俺が読みたい東方Projectの1シーンを俺が書く 作:Mr.後困る
気が重い、 空とはこんなにも重い物だっただろうか。
博麗霊夢はまるで山を背負うが如くかったるそうに空を飛んでいた。
そう感じるのは本人だけであり、 衆目にはそんな事は微塵も感じなかった。
寧ろ逆、 普段は無邪気な妖精も夜道を支配する闇の子も静まり返っていた。
"手を出したら殺される"とどんな馬鹿にも分かってしまうのだった。
博麗霊夢は妖怪退治の巫女だがここまでの覇気は無かった筈だ。
それもその筈、 今日、 彼女は無二の親友であり
打ち倒さなければならない人外の魔法使いに成ってしまった霧雨魔理沙を
殺さなければならなくなったのだ。
幻想郷のルールは多岐に渡るが
『人里の人間が妖怪になってはならない』と言うルールがある。
人間とは妖怪を恐れなくてはならない。
にも拘わらず妖怪になるのは外界で言う所の脱税である。
そして人間にとって悲しい事に幻想郷を牛耳っているのは
実際の所、 妖怪なのである。
幻想郷の賢者の1人、 八雲紫は博麗の巫女に霧雨魔理沙の殺害を命じたのだった。
『霧雨魔理沙は人里の人間ではない』『元々人里の人間だった
見逃せば人里から出てしまえば人間は妖怪になっていくだろう』
そんな八雲との問答に2日、 事実確認に1日。
魔理沙の居場所を探るのに4日。
そして今日、 夜になって漸く重い腰を上げて魔理沙の元に向かった。
今の博麗の巫女は紅白の蝶と呼ばれた軽やかさも
楽園の素敵な巫女と呼ばれた華やかさも無かった。
嘗て無い気の重さで前に出て来た物を全て
大砲の弾の様な威圧感を持っていた。
大砲の弾に出る様な馬鹿など居ない。
と思っていたのだが。
「・・・・・」
霧の湖に入った途端、 視界の端にチルノが見えた、 無視。
巨大な氷の壁が目の前に現れた、 無視。
氷の壁を突き破りさっさと先に進む、 激突。
「・・・・・」
氷の壁の向こうにチルノが居た。
何時もと違い鎧を見に纏っており真剣な表情である。
ちらりと先程見たチルノを見やる。
「氷の像、 か」
チルノを模した氷の像。
なるほど、 如何やら自分を狙い打っていると霊夢は判断した。
霊夢は氷の壁とチルノをみやり言った。
「邪魔よ」
自分でも驚く程の怒気と殺意を込めてチルノに言う霊夢。
チルノは冷や汗をかいている、 が
「あったりまえだろ!! 邪魔しに来てるんだから!!」
「・・・・・」
ここまでこの氷精は馬鹿だったのか?
と霊夢は考えて言う。
「今日は急ぎの用事なのよ、 退きなさい」
「死んでも退かない!!」
じゃあ死ね
とすら言わずに即座にチルノの前に向かい大幣の一撃を叩き込む。
間違い無く絶命の一撃、 の筈が
「っ!!」
「?」
チルノは即座に左腕でガードして掌を霊夢に叩き込む。
冷気が乗っていてもこの程度、 問題では無い。
そのまま受けるが・・・
「っ!?」
妖精の一撃では無い、 強い衝撃が霊夢を打った。
「・・・少し驚いたわ」
「ふん!!」
チルノは鼻を鳴らす。
「しかし、 アンタ馬鹿ね、 あのまま掴んで凍らせれば良かったじゃない」
「凍らせる前にお祓い棒でアタイの頭を割るだろ」
「・・・・・馬鹿なりに考えてるわね
良いわ、 帰りに遊んであげるからそこを退きなさい」
「だから邪魔しに来てるって言ってるだろおおおおおおおお!!
氷符「アイシクルフォール」!!」
スペルカードの宣言。
「悪いけど、
容赦なく、 正に大砲の様なスピードで前に進む霊夢。
アイシクルフォールはチルノの全面が安全地帯。
チルノの顔面に立ち、 速攻で終わらせる。
チルノの前に進むまでゼロコンマ5秒も無かった。
そして霊夢は度肝を抜かれた。
「う、 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!?」
氷の槍が霊夢に突撃して来たのだ。
ゼロコンマ単位のスピードの自分を狙い撃ち。
こんな高等技をチルノが出来るのか!?
