前作の続編小説です。
王太子の乱による真田領の戦いから十数年後、王太子妃教育が学園の入学前に全て終わり、母親の兄であり皇帝である伯父と通商条約の細かな打ち合わせと街道整備の現地調査に加え、王立の学園には行かずに二年前から帝国の学園に留学中で婚約者のリオン王太子の卒業パーティーの日程に合わせて一時帰国して参加をした時の出来事だった。
「セレーナ・伊達伯爵令嬢は居るか!」
「はい、リオン様。手紙にて知らせたはずですが、訂正しますが、わたくしの名はセレーナ・フォン・ダリア・伊達ですわ。」
卒業パーティーに合わせて来ている帝国の使節団がいる貴賓席から凛々しく出て来たのはセレーナだった。
何故、セレーナが学園の在校生の席からではなく、帝国の使節団がいる貴賓席からなのか疑問すら持たない王太子と王太子の取り巻き貴族の子息達数名。何故、貴賓席からなのかを理由を知るのはセレーナと付き合いのある貴族令嬢や他の貴族の子息達からは失笑が零れていた。
そして、セレーナが留学中に帝国の皇女の証明する名を引継ぎ、男爵令嬢のマリアと浮気を行う王太子達には気付かなかった。
「マリアを虐め、階段から突き落として殺そうとしたセレーナは国母に相応しくない!!よって、マリアを新たに婚約者とし、セレーナとは婚約破棄する!!」
「婚約破棄、承りましわ。でも、学園に入学する二年も前から帝国に留学してましたのにどうやって、虐めたのかしら?」
「うるさい!! マリアがセレーナが虐めたと言ったのだから、虐めたと言っているのだ!!」
実際、セレーナは王太子妃の妃教育が終わっている為に先取り教育の一環として王太子妃の仕事を行っており、留学中でも王太子妃の仕事を熟しながらも皇女の名を引継いだ為に皇女の仕事もしていた。更に帝国からの帰国は馬車を走らせ続けてパーティーにギリギリ間に合う昨日の夜に王都の真田辺境伯爵邸に着いたのだった。
(伯爵家の自分の優秀な侍女と帝国の留学中に伯父の皇帝に付けさせられ皇女専属の女性秘書官が分単位でスケジュールを組む為に虐めすら不可能だった。無論、真田忍軍を使っての虐めも出来るが、セリーヌに忍軍使用の権限は無く、当主から認められているのは街道整備での危険箇所の調査や素行調査などの諜報活動のみだった。勿論、身辺警護も省かれている)
卒業パーティーにて王国の南部貴族のマリア・フォレスト男爵令嬢の腰に抱き寄せながら高々と宣言するのは、またかと思いたくなる様なこの国のリオン王太子だった。
セレーナの実家は寄親の真田辺境伯爵家の領内を守護しながらも帝国との国境を守護している伊達伯爵家の令嬢だった。
父親は戦国武将でもあり、伯爵家当主の伊達政宗。
母親はメアリー・フォン・ダリア・イラストリアの名前で隣国のイラストリア帝国の第二皇女だった。
勿論、真田辺境伯爵領内とイラストリア帝国の国内ではおしどり夫婦として有名であり、マツモトシティの領主の真田幸村伯爵の妻のアンジェリカ夫人とも仲が良く、真田領内の辺境伯爵邸であるウエダ城にて辺境伯爵を継いだ兄の信行の妻の稲姫を交えてお茶会をする程だった。
当初、メアリー第二皇女(当時、13歳)は内乱の勝者だった真田辺境伯爵家かヘンリー公爵家の何方かとの政略結婚の予定だったが、ヘンリー公爵の次期当主は継承権があるアンジェリカ夫人か、その子供と決まっていた。
