ネムガキを書くのも、この話を入れてあと3話です。
かわいいね。
「おらっ!」
シスター服にはミスマッチなガスマスクに、近距離で銃弾を撃ち込む。
「ああもう、どうなってんだ?これは...」
撃っても撃っても沸いてくるこの怪物共。
キリがないけど、この病院には1匹たりとも入れてやるわけにはいかないっすね。
「だ、大丈夫ですか...!コノカさん!?」
「あー、平気っす!いざって時は2人をお願いするんで───!」
震える手で銃に弾を込める。
傷口はまだまだ痛むし、目を覚ましてから1日だって立っていない。
それでも、元公安副局長としてのプライドがある...!
「こっから先は1匹たりとも通さねぇっ...!」
──────────────────
RABBIT小隊や行政官たちと別れ、戦場へ向かう。
連邦生徒会に関しては彼女たちを信じ、こちらで自分たちのやることに集中するべきだ。
「じゃ、私は向こうの方角をやらせてもらうから...あっちはよろしくね。」
「む...1人で大丈夫か?」
公安局長が手をヒラヒラさせながら立ち止まった。
我々とは反対側をたった1人で?
いや...
「ほら、私はさ───」
「局長ー!!」
遠くから、何者かが手を振りながら走ってくる。
あの制服は...公安局か。
「ほら、私一応公安局長だからね。」
「...そうか。」
ヴァルキューレ警察学校と、SRT特殊部隊。
作られた当初は、お互いの手の届かない範囲を補うための組織だった。
権力と闘争の果てに、もう一度背中合わせで戦うことがあるなんて...想像もしていなかった。
彼女たちが反対側で戦っているというのであれば...安心して背中を任せられるだろう。
「では、健闘を祈る。」
「そっちもね。」
公安局長が小走りで走り去る。
...ひとつ。息を吐いてから、目標を見据える。
「...では、作戦概要を説明する。FOX2とFOX3は私と共に逃げ遅れた民間人を救助し、セーフティゾーンまで護送する。」
「「了解!」」
SRT特殊学園の廃校が決定し、カヤ防衛室長の命で動くようになってから...こんな命令など出した日はなかった。
上空から見た敵の大群...状況はハッキリ言って絶望的だ。
だが今の私たちに、諦めるという選択肢はない。
「FOX4はセーフティゾーンの周辺で見晴らしの良いスポットを確保し、狙撃の準備を。」
「了解!」
後輩たちが思い出させてくれた、SRTの誇り。
体現せねばならない。一度裏切った彼女たちに報いるためにも。
「救助が完了次第、全員でセーフティゾーンを防衛する。反対側は...ヴァルキューレに任せよう。大まかな作戦内容は以上だ。何か質問は?」
「大丈夫。絶対、成功させようね。」
「鬱憤が溜まってたところよ!」
「よーし、やるぞー!」
今までの私たちではない。何のために戦うのか、何の元に戦うのか...それが私たちに力を与えてくれる。
「では作戦行動を開始しよう。FOX小隊、出撃する!」
─────────────────
「局長!」
「やあ後輩ちゃん。」
息を切らして走ってくる彼女。やっぱり居たね。
「はぁ...はぁ...!あの、今みんな向こうで戦ってて!」
「うん。見えてたよ。」
ミヤコ小隊長の双眼鏡を借りた時に、よく見知った制服の集団がいるのを確認した。
警備局に、公安局だ。
2人して駆け出していく。
「...!局長!」
「局長来た!局長!災厄の狐とタイマンしたって本当ですか!?」
「実は七囚人と同等の実力を持つ局長だ!」
何の話??
「もしかして後輩ちゃん、見てたの?それでバラした?あとなんか盛られてない?」
「...すみません。でも黙ってこんなことする局長が悪いんです。」
うーん...色々言いたいことはあるけど、面倒だしいっか...
「警備局長、どう?」
「先程SRTの方が武器の補給をしてくださったので、しばらくは保つでしょう。しかし...いかんせん数が多すぎますね。」
補給...えっと、通信してたモエって人かな。
いい装備ばっかりだね。私も補給させてもらおう。
「民間人は?」
「皆避難しています。ここの防衛ラインが最前線です。」
ここを守り切る...それは現実的な選択肢なのか。
連邦生徒会が機能し、救援が来るまで保つかも分からない。
何か、これを引き起こしている元凶のようなものが見つかれば別なんだけど...
考えてもしゃーないね。
「...よっと!平気?」
「わわっ!...きょ、局長...!」
とりあえず前線に飛び込む。
不意打ちで喰らわせた1発は、カイザー風味の兵隊に直撃して膝をつかせた。
情報が足りないし、今はとにかく戦うべきだね。
「じゃあいくよ、ヴァルキューレ公安局。面倒だけど...私たちの本気、見せちゃおっか?」
「「はい!!!」」
────────────────
「クリア!」
「いくぞ!」
カイザーの兵が待ち構える廊下をひたすら駆け抜けていく。
「グレネード!」
『...弾いた、よ!』
銃撃を掻い潜り、放り込まれた手榴弾をもノンストップで捌いて突撃する。
「行政官、大丈夫ですか。」
「はい。付いていきますので、このままの速度でお願いします。」
「ゲホッ、ゲホッ...!ひぃっ...!もっと安全なルートはないのですか!?」
生徒会長室はこの先です。このまま追い詰めることができれば...
