綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話   作:なか115

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第5話

Side 櫛田 桔梗

 

『―――なるほど、状況は把握した』

 

佐倉さんの悲鳴が聞こえ電話が切れた後。

リダイアルは繋がらなかったため、私は警察に連絡を…と思ったが、一之瀬さんから担任の茶柱先生にまず電話をしてみてはどうか?と言われた。

高度育成高校は保護者が介入できない為、担任や学校が生徒の健康や安全を管理してくれている。

なので、高い可能性でスマホにGPSが入っていて学校側が把握できるようになっているのでは?という話だった。

 

一之瀬さんの話は一理あった。

渡されている端末には一定の機能制限があり、その中の一つでGPSを切ることが出来ない。

これは生徒が外部に行くのを察知できるようにしているのだろうが、今はこれが助けになる。

 

私は動揺を抑えつつ茶柱先生に連絡し、出来る限り簡潔に状況を伝えGPS情報と警察をとお願いしたのだが…

 

『GPSで確かに佐倉の位置を特定することは可能だが…現状は無理だ。連れ去られるのを見た、とかならGPSの開示が可能だが、あくまでも電話で悲鳴だけでは残念ながらマニュアルの外の話になる。だが、警察を呼ぶことは出来るのでこちらで手配はしよう』

「そんな…佐倉さんがあんな悲鳴上げたり電話してくるなんてよっぽどのことですよ!?」

『申し訳ないとは思うが、これは決まりだ。こちらも警察と連携し必要ならGPSで調べることが出来るようになる。まずは事件性の有無、状況を確認しないといけない』

「で、でも…」

『心配なのは分かる。が、仮に事件性があるのなら学生が介入する余地はない。私に連絡してくれたことは感謝する。櫛田…そこにはB組の一之瀬と、ウチのクラスの綾小路がいるんだったな?』

「…え? あ、はい…」

『二人に伝えてくれ。この件は私たちに任せて、おまえたちは家に帰れと』

「え!? ちょっと、先生!?」

 

先生はそう告げると、電話はブツンと音を立てて切れた。

スピーカーにして話をしていたので二人には聞こえていたようだけど…

流石にこれはどうしていいか分からない。

そんな戸惑う私に、綾小路君は神妙な面持ちで

 

「よし、俺たちは帰るとするか」

 

なんて言ってきやがった。

いや、私も本当は帰りたいけどこれ帰れる空気じゃないよね…

 

「綾小路君…私は茶柱先生の言うことも一理あると思うけど、結構事態は急を要すると思う。今ならまだ人気も多いし、誰かに襲われたとしてもまだ間に合うと思う。事件性が確認できれば警察も動くし、GPSの使用も認めてくれるんだよ?何か出来ることはあると思うの」

 

一之瀬さんならそう言うと思っていた。

時刻はまだ昼過ぎ。休みの日のケヤキモール内にはたくさんの学生の姿がある。

誰か一人でも目撃者がいれば、佐倉さんがどこらへんにいるかくらいは分かるかもしれない。

彼女の行動範囲は分からないけど、いるとすれば寮かこのケヤキモール内の可能性が高いはず。

 

「私も賛成。このまま帰るなんて流石にできないよ」

 

私たちの言葉に納得したのか、綾小路君は「よし」と短く言葉を言い

 

「分かった。手分けして探そう。俺はこっちを見てみよう」

 

と言って真っすぐ寮方面に向けて歩き出した。

…こんな時でもアイツは変わらんのか、と頭が痛くなるも今は綾小路君を気にしている場合じゃない。

幸い、顔が広い一之瀬さんがいてくれるので、人海戦術でうまくいけば見つかる可能性もある。

何か事件が起きて私が褒められる事態になるのはいいのだが、あまり危険なことは正直したくないな、と私は思ったのだった。

 

 

 

 

 

綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話 2章 5話

 

 

 

 

 

「さてと…」

 

櫛田と一之瀬がついてきていないことを確認すると、俺は電話をかけることにした。

数コールもしないうちに相手は電話に出た。

 

