自分のHPには彼女が主人公の短編も幾つかありますので、いずれ機会があったら出張投稿させていただきます。
規定通りの時間に出社する。
つい癖で、気にくわない動きをしている社員を怒鳴りつけそうになったり。アイドルのレッスンを見に行こうとしかけたが。
もう自分はそんな立場では無い、という事を思い出し。
自室に戻るのだった。
自室にいてもやる事はない。
アイドルを探すには、足を使って彼方此方を回るに限る。
そう判断するも。やはり体が重い。
すっかり腐っていると、ドアがノックされる。
声を荒げそうになったが、咳払い。
すっかり心が折られてしまっている。昔だったら、大暴れしたり。少なくとも罵声を浴びせかけていただろう。
「誰でも好きに入ってくるといい」
「そうか、それでは失礼させていただく」
「貴様は……!」
ドアを開けて入ってきたのは、765プロのトッププロデューサーだ。
この間のスターリットシーズンプロジェクトでは、ルミナスという29人ものユニットを見事にまとめ上げた。それ以前にも、765プロの所属アイドル13人を不動のSランクに押し上げている。
流石にルミナスは5人ほどのプロデューサーで面倒を見ていたようだが、それにしても恐らく現時点で業界一の傑物プロデューサーだろう。
世代が上になってくると更に伝説的な人物もいるのだが。此奴の実力は、悔しいが黒井も認めていた。
女性プロデューサーであり、アイドルとしての才能だけがないと公言している。他はそれこそ何でもできるそうだ。
なお東大を主席卒業している。黒井だってこの業界に入るのに、そこそこ良い大学は通ったし。プロデューサーの中には、トップクラスの大学出も他にいる。アイドルにさえいる。
中にはとてもそうとは思えない力量の者も。要するに裏口入学でもしたのでは無いかと思わせる者もいるが。
しかしながら此奴は実家が太いわけでもないらしいので。
恐らく搦め手の類は一切使っていないだろう。
小柄な女だ。
確かに本人が言う通り、アイドルとしての才覚はないと黒井も断言できる。
なんというか、オーラがないのである。
ダンスや歌唱、知識など。
アイドル業界に長くいる黒井でも、いずれも瞠目させられる技術を持っていることは、以前子飼いのパパラッチに偵察させて知った。
いずれにしても、前だったら皮肉を言ったり悪口を言ったりしただろうが。
今は全て萎えてしまっていて。
それどころではなかった。
「私を笑いに来たのか」
「そんな悪趣味なことはしない」
「ならば……!」
「貴方が理解されにくいなりに、アイドルについて真剣に向き合っていることは以前の話で分かっていた」
以前の話。
そういえば、確かスターリットシーズンプロジェクトの途中。ディアマントとルミナスがそれぞれ温泉宿でかちあった事があったっけ。
その時に高木と久しぶりに此奴を交えて飲んで。持論を語ったような気がする。
「それだけをいいに来たのか……」
「いや、今日は様子を見に来たのもあるが、引率もある」
「引率だと……」
「貴方が原因でこの事務所を出て行ったが、状況が変わって戻りたいと思った者。 詩花や玲音が声を掛けて復帰を呼びかけた者達だ。 数人が困り果てた末に、私に連絡をしにきた」
うめき声が漏れる。
他の事務所にも、此奴が業界随一の豪腕である事は知られていると聞いていた。
それに詩花や玲音も、此奴に対して信頼と興味を持っていることも。
だから協力を仰いだのだろう。
本当に、もはやどうしようもないところまで、事態は黒井の手を離れてしまっている。それはよく分かった。
「後は精神論や根性論でレッスンをしないように、私が引率してきたアイドル達のリハビリと初期の訓練を見たら帰る。 流石に貴方が見つけてきたアイドル達だな。 素質は非常に高くて驚いている」
「皮肉のつもりか!」
「皮肉を言う理由がない」
「……」
そうだ。
