新潟県の新潟市よりちょっと北側の沖合にある島、北陸島。
北陸島と新潟県は、新潟北陸連絡橋で結ばれており、同連絡橋には新幹線も通されている。北陸島最大の都市は朝潮市であり、朝潮市内には、一周するような形で朝潮メトロという地下鉄が通っている。また、朝潮中央駅は本州北陸新幹線という、本州と北陸島を繋ぐ新幹線の終点駅となっている。さらに、北陸島を南北に縦断する形で南北線という路線も存在している。北陸島の地形は南に平地、北の山地という形になっており、北陸島最大の山は、最北山であり、標高1027mである。
ちなみに、山野が暮らしているところは、朝潮中央駅から南北線に乗って、北に6駅行くとある前川駅の近く。
『朝潮中央、朝潮中央です。朝潮メトロ、本州北陸新幹線はお乗り換えです。』
電車から降りると共に、アナウンスがホームに流れる。流石、北陸島最大の駅“朝潮中央駅”。南北線、朝潮メトロ、本州北陸新幹線の三線がここを停車駅としているだけあって、利用客数は今まで通過してきた駅の比ではない。
「わう、人がたくさん!」
「ナナは大丈夫なのか…俺は苦手だなあ」
ナナがあちらこちらを見ながら、初めて見るだろう人の多さに驚いている。俺たちは、とりあえず人の流れに乗っかり、駅の改札を目指す。改札にたどり着くと、ナナから先に通って、その後に俺も続く。改札を出たら、東口から駅を出る。少し説明となるが、ここ朝潮中央駅の東口には大通りが存在しており、そこには数々の飲食店などが集まっていて、“朝潮通り”の名で有名となっている。
「わあ…!」
そして、ナナは駅から出た先の光景を見て、そんな声を出す。広がっていたのは、朝潮通りいっぱいを照らすイルミネーション。通りの真ん中には、朝潮通り同様綺麗に照らされたクリスマスツリーがそびえ立っており、クリスマスというのを感じさせてくれる。俺には無縁だけどなあ(怒)
「綺麗だろ?毎年この時期はイルミネーションやってるんだよ」
「うん!すっごく綺麗!」
「なら良かった」
ナナに喜んでもらえて、ひとまずほっとする俺。
(…例年ならイルミネーション+雪も降っててもっと綺麗だったんだけどな…今年は異例の暑さで降りそうにないって言うし…)
だが、例年通りならもっと綺麗な景色を見せてあげられたことに残念さも感じる。…そんな時だった。
「ご主人!雪!雪!」
「雪?」
ナナの言葉に、俺は空を見上げる。白い物が空気中を舞っており、それは徐々に密度を増していく。
「…はは、どんなタイミングだよ全く」
「わう!わう!」
…雪の密度が増すと共に、ナナのテンションも増していく。
「あんまはしゃぐなよ?耳と尻尾がバレたら大変なんだから」
「わう、わかっ…わう!!」
そうは言ったものの、はしゃいでいるナナを本気で静止することはせず、喜ぶナナを見て愉悦に浸っていた。
ーーーーーーーー
場所は変わって朝潮通りにあるレストラン。というか、俺が目的地としていた場所だ。完全予約制で前日に予約取ろうとしたせいでめちゃくちゃ苦労した。
「あちらの席になります」
案内をしてもらい、白いテーブルクロスが敷かれた丸型のテーブルに、ナナと向かい合わせになるように座る。2つあるメニュー表の片方をナナに渡して、自分も見る。
(やっぱりそこそこ高いな…)
流石朝潮通りのレストラン。写真であまりボリュームがなさそうに見えても、1000円は軽く超える。
(ま…今日くらい良いか)
そんなことには目を瞑りつつ、料理がナナの口に合うかだけが心配の俺だった。
ーーーーーーー
「美味しかった!ありがとご主人!」
「はは、それなら良かった」
レストランから出てきて、ナナのその言葉を聞いて、今日何度目か分からないがほっとする。
「それじゃ、そろそろ帰るか?ナナが行きたいところがあるんだったらまだいてもいいけど」
「!それじゃあさ!あそこ行きたい!あそこ!」
俺の提案に、ナナはとある場所を指さしながら言った。指さした先にあったのは、朝潮市の観光名所の1つ。“ノースグランド大観覧車”だった。市内を一望できる絶景が売りであり、デートスポットとしても有名だ。
「観覧車か、良いぞ!行こうか!」
「やったー!わうわう!」
雪が降る朝潮通りを通っていき、レストランから歩いて20分ほどで着いた。途中でナナが「競走しよう!」とか言い出して走ったりもしたけど。とりあえず、観覧車に乗るためのチケットを買って列に並ぶ。当然と言えばそうだが、俺たち以外に並んでいる客は、大抵がカップルであり、非リアの俺は徐々にSAN値が削られる思いをした。
「それでは、チケットを拝見しますね」
暫くして俺たちの番が来て、チケットをスタッフが二枚とも確認する。
「それでは、あちらでお乗りになってください」
そうして、スタッフにされるがままに誘導されて、観覧車へと乗り込んだ。
「わうわう!すごーい!どんどん上がっていく!」
ナナは、どんどんと上がっていく観覧車から外の景色を見て楽しんでいる。一方の俺は、椅子に座りながらそんなナナを暖かな目で見守る。
「あう!ご主人見て!めっちゃ揺れる!」
外の景色を見るの止めたと思ったら、今度はゴンドラを左右に揺らしだす。
「こらこら、あんまり揺らすな」
「なに~?ご主人怖いの?」
「...怖くなんかないぞ」
「...ホント?」
「...本当だ」
「じゃ、止める~」
そう言って、ナナは俺の膝の上に乗る。
「...なぜ乗る?」
「...嫌だった?」
「いや、別に」
しょんぼりしながら聞いてくるナナに、俺はそう言った後、頭を優しく撫でる。静かな空間が暫く続いたが、ナナがそれを破る。
「...ねえご主人」
「ん?」
「今日はありがとうね...イルミネーションに、レストランに...この観覧車も」
「いや、別にいいんだよ。ナナは楽しかったか?」
「あう!とっても」
「はは、それなら良かった」
笑いながらナナに言う。ナナは「えへへ~」と照れくさそうに言った後、膝に体を乗せたまま、こちらに体を180度回転させて向ける。
「...それでさ」
「なんだ?」
「ナナは...ご主人に貰ってばっかだよね...?」
「まあ...そうだな...それがどうかしたか?」
「...ナナも、ご主人に何かプレゼントしたいなって...」
「そうか、でも大丈夫「ナナが大丈夫じゃないの!」...そうですかナナさん」
「だから...ナナのプレゼント...受け取ってくれる?」
ナナにしては、強気な感じで言ってくる。俺は、別に断る理由もないし、むしろナナからのプレゼントなんて嬉しいから受け取ることにした。どんなプレゼントなのかなあ?
「分かった、受け取るよ」
「!。それじゃ、一回しかしないからね?」
「ん?一回ってなんのこ...」
チュッ...
「...え?」
一瞬、俺の視界がナナで覆われたと思ったら、俺の唇になにか柔らかい物が触れる。それは一瞬の時間だったが、俺にはとても長い時間に感じられた。
「えへへ~♪プレゼント...になったかな?」
頬を赤らめながらそんなことを言うナナ。フードはもう被っていなくて、耳をぴょこぴょこさせている。...俺はずっと放心状態だったが。...ともかく、最後の最後にとんでもない一撃を食らった山野だったが、確かにプレゼントではあったと思うのであった。