もしも綾小路がAクラスだったら   作:綾小路が一番のヒロイン

1 / 5
坂柳の持論に少しだけ捏造があります…


ようこそAクラスへ
入学と説明と自己紹介


 

『人間のポテンシャルは生まれたときから決まっていて、それを覆すのは不可能だ。生まれたあとに天才に分類されるようになる人間は自らのポテンシャルを最大限に発揮出来ていなかっただけ』――というのは、オレの自称幼馴染の持論だ。

 

 自称幼馴染――もとい坂柳有栖は自らを"生まれながらの天才"と称し、後天的に成長したオレの事を自分の持論が正しいと証明する為に、敗北の二文字を刻む為に親の権力で強引に近付いてきたわけだが、適当にあしらっているうちにオレの幼馴染だとか親友だとか名乗りだした。

 

 カリキュラムと訓練の間を縫って勝負を挑んでくる有栖を返り討ちにするのは容易だが、"幼馴染"の会話に突き合わされるのは面倒であり、時間の無駄だ。折角切り捨ててきた感情を想起させられるのは、正直鬱陶しい。感情はオレが勝ちに進んでいくのに不要で足手まといなものだ。

 

 あの男(綾小路篤臣)も感情の不必要性について知っている筈なのに有栖の訪問を一蹴しないのは本当に権力の差だったのか?はたまたオレに感情を学ばせようとでもしていたのか?仮に後者の考えを持っていたとしてもオレの考えは変わらない。感情は必要ない、それ以上でもそれ以下でもない。

 

「清隆くん、もう少しで着きますよ」

 

「そうだな。これからの学校生活はどうなっていくのか楽しみだ」

 

 オレがこれまでの事を振り返っているうちに高度育成高等学校、オレたちがこれからの三年間を過ごす事になる学校が近づいてきていた。

 

「ふふ、そうですね。尤も私と清隆くんは赤い糸で結ばれてあるので、クラスも分かれることなく、三年間ずっと一緒に過ごす事ができ、清隆くんにとっても私にとっても有意義な三年間になるでしょう」

 

「そうだといいな」

 

 有栖との会話を尻目にホワイトルームとは違う色のある学び舎で過ごすという事に少し感慨深い気持ちに浸っていると、どうやら目的地に着いたようだ。オレたちと同じ制服を着た生徒たちがぞろぞろも降りていく。

 オレたちもそれに続いて行く。

 

 

 バスを降り、門を潜った先には新築のように綺麗な校舎が建っていた。桜を背景に建つそれはとても絵になっていると思う。

 オレたちが通うことになる高度育成高等学校は、日本政府が創り上げた未来を支える若者たちを教育すること目的とする学校である。日本政府が創ったのだから、金銭面でも豪華で生徒全員分の寮を完備、ケヤキモールやコンビニも敷地内に建てられていて、衣食住全てを保証してくれるという。

 

 これだけでも文句はないのだが、卒業後に生徒の志望校、就職先への就職率がほぼ百パーセントだというのだ。これを目当てに入学する生徒も多いと思うが、オレには裏があるように思えて仕方がない。政府が運営しているからそれぐらい当たり前だろうと言われてしまえばそれまでだが、入学し卒業するだけで将来が保証されるというのは話がうますぎる。

『未来を支える』というキャッチコピーなのに協調性のない、性格面に問題のある人間が社会に出てやっていけるのかというのには疑問を感じる。この学校に入学してから外部との連絡を遮断される事や、学校の敷地から出ることが禁じられていることも関連しているだろう。

 だが、今の段階ではあまりにも情報が少な過ぎる。現段階で何かがあると考えても結論までは辿り着けないだろう。

 

「おや、どうやらあの掲示板でクラス分けが発表されているようですね。私たちも見に行きましょうか」

 

「ああ。行こうか」

 

 思考を中断させ、有栖に素っ気ないとも取れる言葉を返す。まあ、これがオレの平常運転だから有栖もさほど気にした様子はない。

 

 掲示板を囲んでいる生徒たちを足の悪い有栖を庇いながら避けるのは容易ではなかったが、有栖の足を見て自ら道を開ける生徒も多数いたため苦労は少なかった。

 掲示板に貼られている紙から綾小路の名を探していくと、Aクラスの括りに書かれているのを見つける。続いて有栖の名を探すとオレの少し下に書かれていた。

 

「――同じクラスのようですね」

 

「そのようだな」

 

「ふふ、改めてこれから三年間よろしくお願いします」

 

 有栖に「こちらこそ」と言いながらも、有栖と過ごす日々を想像し早くも憂鬱さを感じ始めた。

 

「む、今私との日々に憂鬱さを感じましたね?」

 

「そ、そんな事ないぞ?――それよりも、クラスも確認した事だし速く入学式に向かおう」

 

「…まあ、いいです。体育館に向かいましょう」

 

 

 

 

 有栖を誤魔化して体育館で入学式を終えた後、僅かな眠気を感じながらAクラスの教室に向かう。校長の話を聞いた後は必ずと言っていいほど眠気を感じるというのはよく本の展開として記憶していたが、まさか本当に眠気を感じるとはな。

 

 教室で自分の席を見つけた後、他の生徒たちに話しかけようと思ったが、他の生徒たちはすでにいくつかのグループで纏まってしまっていてオレが入る余地がなかった。

 折角の学校生活だから友達とやらを作ってみたかったのだが、このままだとお先真っ暗だな…。有栖?そんな人は知らないな。

 それから間もなく、始業を告げるチャイムが教室に響く。それとほぼ同時に教室の扉が開き、スーツを着た一人の男性が教室へと入って来た。

 