此奴はそういう奴だった。
酒の席で四流プロデューサーと呼んでも顔色一つ変えなかったし。
話をふると、生真面目に持論を口にした。
流石に手の内まで明かすことは無かったが。
それでも、根性論や精神論を廃止し、丁寧にアイドル達の面倒を見ていることは話してきたし。
その合理的でなおかつ長所を伸ばすやり方には、酒の席では鼻で笑っているように見せたが。
実際にはそんな方法で彼処まで短期間で誰も担当アイドルを取りこぼさずSランクまで育て上げたのかという驚きもあった。勿論表には出さなかったが。
一人も脱落させない。それが如何に超人的な手腕かは、黒井自身も分かっていた。
「いずれにしても貴方は人材発掘に徹する方が良いと思う。 貴方が発見したアイドル達は、皆原石と言って良い者達ばかりだ」
「それは……私も分かっている」
「以降はもう貴方の手を離れた娘と、その盟友に任せるんだな。 子はいつか親の下を離れるものだ。 貴方は意図的に厳しい場に自らを置いてきた。 それならば、こう言う形で親離れされるのも、仕方が無い事だろう」
ぐうの音も出ない。
やがて、失礼するといって、765プロのプロデューサー。いや現在はトッププロデューサーか。
奴は黒井の部屋を出て行った。
黒井の与えられた部屋には何も無い。実務は何もできないように、だ。
現金を含め、何もかもを取りあげられてしまった。パソコンはあるが、社内用のイントラネットにしかつながらない仕様だ。
だから、余計に虚無を感じた。
しばらく呆然とする。
本当にあいつ、嫌みは何も言わなかった。
思えば、顔を合わせる度に痛烈な嫌みを浴びせてやったが、それに対して何も思うところはないようだった。
だとすると、とんでもない怪物なのかも知れない。
正論を聞く事が出来ない奴はいる。
特に最近は、正論そのものを悪として処理したがる奴も珍しく無い。
モラハラとかいうのだったか。
正論は正しいから正論なのだ。
それは黒井だって分かっている事である。
だが、それを聞けなくなってきたのは、いつ頃からだろうか。
彼奴は。765プロの筆頭プロデューサーは、聞く事が出来る。今後も恐らくはずっと聞く事が出来るだろう。
そういう奴だ。
大きな溜息が漏れた。
しばし躊躇った後。
新社長の。詩花の所に通話を入れる。
秘書が出た。
「詩花は今何をしている」
「社長は今、アイドル達のレッスンを見ています」
「私も見学したい」
「……しばしお待ちを」
秘書は比較的黒井に態度が柔らかいな。
そういえば、詩花の秘書になった人間は。黒井が業務をできるように仕込んだ人物で。他の役員と違って、イエスマンに育てたわけではなかったな。
側で厳しい言葉ばかり掛けて、暴君として振る舞う黒井だけではなく。
プロデューサー時代に培った技術を仕込んだ人物だった。
だから、或いは黒井の事を。
他の社員ほどは、嫌っていないのかも知れない。
やがて返事が来る。
全て録画しているので、後でそれを見て欲しい、ということだった。
しばらく黙り込んでから、分かったと返す。
まあ、それもそうなのかも知れない。
今レッスンしているのは、黒井のせいで961プロを出て行く事になったようなアイドル達ばかりである。
中には数年間、業界から離れていた者だっているだろう。
そんな者達が、黒井の顔を見たらどうなるか。
それは誰でも想像ができる。
だから其処に黒井は立ち会ってはいけないのだ。
しばらく、無為の時間を過ごす。
やがて、詩花からメールが来た。
「パパ。 みんな生き生きとレッスンしていました。 見てあげてください」
それだけだ。
パソコンを通じて、動画を見る。
玲音はいない。
恐らく仕事に出ているのだろう。
詩花もレッスンに参加したのは最初だけだった。
何人か見学している961プロのプロデューサー達も、かなり一線級として使っていた者と顔ぶれが変わっている。
