今回長いです。
仕方ないです。
昼休みも終えて午後の専門課程見学の時間がやってきた。
通称『射撃場』と呼ばれる遠隔魔法用実習室に俺たちはきている。
まあ、きている理由は生徒会長、七草真由美の所属する3年A組の実技がそこで行われているからだ。
生徒会長は遠隔精密魔法の分野で10年に一人のの英才と呼ばれ、それを裏付けるように数多くのトロフィーを第一高校にもたらしている。
で、彼女の実技を見ようと大勢の新入生がいる中俺らは最前列に陣取っていた。
で、帰りの時間になると酷い状況になっていた。
「いい加減に諦めたらどうですか?深雪さんも鞘さんもお兄さんと帰ると言っているんです。他人が口を挟むことじゃないでしょう。」
と、啖呵を切ってる柴田さん。
相手は1年A組の生徒だ。
この状況で千葉と俺だけはおかしいと思っていた。
.....なんで鞘があっちに捕まっているんだ?
「....ねぇ、これは鞘があんたに助け求めているのよね。」
「....間違えなくそうだな。深雪さんだけ助けたらどっか行こう。」
「....それが一番良いわね。」
小声で話し合う
俺も千葉も鞘のことは嫌いだからな。
そう話し合っている間にも口喧嘩は続いていた。
「僕たちは彼女たちに話したいことがあるんだ!」
深雪さんと鞘のクラスメイト、男子生徒その一。
「そうよ!司波さんと立花さんには悪いけど、少し時間を貸してもらうだけなんだから!」
深雪さんと鞘のクラスメイト、女子生徒その一。
彼らの言い分をレオは威勢良く笑い飛ばした。
「ハン!そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間取ってあるだろうが。」
エリカも皮肉たっぷりに言い返す。
「相談したいことがあるなら前持って本人の同意を取ってからすれば?深雪の意思を無視して相談も何もあったもんじゃないの。それがルール。高校生にもなってそんなのも分からないの?」
相手を怒らせることが目的かのようなエリカの口振りで相手が切れた。
「うるさい!ウィードごときが僕らブルームに口出しするな!」
ウィードとブルーム、差別的ニュアンスのあるものは校則的に禁止されている。しかもこれだけ多くの注目を集めている状況で使うとはな。
この暴言に真っ正面から反応したのは柴田さんだった。
「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点でどれだけ優れているというんですか?」
決して大声は出してない、だが柴田さんの声は校庭に響いた。
「「あっ」」
まずいことになった、そう思ったのは俺と達也だった。
「....いいじゃねえか。どれだけ優れているか知りたいなら教えてやるよ。」
柴田さんの主張は校内のルールには沿っているがこの学校のシステムを否定するものだ。
「ハッ、おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねえか。」
一科生の言葉に対してレオが挑戦的に応えた。
「だったら教えてやる!」
彼が抜いたのはCAD、CADは授業開始前に事務室に預けて、下校時に返却される。
つまり、彼がCADを持っていてもおかしくない。
「特化型っ!」
だが、向けられたCADが同じ生徒で攻撃力重視の特化型なら異常なことだ。
魔法を使うか?いや、使ったら俺がなんて言われるか分からん。じゃあ刀を抜くか?駄目だ、次は反省文何枚になるか分からないぞ。
俺が考えている間に何故か達也は右腕を前に突き出していた。
「ヒッ!」
悲鳴を上げたのは、銃口を向けた一科生の方だった。
千葉が彼の手からCADを弾き飛ばしていた。
「この間合いなら身体を動かした方が速いのよね。」
「それは同感だがテメェ今、俺の手ごとブッ叩くつもりだったろ。」
なるほど、千葉もそれなりには修行しているようだな。
だが、レオも素晴らしい。あのタイミングで手を引けるというのは中々のものだ。
「あ〜らそんなことしないわよぉ〜」
「わざとらしく笑ってごまかすんじゃねえ!」
こいつら本当に相性悪いな。敵の前でギャアギャア喧嘩とか。
で、後ろの子は俺が止めよう。
後ろで腕輪形状の汎用型CADを使おうとしている女子生徒。
俺はその周りに微弱な電磁波を作り出す。
「痛っ!?」
彼女が静電気による痛みによって魔法の起動が出来なくなる。
その瞬間、達也が俺の方を見る。
.....あれ?バレちゃったか?
「止めなさい!自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」
やっと、来たか。
「あなたたち、1ーAと1ーEの生徒ね。事情を聞きます。ついて来なさい。」
えっ?もしかしてまた反省文ですか?
誰か何とかしてくれ。もう、あの地獄だけは嫌だ!
そう思っていると、達也が摩利の前に出た。
一礼して、
「すみません、悪ふざけが過ぎました。」
「悪ふざけ?」
唐突なセリフだった。
「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学の為に見せてもらうだけのつもりだったんですが、あんまり真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました。」
そこにいる全員が驚きだっただろう。摩利は千葉の手にする警棒と、地面に転がった拳銃形状のCAD、違法にCADを使おうとした男女2人を震え上がらせてから、達也をみる。
「では、その後に1ーAの女子が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ。」
「驚いたんでしょう。条件反射で起動プロセスを実行できるとは、流石一科生ですね。」
真面目な表情で答えていたが、どこか白々しかった。
「君の友人は、魔法によって攻撃されそうになっていたわけだが、それでも悪ふざけだと主張するのかね?」
「攻撃といっても、彼女が発動しようと意図したのは目くらましの閃光魔法ですから。それも、失明したり視力障害を起こしたりするほどのレベルではありませんでしたし。」
再び、息を呑む気配。
冷笑が、感嘆に変わる。
「ほぅ......どうやら君は展開された起動式を読み取ることができるらしいな。」
はあ?普通そんなことできないぞ?
起動式を読むってことは何万通りの文字列から同じものを頭の中で再現するものだ。
「実技は苦手ですが、分析は得意です。」
それを分析と片付けるのか。
「....誤魔化すのも得意なようだ。」
兄を庇うかのように深雪さんが進み出る。
「兄の申したとおり、本当に、ちょっとした行き違いだったんです。」
そこに一応俺も出る。
「まあ、これほど危ないことがありましたが結果的には怪我などありませんし、良いんじゃないでしょうか?先輩方。」
俺の言葉に賛同するかのように真由美が出てくれる。
「摩利、良いんじゃないの?彼の言った通り怪我はないみたいだし。」
そう言うと、さすがに下がってくれた。
だが、一歩踏み出したところで足を止め、背を向けまま問いかけを発した。
「君の名前は?」
首だけ振り向いた先には達也が立っていた。
「1年E組、司波達也です。」
「覚えておこう」
こうして、騒動は収まった。
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