金曜日、俺は仕事から帰ってきて、家の扉を開ける。中には、大家さんとナナがいて、ナナはいつも通り帰ってきた俺に飛びついてくる。
「ご主人おかえりー!」
「ただいま、っと」
俺は飛びついてきたナナを抱きしめ、その光景を見ている大家さんはにっこり笑っている。ちなみに、大家さんが俺の部屋にいるのは、俺の代わりにナナの面倒を見てもらっているからだ。ナナが来てから三日ほどが経った時、(仕事もあるし、ずっとは面倒見てられないな)と思って、ダメ元で大家さんに事情を伝え、頼んだところ、快くオッケーしてくれた。それ以来、俺がいないときの面倒は大家さんが見てくれている。
「はは、いつもありがとうございます内村さん」
「いえいえ、孫ができたようで、こちらこそありがとうございます、山野さん」
おばあちゃん特有の優しい笑顔でそう答える大家さん。すると、抱きしめていたナナが、俺の方を見上げる。
「ご主人ご主人」
「ん?どうしたナナ?」
「誕生日おめでとう!」
ナナにそう言われると、俺は目をパチクリする。
「…あっ、そういえば今日か、俺の誕生日」
「やっぱりね。山野さんの事だし、忘れてると思ったよ」
「ははは、完全に忘れてましたね…。ありがとな、ナナ」
大家さんの発言に、図星になりながらも、俺はナナのことを撫でる。
「えへへ〜♪ご主人24歳になるんだってね!」
「そっか、もう24歳か…」
「そんな若いうちから、歳をとることを躊躇ってるんじゃダメだよ。後、36年くらい生きてからじゃないと」
24歳という年齢に、何か感慨深いものを覚えている俺に、大家さんはそんなことを言う。
「…そうですね」
「じゃ、私はそろそろ帰るよ。あとは上手くやりなよ、ナナちゃん」
「うん!ありがとう大家さん!」
ナナにそう言われた後、大家さんは立ち上がってこの家を去ろうとする。そんな大家さんに、俺は小声でひとつ尋ねてみる。
「…ナナに入れ知恵しました?」
「…ちょっとだけね」
「そうですか。ありがとうございます」
「いや、いいのいいの。じゃ、おおきに」
大家さんが去った後、ナナの様子を見ると、冷蔵庫から何かを取り出していた。そして、取り出したものを机の上に置く。
「ご主人!」
「ん?おお、ケーキか」
置かれたものは、2つのショートケーキ。
「大家さんに買ってもらったんだ〜♪誕生日にはケーキを食べるんでしょ?」
「ああ、そうだな。じゃ、早速頂こうか」
「わーい!わうわう!」
俺は、フォークをふたつだけ持ってきて、ひとつをナナに渡し、ナナと一緒にケーキを食べた。
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誕生日パーティー?が終わって、その日の夜。
「なあナナ」
「ん?何?」
毛布の中のナナがその言葉と共に、頭だけ出てくる。暗く姿ははっきりとは見えないが。
「ナナって、誕生日はいつだ?」
「…」
「…」
「…分か…らない」
俺の質問に、少しの間を空けて、ナナは歯切れの悪そうに答えた。
「そっか」
「…」
「じゃあ、ナナと初めてあったあの日」
「…?」
「その日を、ナナの誕生日にしよう」
「!…いいの?」
「ああ、もちろんさ」
「…ちゃんと、覚えとくね」
「ああ、ちゃんと祝ってやるよ」
その言葉の後、ナナを俺から抱きしめる。
「えへへ…ありがと…ご主人…!」
「じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみご主人」