『どうした、綾小路?』

 

電話の相手は、先ほど話した茶柱。

 

「どうした?じゃないだろ。露骨に俺になんとかしろ、というメッセージを感じたが?」

『……気が付いてくれて何よりだ。学園としても、想定の外でのトラブルは困るのでな。解決してくれると助かる』

 

茶柱は先の電話で『二人は帰れ、あとは私たちがなんとかする』と言っていた。

その二人が誰を示し、私たちが誰を指すのか何となく察知したのだが当たったようだ。

 

『私としてもおまえの力が見れるいい機会だ。協力は惜しまないつもりだが…先ほどの電話の通り、GPSの情報を教えることは―――』

「どうせポイントを使わない限り不可能だ、と言ってくるつもりだろ?」

 

茶柱の言葉を遮り俺は言う。

この学園でポイントで買えないものはないと言っていた。

ならつまり、学園が管理する位置情報なども買うことは不可能ではないだろうと踏んでいた。

 

『流石だな。その通り、GPS情報もポイントで買える。が、50万ポイントだ。貴様に払えるのか?』

「聞くまでもなく無理だな。じゃあ質問を変えよう。佐倉がこの学園に来てから買ったものを教えてもらうにはいくらポイントが必要なんだ?」

『なぜ…?と聞いても、答えはせんか。いいだろう。その情報なら5万ポイントで手を打とう。どうだ?』

 

端末を確認する。

俺のポイント残高は…0か。クソ、少し足りない。

 

『少しじゃないだろう。よくわからん調理器具やら訳が分からん小物やらを買うせいでポイントがないのだ。少しは貯蓄したらどうなんだ?』

「気が付いたらなくなってたんだ」

『…まあいい。私が立て替えておいてやろう。正直、おまえが協力的になるとは思わなかったからな。佐倉が買ったものは…………』

 

 

 

茶柱が何故俺に興味を持っていたのかは分からないが、俺を気にかけている事は分かっていた。ここまで協力的に物事を進めてくれるとは思わなかったが、おかげで情報は入手できた。

 

「十分だ。警察の手配は本当にしたんだろうな?」

『当たり前だ。私の方でも動きはするが…期待している。あと、私は目上で教師だ。今後は口の利き方に気をつけろ。減点対象になるぞ』

 

そう言うと電話は切れた。

努力はしているのだが、いかんせん敬語は苦手でな。

 

さて、状況を整理しようか。

まず、佐倉に何があったかはまだ分からないが、恐らく先ほどSNSで通知が来ていた通り熱心なファンと何かしらのトラブルがあったとみていいだろう。

俗にいうストーカーと呼ばれるもの。

 

『いつもの変装をしない、俺に会いに来たのかと思った』

このワードから、相手は普段の佐倉の服装を知っていると思われる。

そして、俺に会いに来る、なぜそう思ったのか?それは相手が学生じゃないからではないだろうか?

 

もし相手が学生なら休みの日に出かけて待ち合わせもしてないのに会うのは難しいだろう。しかし、特定の場所にいつもいる、もしくは働いているのなら会いに行くのは可能。

そして俺と会った場所はケヤキモール。つまり、ケヤキモールもしくは近くで働いている人の可能性が高いと思われる。

 

そして相手は佐倉の服装が普段と違うのを知っていた。

待ち伏せしてて見かける、ということもあるだろうが佐倉と俺が会うと決まったのは昨日の事。待ち伏せは効率が悪いし誰かに見つかる可能性もある。

いつも変装してる、というくらいいつも見ているのにこれまで不審者の情報がないところを考えると、濃厚なのは盗聴、もしくは盗撮。

 

服装が分かっていることを考えれば盗撮の可能性が高いが、まあそれはどっちでもいい。

問題はそれらをいつどのように仕掛けたかだ。

もし盗撮なら、学生カバンなどに仕掛けても見えるとは限らないだろうから可能性は下がる。

 

