ネムガキはキリノやカンナ、先生以外を呼んでいるシーンがあまりにもない。あとワカモを災厄の狐と呼んだくらい。
カンナには局長って役職付けるから、とりあえずそんな感じで呼ばせているけどこれで正解なのか...?
「もむもむ。まあ味付けは悪くないですが、何ですかこのシナシナになった白菜は?エリートの私に食べさせるような野菜とは思えませんね。」
「うん、巡り巡ってあなたのせいなんだけどなぁ。」
うだうだと文句を言いながら白飯をかき込む彼女は、今も連邦生徒会長代行を勤めているはずの少女、『不知火カヤ』。
公安局総入れ替えにカイザーコーポレーションとの業務提携と...随分やりたい放題やってくれたお人だ。
「ふぅ...ご馳走様でした。食後のコーヒーをお願いします。」
お口をふきふきしながら、さも当然のようにコーヒーを要求される。
テレビで見てた時には分からなかったけど、この人こんな図々しい性格だったんだね。よくこれで生徒会長代行になれたもんだ。
「...その前に、そろそろ聞かせてもらおうかな?」
「む......」
────────────────
たった数日前のこと。サボり休憩と称して情報収集のため街を歩いていた時...
「は、放しなさい!この焼肉弁当は私のものですよ!」
「なにを!新参者であれば、まず我ら所確幸に挨拶がてら焼肉弁当を献上するのがマナーでしょう!」
「...ええ?」
テレビで見たことのある顔が、ホームレスとコンビニの廃棄弁当を取り合っていた。
「何あれ...?」
「所確幸...?知りませんよそんなの!私を誰だと思っているのですか!?」
「こっちこそ知りません!ただえさえ最近カイザー資本のコンビニばかりになって、廃棄弁当をくれるコンビニも少なくなったというのに...!」
...確かここ1ヶ月ほど、カヤ代行の姿をテレビで見ていなかった気がする。でも何でこんなとこに?
「ええい、所確幸の仲間たちよ!この無礼者に痛い目を合わせてやるのです!」
「ちょ、一体多数は卑怯じゃないですか!あ痛!ちょ、ちょっと!」
思考停止して眺めていると...どこからともなく現れた増援によってカヤ代行は轢かれ、華麗に焼肉弁当を奪われていた。
「うぐぐ...!ゆ、許しません...!」
ボロ雑巾のように打ち捨てられた行政官。
うーん...何が何だか分からないけど、とりあえず拾ってみようか?
連邦生徒会のトップに立っていた人だし、何かの役に立つかも。
「私が返り咲いた暁には...!この公園からホームレスを一掃してやりますから...!」
役に立つ...かなぁ?
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「......戻りました。」
「あ...ミヤコちゃん...」
SRT特殊部隊のために用意された豪華な部屋。
公園での野宿より何倍もマシで...それでもいまだ慣れることのない寮に帰る。
「ミユ、先輩方は?」
「えっと...今日は夜間訓練をやるって言ってたから、戻ってくるのは朝だと思うよ...?」
FOX小隊の先輩方は居ない。なら、聞かれる心配はないですね...
未だに整理のついてないこの話は、先輩方にはまだ話せません。
「...ミユ。」
「...?」
いえ...もしかしたらミユにだって、迷惑がかかるかもしれません。
1歩間違えれば、これは連邦生徒会への叛逆になりうる話。
「あなたは...どうして、RABBIT小隊に残ってくれているのですか?」
あの日からずっと聴きたかったことを、ミユに問いかける。
モエもサキも、姿を消した。
理由は分からない。何も聞いていないのだから。
でも。
思い至る節はある。
彼女たちは。
私を─────
「ミヤコちゃん。その...私は...」
「......」
ミユは少し悩んだ後、ぽつぽつと言葉を紡いだ。
「私は...RABBIT小隊が良いなって、思ったの。」
「...それは。」
「こんな私を受け入れてくれて、みんなで色んなことをしたでしょ?」
「SRT復活のために、市民のために...戦って、それで...」
「...せ、先生が居なくなって。」
「っ...」
言葉を探っているのが伝わってくる。私に、ちゃんと意味を伝えられるように。
「でも、先生が居た頃の思い出は綺麗で...私は。」
「ミユ...」
「否定したくなかったの...あの頃の私たちを。」
いつものとは違う、しっかりと見据えた彼女の瞳。
「きっと、2人もそうだよ。」
「え...?」
私の元から離れた、あの2人も...