霊夢は即座も受け止めず受け流そうと試みるも首筋に槍が刺さる。
普通なら絶命、 しかし流石は博麗の巫女。
首筋の槍を体裁きで勢いを通し首筋から頭の脇に槍を受け流した。
互いに距離は取る事になったが
チルノからしても博麗の巫女に傷をつけた事。
霊夢からしても不意打ちの致命の一撃を何とか軽傷に済ませた事。
まさに神業と言えるだろう。
「・・・・・チルノ、 アンタ何? 今日は本当に忙しいのよ」
「そこまでして行かなければならないのか!!」
「そ「そこまで魔理沙を殺さなきゃいけないのか!!」
霊夢の返答を待たずに叫ぶチルノ。
「アンタ達、 友達じゃないのか!! 何で殺さなきゃならない!!」
「・・・・・」
そう言う事か、 と霊夢は得心した。
恐らくはチルノは今回の事を知って
如何にか止める為にここに来たのだろう。
「人里の人間が妖怪になることを許すわけにはいかないから
だから殺さなきゃならない、 博麗の巫女として「そうじゃないだろ!!」
霊夢の返答を待たずに叫ぶチルノ。
「博麗の巫女としてじゃなく博麗霊夢としてアンタは
魔理沙を殺したいのかよ!!」
「先に人間を辞めたのは魔理沙の方でしょう、 情状酌量の余地は無いわ」
激情の炎に晒されながら、 チルノよりも冷たく霊夢は考えを巡らせた。
まずチルノはここに霊夢を止めに来たと言う事である。
問題はチルノ一人だけか? という点である。
博麗の巫女の職務、 今回は霊夢の深層に触れる様な物である。
邪魔をすればどうなるかは想像に難くないし
今回の魔理沙殺しは幻想郷のルールに抵触する物である。
幻想郷を深く愛する八雲紫と正面切って殺し合いをする事を是とする者は
恐らくチルノの様な大馬鹿以外には居ないだろう。
ならば魔理沙は如何だろうか?
魔理沙がチルノを唆してと言う線も考えられなくはない。
いや、 違う、 チルノを手駒にした所で勝ち目は無い。
霊夢と魔理沙の実力差は天と地の違いと言える。
氷のひとかけらで埋まる実力差では無い。
とは言え魔理沙が人間を辞めたと言う事は実力差を埋める事が出来たのだろう。
魔理沙は直情的に見えて理知的で努力家だ。
勝ちの目が無い戦いはしないだろう。
結論として魔理沙と全力で戦う為に
消耗無くチルノを倒さなければならないと言う事だ。
「とはいえ・・・」
打たれた首筋から血が垂れる。
今の技は恐らく新技だろうか?
いつも最強最強言っているチルノが
良くもまぁ見せびらかさずにいた物だ。
「ん?」
そして感じる違和感。
チルノから何か足りないと感じる。
「・・・羽?」
チルノの6枚ある氷羽が1つ無くなっている。
「羽に何か仕込んでいた・・・か・・・」
ますますチルノらしくない策謀。
ここ迄の仕掛けを打てると言う事はやはり裏に誰かが居るのか。
コンマ数秒での強力な攻撃、 迂闊には動けない。
「警戒しながら通常攻撃と言った所ね」
陰陽符と針を構える霊夢だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
八雲紫との問答を霊夢がしている時にチルノは紅魔館にやって来た。
普段は追い払われるのだが紅魔館の主であるレミリア・スカーレットは
その日、 酷く気が立っていた
出来れば誰かを八つ裂きにしたい気分だった。
それ故にチルノはレミリアの前にやって来る事が出来たのだった。
チルノを連れた紅美鈴が戸惑いながら二人を見ていた。
「頼む!! 霊夢と魔理沙の戦いを止めてくれ!!」
チルノは頭を下げた。
「無理」
端的にレミリアは答えた。
「何で!?」
「止められないし止めるつもりもないし止めてはいけないからよ」
「~~~?~~~?」
「教えてあげるわ
人間が妖怪になるのは幻想郷のルールに抵触する
紅魔の主として紅魔館を危険に晒せないから『止めてはいけない』
私は魔理沙は良い奴だと思うけど
紅魔館と引き換えにする程でもないから『止めるつもりもない』
そして最後に単純に霊夢を『止められない』」
「・・・・・」
「そもそもこれは霊夢と魔理沙の戦いじゃないわ
スペルカードルールでも無い、 一方的な霊夢の妖怪殺しよ」
「そんな・・・」
「霊夢と魔理沙の実力差はそれ程までに離れているのよ
魔理沙に何か策でもあるのか、 それとも単に増長したのか・・・
何れにせよ魔理沙は死ななければならない
多分この幻想郷では誰も魔理沙の味方にならないよ
敵になる奴も居ないとは思うけど」
「なら・・・アタイが!!