佐倉の部屋に侵入して仕掛けた?それも難しい。なぜなら、学生寮はそれなりのセキュリティがあるからだ。

入室、退室まで管理されていて監視カメラまである場所で侵入するのは現実的ではない。

業者として潜入することも可能だが、今はまだ入学して間もない。

備え付けの冷蔵庫やトイレなどが故障する可能性も少なく、少なくとも俺はまだ業者と出会ったこともなかった。

 

学校関係者なら佐倉がいる部屋が分かってあらかじめ盗撮の機械を設置することも不可能ではないが…

 

「まあ、自分で持って帰って設置した可能性の方が高いだろうな」

 

佐倉が買った商品の中に機械を仕込んで佐倉に持って帰ってもらえばいい。

俺が茶柱に確認したのは佐倉が何を買ったか。

佐倉が入学してから短い期間で購入したもので機械が仕込めそうなのはデジカメ、ぬいぐるみ、撮影用三脚、撮影用ライトなどの撮影器具。

 

「まあ、こういうストーカーもので決まって盗聴器が仕込まれるのはぬいぐるみなんだがな」

 

王道中の王道。ぬいぐるみといえば盗聴器だ。

まずぬいぐるみに当たりをつけて探しに来たのだが…

残念ながら空振りの様だ。店員に佐倉らしき人が来たか確認したが、見ていないと言われた。

 

「と、いうことは…家電か。冷静に考えれば、デジカメなら佐倉は常に持ち歩くだろうし、居場所も特定できるかもしれない。少し失敗したな」

 

どうしても小説のイメージに頭を引っ張られてしまった。

 

少しだけ心が弾むのを感じる。

不謹慎ではあるのかもしれないが、俺が待ち望んだ非日常ではある。

少なくとも俺の人生の中で、誰かを助けるために動くなんて経験はなかった。

 

自然に歩が早くなる。

少し遠回りをしたが、家電売り場に到着。

家電コーナーをウロウロしていると、レジカウンターの向こうに「忘れ物BOX」というものを発見する。

 

あるものを発見した俺は、電話をかけることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――ケヤキモール近くの資材置場。

 

高度育成高校はある意味陸の孤島でもあるので、こういった資材置場などは大量にあるのだ。

今日は休日で午後ということもあり、あまり人影はない。

お目当ての資材置場は…と、発見したものの当然カギがかかっている。

目を閉じ中の様子を伺うと…やはり人の気配があった。

 

俺ならば開けることは簡単なのだが、開けることはしない。

周囲を探るも扉はこれ一つ。裏口などは存在しない。

 

「となると…上から入るしかないか」

 

資材置場はかなり大きな建物となっており、学校の体育館くらいの大きさがあった。

商品の日焼けを防ぐためなのか、あまり窓の数は多くはないのだが、2階に相当する場所にいくつかの窓がある。

 

俺なら特に苦労をすることもなく2階によじ登ることも可能である。

割と入りやすそうな窓から入り、周囲を確認すると…おそらく控室であろう場所を発見する。

控室の中には人の気配。

俺は極力音を出さぬよう気配を殺しながら部屋の中を確認する。

 

……中には何故か、手錠をかけられ拘束されている堀北と櫛田、ついでにうつぶせに突っ伏している須藤の姿があった。

 

「いやいやいや、なんで堀北が捕まってるんだよ!?」(小声)

 

思わず扉を開けて突っ込んでしまった。

うなだれていた堀北は顔を上げると…屈辱からか顔を赤らめ

 

「くっ……殺せ!」

 

いや殺せじゃねえし。

櫛田は驚いたのか、驚愕の表情で俺を見つめている。

そして相変わらず突っ伏してピクリとも動かない須藤。

 

計算外のことが多いが、さてさてどうしたものか。

 

 

 

 

 

 

 

 




初めて小説を書いているのですが、高評価やお気に入り、感想がとても力になります。
感想を見ていると、みんな暁の護衛が好きなんだなと思いました。私も大好きです。

本当にモチベーションにつながるので、もし良かったらこれからも高評価・感想、よろしくお願いします!
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