アンジェリカと幸村の間に出来た子供は二人の姉弟で、公爵家を継ぐ予定だった長男景信がまだ幼くて断念し、もう一人はマツモトシティの真田家の後を継ぐ予定の長女ヘンリエッタで女性だった為に駄目だった。
なら、兄の信行の子供はと打診したが一人娘の小松も女性で無理だった。
子供が駄目なら真田兄弟にと打診するも兄弟揃って妻を溺愛中だった為に嫁入りは断られたのだが戦後に伯爵へと昇格し、未だに領内で未婚だった伊達政宗に白羽の矢が立つ形で嫁入りしたのだった。
政略結婚の理由は、大軍だった王国軍を少ない兵で弾き返せる真田家の兵が赤備えを許される程に高い練度と王太子の乱でサナダ辺境伯爵軍の足軽兵が用いていた鉄砲や大筒の威力を皇帝自身が恐れイラストリア帝国に向かせない為だった。
当時領主だった真田昌幸から話しを聴いた政宗は喜んで婚約に飛び付いた。国境を守護する上で、常に伊達家と真田家の常備兵が砦を守るのだが、資金と兵糧を心配する必要と王国軍が攻めて来た際に伊達家の主力は常に国境の砦だった為に砦の防衛に必要無かった騎馬隊と鉄砲騎馬隊の二千しか出せなかった事が不満だった。
そして、メアリー第二皇女との結婚は国境を守る必要が無くなり、あの戦での歯痒さを味わう事無く全力の伊達家の恐ろしさを味わせられるといった内情から正に渡船だった。
真田辺境伯爵家とヘンリー公爵家の両家に許可を取り、砦の内装をメアリー第二皇女へのおもてなしの為だけに改装を開始。改装が終わる翌週には、関の砦にて伊達家が主体となり帝国から来たメアリー第二皇女一行を歓迎する。
晩餐には政宗が自ら手料理を振る舞い、食べる事が好きなメアリーは政宗の手料理の和食に目を輝かせ美味しいと食べて意気わいわいと談笑。食後では、更に談笑しながら二人は意気投合する。
意気投合した二人は、婚約期間を設けずに直ぐに結婚し、溺愛して翌年に産まれたのがセレーナだった。
普通なら、リオン第四王子は後継ぎにはならない。いや、元からの高い暴力性と傲慢な性格から王太子にはなれないと言った方が早い。だが、王家には四男二女の子供が産まれていたが、長男は十数年前の内乱の主犯となり斬首により死刑。
他の次男と三男の兄二人は長男に無理矢理に真田領攻略戦に連れて行かれ、『真田の鉄砲水』と呼ばれるダムから放流された濁流に王国軍の本隊と一緒に流され戦死。
姉である二人の王女は頭が良過ぎた為に戦後の王家の権威の失墜と財政難による予算不足による政策不順により政策対象だった南部貴族の不満が噴出。他貴族から突き上げを喰らう王家の今の現状と権威の立て直しが不可能で王家の滅亡の未来しかないと理解して絶望し、出家して修道院に二人の王女姉妹は逃げたのだった。
そして、残る第四王子であるリオン王子以外の後継ぎが居なくなった為、リオン王子の性格的な問題から退位出来ない現国王とへンリー公爵家や真田辺境伯爵家との和平の象徴の為に帝国の皇女が嫁入りした伊達家の後継ぎのセレーナとの婚約が一つ目の理由だった。
王家との和解よりも先に真田領とヘンリー公爵領は、二面作戦を嫌い帝国と講和を結び一時休戦したが、メアリーの父親の先代の皇帝がお忍びにてマツモトシティにて真田領防衛戦を宿から眺め観ており、あの兵器達が自分に向くよりはマシだと休戦より終戦を選びメアリーを帝国と両家の和平の象徴として嫁入りさせてイラストリア帝国との終戦。
