綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話   作:なか115

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第2話

Side ???

 

「本当に申し訳ありません!もう、二度とこのようなことはさせません」

 

店員さんを前に、必死に謝る母の姿。

私は、悪いことをしてしまったんだと認識した。

 

以前までは褒めてもらっていたのに、今はダメ。

世界が違うことを認識はしていたのに、深いところで理解をしていない証拠だった。

 

私がしたことで、母も妹も深く傷つき泣かせてしまった。

私は、人が泣くと悲しい。だから、笑っていてほしい。みんな幸せがいいのだから。

 

悪いことをした私に、母は必死に謝った。ごめんね、ごめんね、と。

母は謝る必要があったのだろうか?

 

 

元々の私の世界と、今の私の世界は違う。

考えを改めアップデートする。

 

物は盗ってはいけない。

嘘はつかない。

落ちてるものは警察に届ける。

ペットは食べてはいけない。

食べ物は食事として提供されたものを食べる。

 

あとはなんだっけ?

ああ、そうだ。大事なことを忘れていた。

 

 

 

――――人は、殺してはいけない。

 

 

 

 

 

 

綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話 2 2話

 

 

 

 

さてさて、堀北が今回俺に目撃者を探すことを依頼した本当の理由を考えてみようか。

仮に今回のこの事件、須藤の言う通り目撃者がいて何か変化があるだろうか?

結論から言うと、少しだけ心証がいいくらいで、ほぼないと言っても過言でないだろう。

 

仮に目撃者が、須藤が何もしていなかったと証言しても「そいつは嘘ついてる。俺は殴られた」と言われてしまえば、どちらが正しいのかを証明することはできない。

 

しかし逆も同じで、いくら須藤に殴られたと騒ぎ立てても、彼らも彼らで証拠がない。

骨折や脱臼などの大怪我をするほどのものならまだしも、3対1で囲っておいて殴られたとするにはある程度理由が必要だろう。なぜ監視カメラがない場所に呼び出したのか、などの整合性を持たせないといけなくなる。

 

Dクラスよりも上のCクラスが、双方痛み分けで納得するものなのだろうか?

おそらくこれはただの宣戦布告。ついでに嫌がらせ。もしくは…

 

「リーダー同士での話し合いを提案されることを待っているか…だな」

 

じゃあなんで堀北は目撃者を探せといったかって?

もしかしたら、目撃者が決定的な証拠を持っている可能性がわずかながらあるから…だ。

そして俺ならばそのわずかな可能性を持ってこれると信じてるから…かな?

 

堀北はおそらく俺に興味がある。いや、尊敬する自分の兄に喧嘩とはいえ勝った男がどれほどのものなのか見極めようとしている。

だからなのか、自分からやたらと積極的にクラスに協力を惜しまない。

それもこれも、俺を見極めるために色々引き受けているのだろう。

 

「それか須藤の件で適当言ったことを根に持っているかだな」

 

俺の言ったことを真に受けた須藤は、堀北への態度を軟化させた。

相談も堀北に持って行ったみたいだし、懐いたのかもしれない。

堀北は適当に話を合わせてくれているようなので、その仕返しといったところか。

 

「ま、サクっと目撃者を探して自由な時間を楽しむとするか」

 

俺はとりあえず図書館へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

優雅に本を読んでいたところ、ガッと強く頭を掴まれる。

 

「サインなら後にしろ。今は忙しい」

 

パッと頭を掴む手を振り払うも再びガッと強く頭を掴まれる。

 

「いい加減にしろ。今はプライベートだ」

 

そんな俺の言葉を無視し、グリンと首を強制的に横に向けさせられる。

 

「綾小路君…私と平田君が聞き込みしてるのに、何やってるのかなぁ…?」

 

たまに見せる般若の櫛田。

何故か分からないが、櫛田は俺に厳しい気がする。

 

