ネムガキって制服着崩さないし無線とか警棒とかもちゃんと持っていくし、一見真面目そうでかっこいいね!
「おはようございます。」
今日も今日とて公安局に出勤する。まだ局長は出勤していない。
納得のいかない仕事ばかりではあるが、どこかの誰かさんみたいにほっぽり出す気にはならない。
こんな有様であっても、ここはヴァルキューレ警察学校の公安局なのだから。
朝はとりあえず警察学校からの連絡メール確認と、昨日局長がサボってやり残した書類を片付けて...
...あれ、電話だ。
こんな朝っぱらから珍しい。まあどうせ、カイザーPMCかセキュリティへの中継ぎなんだろうけど。
「はいこちら公安局......え?」
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「おはよ〜。」
「あ、局長!ちょ、ちょっとこれ!」
シャーレ跡地でRABBIT小隊の子と会ってから数日後。
あくびをしながらいつも通り公安局に出勤すると...職員のみんなが、めっちゃ武装して大慌てしていた。
「と、とにかく見てください!さっき電話もあったんですけど...これ!!!」
「ど、どしたのさ〜?」
彼女が指差したパソコン画面には、警察学校や連邦生徒会から送られてくる連絡ツールが映る。
そこに書かれていたのは、随分と珍しい文言があった。
「【緊急】七囚人、狐坂ワカモの襲撃発生。公安局と警備局は至急出撃を────?」
「つ、ついに我らが公安局にも出動命令ですよ!局長も急いで!」
七囚人、狐坂ワカモ。
破壊と略奪を好む凶悪な犯罪者で、連邦生徒会長が失踪した際に脱獄した七人の1人であることから、七囚人のひとりに数えられている生徒だ。
彼女はシャーレの事件以降...このような襲撃事件を度々起こしている。
「またか...って思ったけど、今度は私たちも出撃なんだね。」
襲撃が起こるたび、ヴァルキューレやカイザー、連邦生徒会と所属を問わず多くの被害を被ることになっているのが現状だ。
彼女の恐ろしさは折り紙つきで、彼女ひとりの逮捕に関してSRT特殊学園のエリートであるFOX小隊が動いたというのだから、彼女の二つ名『災厄の狐』に偽りはない。
「局長、確か災厄の狐と戦ったことあるんでしたよね!?昔の資料で、生活安全局の出動がある事件を見た覚えが...!」
「えっと、うーん...戦ったっていうかぁ...」
まあ戦ったといえば戦ったかな?
でもあの時の彼女は、会った途端気絶したり...かと思えば即逃亡したりとよく分からなかった。
でも、今は違う。
「き、緊張します...!私が入局してからも災厄の狐による襲撃はありましたが、公安局には後方待機命令しか出ていなかったので...!」
「何度も痛い目見てるから、カイザーもメンツより実益を取ったんじゃないかな。」
シャーレの事件以来、狐坂ワカモにある変化があった。
一見は以前と同じく、連邦生徒会との敵対関係にある状態だけど...その攻撃性がかなり激化している。
「よーしみんな、準備できたー?」
「「「局長以外みんなとっくにできてます!」」」
以前は衝突といっても、逃げるワカモを追うためだったり...連邦生徒会に嫌がらせをするための攻撃だったりした。
今は...明らかに、連邦生徒会の機能停止を目的とした破壊活動と化している。
「おやつは300円までね。」
「遠足じゃありませんから!」
それは先生というストッパーが居なくなったせいなのか、はたまた別の理由か──
「あ、ちょっと電話ー。」
「局長早く!!!」
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「...よし。」
「み、ミヤコちゃん...あった...?」
目当てのものを手に取って、誰もいない生活安全局を後にする。
「ありました。すぐにでも出発しましょう。」
「う、うん...!」
装備を確認する。どのような状態であっても、SRT特殊部隊はすぐに臨戦体制へ移れるよう訓練を受けているため、不備はない。
「私はしばらく前線で戦った後、作戦行動に移ります。ミユは立ち位置的に見られることはありませんので、手筈通りの場所へ。」
私の決断が鈍り、すでにこれほどまで凝り固まってしまった連邦生徒会の体制。
シャーレ事件の真相、公安局長たちの行方。
...手遅れになる前に、どこかで突き崩さなければ。
「合図があるまでどうにかお願いします。その後は即座に撤退し、彼女と行動を共にするように。」
「うん...!ミヤコちゃんは、1人で大丈夫...?」
あの日、テレビの前でみた先輩方の活躍を思い出す。
SRTの『正義』。今私は...その立場に立っているのかも分からない。
「大丈夫です。元より交戦はそこそこに撤退する予定ですので。」
それでも、こうして燻っていることが正解だとは思えません。
「では...RABBIT1、RABBIT4、作戦行動開始します。」
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「来たぞ!防衛ラインを突破させるなよ!」
「おー、やってるねぇ。」
戦車にヘリ、銃火器を持った女子高生が闊歩する前線。すでに到着していたヴァルキューレ警察学校の警備局が、押し寄せる不良たちと交戦を始めていた。
これこそキヴォトスの日常といったところだが、肝心の狐坂ワカモの姿はない。
「あの、災厄の狐は...?」
