綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話   作:なか115

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第4話

 

 

―――サバイバル3日目。

 

 

Dクラスは一人の脱落者も見せず、ある程度の慣れを見せてきていた。

池が指揮をとり、キャンプはそれなりに快適になってきた。

このまま拠点は池を中心とした男女数名に任せるとして、他のメンツたちは昨日に引き続き探索を行うことにした。

 

不思議でもないかもしれないが、この島にはトウモロコシが生えてたり野菜や果物があったりと手入れがされている。

他のクラスと鉢合わせになることも考えられるが、食料を確保しつつスポットを探し、ついでに他のクラスの動向をみることになる。

 

 

「……俺たちはどうしても、他のクラスと比べまだポイントが劣っている。相手のクラスのリーダーをどうにかして探れないものなのだろうか…」

 

 

この課題でポイントの上積みを考える幸村は、堀北や平田らに進言をする。

恐らくだが、そろそろ他のクラスもそういった動きを出すところだろう。

 

別に普通にキャンプをしていてもいいと思うが、この課題は下位のチームが上位を目指すチャンスでもある。

しかし、他のクラスのリーダーを探し当てるというのは相手も隠しているだろうし簡単な話ではない。

 

 

「気持ちは分かる。私だって出来たらそうしたい。でも、下手に動いて体調を崩すのも怖いわ。まだ3日目、今は自分たちの足場を固める時じゃない? この島の地形、他クラスの拠点、食料の場所とか、キチンと見極めることが先決よ」

 

 

顎に手をあて堀北は言う。最近、自然と皆が堀北の言葉に耳を傾けるようになってきている。

クラスの方針として、自分たちがポイントを伸ばしていく道をとるのか。はたまた守りに行くのか。もしくは変化球で他クラスのリーダーを当てるのか…オレには関係ない話だな。

 

 

「ねえ…綾小路君…昨日の話…本気?」

 

「ああ。その代わり、協力してもらうぞ?」

 

 

クラスから少し離れた場所でオレと櫛田は声を小さく話す。

昨夜身の危険を感じたオレはポイントを上積みすることとオレの命の保障をしてもらうためいくつか策を考えた。

そのためにいくらかポイントを消費することと、オレが自由に動ける環境を作ってもらうことに協力してもらうことにした。

 

クラスは基本的に3人で行動する。

今回の3人班を櫛田、堀北にすることで俺は単独で行動しても特に文句を言われない流れに出来る。

他の皆はスポットやら何やらを探してくれればいい。

オレは昨日の探索や船での旅でおおよその場所が分かっていた。

 

オレは各クラスのリーダーを探しに行くことにする。

みた感じ、CクラスとAクラスは問題なくリーダーを探ることが出来るだろう。

正直俺は隠密行動には自信があった。

過ごしていた環境的に、この学校の生徒くらいなら目の前にいても気が付かれないくらいに気配を消すことが出来る。

 

ただ、問題はBクラス。

よく分からない生徒の一人に、一之瀬という生徒がいた。

佐倉の事件の際に話す機会があったが、アイツは何を考えているのかを探らせない女だった。

軽井沢と違って俺に嫌悪感や敵意といったものは感じなかったが、一之瀬はどことなく不気味さがある。

 

 

櫛田に話したのは裏切者を罠にかける方法と、見つけられれば他クラスのリーダーの情報を教えるということ。

見返りとして、オレの命の保障と10万ポイントをいただくといった内容だった。

 

 

何やらチヤホヤされたいであろう櫛田には、オレの案は魅力的に映ったようで、協力を約束してくれた。

さて、これで自由に散歩も出来るし非日常も味わえる。

―――少し楽しくなるといいな。

 

 

 

 

 

 

 

綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話 3章4話

 

 

 

 

 

 

―――と、いう訳で何事も起こらぬまま5日目になった。

オレはと言うと、釣りに来ていた。

学園側が用意してくれたのか元から住んでいるのかは分からないが、この川にはたくさんの魚がいた。

割と釣りやすいものからかなりの大物まで。

 