今まで冷遇していた考えが甘い奴らを抜擢し直し。
黒井のイエスマンだったプロデューサーは、根こそぎ再教育に回したらしい。
この辺りは詩花の、黒井譲りの容赦なさを感じさせる。
昔は黒井が自分でアイドル全員の面倒を見てきたのだが。最近は年齢による衰えもあって、妥協するようになりはじめていた。その結果、結局プロデューサーを使うようになったのだが。そいつらもイエスマンとして育て。反発する奴は冷遇した。
それらも間違っていると、詩花は判断したのだろう。
更に、面倒を見ているのは765プロのトッププロデューサーだ。
これには、流石に集められた連中にも困惑顔が出ていたが。
すぐにそれもなくなった。
まずは体力の測定から開始する。
鈍っている奴もいるから、かなり数値はばらつくが。手元にあるメモ帳を使いつつ、丁寧に何かのデータを取っている。
最近では961プロでもAIによる測定システムを利用しているのだが、そんなものを使うのはまどろっこしいというのだろう。
そのままさくさくと復帰レッスンを進めていく。
驚いたのは、全員のことを、名前も経歴も含めて765プロのトッププロデューサーが把握している事だ。
噂に聞いたところによると、IQ200くらいあるとかもっとあるとかだとかで。頭の中に擬似的に大型のホワイトボードを作って、それに書き込んだ事をいつでも好きなように思い出せるとか。
日本でSランクに一度でも上がったアイドルは全員把握しているとか。
現役でBランク以上のアイドルは全員経歴と名前を把握しているとか。
そういうのがあるが。
あながち嘘ではないらしい。
それぞれに、細かく話を聞いて。丁寧にレッスンの指導をしている。
更に自分で手本を見せているが、それこそトンボを切るのも余裕、という身体能力だ。あらゆるダンスをプロ以上の技量でこなし、七カ国語以上を操るとか。
体力でもフルマラソンを涼しい顔でこなすと聞いていたが。噂以上の化け物である。
歌唱力も文字通り完璧。
声質に致命的な問題があるが、それ以外の歌唱力は文字通り完璧であり。テクニックという点では伝説になっているようなアイドル達でも及ぶかどうか。
すぐにその実力を理解したのだろう。
復帰したものや。他の零細事務所で辛酸を舐めていた元961プロのアイドル達は、それで即座に一念発起。
こんな高品質のレッスンなんて滅多に受けられないだろうと判断したのだろう。
すぐに、心を掴まれ。
レッスンを真剣にやり始めていた。
更にトレーニングのメニューについて、全員分をその場で書き起こし、手渡している。
凄まじい。
どうすれば伸びるか、一瞬で見抜いたと言う事だ。
此奴があっと言う間に13人のアイドルを高みであるランクSに導いたのも頷ける話だ。
確かにこれだけの事が出来るのなら。
玲音と同じ。
生態系の頂点たる圧倒的余裕が生じる事だろう。
そうすれば、これだけ丁寧なレッスンを、余裕を持って出来るというわけだ。
ここまで、と声を掛ける。
レッスンもう終わりかと、汗だくになっている者も、皆がっつくように見ている中。
咳払いすると、一人ずつに丁寧に今後の指針を話していく765プロのトッププロデューサー。
いずれもが、それぞれの強みをどう伸ばしていくか。
弱みをどう補強するか。
嘘偽りない、本当に素晴らしいアドバイスばかりだった。
黒井は思わず、無言になっていた。
これは、負けたのも仕方が無いかも知れない。
ぐっと、思わず声を飲み込んでいた。
机を叩きたくなった。
こんな怪物を侮っていたのか。
文字通り火薬庫の側で花火で遊んでいたようなものではないか。
最後に、皆の真剣な視線の先で、765プロのトッププロデューサーは言うのだった。
