ネムガキのメモロビ、なぜこんなにも惹かれるのでしょう。
見るだけで疲れ目が回復するというか...
今から1年ほど前のこと。
突如、連邦生徒会長が失踪したとの発表があった。
キヴォトスの治安維持に多く貢献していた彼女の失踪は、多くの混乱を巻き起こした。
サンクトゥムタワー制御権の喪失。
連邦生徒会長直下部隊、SRT特殊学園の機能停止。
凶悪な犯罪者である『七囚人』の脱獄。
それと同時に、随分と珍しい存在もこの世界に現れた。
キヴォトスの外から来た大人。
連邦生徒会の組織、『連邦捜査部シャーレ』に所属し、困っている生徒がいれば東奔西走。
どんな学区にも現れ、困っている生徒に手を差し伸べてくれる存在。
私の元にだって現れた。ぐーたらな私のわがままにもよく付き合ってくれたね。
それが、『先生』。
銃火器の1発や2発大した怪我にはならないキヴォトスの生徒と違い、その1発が致命傷になりうる大人。
キヴォトス生まれキヴォトス育ちの私には想像もつかない。どんな気持ちで彼はこの世界に居たんだろう。
よくもまあそんな中で、あれだけ生徒を思いやって行動することができたものだと思うよ。
でも。
その結末が、これ?
あんまりじゃない?
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『明日、明後日共に晴れのち曇り──』
ぺらり。
『連邦生徒会本部周辺のD.U.に大型ショッピングモール建設予定。
施設内ではカイザーコンビニと同じポイントカードが───』
ぺらり。
紙を捲る音だけが聞こえる、朝の公安局。
『アビドス自治区でのみ観測された皆既日食!?
専門家は当該地域の異常気象と関連性を示唆──』
ずず...
『連邦生徒会、カイザーセキュリティとの業務提携によるD.U.の治安向上に成功したと発表。
引き続き銃火器に関する取り締まりを──』
...苦い。
やっぱりコーヒーは甘いものと一緒じゃなきゃいけない。ちょいと飴玉でも──
『先日発表された、先生に関する───』
「局長!」
「うわぁ!びっくりした...どしたの?」
気づくと目の前には、いつも通り眉をひそませた後輩の姿が。びっくり。
「いつまでも新聞読んでないで仕事してください。はいこれハンコ!」
「新聞は大事だよ〜?こういうニュースは知っておかないと、地域の安全はこういったところから守っていかなくっちゃ...」
お構いなしに山積まれていく書類を尻目に、言い訳を呟いてみる。
「そもそもまともに外に出る仕事がないのに、何が地域の平和ですか!」
「うっ...」
彼女はぷんぷん怒りながら自分の席に戻って行った。
「それに...ここは、公安局です。生活安全局じゃないんですよ。」
「......だよねぇ。」
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「本当ですよ部長!あの公安局の局長が!」
「信じてくださいよ!」
カイザーセキュリティの建物で、騒ぎ立てる2人組がいた。
「酔って転んだんだろ!昼間もプリンがどうたらと妄言吐いてたし!というか警備会社の社員がセキュリティキー落とすとか何やってんだよ!」
「だ、だからそれもアイツが...!」
その2人の前に立つ上司も、声を荒げている。
「大体な。あの公安局の局長だぞ?隙あらばサボり、1日中のんびりしてるようなあんなのに転がされたって言うのか?」
「うっ...!」
上司は呆れたように立ち上がった。
「公安局に力なんてねぇ。いや、あのガキを局長に指名して、うちの上層部は公安局を終わらせたんだよ。分かったら反省文を書け!」
「ひぃぃ!」
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「お、開いた。」
お昼頃。
昼休憩で社員の多くが出払っている時間を狙って、カイザーセキュリティのオフィスに忍び込む。
子会社だからか、その名に反してセキュリティは杜撰なものだった。
助かっちゃう。
「んー......」
カイザーPMCの装備ならともかく、カイザーセキュリティのものは統一規格の安物だ。手に入れるのはとても簡単。
これらをフル装備してしまえば、そうそう怪しまれることはないね。
「あっちかな。」
このオフィスは、元々大きめの雑貨屋だった物をリフォームして作られている。
カイザーが圧力をかけて立ち退かせた建物だ。まあ要するに、元生活安全局員としては構造をよーくご存じってこと。
倉庫になりそうなスペースを見つけて覗き込む。
資料室と書かれた小部屋だ。ここだね。
ざっと眺めてみる。整理されているとは言い難いし、思ったよりも資料の数は少ない。
「よっと。」
上の方にある資料を手に取る。
身長を誤魔化すために上げ底を履いているんだけど、悪くないね。なんか目線が新鮮。
ペラペラと流し見で捲る。
去年の武器の整備記録...巡回ルート...休暇申請...
