綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話   作:なか115

16 / 23
第2話

 

 

特別試験が始まった。

ルールは非常に簡単。無人島サバイバルというものらしい。

試験の期間は1週間。テーマは『自由』とのこと。自由、素晴らしいキーワードだ。

 

オレからすれば水も虫も魚もいそうな無人島での1週間なんて楽勝すぎるのだが、この試験はクラス単位で行われルールも存在する。

まずはテントや簡易トイレなど最低限度のものは支給される。

しかし、飲み水や食べ物、調理器具はポイントを使わないといけない。

ポイントは試験用の特別ポイントが300ポイント支給される。

余ったポイントはクラスポイントとして加算される。我慢すればポイントを貯めるチャンスでもある。

 

しかし、そう簡単にもいかない。

当然減点もあり、この中に体調不良やリタイアなどの項目もあり、体力がない人間が1週間サバイバルというものは現実的に難しく、なるべく減点を食い止めなくてはならない。

 

ちなみに体調を崩したり怪我をしてリタイアでも30ポイント減点。

Aクラスは足の悪い坂柳を初めからリタイアさせる作戦に出た。この段階でマイナス30。

うちのクラスでも逆に足を引っ張る存在がいるのならリタイアさせておくのも作戦のひとつなのだが、Dクラスはその戦略は選ばなかった。

 

 

ちなみにDクラスはポイントを使っていくのか、それとも出来る限り温存するのかで揉めていた。

男子のほとんどはいけるところまでいってポイントを温存する派。

女子は携帯トイレだけではなく、仮設トイレや飲み水、シャワーなど必要なものはポイントを使ってしまおうという考えの人が多かった。

 

この無人島は海も川もある。

夏なので水浴びなどで身体が洗い流せるとはいえ、不衛生になれば体調を崩す人間も出るだろうし水も煮沸したとしても川の水などでは体調を崩す人がいても不思議ではない。

 

 

「ポイントは温存するべきだ。ただでさえDクラスは他のクラスと比べ、ポイントは少ない。これは、一気に差を詰めるチャンスだ」

 

 

クイッと眼鏡を上げ話すのは幸村。クラスで1,2を争う秀才の生徒。

 

 

「絶対に無理!あんな簡易トイレなんかでするのなんか絶対に無理なんだから!」

 

 

大きな声で反論するのは…確か篠原とか言う生徒。

俺はと言うと、話し合いには参加せずに支給された腕時計をひたすら弄る作業をしていた。

もしかしたらオレはメカというものが好きなのかもしれない。

 

 

「完全防水で心拍数、体温などの健康状態もチェックしているみたいね。その他にもかなり精度の高いGPSも入っているとか…凄いわよねこれ」

「ん? 意外だな、堀北。おまえもメカに興味あるのか?」

「時計をメカと言うのはどうかと思うけど…噂名高い倉屋敷が手掛けたと言われているものよ。興味がわいても不思議ではないでしょう?」

 

 

どうでもいいと思っているのか、俺と同じように話し合いに参加せずに時計を見る堀北。

鍵も特殊な電子ロックとなっており、オレでも外すことは出来ない。

簡単なメール機能もあり、ライトもついているのでこれがあれば夜中でも困ることはないだろう。

 

 

話し合いが続いているが、他のクラスの姿はとうにない。

スポットとい場所を探しにいったのだろう。

スポットは8時間おきに更新され、スポットを占拠するたびに+1ポイントの加算がある。

1カ所抑え続ければ約20ポイント得ることが出来る。3カ所なら60。

しかし、スポットを抑えるにはリーダーが必要で、リーダー以外はスポットの占拠が出来ない。

リーダーは特殊な事情がない限り変更不可。

 

7日目の最終日、リーダーを他のクラスに言い当てられた場合、言い当てたほうは50ポイント。言い当てられたクラスは50ポイントがマイナスされる。

逆にリーダーの申告を間違えた場合は、間違えたクラスはマイナス50ポイントとなる。

 