王太子のリオンと結婚して王太子妃に成るなら王国と争う必要が無くなり、貿易の拡大とイラストリア帝国と繋ぐ街道整備と新たな通商条約をイラストリア帝国と王国とで新たに締結する為が2つ目の理由だった。
そして、今現在婚約破棄されたセレーナは内心、父親の性格を継いだのか激情に燃えてはいたのだが、母親の穏やかな性格が災いして冷静だった。
「雫」
「はっ、お嬢様、報告書は此方に」
セレーナが一人の名を呟くと、隣には真田忍軍のくノ一(女性の忍者)が一瞬で現れて報告書の束を渡して姿を消す。セレーナはガヤガヤと騒ぐ王太子と取り巻きを無視しながら学園内での王子達の素行調査の報告書を読み理解する。
留学中に男爵令嬢と浮気をしていた事実。
そして、この婚約の意味と何故セレーナがイラストリア帝国の皇女を証明する花を冠する名を母親から継いでいる意味をリオン王子は全く理解して無いと理解する。
セレーナは、これからどうするべきだと考え思考が深く成りかけた時だった
急に目の前が弾けるような感覚と自分の顔に走る衝撃と顔から感じる激痛。
そして、左目の視界が真っ暗となり、反対の右目に映るのは天井のシャンデリア。
浮遊感に襲われる最中、鼻と左眼とその辺りから激痛と熱く感じながらの落下。
周りの令嬢や令息の悲鳴が耳に響きながら背中へ走る強い衝撃。
テーブルの角にぶつかったのか、何かを下敷きしたのか判らない。
しかし、背中へと強い衝撃と感じる熱さに脳内に更に走る激痛に意識が暗転したのだった。
「この罪人が俺を無視するな!!」
そう、くノ一から渡された素行調査の報告書を読んでいたセレーナに『マリアに謝れ』だの、有りもしない罪を羅列するリオン王子や取り巻きが観るのはセレーナが報告書を読む姿。
そして、かつて処刑された一番上の兄と同じになるのではと思い、このままでは不味いと逆ギレして叫びながらセレーナの顔面をリオン王子が身体強化魔法を使いながら殴ったせいだった。
「カッハァッ!?」
殴られたセレーナは読んでいた報告書と殴られ鼻骨が折れて鼻から流血を撒き散らし、左眼は鼻骨と鼻骨周辺も複雑骨折したせいで眼球が飛び出ており、放物線を描きながら卒業パーティーに出されていたバイキング方式で出されていた料理が乗るテーブルへと飛ばさたのだった。
そのテーブルの上には、卒業パーティー名物のフルーツカクテルがあり、フルーツカクテルの入れ物だったガラスの器を下敷きに落下し、中身のフルーツカクテルは床やテーブルへと飛び散り、ガラスの器は落下の衝撃から砕け散る。
そして、最悪な事に砕けたガラスの器がセリーヌの背中へと刺さっており、顔面と背中から流血により敷かれた純白のテーブルクロスは真っ赤なダリアを咲かせのだった。
無論、婚約破棄の場景を観ていた貴族令嬢から上がる悲鳴とどよめく令息達に会場。
そして、テーブルの上に落下し流血しながら気絶しているセリーヌがどう見ても瀕死の重症で絶対安静で尚且つ即時治療が必要な惨状なのに王子は取り巻き達にセリーヌを無理矢理テーブルから起こす様に命じる。
「ふん。どうせ、気を引く為の死んだ振りだろ!罪人を起こして俺の前に連れてこい!!俺に逆らうとどうなるかの見せしめにするのだ!!」
「「「はい!」」」
「セレーナを護れ(なさい)!!」
同じく、卒業パーティーに参加し、当主命令から卒業パーティーでは傍観する様にと言われたのだが、リオン王子の余りな傍若振りとセレーナを殴り飛ばした上に瀕死にさせた事に幼馴染の真田家の姉弟が我慢が出来なくなり遂にキレた。