「私はこの余裕のある時代に産まれたアイドルと言う文化を心の底から愛している。 それは、この文化が美しいからだ。 もしも70年前だかに、各国の努力が上手く行かずに世界大戦が起きたりしたら。 これほどの美しく花咲くアイドル文化が産まれなかったのは確定だろう。 仮に産まれていても、醜い利権と著しく非人道的な労働が絡むろくでもない代物になっていた筈だ」
そうだな。
私が見て来たろくでもない連中が、のさばるような場所になっていただろう。
黒井は憮然と話を聞くしかない。
今は頭が冷静になっていて。
正論を聞けるようになっていた。
「だからこそ、この光り輝く場所を私は守りたいし、育てていきたい。 それには一人だけが輝くのでは駄目で、常にライバルが必要だ。 961プロに研修指導に来たのも、それが理由だ。 君達は是非我が765プロの精鋭達を越える勢いで。 そして君臨するオーバーランクの玲音と、社長を兼ねて現在最もホットなアイドルとなっている詩花を越えるつもりで頑張ってほしい。 そうすることで、業界そのものの熱量が上がる。 不正で熱量は上がらない。 正々堂々勝負してこそ業界の熱量が上がる。 それは皆、覚えておいてほしい」
「はいっ!」
最初は嫌疑の視線さえ向けていたアイドル達が。
961プロを出ていくときは、死んだ魚のような目になっていたアイドル達が。
一斉に765プロのトッププロデューサーに答えていた。
くつくつと、笑い声が漏れてきた。
そうか、これほどのレベルだったのか。
だったら現在世界最高の実力を誇る玲音が面白がる。
詩花だって信頼する。
明らかに、プロデューサー時代の黒井を越えている。
高木ですら、あらゆる点で全盛期の自身を越えていると認めているだろう。なるほど、全権をぽんと渡すわけだ。
それも納得いった。
しばらくして、詩花からメールが来る。
「パパ。 動画はみてくれた? もしも見て何か思うところがあるのだったら、明日からは真面目に新人発掘をしてほしいの。 パパは正直な話、今は歪んでしまっているだけで、ちゃんと人を見る目はあると思っています。 だから、アイドルを今も愛しているのであれば。 自分にできる一番得意なことをしてください」
溜息が漏れる。
そうか、そうだな。
黒井も、人を見る目だけは自信があったつもりだ。
事実多くのアイドルを発掘するのに成功した。
だが、その殆どを潰してしまったし、逃げられてしまった。
今回戻って来てくれたのは、多分潰して逃がした人間のごく一部だろう。
多くは断られたに違いない。
それでも、あいつの。765プロのトッププロデューサーの言葉は事実だったし。心にも響いた。
業界そのものを盛り上げるには。
熱量を上げるしかない。
確かに、不正をしていては、熱量を上げることはできないだろう。
それに、無理を押しつけていたら潰れてしまうのは。
黒井がこうなる前から、知っていたことではなかったのか。
何人かの、無能なプロデューサーに潰されてしまったアイドルの事が脳裏によぎる。
黒井と高木の夢を潰してしまったアイドルもいた。
後から事情は聞いたが、それでもずっともやもやは消えなかった。
今、現実を見せつけられて。
何もかもが、どうでも良くなった気がする。
大きくため息をつくと、頭を振る。
そして、詩花にメールを入れていた。
「明日からは、外回りを中心とする。 今まで以上の才覚の持ち主を見つけてみせるから、覚悟しておけ」
そうメールで送ってから。
何を覚悟するのかと思って、苦笑してしまったが。
これでいいと思う。
黒井は黒井だ。
確かに歪んでしまったかも知れないが。それでも、自分なりのやりかたは、この数十年で確立した。
今から変わるのは無理だろう。
それでも、このままやられっぱなしでなるものか。
思えば、黒井が育てたアイドルが。
そのままSランクの高みに上がった事はあったか。
運良く玲音が日本にいる間は961プロにいる事を認めてくれた事。
地力でSランク相当の実力になった詩花が、来てくれた事。