つまり、リーダーは可能な限り早く決めて隠さないといけない。

拠点をどこにするのか、スポットをとりにいくのか護るのかを決めないといけないのだが…Dクラスはトイレがどうだこうだで揉めている。

 

 

「時間の無駄ね」

 

 

時計に飽きたのか、うんざりとした表情で岩に腰かける堀北。

 

 

「だな。オレたちはいつも並んで放尿しているから全く問題ないよな」

 

「問題しかない発言ね。私はそんなことしないし、環境をとてつもなく著しく破壊する行為はマイナスポイントになるわよ」

 

 

軽蔑のまなざしで俺を見つめる堀北。

『環境を汚染する行為を見かけた場合』がマイナスなのに…オレの小は環境破壊ということか。

 

 

「フルーティーな香りと味なのに…」

 

「…………飲んだの?」

 

 

オレの冗談にドン引きした顔を見せる堀北。

失礼な。俺がそんな事をすると思うのだろうか?

飲んだというより、舐めたことくらいしかないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話 3章2話

 

 

 

 

 

 

 

結局、話し合いはまとまらずにとりあえず先にスポットを探してからポイントをどのように使うか決めよう、という話になった。

豪華客船はこの島をわざとらしくゆっくりと一周してから到着している。

開けている場所は分かるのだが…まあいいか。俺は正直どこでも楽しい。

 

 

「あ、あの…綾小路君…」

 

 

ボーっと歩いていた俺に話しかけてきたのは佐倉だった。

ストーカー事件以来絡むこともなかったが、イメチェンを継続していたのは知っていた。

佐倉はアイドルだけあって外見はかなりよく、前に比べると人目を引くようになったもののやはり性格の地味さがあってか、クラスの中心、というわけではなかった。

 

 

「…どうした?写真撮って欲しいのか?」

 

「ちち、違います!まあ楽しそうなネタではありますけど…そうじゃなくて、この間のお礼言えてなかったから…」

 

 

ストーカー事件の際、佐倉はずっと気を失っていたため、俺の関与は知らないはずだった。

 

 

「その…櫛田さんに聞いて…。ずっとお礼を言いたかったのに、遅れてすみません」

 

「ん? ああ、オレは大したことはしていないが…まあ無事でよかったな」

 

「本当にご迷惑をおかけしました。須藤君なんて怪我までさせちゃって…」

 

 

チラリと前を見ると元気に歩く須藤の姿。

男子生徒たちの中心となり、仲のいいクラスメイト達と楽しそうに話しながら歩いている。

 

 

「須藤には話しできたのか?」

 

「あ、ハイ。俺を助けてくれたからお互い様だって言われて…本当に申し訳ないです」

 

 

ションボリと項垂れる佐倉。

歩くペースが遅いので、たまに小走りになり俺に寄ってきて

 

 

「あの、この特別試験が終わったらでいいので、何かお礼させてください」

 

 

ペコリと頭を下げると、再び早足になり去って行ってしまった。

…なるほど。誰かを助けるとお礼がもらえるのか。

積極的に人助けも悪くないのかもしれないな。

 

何を買ってもらうかを考えていると、「あ、あった!」と大きな声が聞こえたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

スポットを発見したのは、須藤と仲良くしている池と山内のグループだった。

彼らが発見した場所は川が近くにあるスポットだった。

キチンと整地されており、日陰もありテントを張ったり火を起こすこともそれほど難しくはないだろうと想定できる。

 

 

「ここなら草むらも近いし、トイレは簡易で問題ないんじゃないか?」

 

 

どうしてもトイレを簡易トイレにしたいのか、山内は言う。

スタートから結構な時間が経過していたので、トイレに行きたいと思う生徒もちらほら出てきたのでいよいよ決断をしないといけなくなる。

 

 

「待って、山内君。これ以上は士気にかかわる。我慢させてリタイアでも出れば本末転倒だ。そもそも簡易トイレ一つでは足りない。この試験、ポイントを使わないようにはできていないように思うんだ。例えば水。ある程度ポイントを効率的に使えるのかどうかを学校は問うて来ていると思うんだ」

