綾小路が朝霧海斗みたいな感じだった時の話   作:なか115

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閲覧注意。
残酷な表現があります。
気になる方は見ないようにしてください。

見なくても本編に影響が出ないように書いていくつもりです。


外伝 その1

あたしは、生まれた時からその生き方を決められて生きてきた。

誰かに言われたからではない。そうしないと、生きてこられなかったから。

私が生まれて育った場所は、人に認められず本来存在しない場所。

そこは、暴力と略奪で成り立つ歪な世界であった。

 

「――――オイ!!ボーっとしてんじゃねえ!」

 

今日も弱者は虐げられていく。

私の目の前で、私と年も変わらぬ男の子が大男に蹴り飛ばされ転がっていく。

男の子が苦しむ様子を見て、ニヤニヤと笑う男たち。

私は、その姿を見て男たちと同じように笑った。

 

「ハハハ、おまえは相変わらず暴力を見るのが好きだな、○○。楽しいのか?」

「――うん、すっごく面白い!やっぱり貴方が一番素敵!」

 

甘えるように男に抱き着く私。

男は、部族でお頭と呼ばれる男だった。

 

何のとりえもない私だが、とにかく運だけは良かった。

たまたまお頭と呼ばれる男が生まれて物心付いた時にはそばにいて、たまたまその人が部族の頭に近い場所にいて、たまたまその人が幼児趣味だった。

そして、たまたま私はその男のタイプの女だった。

 

私は知っていた。

その男の機嫌を損ねれば、私なんていつだって切り捨てられること。

そして、その男が失脚すればまた、私の運命も潰えること。

 

誰かが私の事を寄生虫と呼んだ。

その通りだと思った。私は寄生虫。主とともに生き、そして死ぬ。

誰かに寄生しないと生きていけやしない。

 

私の母親もそんな人だった。

誰かに依存し自分の運命を他人にゆだねそして死んでいった。

母親の最後は悲惨なものだった。

性病にかかり、弱った身体で誰の慰み者にもならないからと面白半分で性器に異物を突っ込まれたり、暴力を振るわれたり、身体にタバコを押し当てられたりして少しずつ弱っていき死んだ。

 

私が唯一、この男に歯向かったのはこの時だけだった。

――やめて、お願いします。私が何でもします。

歯向かった私に激怒した男は、私の脇腹に刃物を突き刺した。

 

初めて感じる鋭敏すぎるその痛みに、私は恐怖に震えた。

――ごめんなさい、ごめんなさい。必死に謝る私の姿を見て、男は正気を取り戻した。

死の恐怖が目前に迫ると、私は許してもらうこと以外何も考えられなくなった。

 

私は結局、母の命よりも自分を優先してしまった。

そんな私の姿に、男は満足げにうなずいた。

男は、血で真っ赤に汚れた服を切り裂き、私の傷口をライターで強引に止血した。

 

「―――――――ッッ!!」

 

声にならない悲鳴を上げた。いや、声を出さないようにしたのかもしれない。

私が叫ぶことで、男が不快になるのを避けるため。

 

「―――ち、俺は身体は綺麗な方が好きだったんだがな」

 

悔しそうに男がそう言ったのを今でも忘れることはない。

 

「忘れるな。おまえでも、反抗的な態度をとれば身体に教え込む」

 

その言葉の通り、男は気に食わないことや、自分が不機嫌な時も度々暴力を振るうようになった。

それでも私は男に必死にシッポを振った。ただ、生きるために。

どうすれば男は私を殴らないのか。私にどうしてほしいのか。どうなって欲しいのか。

男が喜ぶ女を演じることで、私は生き延びることが出来ていた。

 

貴方に従います。貴方には歯向かいません。

そんな私のメッセージを受け取った男は歓喜した。

そのおかげか私は、男が飼うペットの中では一番いい扱いを受けていたと言える。

 

「調子に乗るなよ、あいつはロリコンなんだ。しかも10歳だけが好きな変わった男。それまでは大事にされるだろうが、それを過ぎたらおまえ…どうなるかな?」

 

同じペットの中でも、私は虐められていた。

物も盗ってくることができない、何もすることが出来ないくせに寵愛だけは受けてきたからだ。

でも私も賢くないなりに分かっているつもりだった。

男が寵愛しているペットたち、確かに大人のペットはいない。

前に見かけて大事にされていた女も、姿も形も見えなくなっていたのだ。

 

私は出荷前の家畜と何ら変わりはない。

ただ、男にとって食べごろになるまで育てられているだけなのだ。

 

男はどこからか武器弾薬を仕入れてくるので、街の中では屈指の権力を持っていた。

暴力こそが権力の象徴ともいえるこの街で、武器を所持しているのは最強に近かった。

鍛え上げられた身体も、子供の持つ拳銃には適わない。

 

男が権力をもったまま時が流れ…私の身体が女性特有の丸みを帯びてきたころ。

寄生虫が取り除かれる時が刻一刻と近づいてきているのを感じていた。

どれだけご機嫌をとっても、彼の意向に応えても、きっと私はそろそろ終わりなんだろう。

 

「覚悟しておきな。灯りのない夜、おまえさんは死ぬことになるぜ」

 

来る日も来る日も闇におびえた。

夜は眠ることが出来なかった。

灯りがないといつ最後が来るのかが分からなかったから。

 

――でも、結局そんな最後なんて来なかった。

何故なら、男の部族は壊滅したから。

あっという間の出来事だった。

 

あんなに怖くて仕方なかった男は、本当にあっけなく死んだ。

突然現れた男に首をへし折られて死んだ。

中心となっていた男が死んだことにより部族は消滅。

寄生虫である私は、宿主を失えば逃げることしかできなかった。

 

どれだけの日々を逃げただろう。

どれだけの朝を迎えただろう。

どれだけの闇を震えて過ごしただろう。

 

逃げて逃げて逃げて、私は別の世界へと逃げ切った。

 

おとぎ話で聞いていた別の世界が、本当にあったのだ。

 

その世界では、箱の中に人がいて別の場所を映すことができた。

その世界では、鉄の箱が人を運ぶことが出来た。

その世界では、大きな機械の鳥の中に入って飛ぶことが出来た。

 

「――もう大丈夫だよ、怖がらなくていい」

 

私を保護してくれた人は優しくいった。

 

その日から、私は一人の人間として生きていくことになった。

 

 

 

それでも、私はやはり寄生虫にしかなれなかった。

 

強者を見極め、その人を宿主として生きていく。

それはどこにいても変わらない。

今も変わらず寄生虫として生きていくことになるのだろう。

 

―――それはこの、高度育成高校の中でも変わらない。

 

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