この二つのラッキーがなければ、せいぜい中堅の悪徳事務所として、今も苦労を続けていただろう。
この会社が大きくなったのは。
黒井の手腕のおかげでは無いのだ。
ならば、そこから立ち返り。
少しずつ、自分の心を取り戻していくべきだろう。
黒井だって、この間のスターリットシーズンプロジェクトの結末には、思うところがあったのだ。
この業界を愛していなければ。
あんな感情は出てくる事はなかっただろう。
そして幸いにも。
どちらかというと、アイドル業界は健全に回っている。
悪辣な連中が何かに排除されたかのようであるほどに。
そんな悪辣な輩に、黒井はもう少しで、何もかも染まるところだったのかも知れない。
とにかくだ。
今、零細事務所にいるアイドルの様子を確認する。
引き抜けそうならば、提案書を作る。
それなりに使えそうな奴を、街に出て探す。
今の時代、アイドル志望の人間など幾らでもいる。
別に容姿が抜群に優れていなくても、幾らでもどうにでもなる。
正直個性の方が重要だ。
このままやられっぱなしでいるのは、性にあわない。
一矢でも報いてやる。
その報い方は、社長に返り咲くとか。
そういうやり方では無い。
元プロデューサーとして。
歪んでいるとは言えこの業界を愛している人間として。
別の方法がある筈だった。
定時で会社を上がる。
いつぶりだろう。いつも夜中まで仕事をしていたからな。そう思いながら、居酒屋に出向く。
当面はまともな金を動かせないし、手元にもない。
飲むつもりなら、ここくらいしかない。
頭がすっかりはげ上がっている主人は、また無言で料理やらを出してくれた。
今日はホタテのホイル焼きか。
これは美味しそうだ。
熱燗も出してくれる。
バーで浴びるように飲んでいた高級酒なんかよりも。こっちの方が、遙かに美味しいのは明らかだった。
「ずっと顔色が良くなっているね。 何かあったのかい」
「……そうだな。 まだ全てでは無いが、冷や水を被ったのかも知れない」
「そうかい。 それは良かったね。 悪い方向に戻らずに、そのまま良い方向に行こうと考えな」
「貴方には何度も世話になった。 だが、多分当分はこないと思う。 だから言わせてくれ。 ありがとう」
主人は頷くと、店の奥に引っ込む。
この様子だと、あと10年、この店が続いているかは分からないだろう。
詩花と一緒に飲みに来たかったが。
それも難しいかも知れない。
適当に酒も飯も切り上げると。
そのままアパートに戻る事にする。
なんとわびしい場所だとこの間は思ったのだけれど。
今は考えが違っていた。
一からやり直すために。
此処が準備されたのだ。
だから、此処でもういい。
此処から、何もかも一からやり直そう。
思い上がっていた自分は、詩花や玲音に叩き直された。
勿論すぐに人間なんて変わることが出来るはずがない。そんな事は嫌になる程よく分かっている。
例えば黒井が今すぐ社長に復帰したら。
どうせまた、悪事に手を染めるだろう。
それはもう、どうしようもないことであり。
自分でも分かりきってしまっているのだ。
だから、そうしないためにも。
黒井はこのわびしいアパートから、再起の一歩を踏み出さなければならないのである。
詩花が玲音が提案しただろう荒療治に乗ったのも。
黒井と大恋愛した母から。昔の黒井の事を聞いていたからかも知れないのだから。
驚くほど、ぐっすり眠れた。
最近は不眠気味で、睡眠障害用の薬を処方して貰っていたほどなのだが。
そして、朝は随分とすっきり目が覚めた。
何か、悪い夢をずっと見ていたようだ。
勿論、すぐに元になど戻れない。
黒井の中に染みついた黒は、もう黒井そのものとなってしまっている。
だから、このやり方で。間違っていた所は改めつつ。
勝つ方法を、考えて行かなければならない。
良い刺激を貰った。
だが、そんな刺激を私に与えた事を後悔させてやる。
そう黒井は考えていた。