 

「……というか、草むらなんかで出来るわけないじゃん。頭腐ってんじゃないの?」

 

 

平田、軽井沢とクラスの中心人物たちに言われると後ずさりをするしかない山内。

みんな喉も乾くころだろうが、流石に川の水を飲もうとする人間はいない。

ポイントは使わないといけないという現実を受け入れ始めたのか、

 

 

「……仕方ないか。だが、使うポイントは吟味させてもらうぞ」

 

 

と簡易トイレ推進派の幸村ですら許可を出した。

それでも諦めない山内は、

 

 

「櫛田ちゃん! 櫛田ちゃんなら分かってくれるよね!?」

 

 

となぜか櫛田に助けを求めた。

 

 

「えっ!? わ、私は…仮設トイレあるほうが嬉しいかな…って」

 

 

困り顔の櫛田に詰め寄る山内。

助けを求めるようにオレを見た気がしたが、特に触れないようにしておこう。

 

 

平田たちは話し合いがまとまってきたのか、仮設トイレや水などをポイントで購入し始めている。山内はとにかく櫛田に認められることに必死で、ポイントを使われていることに気が付いていない。中々面白い男だ。

 

 

オレは山内が面白い男だということ、池がこういった時に積極的に活動できること、サバイバルが好きなことに気が付いた。

クラスの男子連中も意外と積極的にテントを作ったり活動的に動いている。

少し楽しそうにしているところをみると、男はキャンプというものが好きなのかもしれない。

 

 

俺は適当な木の枝を発見すると、蔓のようなものを木の枝に結び付け、簡易的な釣り竿を作った。

この川はかなりきれいな川で、魚も肉眼で確認できる。

岩をどかせば小さな虫とかもいるので、簡単に魚を釣れる気がする。

 

食事にポイントを使うのかは分からないが、魚はいて困ることはない。

というか、とりあえず釣りがしたい。

 

釣り竿を片手にルンルン気分で釣れるポイントを探していたところで、櫛田にガシッと肩を掴まれた。

 

 

「…綾小路君…ちょっと来ようか…」

 

 

なんとなくデジャヴを感じる。

 

 

櫛田はコンコンと俺に説教をしてきた。

自分が困っていたら助けること。

リーダーも決めてないのに個人行動しようとしないこと。高円寺君ですらいると。

勝手な行動をしないこと。おまえ釣り始めたら帰ってこないつもりだろ、と。

 

 

人気がない場所をワザワザ選んで怒る櫛田を、佐倉は少し複雑な表情で見つめていたのだった。

 

 

 

 

 

 

Side 佐藤

 

 

……やっぱり、櫛田さんって綾小路君と仲いい気がする。

まえに聞いた時、付き合ってる人いないし今は誰とも付き合う気もないって言ってたけど…なんとなく、みんなに接する態度と綾小路君への態度が違う気がする。

 

 

正直、私は入学してから彼に目をつけてた。

とにかく、カッコいい。

イケメン過ぎた。

 

もうすでに少し好きなのだが、あのルックスなのでDクラスにも関わらず既に知名度が高い。

ライバルもさぞ多い…と思いきや、割と奇行が多いせいか遠巻きに彼を見る人が多く誰も近づいてはいなかった。

 

 

当初は堀北さんがいつも一緒って思ってたけど、最近は櫛田さんがとにかく一緒に居る気がする。

というか、佐倉さんも綾小路君見てる気がする。

え、というかなにあの顔。可愛すぎね?胸でかすぎね?

 

 

軽井沢さんに恋愛相談したものの、あまりいい顔はされなかった。

確かに成績は普通…顔だけかもしれない。

でも、私はやっぱり彼が好き。全力で顔だけが好き!

 

 

私は絶対、このキャンプ中に仲良くなってみせるのだ!!

 

 

 

 

 

 






ご指摘ありがとうございます!
今さらなのですが、参考にさせていただきます。
指摘いただいた箇所はいずれ修正していければと思います。
書くのが遅くなってきましたが頑張りたいですね~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。