「…暇だなあ」
日曜日の朝、1人部屋でゴロゴロしている俺。
…ん?ナナはどうしたって?野球しに行きましたよ、敬三と一緒に。
「にしても1人で家にいるのは久しぶりだな…本当に暇だ、旅行の予定でも立てとこ」
そうやってパソコンを開こうとした時、インターホンが鳴る。
「こんな時間に誰だ?セールスならお断りですよっと…」
カメラに写っている人物を確認すると、黒いスーツ姿に身を包んだ見知らぬ女が立っている。
「うげ、本当にセールスかよ…まあ出るか」
ピッ
渋々、通話ボタンを押す。
「はーい」
『初めまして、山野秋様ですか?』
「そうですけど…セールスならお断りですよ」
セールスなら話を早く終わらせようと俺はキッパリと言う。
『いえ、セールスではありません』
「ならなんの用で?」
『実験体番号77番…いえ、今はナナでしたね、貴方ならご存知でしょう?彼女に会いに来ました』
ピッ
「…」
ピンポーン
「…」
ピッ
『酷いですね、要件を伝えただけですのに』
「早くお帰りください」
『それは出来ません』
「早く帰ってください」
『だから出来ません、彼女に用がありますので』
見知らぬ女との押し問答がしばらく続く。
「…そもそもあんたは誰だ?」
『あら、見当ならついているのではないですか?秋さん』
挑発的に言ってくる女に、俺は苛立ちを出来るだけ隠して答える。
「…研究員か?ナナの元いた所の」
『ええ、正解です』
「…ナナを取り返しに来たって訳か?」
『秋さん、貴方は知らなくていい事です』
「いーや、要件を言わない限りナナには会わせないね」
『…危害を加えるようなことはしません』
「それは最低限の事だ、俺はそんなことを聞いているんじゃない。具体的にナナに何をするつもりなのかを聞いているんだ」
ずっと質問をはぐらかし続ける女に俺は苛立ちがだんだんと溜まっていく。しかし、女の次の一言でそれらは一気に無くなった。
『…健康診断をしに来たんです』
「…は?え、何?」
『健康診断をしに来たんです』
「…健康診断?え、健康を診断するやつ?」
『はい、健康を診断するやつです』
「…本当か?」
『本当です』
「…」
『…』
「…分かった、お前を信じる。扉開けるから待っといてくれ」
ピッ
俺は身なりなどは一切気にせず足早に玄関へと向かい、扉を開けた。
ガチャ
「…貴方が、山野秋さん」
「どうしたんだ、そんなまじまじと顔を見て」
「いえ、写真で見たより大分印象が違いましたので」
「そうか…ま、外で話してたら寒いだろ?中に入ってからゆっくり話そうじゃないか」
「…話すのも良いのですが、私の目的は先程もお話した通り「ナナなら今家には居ない、帰ってくるまでの間の話だ」…そうですか」
「…こっちから聞きたいことは山ほどあるんだ、お茶でも飲みながら答えてもらうとしよう」
「…分かりました、出来る限りは答えましょう」