真田姉弟の号令に真田辺境伯爵家とヘンリー公爵家の寄子貴族の子息や令嬢達が各々の武器を抜き遂に動いた。
王家との和平調印前だった事と戦後でも王国法により両家は王国の学園に通わなくてはいけないため両家は寄親、寄子の貴族子息と令嬢は他貴族からの報復を恐れ、護身を理由に帯刀または暗器を所持していた。
野太刀を抜いた景信とグルっと回りドレスのスカートをフワリと靡かせながらスカート内の太腿のガータに隠していた三本の鉄棒を抜き一本の鉄棒へと一瞬で組み上げ振ると六尺(約1.8メートル)の長さに伸びながら飛び出したのは下弦の月状の十文字槍となり、仕込み式十文字槍を振り回す姿は父親の幸村の勇猛な猛将を思わせるヘンリエッタだった。
無論、真田辺境伯爵家達だけではない。
「アンナ!セリーヌ様にポーションを!」
「はい、エマ様!!」
卒業パーティーに在校生として参加し、幼い頃から王太子妃教育中のマナー教育で数名の令嬢達と一緒に学んだ友人の王国の西部貴族のエマ・ウェスト公爵令嬢。
そして、エマ公爵令嬢に呼ばれ常に腰に身に着けているマジックポーチからハイポーションを取り出しながら駆け寄るのは同じ西部貴族の令嬢にしてA級冒険者であるアンナ・スチュワート子爵令嬢。
「今こそ、あの戦いで王国の裏切り者と呼ばれ続けられたわたくし達の不名誉の禊時ですわ!!このわたくし、エリン・サウスバンーズ公爵令嬢に続きなさい!!ポーションを届けようとしてらしてる、エマ様とアンナ様を守り肉壁となり屍として朽ちようとも、北の大華であり王国の希望のセレーナ様を死なせてはいけません!そして、南部貴族の馬鹿子息共は、南部貴族を纏めるサウスバンーズ公爵家の令嬢であるわたくし権限により廃嫡とするわ!」
南部貴族を纏める公爵家の令嬢のエリン公爵令嬢も動いた。幾ら、当時の王太子の命令とは言え、真田領攻略戦に参加した貴族は南部貴族が多かった。だからこそ、リオン王子のセリーヌ伯爵令嬢への理不尽を認めたく無かった。
「エリン様の言う通りですわ!わたくし、エリカ・イーストウッド公爵令嬢もあの時の様に見て見ぬ振りなどしたく有りませんわ!!エリン様に続きなさい!!希望の炎は消えてませんわ!!元は帝国との国境を護っていた地である王国の盾である東部貴族の意地の見せ所よ!!」
東部貴族を纏めるイーストウッド公爵令嬢のエリカ公爵令嬢もエリン公爵令嬢の叫びに追従して叫ぶ。
そして、エマ公爵令嬢とアンナ子爵令嬢は自分達の西部貴族の令嬢や令息達。そして、エリン公爵令嬢とエリカ公爵令嬢に加えた取り巻き貴族の令嬢や子息達に護られながらセリーヌの下へと駆け寄る。
親友のセリーヌを治療する為だけに駆け寄る。
「きっ、貴様ら罪人に手を貸すのか!」
「行かせるか!」
リオン王子がキレながら叫ぶが、エマ公爵令嬢達は無視してセリーヌの下に走る。
「やらせません!!」
途中、取り巻きの伯爵家の令息が邪魔をしようとするも、真田家の寄子の貴族で上級武家の男爵令嬢が持つ暗器の鎖鎌の分銅で手足を拘束されて顔から転倒して床に倒れた処を鎌で首を切り裂かれ令息は死亡する。
それらの取り巻き貴族の殆どが南部貴族の子息だったが、エリン公爵令嬢は廃嫡と宣言して王子に味方した子息達は意気消沈。