「モエ、ヘリから見てどうですか?」
『その階付近はみんなブラインド閉められてて見えないね。』
隠れているのでしょうか。とにかく時間がありませんので、突入するべきです。
「行きます!」
「...!気をつけろ!」
勢いよく扉を開けると、そこには数人の兵隊が待ち構えていた。
向こうも反応し銃撃が飛んできたため、遮蔽物に飛び込む。
「あれは...カイザーの特殊部隊ですか。」
「そうみたいだな。確かカイザーSOFとか言ったか。」
膠着状態に入ると、向こうから声がかかった。
「おい!俺たちはここの守りをプレジデントに任された最強の特殊部隊、カイザーSOFだ!無駄な抵抗はやめて、とっとと───ぶへっ!?」
......
『す、すみません...あまりにも隙だらけだったので、つい...!』
「ふ、ふざけやがって──ぐあっ!?」
ミユの狙撃で1人、2人と次々に倒れていく。
特殊部隊と言っていましたが...拍子抜けですね。
「いや、同じ意見だ。こんな雑魚とっとと突破して先に進もう。」
「はい...おや?」
同じ部屋の別の入り口から、1人が飛び込んでくる。
あれは...?
「カイザージェネラル...!厄災の狐に追い立てられて逃げてきたのかしら...?」
「はぁ...はぁ...!お、おいSOF!私を守──って、SRT!?」
何かに追われている様子です。
もっともこの先は袋小路ですが。
「お前たちもいい加減諦めたらどうだ!」
「ぐ...な、ならこれはどうだ!」
ジェネラルは上着のポケットを弄り出した。
「くくく...!お前たちは以前FOX小隊が押収した、サーモバリック爆弾を覚えているか!」
「なに...!?」
FOX小隊が押収したサーモバリック爆弾...
私がSRT特殊学園に入学する前の作戦で、SRT特殊部隊が無力化した爆弾のことでしょうか。
カイザーインダストリーが保管した条例に違反する強力な爆弾...弾道ミサイル用のサーモバリック弾〈A.N.T.I.O.C.N〉。
その危険性から、D.U.外に保管されていると聞いています。
「それは今、子ウサギ駅の地下に仕掛けられている!」
「なっ...!」
あれの影響範囲は、半径数kmに達するほどの大規模な爆弾です。そんなものを、駅の地下に...
でも、今あそこは怪物だらけのような。
...あとなぜかカヤ行政官が滝汗を流しています。
「...なあ、今あの周辺は皆避難してるんじゃないか?」
「私に手を出してみろ!このボタンひとつで爆発────あれ?」
ジェネラルが首を傾げ...焦り出した。
「な、ない!リモコンが...!」
「...よく分かりませんが、とにかく観念して捕まってください。。」
あの慌てようからして奥の手もないようですので、もう突破してしまいましょう。
早急に行政制御権を手にいれ、状況確認と支援要請を行わなければなりません。
「ぐっ...!ぷ、プレジデント!」
「待てっ!」
ジェネラルが助けを求めて生徒会長室のドアを開けた。
そこには、連邦生徒会長の椅子に鎮座したカイザープレジデントが───
ピッ。
「...い、居ない...?プレジデントはどこへ...?」
開いた扉の先には、誰も居ませんでした。
「ど、どういうことだ?俺たちはここを守るようにとプレジデントに言われたんだが...」
「プレジデント!ど、どこに...!」
ピッ。
「...!何だ?電子音が...」
ピッ。
まさか、プレジデントはジェネラルやSOFを囮にして...逃げ出した?しかし、プレジデント1人残ったとしても───
ピッ。
いや、違う!プレジデントは逃げ出しただけでなく、私たちを一網打尽に────!
ピ──────────!
「行政官ッ!捕まってくだ────!」
───────────────────
「......え。」
轟音。
銃撃音の中であってもハッキリと響きわたるそれを聴いて振り返る。
「そんな...!」
「う、嘘だろ...!」
連邦生徒会の建物が黒煙を上げ...崩れ落ちていく。
まるで、あの日のシャーレのように。
「っ...!」
奥歯を噛み締める。
RABBIT小隊と行政官たちは上に向かっていた。
あそこで何が起きた?
彼女たちが連邦生徒会を破壊するとは思えないし、災厄の狐だって今こんなことはしない...はずだ。位置的にも、あそこまではまだ辿り着けないだろう。
カイザーの自爆?プレジデントがそんなことを...いや、むしろ逃げ出したからこそ爆破して、連邦生徒会の機能を回復させまいとした?
「ちょっと離れるね!」
「はい!」
近くの高い建物を急いで駆け登る。
「っ...どこだどこだ...!」
...いた!黒い車が、怪物を避けながらどうにか走っている。運転席に見えるのは...やっぱりカイザープレジデントだ。
向かう先は...
「先生の居る、病院...っ!」
あんまりにも卑怯なやつだ。最後の最後で、あいつは先生を人質に取ろうとしている。
「...?」
待って。
ここから見ると...怪物の居ない箇所がある。
その中心部で何かがゆっくりと歩いているのが目に入った。
...女の子?
いや、怪物が居ないんじゃない。
あの少女の周りから怪物が現れて、外側へ向かっている。
そして彼女の進む先もまた。
先生の病院。
「......」
このまま戦ったらどうなるかは分かる。無限に近いこの怪物を前に、私たちはあまりに無力だ。
この状況をひっくり返すには、これに賭けるしかない?
「後輩ちゃーん!」
屋上から声をかけつつ投げ渡す。
「は、はい!?えっと...手帳?」
「後は、よろしくね!」
ここの防衛をする人数を減らせば、市民に被害が出る。
SRTは反対側。
連邦生徒会は崩れ去った。
残ってるのは私だけ。
「終わったら、1年くらいは休暇がほしいね。」