10月のとある土曜日。今日、俺とナナは、河川敷に遊びに来ていた。ただ、普通の河川敷ではない。家から、車を山の方向へと走らせて2時間。人っ子が一人もいないぐらいの田舎にある河川敷だ。
「取ってこーい!」
「わう!わう!」
フリスビーを俺が投げて、ナナがそれを全力ダッシュで取りに行く。ここでは、人目などないも同然なので、思う存分、ナナの遊びたい欲を発散できる。
「ご主人!ご主人!今度はボール!」
「はっはっは!そうか、高校時代に野球部を三週間でやめた男を舐めるなよ!」
そう言って、車からテニスボールを取り出す。
「よし!行くぞ〜!」
最初なので、まずはゆる~く投げる。
10mぐらいだろうか、ナナはすぐにボールに追いついて、口に加え、持って帰ってきた。帰ってきたナナの頭を左手で優しく撫でると、ナナはボールを俺の右手に返す。
「むふ~♪」
尻尾を素早く振る様子は、さながら餌を目の前にしたときの洋犬だ。
「よし、次はもうちょっと遠くに投げるぞ!」
「わうわう!ばっちこい!」
俺が言うと、ナナは走る体制を作り、俺は外野手がバックホームする感じで、ボールを結構強めに投げる。投げたと同時に、ナナは走り出し、その速度は人間に出せるそれではない。
そして、投げてから10秒ほどすると、ナナはこちらに向かって全速力で走ってくる。近くまで来たら減速し、俺の前に立つ。再び、ナナの頭を優しく撫でると、先ほどと同じように右手にボールが返ってくる。
「むふふ~♪」
ナナは、撫でられている時、本当に幸せそうな顔をするから、こちらとしても非常に嬉しいものだ。
「じゃ、次は本気で行くぞ!」
「ん〜、待ってました!ナナも本気で行くもんね!」
俺は本気で行くため、少しだけストレッチをする。ナナもその間に、足で地面をかき、準備をしている。
「よし!行くぞ!」
「わう!」
俺は、できる限りの助走をつけ、ボールを思いっきり投げる。ボールは弧を描いて飛んでゆき、90mは行っただろう。ナナも、俺が投げたと同時に、恐ろしい速さでスタートダッシュを切り、ボールの落下地点へと向かっていく。そして、投げてからたった20秒ほどで、ナナはこちらへと返ってくる。もちろん返ってくるときも全速力だ。さらに、俺の近くまで来ても速度を落とす気配を見せない。直感的に、ナナが何をしたいかを察した俺は、腕を大きくを広げ、ウェルカムの姿勢を作る。
「わふぅ!」
直前で咥えていたボールを離し、ナナは勢いよく、俺に飛びつく。その反動で、俺は後ろに倒れてしまったが、ナナをガッチリと腕でホールドする。
「わふぅ!速かった?ご主人?」
「ああ、めっちゃ速かったぞ!」
「でしょでしょ〜?」
ご満悦な表情で甘えてくるナナ。俺自身、ナナが来てからは、たまにこうして思いっきり遊ぶのも悪くないな思うようになった。運動にもなるし。ただ、遠出をしないといけないのがあれだが...。
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その後、ひとしきり遊んで帰った。次の日、俺は筋肉痛だった。