きっと、海の方はもっと魚がいるんだろうなと思うと心が高鳴る。

点呼の時以外はこうして魚釣りで自然と対話する。

退屈と思うかもしれないが、この釣りというものはなかなかどうして奥が深い。

 

 

「今日も釣りに来ているの、綾小路君?」

 

 

オレの隣にチョコンと腰を下ろした一之瀬。

3日目に自由の身になってから必ず釣りをしているのだが、俺が見つけたポイントがBクラスの拠点に近かったからか発見されてしまった。

いつも俺がこのポイントで釣りをしているものだからか、気が付けばこうして話していることが多くなった。

 

 

「綾小路君ってさ、釣りばっかりしてるけど、クラスの事とかいいの?」

 

「ああ。俺は内密に動いているからな。だからオレがここにいることはDクラスには内緒にしておいてくれ」

 

「内密に動いてるのに内緒にする相手がDクラスなんだね。もしかして…ウチのクラスと状況が一緒だったりする?」

 

 

一之瀬は少し困り顔でそう告げた。

何でも、Cクラスで暴力を振るわれて逃げてきたという生徒がいるらしい。

金田とか言ったか。頭が良い生徒で、Bクラスに少し話したことがある生徒がいるということでBクラスに避難してきたらしい。

 

 

「神崎君とかはスパイだって言ってるけど…実際に殴られた後もあるし怪我もしてたし、放置は出来ないよねってことで一緒に居るんだよね…」

 

 

川でパシャン、と魚が跳ねる音にピクンと反応しつつ一之瀬は言う。

そういえば、ウチのクラスにも同じような事情で避難してきた女子生徒がいたらしい。

確か、伊吹とかいう女子生徒。

山内と友達というか顔見知りだったらしく、奴を探して逃げてきたようだ。

 

 

「一之瀬はどう思ってるんだ?」

 

「そりゃ…分かりやすいスパイだよね。殴られたって言っても大怪我じゃない。偽装工作にリアリティを出すならそれくらいするかなって思うよ。ポイントをどう使うかで揉めたって言ってたけど…まあ、理屈は通るよね」

 

 

Cクラスはポイントを初日に使い果たし、豪遊し機を見てリタイアするつもりと金田は言っていたらしい。

チラリと一之瀬を見る。一之瀬は俺を見て微笑み、

 

 

「リタイアなんてするかなぁって思ってね。龍園君、あ、Cクラスのリーダーね。見かけは確かに不良みたいだけどさ、そんな簡単に諦めたりするかな~って」

 

「…というと?」

 

「この試験、ポイントってマイナスにならないらしいんだよね。んで、どれだけスポットを占拠出来てもリーダー当てられたらその加点分のポイントは没収。どれだけ節制しても残せて100~150ポイント…そう私は考えてるんだよね」

 

 

一之瀬は思ったよりもキチンと試験に向き合っているようだ。

何を考えているのか分からない、と思ったがそうでもないのかもしれない。

 

 

「もし仮に龍園君がA,B,Dのリーダー当てることが出来れば、彼のクラスは150ポイント。私たちのクラスを上回る」

 

 

そして、コイツは頭も回るようだ。

加点分は没収され更に50ポイント減点。Dクラスはおそらく50ポイントくらいしか残らない計算になる。

実は堀北は決定的なミスを犯していた。

もし他のクラスのリーダーを当てるよう動くなら、実は初日がベストだったのだ。

俺たちが何日か過ごして慣れてきたように、相手も防衛策含め慣れてきている。

今からリーダーを誰か特定するかなんてかなり難易度が高い。

 

 

「悔しいけど、私たちはもう動けない。ポイントを節約…つまり、守るって決めたからね。拠点で上積みすること、そしてリーダーを当てられないこと。この二つに全力を注ぐしかない」

 

 

そもそも無人島で1週間クラスのは想像以上にハードだろう。

体調を崩す人が出た段階で減点。仮に食あたりなどで10人削れたらあっという間に0ポイントになる。

Dクラスにはたまたま池のようなキャンプ上級者がいたのでいまのところ快適に過ごしているが、これが2週間とかになれば体調不良者が出るのは避けられないだろう。

 