「貴様ら、セリーヌに昔の母上と同じく冤罪を仕掛た上に殺そうとたな?」
「まっ、待て!?やっ、ゴッ、ゴッブゥ!?」
「邪魔だ!!」
「えっ?」
男性口調なヘンリエッタはキレながら十文字槍をセリーヌを無理矢理起こした上で害そうとした南部貴族の侯爵家の元令息に突進して槍で突き刺し捻りながら矛先を抜き、抜いた時の遠心力を利用しながら石突きで別の方から襲いかかる取り巻き貴族の男爵家の令息を殴り飛ばし、同時に襲うもう一人の子爵令息を殴り飛ばした反動を使い下弦の月状の槍の刃で子爵令息の首を飛ばしていたのだった。
アンリエッタを襲い逆襲され首を切り飛ばされた子爵令息は何故槍が有る事に困惑して「えっ?」と呟き即死したのだった。
両家によるセリーヌとセリーヌの友人達への防衛。勿論、友人達も暗器を借りたりそこら辺のお盆を盾代わりに使って友を護る。
セリーヌを治療するエマ公爵令嬢とアンナ子爵令嬢はエリン公爵令嬢やエリカ公爵令嬢達が率いた子息や令嬢達に護られながらも続いたのだが、ハイポーションだけではセリーヌの左眼は直せなかった。
「くっ、左眼は眼球が出てしまっては欠損扱いですのね」
「また、戦争になるの?」
身体の治癒には成功したが、左眼がただ飛び出しているだけなのにポーションには欠損扱いされ治癒出来ずに悔しそうに呟くエマ公爵令嬢とセリーヌの改めて知る瀕死の重症だった事実の惨状から両家と帝国からの報復で戦争になると絶望する令息。
そんな時だった。
『王都警備隊である!』
外に通じる扉が開き入り込んで来たのは、取り巻き貴族の令息の一人が呼んだ王都警備隊だった。
「この罪人達を捕らえよ!!」
セリーヌにも手出し出来ず、取り巻き貴族の元令息達が何人も真田姉弟や貴族の令息や令嬢達に討ち取らて余りにも劣勢だったリオン王子は三百人以上の数で来た王都警備隊にニヤリと笑い、殺人犯である真田姉弟達全員を拘束しろと命じる。
「「くっ!?」」
既に数名の令息をセリーヌを護る為に殺していた二人は苦虫を噛み潰したような表情するが、二人の背後から小さな影が走り抜ける。
「私が道を開きますわ!!」
「小松!?」
ドレス姿なのに低姿勢で走る小松は、ドレスの両方の裾から扇を出し広げる。既にロングソードを抜いた先頭に居る指揮官らしき人物の首を狙いすれ違い様に一閃。
そのまま、首から噴水の様に血が吹き出て崩れ落ちる様に倒れた指揮官。無情にも指揮官には見向きもせず、小松はパーティー会場へと入って来る警備隊の中へ低姿勢のまま入り、扇を使い踊る様に警備隊員を斬り、時には両手の扇を羽の様に使い飛び警備隊のロングソードの斬撃をフワリと躱す。
小松は切り込み隊長の様に先陣を切り鉄扇で逃げ道をただひたすらに斬り開く。
瀕死の重症だった、セリーヌの命を何とかハイポーションで繋ぎ止め、他の貴族令嬢や令息を護りながら殿の真田姉弟。
そう、小松の流派はとある中華の無双双子姉妹の鉄扇術を悪乗りした政宗から教わったと小松を担当する侍女が語る。
さて、真田姉弟達がパーティー会場から脱出を試みた時だった。
「何を騒いでいる?」
リオン王子がいる階段の上にある国王が出て来る扉が開く。そして、出て来たのは漆黒のマントを羽織り軍服を着て、顔の容姿は黒髪のセリーヌに似ているが髪を金髪にして角刈りにした男性の姿はイラストリア帝国の皇帝のシリウスだった。