あ、100日前の、巡回記録。
...いや、関係ない場所だ。
「...はぁ、やっぱないね。」
30分ほど物色した後パタンと本を閉じ、元の位置に戻しておく。
あの2人組から拝借したセキュリティキーでオフィスに侵入してみたはいいものの、ここに目当てのものはなさそう。
「お疲れ様でーす。」
「お疲れ。」
もうここに用はない。
変声機の挨拶をかましながら、堂々とオフィスを出る。
「ふぅ...あっつー。」
ヘルメットを脱ぐ。
残念ながら、カンナ局長が残した情報以上のものは見つからなかった。やっぱPMCの方じゃないと、重要な情報は得られないかな。
いつもの大通りに出る。人は居ない。
「......」
『実はその...うちも立ち退き、応じることにしたんです。』
明確なタイムリミットがある訳じゃない。
それでもカイザーは着々と勢力を伸ばし、ヴァルキューレ警察学校を、連邦生徒会を、街の人々を蝕んでいく。
その気配が、街や人に現れて。
「...焦るなー。」
パシンと顔を軽く叩いて余計な思考をカットする。
そろそろ昼休憩も終わりだし、公安局に戻るとしよう。
「...あとは、うちにいるお嬢さんに聞いてみるかな?」
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「それでは、お疲れ様でした。」
「お疲れ〜。」
本日の山積み書類を解体し終え、退勤の時間。
今日も書類以外に舞い込んできた仕事などなかったから、やっぱり死ぬほど肩が凝る。
「ふぅ...」
普段とは違う道をとぼとぼ歩く。
こちら側は街灯が少なく、月も雲に隠れて顔を見せない。
「えーっと、あっちか。」
薄暗い夜道だけど、目的地は案外分かる。
今思うと、こっちから尋ねたことはあんまりなかった。大体いつも...ふとした時に向こうから尋ねて来て───
「着いた着いた。」
立ち止まって、上を見上げる。
ここはかつて『連邦捜査部シャーレ』だった建物。
1階にはカフェやコンビニもあったこの場所は、当番の生徒や先生に会いに来る人たちでそれなりの賑わいを見せていた。
今や立ち入り禁止だけどね。
「......」
先生はここからすぐ近くの病院に、ずっと居る。
集中治療室の中で...誰も会えない。
不要となった崩れかけのこの建物は、崩壊しないよう工事が行われたのちに放置されている。
あの日以来。
「...あむ。」
昨日買ったグレーズド・ドーナッツを頬張る。
砂糖でコーティングされた甘い記憶は、先程まで職場の冷蔵庫にあったせいで...100日経っても溶ける気配がない。
「マスタードーナッツ、昨日で終わりだってさ。先生。」
あの日。
落とし物をした少女をこっそり手伝った帰りに、先生に買ってもらったグレーズド・ドーナッツ。
もう二度と見ることの叶わない思い出。
「......ん?」
ドーナッツを咥えながらぼんやりしていると、暗闇から足音が1つ。
「...あなたは、生活安全局の?」
随分と珍しい人影だった。
ああ...あの時も、先生に手伝ってもらったね。
「今は公安局だよ。えっと...SRTの、月雪ミヤコ小隊長?」