 

「金田君には悪いけど、かなり見張らせてもらってる。でも、守ることしかできない戦いってのはちょっと辛いよね」

 

 

Bクラスは戦い方を既に決めていたようだ。

ウチのクラスに比べ、団結力が強い。

 

 

「ところで、そんな重要な話をオレに聞かせても良かったのか?」

 

「ん~~…ダメだよね。ハハハ。ごめん、綾小路君の近くにいるとなんか和むというかホッとするというか…こんなんじゃダメだよね」

 

 

苦笑しながら顔を伏せる一之瀬。

そういえば、毎日見ているが少しだけ顔色が悪いように感じる。

弱音そういうところからきているのだろうか?

 

 

「少し顔色が悪いんじゃないか?」

 

「あ~~そう見える?凄いね、誰にも言われなかったのに。実はちょっと眠くてさ…」

 

「まあこの環境だからな。布団が変わると眠れないタイプか?」

 

 

布団どころか寝袋なのだが。

 

 

「……ううん。私、真っ暗だと寝れないタイプでさ。でもテントで灯りつけるわけにはいかないし、外で寝てもおかしいからさ。明け方くらいからしか寝れなくてね…」

 

 

一之瀬がBクラスから離れ、オレの隣にいる理由が何となくわかった気がした。

オレも闇の中では眠ることが出来ないので、気持ちは分かる。

もっとも、俺の場合は明け方少し眠るだけで睡眠時間的には事足りるのだが。

 

それにしても…なんか違和感がある。

何が違和感の正体なのかは分からないのだが、喉の奥にある魚の骨が取れない気分だ。

その違和感はこの島に着いた瞬間からあった。

今のところは何もない。あと二日で終わりなので何事も起きないとは思うが…

 

 

そんな事を考えていると、気が付けば一之瀬がオレの肩に頭を寄りかからせ小さな寝息を立てていた。

相手が櫛田だったら顔に落書きでも…したらちょっと面倒だからしないが一之瀬には何となく落書きとかはしにくかった。

 

 

たいして魚も取れぬまま、5日目は終わるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 軽井沢 恵

 

 

 

 

「……本当にごめんね、軽井沢さん」

 

「いいって。お互い様でしょ、こればっかりは」

 

 

エビのように身体を丸めながらうずくまる佐藤さんの背中を、私はさすっていた。

こればかりは仕方のないことんだけど、月の物が来てしまったらしい。

これだけ女子生徒がいるなかで1週間もサバイバルだと誰かしら生理の一つも来るだろう。

 

 

幸いなことに、私は大丈夫だった。

元々そこまで重いほうでもない。

こういった生理痛のような自然な現象では腕時計も反応しないらしく、体調を崩したということにはならない。

 

 

このサバイバルの中でも、痛み止めやナプキンなどの配布は認められていた。

もちろんポイントは使わず。任意の生理用品と痛み止めが支給されるなんて太っ腹と思う反面、課題に無理があると少し思ってしまう。

 

 

佐藤さんが私に謝っているのは何も擦ってもらっているからではない。

生理用品や痛み止めは船まで取りに行かなければならないのだ。

今まではみんなで交代で取りに行っていた。私は2日目に行った。

 

 

明日は佐藤さんの順番なのだが、この体調では動くことすらままならず、仲が良く手が空いている私が行くことになったのだが…

 

 

「……なんか、嫌な予感する」

 

 

私は比較的自分の勘に自信があった。

今まで生きてこれたのも、自分の勘があったからこそ。

その勘が告げている。明日は船にはいかないほうがいいと…。

 

 

かといって、このまま取りにいかず放置というわけにもいかない。

せっかくできた友達のために、行くという選択肢しかないのだが…。

 

迷う。

あの船に、何かしらの危険があるのなら。

危険を排除できる人間を連れていくしかないか。

 

 

気は進まないが、アイツに声をかけてみよう。

アイツは………多分、夜釣りでもしているところだろうか?

 

 

 

 

 




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