狐坂ワカモが災厄の狐と呼ばれるのは、その卓越した戦闘能力も理由のうちではあるのだけど、それだけじゃない。
特筆すべきは彼女の持つ扇動能力。
彼女はいとも容易く兵を作り、意のままに操る。
「見た感じそこいらのスケバンばっかだね。まあ本命とぶつかったってしょうがないから良いんじゃない?」
「そ、それはそうかもしれませんが...」
そうはいったけど、狐坂ワカモが突出しているだけであって...うちが弱いってわけじゃない。
自慢じゃないけど、ヴァルキューレ警察学校の生徒はカイザーの雑兵よりよっぽど戦える。
元の能力が違うのもあるけど、仮にもこのキヴォトスで治安維持組織に入ろうだなんて思う人たちなのだ。それなりに戦う覚悟を持ってる。
それにカイザーの締め付けが始まってから、以前より銃の訓練室の利用数が目に見えて増えていた。
要するに皆、多少なりと鬱憤も溜まっているんだね。
「んー...公安局は二手に分かれて、抜けようとする不良を抑えつつ戦場を狭める感じで動こうか。あんま無理しないようにねー。」
「「は、はい!」」
公安局員がそれぞれの持ち場に向かっていく。
まあ大丈夫じゃないかな。士気も高いし戦力差もこちらが上っぽい。変なことにはならないでしょ。
「おや、合歓垣局長。お疲れ様です。」
「どうも、警備局長。お疲れ様ー。」
指揮をとっていた警備局の局長と話す。彼女もまた、カイザーによる支配の被害者だろう。
「どう?戦況は。」
「問題はなさそうです。災厄の狐が来そうな場所は皆カイザーの担当なのでね。不良を抑える助力は欲しいですが、捕縛の功績はこっちのものだ──といったところでしょう。」
メンツを重要視する奴ららしい配置だ。混合されるよりよっぽど動きやすくて良い。
「...警備局長。うちの子たち、ちょっと任せても良い?」
「...?ええ、構いませんが。」
彼女の想定通りであれば、そろそろ向かわないと間に合わない。
「じゃ、お願いするね。来ないとは思うけど、もしワカモが来たら適当に流して撤退命令よろしく〜。」
「了解です。」
駆け足でその場を離れる。
急に来たこのチャンス、逃すわけにはいかない。
「あ、あれ...?局長、どこに向かって...?」
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「準備はいいな、ニコ。クルミ。オトギ。」
人の気配がない静かな空間で、4人の少女が息を潜める。
「災厄の狐はこれまで...不良をけしかけた後、隙のある場所を突いて防衛網を突破してきた。今回最適な場所は、ここだ。」
彼女とは数回交戦したが、その苛烈さと反比例するように、精細さの欠いた動きが見られる。
「正面から当たりさえすれば、捕縛は容易ってことね。」
「今度こそ完全に仕留めてやるわ!」
連邦生徒会長がいた時の狐坂ワカモとは、明らかに弱体化している。
この森を抜けて、カイザーの裏を掻こうとした彼女と...この場所で必ず接敵するはずだ。
「ユキノちゃん、大丈夫?」
「...ああ。何も心配はいらない。」
私たちは武器。
私たちは正義。
私たちがそうある限り、SRTはSRTでいられるのだから。
「来い、災厄の狐。」
お前を捕縛して、再びSRTの価値を証明する。
ザザッ────
『...い!おい!何をしているFOX小隊!こっちで災厄の狐が暴れてる!早く来い!』
「なっ────!?」
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覚えているのは。
優しい声。麗しい瞳。
全てを愛おしく包み込む、世に2つと存在しないほどの慈愛の心。
彼が居るだけで、世界の全てが輝いて見えた。
次に覚えているのは。
黒煙。破壊。
燃えるような怒りが、あの日から私の全身を包み込んで離さない。
ああ、貴方様。
必ずや私が、貴方様に害を及ぼす害虫共を根絶やしにして────
「お久しぶりー。災厄の狐さん?」
「...おや、ヴァルキューレですか。」
木陰から、1人の少女が姿を見せる。
スケバンを動かした後、比較的手薄となっていたこの森を抜けようとしていましたが...こういった手段は何度も取りましたし、流石に学習されてしまいましたか。
「覚えてたりしない?前に1回だけ話したことが...無かったっけ。あれは変装したスケバンだったんだよね。でも会ったことはあるよ?」
「残念ですが、記憶にありませんね。」
しかし、1人だけ?
動きを読まれたというわけではなく、偶然居合わせただけでしょうか。
でしたら、呼ばれた増援が来る前に捻じ伏せれば...何の問題もないでしょう。
「そっかぁ...でもちょっとお話しとかしてかない?ほら、ドーナッツもあるよ。これ冷凍のドーナッツなんだけど中々の味でさ。流石ミレニアムの技術...ってうぉあ!?」
「今の私に、無駄口を叩いている時間はないのです。」
打ち出した弾丸がドーナツの輪を潜り抜ける。
寸前で避けたヴァルキューレは...しかし、後ずさる気配を見せない。
「ひえー...でもちょっとだけ話聞いてくれないかなぁ。誰だったら聞いてくれる?例えば───」
「害虫の走狗に効く口など。」
お互い同時に、銃口を向け合った。
「『狂犬』の名は、一度くらい聞いたことある?」
「『狂犬』...?ええ、あります。交戦したことも。それで?」
───────。
「まさか貴方が、そうだとでも?」
「まさか...ねっ!」
静かな森で、火薬の音だけが炸裂した。