「もう、綾小路君真面目にやってよ。平田君なんて部活休んでまで聞き込みしれくれてるんだよ?」

「それは良くないな。部活をサボるなんて問題だな。後で説教するから許してやってくれ」

「私は綾小路君に怒ってるの!というか、何回電話したと思ってるの!?出てよ!」

「シッ!!図書館で騒ぐ奴があるか!? 全く…あ、すみません。騒がしくして」

「あ…すみません。お騒がせしました」

「全く…気をつけろ。やれやれだぜ」

 

フーっとニヒルにため息をついたところで首根っこ掴まれ

 

「オイ…いい加減にしろや」

 

別の暴力事件が生まれかねないので俺は言うことを聞くしかなかった。

 

 

 

 

「困ったね。やっぱりだけど、女の子ってだけで目撃者探すのは難しいよね」

 

もう日も暮れ、残る生徒も少なくなってきたため目撃者捜しは諦め、カフェで一息をついている中、平田は困ったようにそう告げた。

 

「確かに…ここまで聞きこんでも空振りとは…やり方を変えるしかないのかもな」

「……綾小路君は図書館で本読んでただけでしょ」

 

ムスッと頬を膨らませる櫛田。

図書館で本を読む前にちゃんと探していた、と弁明しても全く信じてくれなかった。

俺だってキチンと30秒くらいは探したというのに…。

 

「綾小路君の言う通りかもね。僕たちだけで犯人捜しをするのは少し難しいかもしれない。もう少し、須藤君に特徴を思い出してもらうか探す人数を増やすかしないと時間ばかりが過ぎてしまいそうだね」

「そういえばこのことを知ってるのは、俺たちだけなのか?」

「…ううん。クラスメイト何人かは知ってるけど、皆には話してない。事件の事広めるのはどうなのかなって思ったし…」

 

事件はまだ表面化していなかった。

Dクラスからすれば穏便にしつつ解決、というのが望ましいのかもしれないが、Cクラスの動き次第では須藤が暴力を振るったと噂を広げられる可能性もあるため、変に隠さず先手を打った方がいいのかもしれない。

そんな旨を二人に話すと、

 

「……だね。今回はたまたま須藤君がターゲットになったけど、他のクラスメイトが狙われる恐れもある。堀北さんと須藤君に許可をもらって、明日にでもみんなに事件の全容を話そう。そして、皆で協力して目撃者を探そう」

「うん。私もその方がいいと思う。今日調べたことも含めて、明日話そう」

 

俺はうなずくと、櫛田に買ってもらったコーヒーを飲みほした。

 

 

 

 

 

 

 

Side 佐倉 愛里

 

 

…どうしよう。

写真を落としてしまった。

 

しかも拾った写真を落としてしまうなんて、なんてドジなんだろうか。

よりにもよって男の人、それもクラスメイトの写真だ。

 

映っていたのは綾小路君。

地味な私でも、彼がクラス内外問わず噂されているのを耳にしたことがあった。

しかし隠し撮りというよりもポーズをとっての写真だったので、もしかしたら私と同種の人間かも、と思いいけないと思いつつもつい、写真を貰ってしまったのだ。

 

もしかしたら彼は私と同じく芸能人のタマゴ…?

 

少なくともSNS上には彼がいない、ということは調べたらわかった。

一度話してみたいな、と思うもそもそもそんな勇気はない。

 

ましてや写真がなくては話しかけるきっかけすらないのに…

 

「やっぱあそこで落としちゃったのかな…」

 

カメラの備品を買いに行ったとき、すごい勢いで話しかけてきた店員さんがいた。

あまりにも話しかけてくるし、なんかその人の雰囲気が怖いのもあって慌てて会計をしてしまってその時に多分落としてしまったのだ。

 

落としたものがクラスメイトの写真とか…言えるわけがない。

須藤?とかいう赤髪の人が揉めている現場に居合わせてしまったりと本当についてない。

 

「あ、でも写真その時に拾ったんだっけ?」

 

出来ればもう一度写真が欲しいんだけど…やはり難しいのだろうか。

 

ため息を吐きつつ、暗くなったケヤキモールを後にするのだった。

 

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