綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話   作:なか115

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第3話

「……と、いうわけなの。みんな、協力してくれないかな?」

 

次の日の放課後。

櫛田はクラスメイトの前で、今回起きている事件についての説明をした。

ふーん、と他人事のように聞いているもの、またアイツか…と睨みをきかせるもの、変わった反応を見せるものと反応はそれぞれだった。

 

「すまねえ。俺としては絶対に手は出してないと誓える。だから、目撃者捜しに協力してほしい」

 

須藤が頭を下げて協力を申し出る。

…アイツ、こんなに素直に言えるタイプだったっけ?

須藤と仲良くしている男子生徒たちは、須藤を励まし協力を申し出るが、クラスメイト全てではない。

 

「みんな、今回はたまたま須藤君がターゲットにされただけなんだ。これからももしかしたら別のやり口で今回みたいな攻撃をされるかもしれない。だから、一致団結して須藤君の無罪を勝ち取るために動けないかな?」

 

平田がそういうことで、女子グループも協力を申し出ることとなる。

とはいっても、クラス全員が協力するわけでもなくあくまでも有志の人間が協力するのみ。

それでも俺たち3人で探すよりは格段と効率が上がるだろう。

 

「よし、これで事件解決に少しでも向かえばいいな」

「思ってもないことをいけしゃあしゃあと…」

 

俺の隣の席で堀北はジト目で言う。

こういうクラスでの発表の時は堀北は助言こそするものの、自身が矢面に立たない。

基本的に皆をまとめ発言するのは櫛田や平田だ。

本人曰く「私が言っても誰も言うこと聞かないのは理解してるつもりよ」とのことらしい。

まあこいつコミュ障だからな。

 

「綾小路君、どうせ協力なんてしないんでしょう? 少し顔かしてくれるかしら?」

「人聞きの悪い。昨日の俺を見てなかったのか?」

「ええ、見ていたわ。真っ先に図書館に向かって行っていたわね」

「……図書館に目撃者がいる可能性もあったからな」

「ひたすら本を読んでいるように見えたけど?」

 

…どうやらコイツ、一緒に行動しないなと思ったら俺の行動を見張っていたらしい。

やはり堀北は今回の騒動、あまり積極的に解決をしようと思っていないようだ。

 

「誰が目撃者か、目星はついたでしょ?」

「…ほう」

 

思わずそう言ってしまった。

 

「やっぱり、綾小路君も気が付いたのね。流石ね」

「いや、ほうと言っただけで気が付いたかは言ってない」

「別にそれはいいわ。とりあえず付き合って。聞きたいことがあるから」

「あのな、付き合ってと言われて俺がそうホイホイと―――」

「コーヒー奢るわ。ついでにレアものの小説」

「―――何してんだ、早くいこうぜ」

 

サッと立ち上がる俺を見た堀北は、満足げにカバンを肩に歩き出したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話 2 3話

 

 

 

 

 

 

「さてと…綾小路君。あのマンションを見てくれる?」

 

―――場所は変わり学校の外、ケヤキモールへ向かう道。

早速買ってもらったコーヒーを片手に、俺は堀北が指さした先のマンションを見る。

…至って普通のマンションである。

7階建てで、ここいらの従業員さんたちが使うマンションだろう。

あのマンションがどうかしたか?と目配せをすると堀北は満足気に、

 

「まずはあのマンションの屋上から飛び降りてみてくれるかしら」

 

俺は思わず口に含んだコーヒーをブッと吐き出してしまった。

 

「…汚いわね」

「汚いもくそもあるか!あの高さから降りれると思ってるのか?俺に死ねと?」

「……?何言っているの?貴方ならあのくらいの高さから飛び降りてもビクともしないでしょ?」

 

コイツは俺を何だと思っているのか。

 

