にか周りには防衛戦を行っていた魔法協会の総員が集まっていた。正しく言うとリデルが魔物を魔界に送り返し、そんな力を持つ彼を野放しにするわけにはいかず集まってきたのだ。
「あら、アリスちゃんにも会いに行ったんだけど会えなくて、さびしかったからリデルちゃんに会いに来たのよ」
まさかそんな理由でこの地を攻めていたのかと周りにいる全員が唖然としている。というより魔界の神やら出てくる単語の所為で会話についていけてないのだ。
「当り前だろう。アリスだって幻想郷での生活があるんだ。どうせ母さんのことだ。仕事を抜け出していったんだろうが突然会いに抜け出して行っても会えるわけがないだろう」
彼が呆れながら言うと声が響く。
「申し訳ありません。目を離した隙に逃げられてしまって魔界から消えていたのです」
「夢子を責めているわけじゃない。ただ母さんに呆れているだけだ」
いつの間にかあらわれていたメイド服の少女。夢子と呼ばれた彼女はリデルの母である彼女に話しかける。
「さあ、満足したでしょう? もう帰りますよ神綺様」
「もう帰ってくれ、頼むから。母さん」
神綺に二人は帰るように言うが彼女は、
「あら、まだ帰らないわよ。リデルちゃんの授業参観が終わるまで」
爆弾を投入した。
「「いきなり何言ってるんだ、この馬鹿!!」」
「夢子ちゃんも酷くない!?」
神綺の言った内容に驚いている二人を尻目に神綺は説明する。
「先ほどあった紫が言っていたんだけどね、そろそろ男子中等部で授業参観なんだって。
リデルちゃんのお母さんである私が参加しないわけにはいかないでしょう?」
この内容にリデルは慌てて思い出しす。今日学校で確かにそういわれていたことを。
「まさか?」
「さっきから言っているけど私は授業参観が終わるまで帰らないわよ」
それから夢子とリデルの必死の説得にも耳を貸さずに神綺は残った。
関東魔法協会には魔界から先鋭部隊を召還し襲うと脅しをかけてまでここにとどまった。
夢子はリデルがいるのなら大丈夫と判断し、魔界に帰ってしまい、一人部屋であったリデルの部屋に神綺が授業参観まで住みつくことになった。
「頼むから早く帰ってくれ~~!!!」
今日もまた一種の箱入り娘である神綺の巻き起こす騒動に巻き込まれながらリデルは叫ぶしかなかった。
リデルの詳しい設定などを知りたい方は感想などでおっしゃってください。そうしたらこの作品に追加投稿して設定を載せます。
また、これを連載してほしいという声が多数あったら、連載するかもしれません。