そして、皇帝シリウスの背後には母親のメアリー第二皇女に夫の伊達政宗。辺境伯爵の真田信行とヘンリー公爵の一行だった。無論、皇帝達に追従する様に入って来た真っ青な顔な国王夫妻も忘れてはいけない。
扉から出できた皇帝に真っ先に気付き真田姉弟は武器を仕舞い、皇帝に向くと膝を床に着けた最敬礼を行い、同じく気付いた三人の公爵令嬢もカーテシーをする。無論、公爵令嬢のカーテシーに気付き令息や令嬢達も追従する。
「ふむ、貴様の馬鹿子息は余の姪で第一皇女セリーヌに随分と舐めた真似をした様だが?」
「「申し訳ございません!!」」
ギロリと国王夫妻とリオン王子を睨み、卒業パーティーでのリオン王子のやらかしを隠し部屋から観ていたらしく、睨む皇帝シリウスに対して国王夫妻は土下座で謝り始める。
義兄の皇帝と国王夫妻の様子を観る政宗は娘の瀕死の重症という惨状にキレており、太刀を抜き王子の首を斬るために柄に手を掛けているが妻のメアリーが政宗の手に手を重ね首を振り宥める。
「おのれ、叩き斬ってくれるわ!」
「駄目よ。ア・ナ・タ?」
皇帝の登場とセリーヌが帝位継承権一位を持つ帝国で唯一の姫君である事の暴露にポカンとするリオン王子とマリア男爵令嬢。そして、皇帝の背後にいるは娘を瀕死の重症にされキレており殺気(戦国武将本気の殺気)が駄々洩れな鬼(政宗)に気付き、床に黄色い染みを作りながら腰を抜かす。
そして、二人は抱き合いながらガタガタと震え、皇帝シリウスの言動から全て見られていた事実に気付き自身が処刑された兄と同じ未来が確定した瞬間だった。
「えっ、セリーヌが皇帝の姪で帝位継承権一位だと…」
無論、この後は王子と男爵令嬢は帝国の騎士に身柄を拘束され、生き残った取り巻き貴族の令息も同じように拘束されて王宮の地下の監獄へと収監されたのだった。
一命を取り留めたセリーヌは、五日後に目を覚ましたが左眼は失明していた。ハイポーションで直せなった飛び出ていた眼球は切除されて無くしたままだった。
「あれ?左眼が見えない?」
「お嬢様!?」
目覚めた事に泣き止まない専属侍女を尻目に自身の部屋の手鏡を見て、セリーヌは左眼を喪失して失明したと理解して悲しくなるが内心は嬉しかった。
あの、リオン王子から開放されたと。
だって、5歳で初めてリオン王子と顔合わせの時に暴力を振るわれながら髪を引っ張れられて王宮の庭園にあった池に落とされて死にかけたから。
だから、リオン王子の顔合わせでの暴力事件を知るお母様に頼み妃教育が学園が始まる前に早く終わる様に厳しく教育をさせて貰い、二度とリオン王子から暴力を振るわれない様にする為、王立学園には行かずに妃教育が終わり次第帝国へと留学した。
そして、留学した帝国では未婚だった皇帝の叔父様から命じられ、帝国でのお母様の花であるダリアの花を引継ぎ皇女となり、イラストリア帝国の継承権一位である第一皇女となった。
二年が経ち、一時帰国して参加した卒業パーティーでの婚約破棄騒動とわたくしへの殺害未遂と冤罪により、王家有責による婚約破棄が成立したのだった。
無論、婚約破棄に喜ぶ父親の政宗にセリーヌは愛刀の馬上刀の鍔をお強請りする。政宗は何故と思いながらも了承し、馬上刀の鍔を外してプレゼントする。
そして、セリーヌはそのプレゼントされた刀の鍔をとんでも無い事に使う。
「これで、お父様とお揃いですわ!!」
『なっ!?』