「普通は死ぬだろ。なんでそんなことしないといけないんだ?」

「貴方の力を正確に測りたいのよ。とは言っても、耳で聞くより目で見たほうがいいじゃない?」

「正確な力って…なんでそんなことしないといけないんだよ」

「コーヒーご馳走したじゃないの」

「コーヒー一杯で人に7階から飛び降りろっていうお前が恐ろしいよ」

 

俺は堀北が差し出してきたハンカチで口をぬぐいつつ

 

「というか、冗談じゃないみたいだな。何故俺なら出来ると思った?」

「貴方は私の兄さんを倒したのよ?それくらいできて当然よ」

「兄さん…ああ、のび太君か。のび太君くらいスネ夫でも倒せるぞ?」

「誰がのび太君よ。私の兄をのび太君呼ばわりするのは貴方くらいだわ」

 

フン、と鼻を鳴らす堀北。

とんでもなく兄の評価が高いんだな…。いや、まああのくらいの高さなら確かに平気で飛び降りられるのだが…

 

「どちらにせよ、断る。俺はまだ死にたくない」

「……まあいいわ。どうせ素直に本当の力を見せてくれると思ってない。じゃあせめて、今回の事件について真面目に話さないかしら?」

 

スイッと彼女が指さした先にはこぢんまりとしたベンチ。

そして、周囲に人気はない。

俺と堀北は向かい合って座った。

 

「さて、回りくどいのは好きじゃないから言うけど…目撃者が誰かは分かってるわよね?」

 

あくまでも試すような視線で堀北。

…誤魔化してもいいのだが、俺もコイツを測りたい。

少しだけ真面目に答えることにした。

 

「――確か、佐倉とか言ったか?目撃者がウチのクラスとは…灯台下暗しだな」

「流石ね。一人だけ分かりやすく動揺してたし、あの反応はほぼ間違いなしね。彼女、話したことないけどそれほど友達は多くないと思うし、無口な方だから証言は期待できないと思うわ」

「…なるほど? やはり友達が多くないことが分かるのは自分もそうだからか?」

 

堀北は無言で自分のコーヒーを俺に向かって振りかけた。

水ならそのまま受けていたが、流石にコーヒーはシミになって嫌なのでつい回避してしまう。

 

「…うわ、凄い。やっぱこれくらい避けれちゃうのね」

「たまたまだ。というか、いきなりコーヒーはやめてくれ」

「クリーニング代金は払うつもりだったわよ」

 

何故か嬉しそうな堀北。

 

「話を戻すわね。まあ、彼女が証言してもしなくてもどっちでもいいと私は思っているの。ただ、Cクラスの狙いだけはハッキリしておきたくて」

「…Cクラスの狙い?」

「そうよ。今回の事件、多分解決しない。それこそ証拠でも出てこない限り。証拠があればこっちが有利だけど、写真や動画でもない限り無実の証明なんて悪魔の証明。不可能よ。でも、流石にCクラスの証言だけで須藤君を一方的に停学になんてできないハズよ」

「…まあ、普通に考えたらそうだけどこの学校は少し特殊なんだろ?」

「もし私がこの事件の首謀者なら、須藤君が暴力行為を働いたって吹聴して回るわ。でも、今日にもまだ噂になってない。つまり、相手の目的は別にある」

 

…思ったよりも堀北は頭が回るようだ。

 

「どこまで引っ張るかは分からないけど、多分Cクラスはタイミングをみて訴えを取り消す。相手が確認したいのは、私たちのリーダー格が誰なのか、クラスを引っ張る存在が誰なのかを確認したいといったところじゃないかしら?」

 

俺とほぼ同じ考えに行きついたようだ。

俺はクラスを誰が引っ張るか、なんてものには興味がない。

だから色々動き回るのが好きそうな櫛田に押し付けていた。

なので、他のクラスから見たら櫛田こそこのクラスのリーダーに見えるだろう。

しかし、今現状クラスを動かしているのは目の前にいる堀北。つまり、コイツこそがクラスのリーダーなのだろう。

 

「最後の確認よ。貴方は私の力を試している…合ってる?だから自分は表に出ず陰でコソコソし、あえて道化を演じているのよね?」

 

