家から駅まで10分ほど、時刻は五時頃で、あたりはそろそろ薄暗くなってきた。ナナは初めて街に行くし、電車に乗るのも初めてなので、既にワクワクウキウキしている。
「ナナ、切符の買い方教えるぞ」
「うん!」
俺は、ナナが見ている中で自動券売機を操作する。
「まず、左に大人とか子供って書いてあるボタンがあるだろ?」
「そうだね」
ナナが見ているのを確認すると、俺は大人一人の所のボタンを押す。押すと、ボタンは光って選択されたことを表している。
「おお〜…光った!」
「そうだな、俺は大人だから大人一人の所を押すんだ」
「ナナは?」
「子供一人の所を押せばいいんだ」
「わかった!」
「次に、この切符を買うってところを押すだろ?」
「わあ、文字が出てきたね!」
「そうしたら、とりあえず連絡切符とかそういうのは押さずに、左上のやつを押す」
「なるほど、なんか数字がいっぱいだね」
「ここまで来たら、朝潮中央駅っていうのを上に書いてあるやつから探してくれ」
路線図に指をさす。ナナはじーっと集中して駅を探しているようだ。
「んー…あった!」
「よし、なら数字が書いてあるだろう?なんて書いてある?」
「えーと、400!」
「そうか、じゃあ400ってところを押すんだ。そして、表示されている金額を払ったら…」
そう言いながら、俺は400円を自動券売機に入れる。数秒したら、切符が出てきた。その切符を持って、ナナに最後の言葉を言う。
「切符が出てくる、わかったか?」
「うん!」
「よし、じゃあやって見てくれ」
「わう!」
やってみるように俺が言うと、ナナは先程俺がやった手順を完璧に理解したようで、スイスイと自動券売機を操作して、切符を購入して見せた。
「ご主人!買えたよ!」
「うん、やっぱりナナは偉いな!」なでなで
切符を買えて喜ぶナナを、撫でながら褒める。ロングスカートがすんごい揺れているから、多分尻尾をブンブン振り回しているのだと思う。
とりあえず、そんなこんなで切符を購入出来た俺たちは、改札を通り、ホームに入って目的の電車に乗る。電車内はあまり混雑はしていなかったから良かった。でもナナが、「普通とか準急って何?」とか、窓の外を見ては建物を指さして「あれ何?あれ何?」とか聞いてきて大変だった。一応、電車の中では静かにするのがマナーとは伝えていたのでうるさくはしていなかったが。
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『次は、朝潮中央。朝潮中央です。左側の扉が開きます。ご注意ください。』
そのアナウンスが聞こえると、俺はナナに呼びかける。
「ナナ、次の駅で降りるぞ」
「わう、わかった!」
席を立ち、ドアの前まで移動する。しばらくすると電車がブレーキをかけ始め、電車の進行方向へと体が傾く。倒れないように足を踏ん張って、吊り革を持っていると、ナナが俺の手を掴む。
(あっ、吊り革掴めないんだ…)
そんなことを最初は思ったが、ナナの握る力が思った以上に強い。
(…なんか力強く、痛ってえ!!え?砕ける砕ける!)
ナナのその流石の力に、握るのをやめてくれと言おうとしたが、ナナはナナで必死に倒れまいと奮闘している。
(そんな必死にならなくてもいいでしょ!?)
心の中ではそう言いつつも、必死になっているナナを止める勇気はなく。電車が止まるまで必死に耐えるのでした。