ネムガキはなんでそんなにほっぺが伸びるのか?
そりゃポン○リングを食べてるからでしょ。
つまりヒヨリも食べてるね。犯人は先生。
「うひゃー、すっごい豪快...」
派手に吹き飛ばされたカイザーPMC基地の入り口を眺める。
ベッコベコに折れ曲がった分厚い扉が無惨にも横たわる。やったのは十中八九、災厄の狐さんだね。
「ミヤコちゃん、無事撤退したみたい。」
「おっけ。じゃあ二手に別れようか。」
向こう側も心配だったけど、流石にFOX小隊もこちらの基地を優先するよね。
優秀な狙撃手さんとは別れて潜入する。
基地は広いし、彼女もその性質上1人の方が動きやすいよねきっと。
「えっと、こっちは...うわぉ。」
狐坂ワカモの通った道がはっきりわかるほどの破壊っぷりだ。セキュリティのためのドアも、原型を留めていない。
侵入を知らせるサイレンだけがうるさく鳴り響く。
「たぶんワカモは中央司令室とか、武器庫とかに行ってるよね...」
彼女の大破壊に色んなものが巻き込まれていないか心配だけど...とにかく、彼女の足跡からちょっとズレたルートを通る。
待機室、食堂、喫煙...
...あ!
「資料室だ...!」
鍵穴を撃ってドアをこじ開ける。
カイザーセキュリティのものより数段大きな資料室。
ここなら、あの日の真相に辿り着ける資料があるかもしれない。
今の連邦生徒会を覆せる何か...!
「どれ...!?」
乱雑に資料を引っ張り出して捲る。
前にカイザーセキュリティで探した時ほど時間はないし、その上資料は多い。
FOX小隊が到着するまであとどれくらいある?特殊部隊の移動速度を侮っちゃいけない。
焦りが募る。
「違う...!これじゃない!えっと、えっと...!」
いや、もっと奥!
認証が必要な扉がある...!
「ここ...!?」
蹴破って本棚を漁る。
こっちはそう多くない。端っこから...
『カイザー特殊部隊SOF設立計画──』
『カヤ防衛室長との密約──』
『子ウサギ駅の地下に設置された──』
.....!!
これ、は...!
『カヤ連邦生徒会長代行は、シャーレとの業務提携に失敗。』
『これ以上の彼女への支援は不要と判断。拘束し、しばらくの間は名義だけを使用しSRTに命令をだすこと。』
『当初のプランに変更。シャーレの先生は戦闘能力もなく、銃撃のみで処分が可能である。ただし...』
『以前報告にあった、弾丸を逸らす力を考慮し。』
『█月██日 シャーレビルの爆破を───』
───────────────────
「プレジデント。こちらです。」
カイザーPMC基地から車で10分ほどの支部。
災厄の狐侵入の報告が入った時点で、カイザーコーポレーションのトップであるプレジデントは脱出をしていた。
────
「やれやれ...SRTの無能どもめ。手負いの狐1匹捕えられんとは...」
まあ良い。
あの基地はカイザーPMCの中でも最大の基地だったが...以前からD.U.内では土地の買取を行い、複数の支部を既に作ってある。
大きな問題はないだろう。
どこを潰しても、別の場所から代理を立てて他企業の参入を許さない。これこそが我がカイザーコーポレーションの強みである。
「もうSRTは必要ないな。カイザー直属の特殊部隊『カイザーSOF』があるのだから。」
「その通りでございます。」
次なるプランを練る。いくら災厄の狐といえど、そうすぐに再度仕掛けてくることもあるまい。
「カヤ代行の権限も必要ない。適当に不祥事を作り上げて更迭したことに...いや、作り上げる必要もないか?
とにかく、数回の連邦生徒会所属生徒の不祥事を理由に私がトップに立つ。」
部下の用意した車に乗り、連邦生徒会本部へと向かう。
あそこは既に多くの社員が懐に潜り込んでいる。我がカイザーコーポレーションが支配したも同然だ。
「それから、今回の戦いで損耗した兵力の補充をするようジェネラルに連絡しておけ。アビドスやその他の学区に建てている支部からも引き上げさせる。今は他の学区に構ってる暇はないからな...」
「そ、その...プレジデント!」
パソコンを確認していた部下が、何か情けない声を上げた。
「どうした。」
「それが、各地の支部と現在連絡が取れず...!送られてきたメッセージでは、何やら向こうでもトラブルが起きているようでして...!」
トラブルだと?今この時点において、ここD.U.の騒動より優先すべきものがあるとは思えんがな。
「ええと...ミレニアムではロボットの暴走により、生徒会長が緊急事態宣言を...ゲヘナでは、風紀委員長が行方不明になり治安の急激な悪化...トリニティはうちの支部がないのでよく分かりませんが...」
「ふむ...?」
これは一体...?