…ここだけは勘違いが続いているようだ。人の真剣を道化とは人聞きの悪いことを言う。

が、めんどくさいので否定はしない。

 

「いいわ。私もAクラスを目指す身。貴方の信頼は行動で示すことにする。ただ、今のDクラスの戦力では勝ち上がるのが難しいかもしれない。その時は貴方の力を貸してもらえるのよね?」

 

仮にAクラスを目指すとなると、いいことはポイントをたくさんもらえること。

悪いことは面倒なことが増えること…か。まあ、退屈しないならいいのかもしれない。

 

「――ああ、任せろ。全力を尽くそう」

 

そんな俺の言葉に、堀北は心底嫌そうな顔をして

 

「これほど信用できない言葉、初めて聞いたわ」

 

 

―――マ、失礼な。

 

 

 

Side 櫛田 桔梗

 

 

次から次へと問題が起きるが、これがこの学校なんだろう。

おそらく、課題というものが始まりつつある。

 

クラスを観察して気が付いたことがある。

 

平田君…使えるけど、私と同じで何か持ってそう。壁を感じる。

軽井沢さん…女子のリーダー格。話は合うけど、彼女も何か壁を感じる。

松下さん…彼女も何か壁を感じる。何かを隠している?

 

嫌な印象を受けることはないけど、この3人はこのクラスに欠かせない。

後は優等生グループの王さんや幸村君。勉強が出来る人材は貴重だ。

 

須藤君…正直、退学してほしかった。今後問題ばかり起こしそうで、その度にストレスになる。

 

でも、それでも他の山内君とか池君とか本堂君とかと比べたらマシなのかもしれない。

須藤君はスポーツができるが、他のメンツは使えるかどうかわからない。

 

私はどうしてもAクラスで卒業したいとは思ってはいない。

ただ、Aクラスになれば私の自尊心はより満たされることになるのは想像に難しくない。

そうなる時必要な人材として…悔しいけど堀北。

 

もし私を覚えているのなら、絶対に退学にさせてやろうと思っていた。

でも、私に割と話しかけてきたりお願い事が多かったり、私の事を知っていたらやらないであろう事を平気でしてくる。

 

油断は出来ないからいつでも退学させる方法は今後考えるとして、今は使って行ってもいいのかもしれない。

 

最後に…綾小路君。

高円寺君とは別ベクトルの問題児。

高円寺君は話す気が起きないけど、綾小路君はまだ話せるからついお願い事をしてしまう。

 

彼は私に手柄を譲ってくれるし、私の自尊心を満たしてくれる存在になるかもしれない。

…何より、不思議と彼は不快感を感じさせない。

イライラさせられることはあっても、不快だなって思うことがない。何故なのだろうか?

 

ブーッとスマホに通知が入る。

差出人は佐倉さん。

 

この子が目撃者なんて…堀北もよく気が付いたものだ。

『私が話してもどうせうまく話せなくてこじれるからお願いできるかしら?』とまあ、自分が分かるようになったのは中学の頃から考えると驚きの進歩だ。

 

佐倉さんは根暗だけど、本当に目撃者みたいだしこれで須藤君が助かればまた私の株はあがってしまう…考えただけでニヤニヤが止まらない。

佐倉さんからのメールを開く。さて、証言はしてくれるのかな…

 

「…ん?どういうこと?なんでこの話に綾小路君?」

 

佐倉さんからのメッセージは、

 

『綾小路君とお話をさせてもらえるのなら、怖いけど証言引き受けます』

 

だった。

まあ、確かに顔だけ見れば学年で一番…いや、学校で一番なのかな?

 

遠くから眺めてるうちが花なのに、と思いつつ綾小路君に相談もせず、私はOKのメールを返信するのであった。

 




修正しました。
誤字指摘ありがとうございます。

尊の代わりを書くことは私の力量では不可能かと…
なんて弱気になってみる。
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