「初めまして、新入生諸君。私はAクラスを担当することになった真嶋智也だ。担当教科は英語だ。また、この学校にはクラス替えが存在しないため、三年間を共に過ごす事になると思う。よろしくな」

 

 クラス替えがない…だと?これでは有栖と三年間同じクラスで過ごすことになるではないか。オレに毎日有栖の勢いをさばく自信はない。……先が思いやられる。

 ふと有栖の方を見ると、心なしか喜んでいるように見える。

 

「また、この学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。入学案内と一緒に配布したものではあるがな」

「そして、それと並行して学生証カードを配らせてもらう。その学生証はこの学校の敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで好きな商品を購入することができる。だが、ポイントを使用することになるので注意すること。学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら何でも購入可能だ」

 

 わざわざ学生証カードを配る辺り、現金をポイントで代用することで金銭トラブルを未然に防ごうとしているのだろう。幾ら高校生とはいえ、まだ中学生気分が抜けていないものも多い。

 

「施設では機械にこの学生証を通すか、提示することで使用することができる。そして、ポイントは毎月一日に自動的に振り込まれることとなっている。既に10万ポイントが全員に支給されているはずだ。なお、一ポイントにつき1円の価値がある。それ以上の説明は必要ないだろう」

 

 一瞬Aクラス全体が驚愕に包まれる。

 

「ポイントの支給額の多さに驚いたか?この学校は実力で生徒を測る。この学校に入学を果たしたお前たちはそれだけ期待されているということだ。遠慮なく使うと良い。ただし、このポイントは卒業後には学校が全て回収することになっている。現金化することはできないからポイントを貯めても得はない」

 

「ポイントは譲渡しても構わないが、無理矢理取り上げるのはNGだ。この学校はいじめには敏感だから、十分注意すると良い」

 

 クラス全体が浮かれたような雰囲気となっている。いきなり大金を手に入れたのだから無理もない。

 だが、あの言い回しは引っ掛かる。明らかに誘っているな。

 

「質問のある生徒はいるか?」

 

 真嶋が質問を受け付けると同時にオレが手を挙げる。とても勢いが良いとは言えないが、はっきりとはしている。

 

「綾小路と葛城と坂柳か。では綾小路から質問を受け付ける。その後に葛城、坂柳の順だ」

 

 教室内の注目が一斉にオレに集まる。

 

「では、真嶋先生は毎月一日にポイントが支給されると話しましたが、来月支給されるポイントは何ポイントですか?」

 

「…!」

 

 オレが質問を言い終えると共に真嶋先生は驚いた顔をするが、口元は僅かにニヤけているような気がした。

 

「綾小路、すまないが『その質問には答えられない』と言っておこう」

 

 オレの質問に対して真嶋先生の答えは否定でも肯定でもない。…ビンゴだな。来月のポイントは確実に十万ポイントではない。恐らくだが、教室の後ろや廊下などに大量に設置されている監視カメラで生徒の素行やテストの結果などでポイントは増減するのだろう。

 

「葛城と坂柳も同じ質問か?」

 

「「はい」」

 

 二人が静かに手を下ろしたのを見て真嶋先生が問いかけると二人は肯定する。スキンヘッド…葛城は兎も角有栖はやはり気づいたか。

 

「他に質問は…無いようだな。それでは良き学生ライフを送ってくれ」

 

 真嶋はそう言い残すと教室から出て行った。すると、葛城が立ち上がり周囲を見渡した。

 

「ポイントのことで混乱している中申し訳ないが、自己紹介をしないか?俺たちはまだお互いの事をあまり知らないからな」

 

 葛城の提案は尤もな事なので反対の声は上がらなかった。葛城もそれに満足したのか自己紹介を始めていく。

 

「反対はいないようだな。では、まず言い出した俺から自己紹介をさせてもらう。俺は葛城康平。中学では生徒会に所属していた経験もあるから、その経験を活かし、このクラスを纏めていきたいと思っている。よろしくな」

 

 葛城のお手本のような自己紹介が終わったあと、自然と拍手が起きた。オレもこのような自己紹介ができるだろうか?

 そう考えているうちに次々と生徒たちが自己紹介を終え、有栖の番がやってきた。

 

「私は坂柳有栖と言います。この杖を見ると何となく分かると思いますが、私は先天性の疾患を患っていて一切の運動を禁じられています。ご迷惑をかけることが多くあると思いますが、よろしくお願いします」

 

 有栖もスラスラと言葉を並べて自己紹介を終えた。葛城同様有栖にも拍手が巻き起こる。

 

「では、そこの茶髪の君。お願いできるかな?」

 

「え――」

 

 想定していなかった言葉に勢いよく立ちあがってしまい、ガタッと音を立ててしまう。

 

「えー……えっと、綾小路清隆です。その、えー……勉強と運動は全般得意です。えー……皆と仲良くなれるよう頑張りますので、えー、よろしくお願いします」

 

 自己紹介を終え、そそくさ席に座る。

 教室には沈黙が訪れ、有栖が笑いを堪えている顔が見える。

 

……オレの青春、終わった。




今回の補足

・綾小路は入試で点数調整をしていない。
 高育への入学は今作では篤臣が決めていて、清隆は平穏な生活を求めていたわけではない。

・入学式と教室での説明が前後している。
 これは普通に作者が間違えた。時間があれば修正します。

綾小路をAクラスに移動させたらDクラスが物凄く弱体化してしまった…。どうしよう?

  • 高円寺くんが本気らしいよ?
  • 南雲先輩はDクラスを狙っている?
  • オリキャラ(綾小路妹とか)ぶっこもうよ?
  • 1年Aクラスに従属したらしいよ?
  • 堀北さんと櫛田さんの協力?
  • 何もなし。そのまま底辺なの?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。