同じ?
......
「ミユ。」
「?」
「今日、公安局の局長に会いました。」
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「ふーん。それで、逃げて来たんだ?」
「ぐっ...!そ、そうですよ!あんなに便宜を図ってやったというのに...!」
事情を話した彼女は、恨みつらみといった表情を剥き出しにしている。
「まだカイザーは発表していないようですが、もう連邦生徒会のトップに私はいません!」
「ふぅ...これはもう、生徒会はほとんどがカイザーに乗っ取られてるね。」
彼女が言うには...1ヶ月前、カイザーPMCのトップであるジェネラルとの会談中に突然襲撃を受け、拘束されたらしい。
しかしその場に居合わせた体育室長が暴れ出したために隙ができ、這う這うの体で連邦生徒会から逃亡したのだという。
「何故こんなことに...!お金を渡していたのですよ...!?」
「まあ、必要無くなったんじゃない?」
先生という厄介な存在が居なくなり、公安局も力を失った。
後はこのワガママな代行と付き合っていくリスクを天秤にかけて、拘束して乗っ取る方が楽だと考えたんじゃないかな。
わざわざ失墜ではなく拘束を選んだのは、SRTへの命令権を維持させるためかな...?
「...ねぇ、先生の事故ってさ。」
「先生の...ああ、あれは残念な事故でしたね...もう少しこの私、『超人』による治安維持が早く施行できていれば、と思います。」
超人...?まあ、それは置いといて。
「......」
「...?」
彼女の目をじっと見つめてみると、困ったような表情で小首を傾げられる。
うーん、どうなんだろ。あんまり彼女がやったようには思えないし、やっぱカイザーの独断かな...
「はいコーヒー。」
「あ、ありがとうございます。」
しかし、この様子じゃ根幹の情報は持っていなさそう。仮にも連邦生徒会長代行だったのに...
「それじゃあもう1つ。公安局長の逮捕状が出た時なんだけど...」
「えっと...あの時はFOX小隊の出動要請があって、戦闘になったのちに確保しましたね。ですが...!」
「確保?」
カヤ代行はまたもや怒りを露わにする。
「そうなんですよ!奴らせっかく捕まえた犯人を、ちょっとFOXが報告してる最中に逃したとかほざいたんです!」
うがーっ!と声に出して地団駄を踏む代行。
逃したというのは...なんだろう?
カンナ局長を、生徒会内の矯正局送りにすることを防ぐ嘘かな。
...うん、みんなの居場所がだんだん絞れてきた。
「ねぇカヤ代行。このままでいいの?」
「な、何ですか?いい訳ないじゃないですか!」
とりあえず聞きたいことは聞けた。後はどうこじ開けるか...
「返り咲くんでしょ?気が向いたら手伝ってあげるかもね。」
「!...あ、あなたは...」
使えるものは何でも使おう。一公安局員のできることなんてたかが知れてるんだから。
「あなた、コーヒーの趣味が悪いんじゃないですか?これでは困ります。私としてはやはり最高級のブルーマウンテンでないと...」
「そろそろ怒っていい?ダメ?」
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誰も知らない砂漠の真ん中で、死神が降り立つ。
「『色彩』がついに、死の神
「色彩を導いたことが、苦しみなのか死をもたらすのかは分からぬ、だが...これで最後。」
「『忘れられた神々』をこの世界から追放できるようになった...この世界に、終焉を呼び寄せられるのだ。」
歩き出す。
今の今まで、一歩踏み出す気力すら尽きかけていたこの身体を、得体の知れない力が巡る。
「これからお前は、己の『恐怖』でこの世界を塗りつぶしていくだろう。」
「『色彩の嚮導者』と成り、あらゆる存在を無に帰すまで。」
意識が眩み、視界が揺れる。
それでも。
行くべき場所は分かっていた。
嚮く方へ。嚮かう方へ。
日食が囁く。
物語に縫い付けられた、楔の主を塗りつぶせ。
不完全だとしても、まだ『終わって』いないそれを引き抜いて。
このテクスチャーは、それで終焉を迎える。