これには、流石の政宗や母親のメアリーに加えて伊達家の家臣団も一斉に絶句する。何故なら、馬上刀の鍔を利用して眼帯を作り、父親と同様に眼帯を着けて両親と家臣団が集まる会議中の大広間に現れたのだから当然だった。
これが、元の世界では独眼竜の伊達政宗と呼ばれた父親と同様、王国がある大陸では真田家最強武将集団の猛将の一人である独眼竜の伊達セリーヌの誕生と伝説の始まりだった。
話は続き、騒ぎを起こしたリオン王子はイラストリア帝国のセリーヌ第一皇女への殺害未遂と冤罪を擦り付けた事による不敬罪がかなり罪が重く、叔父のシリウス皇帝陛下により死刑が宣告されて、リオン王子を斬りたくて仕方なかったニコニコ顔のお父様の政宗により斬首となり、王宮の門前に斬首で処刑された南部の貴族の令息達と同じ様に首が晒され貴族達の戒めとなる。
そして、浮気相手だったマリア・フォレスト男爵令嬢は、真田辺境伯爵家と王家との間で再び内乱が起きかけた事により内乱幇助罪となり死刑を宣告されたのだったが、マリアの実家での扱いを知るエリン公爵令嬢と情状酌量を訴えるエリカ公爵令嬢の両名と同情した南部貴族からの嘆願により、死刑は回避された代わりに身分は剥奪されて帝国でも最も戒律の厳しい修道院に入ることなる。
後継ぎを失った王家だが、後継ぎ問題は直ぐに解決した。
卒業パーティーから数日後、王女の二人が入る修道院には王国の四大公爵家の令嬢達が一緒に訪れる。
北部の貴族を纏めるヘンリー公爵家。そして、その令嬢は元公爵令嬢のアンジェリカ伯爵夫人。
西部の貴族を纏めるウエスト公爵家。そして、その令嬢はエマ公爵令嬢。
南部の貴族を纏めるサウスバンーズ公爵家。そして、その令嬢はエリン公爵令嬢。
最後に東部の貴族を纏めるイーストウッド公爵家。そして、その令嬢はエリカ公爵令嬢。
この四人の公爵令嬢が動き、第一王女のマリアローズ王女殿下と第二王女のエリザベス殿下に帰属する様にと説得に来たのだ。
だが、第一王女のマリアローズ殿下は帰属を拒否する。
理由は、亡くなった王子四人の冥福を祈る為だけに生きると言う。そして、妹の第二王女のエリザベスは条件付きだったが了承して帰属したのだった。
エリザベス殿下は帰属して直ぐに立太子を行い、側近達を集め始めたが、条件を履行して令嬢と夫人を王宮へ呼ぶ。
その条件は、四人の公爵令嬢達に腹心の部下となる事だった。
エマ公爵令嬢は次期宰相に指名され、エリン公爵令嬢は広大な農地がある南部だけに農務大臣に指名される。
元から国境だった東部のエリカ公爵令嬢は外務大臣に指名され、元ヘンリー公爵家の公爵令嬢だったアンジェリカ夫人は女王付き補佐の女官長となる。
今回の事件の責任を取った国王夫妻は立太子したエリザベス殿下に王位を譲位して王国初の女王であるエリザベス女王が誕生し、王家の権威の復活と帝国と並ぶ大国へと成長させた女王として君臨する事になる。
そして、王国の繁栄には真田辺境伯爵家とヘンリー公爵家が深く関わり、帝国の帝位の継承権を破棄して帝国の騎士団長の息子を婿にして、伊達家の家督を継いだ伊達セリーヌは、王国の隣国である商業都市連合国から真田の鉄砲を売らないからと理由で攻められた際には、マツモトシティ領主の真田家率いる当主を継いだ真田ヘンリエッタと伊達家の当主の伊達セリーヌの両名が率いる赤備えと黒塗り南蛮鎧の騎馬隊が暴れ回ったと逸話が歴史に残るのだった。
短編小説第二弾です。