「支部が1番多いのはアビドスのはずだが、そこは?」
「わ、分かりません...アビドスとは一切通信ができていないようです...」
何が起きているのか...まずは情報収集が先決のようだ。
どのみちそれは、私が連邦生徒会長の座に就くことで解決するだろう。
「飛ばせ。」
「は、はい!」
────────────────────
「そろ〜り。」
忍び足で連邦生徒会の玄関を潜る。
ふふ...カイザーも詰めが甘いですね。私はまだ解任はされていないので、IDカードは有効なのです。
「...!またカイザーの兵ですか。」
帽子を深く被って柱の影に隠れる。
連邦生徒会だというのに、見渡せばカイザーから派遣された兵士ばかりが闊歩している。
何とも情けない組織になったものです!
とはいえ、先ほどニュースで見た災厄の狐騒動によってあらかた出払っているように見えます。しかも防衛網をすり抜けられてしまったとか。
つまり...私が返り咲く千載一遇のチャンスですね...!
この私、『超人』である不知火カヤが生徒会長室に辿り着き、ひとつ放送でもすれば...生徒会所属の皆さんが私に従い、裏切ったカイザーをたちまちに追い出してくれるはず。
「...カヤ代行?」
「うわっ!?」
身を潜めていたところ、急に背後から声をかけられて心臓が跳ねる。
「あ、アオイ財務室長!?」
「体調不良のため在宅業務との話を聞いていましたが、今日から復帰ですか?というか電話1つ繋がらないのはどうかと思います。」
彼女の顔を見るだけで嫌な思い出が蘇る。
私が連邦生徒会長代行の座に着き、優雅にコーヒーを嗜み優越感に浸っていたところ...彼女、アオイ財務室長が書類の訂正しろと鬼電をかけてきたのだ。
やれアラビア数字はやめろだの、やれ捺印が読めないから全部やり直せだの...
「それと七神リン行政官は謹慎中とのことですが、そちらも連絡がつかないのは一体────」
「そ、それは...って、ああっ!」
「あれ、不知火カヤじゃないか?」
「そういえば捕縛命令が出てたような...?」
ま、まずい...!カイザーに見つかってしまった!
せっかく逃げおおせたというのに再度収監されてはたまりません!
「ちょ、ちょっとこっち来てください!アオイ財務室長!」
「?...あの、私もまだ公務が...」
財務室長の手を取って走り出す。
「逃げたぞ!」
「とりあえず捕まえろ!」
どこへ向かえば...!?
最上階の生徒会長室は...うわっ!上からもカイザーが!邪魔すぎます!
「これは一体どういう状況かしら?何故カイザーがあなたを?」
「えっと...!それは、ですね...!」
やっぱり引き返して出口...は無理ですよね!
み、味方がいる場所...どこか...!
「そっちは矯正局ですが?」
「...!そ、そうです、私たちは矯正局に向かうのです!」
思ったよりも連邦生徒会はカイザーに侵食されまくっていました。もうなりふり構っていられません、1人でも多くの味方を探さなければ...!
「リン元代行は謹慎中ではなく、カイザーによって矯正局に収監されているんです!」
「なっ...!?」
うう...!ほんとは死ぬほど嫌ですがカイザー共に捕まるよりはマシです!あのデカ乳女を解放する他に手段が...!
「七神リン元連邦生徒会長代行を開放し、カイザーを追い出すのです!」
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ザザッ───
「...ええ、不良たちが撤退していきます。これ以上の深追いは必要ないでしょう。」
ワカモがカイザーPMC基地を襲撃し、FOX小隊の居なくなった戦場。
こうなればただの小競り合いです。大きな損害が出ることもなく戦闘を終わらせることができました。
「ワカモは撤退したようですね...基地の主要機能は壊滅状態...2人は無事でしょうか。」
通信を切り替える。
「...もしもし、ミユ?そちらの状況はどうです?」
こちら側から見ると作戦は成功です。
この状況からして、彼女たちは狐坂ワカモの足止めに成功したのでしょう。
想定通りであれば今、2人はワカモが破壊した跡で様々な証拠や行方不明者の捜索を行っているはずです。
...少し調べましたが、記録にあった過去の合歓垣フブキさんからは想像もつかない戦果です。
『....、......!』
「はい、FOX小隊に見つからず脱出はできたと...それで......
えっ!?
行方不明の3人が見つかった...?これは、完全にカイザーが黒といって問題ないでしょう。
とにかく今は彼女たちと合流し、今後の動きについて話し合わなければ。
『......!』
「なっ......!」
しかし最後に、掠れて聞き間違えたのではないかと思うような報告があった。
「い、意識不明...!?」
──────────────────
飢えも渇きもなく。
茹だるような昼の日差しも、凍えるような夜中の風も、既に意味をなしていない。
一歩ずつ。足を進めるごとに、私を私たらしめる何かが抜け落ちていくのを感じる。
「...ば、化け物...」
「......」
気がつけば...原型の留めないビルに、倒れ伏したロボットたちの山。
理由は分からないけど、何となく彼らは存在してはいけない気がした。これは今も抜け落ちていく私のカケラがそうさせているのだろうか。
いずれ、それもなくなると思う。
何の区別もなく...目に入った全てを常世へ導く、私の裏側が。
そして今も視える日食の囁きが導く。
箱の主へ辿り着き。
物語の定義を覆せ。
逃げて