アタイが魔理沙の味方になって霊夢を止める!!」
次の瞬間、 チルノは壁に叩きつけられた。
「このレミリア・スカーレットが勝てない相手にアンタが?
妖精如きが戦う? それが霊夢と魔理沙と私に対しての
どれだけの侮辱か分かってるの?
ここでアンタを引き裂いても文句は言えないわよ」
そう言ってチルノの首を掴みながら爪を立て始めるレミリア。
チルノはレミリアの手を掴み返す。
「!」
「じゃあ鍛える!! 全力で鍛えて霊夢を止める!!」
「何を馬鹿な、 魔理沙は今何処に居るか知らないけども
見つける迄に1週間も時間はかからないわ
そんな短時間で鍛えて如何なるって言うの?」
「お、 お嬢様」
美鈴がおずおずと口に出す。
「・・・何?」
不愉快そうにレミリアは美鈴を見る。
「時間の事なら咲夜さんが居るじゃないですか」
「・・・・・」
咲夜の能力ならば数日を数か月に伸ばす事は可能だろう。
「・・・・・」
先も言った様にレミリアが気が立っていた上に酷く気が立っていた
そしてチルノの発現によりブチギレていたと言って良い。
だからこそだろうかレミリアの中にはふと一つのアイデアが浮かんでいた。
『咲夜の能力で時間を引き延ばし
数か月かけてしごき抜いて痛めつけてやろう』と
「良いわ、 咲夜を呼んで頂戴」
レミリアは妖艶に笑った。
獲物を見つけた様に。
その日からチルノは徹底的に鍛え上げられていった。
咲夜が拡張した時間と空間にて
美鈴に体術を
パチュリーには魔術を
レミリアには総合力と実践経験を養われたのだった。
地獄の特訓でチルノを痛めつけるレミリアの当初の目的は直ぐに頓挫した。
倒れながらも何度でも立つチルノの姿にレミリアが共感を得てしまったのだ。
「全力で鍛えてもチルノちゃんでは霊夢に勝てるとは思えませんよ・・・」
当初とは逆に痛々しい姿に美鈴は引いてしまっている。
「いや馬鹿は馬鹿なりに考えている
ちゃんと自分に出来る事を全てやってからアイツはここに来た」
「いやそうですが・・・それだとチルノちゃんが・・・」
「私達が全力でチルノを鍛えても
チルノが霊夢に与えれるダメージは蟻の一穴に等しい
だが本人がやるって言ってるんだ、 馬鹿な妖精の一世一代の決心だ」
「・・・・・」
美鈴は面白がっている主人に思う所が有るが
チルノは文字通り命を賭けているのだ
何も言う事は出来ないだろう。
それからどんどん時間は過ぎた。
「グングニル、 とまでは行かないけども氷の槍は中々様になっている
直撃すればある程度のダメージは与えられるでしょう、 でも技の出が襲い」
「遅いって・・・5秒もかかってないよ?」
息を切らしながらチルノは嘆く。
「少なくても0.5秒くらいは短縮しないと霊夢には避けられる」
「じゃあ前もって用意しておくとか?」
「維持しながら戦うのは現実的じゃないわ、 ここは身を切る必要が有る」
そう言ってチルノの氷羽を指差す。
「これを槍にするの?」
「出来る?」
「羽が無くなるのはスピードが落ちそう」
「じゃあ使い所を考える必要が有るわね、 じゃあもう一度実戦ね」
「うん」
激しい訓練の日々が終わる頃にはチルノは以前よりも格段に強くなっていた。
時間が延長された空間から出た後にレミリアとチルノはお茶を飲んでいた。
「チルノ、 作戦を確認するわ、 アンタは待ち伏せをしなさい
私の運命を操る程度の能力で霊夢をアンタの待ち伏せポイントに誘導するわ
そしてアンタは全力で戦いなさい」
「うん、 OK」
立ち上がろうとするチルノを制止するレミリア。
「待ちなさい、 最後に御茶飲んでいきなさい
アンタが死のうが生きていようが
こうして御茶を飲んでいくのは最後でしょうから」
「・・・・・」
レミリアにも立場が有る
チルノを鍛えるまでは良いだろう。
だがもしも霊夢と戦った後にチルノと会えばどうなるかは言うまでもない。
「・・・・・」
アイスティーを飲むチルノ。
「苦いね」
「そうね、 最後に言うまでも無い事だけど
今のアンタは私とやり合ってもそこそこ良い線行けると思うわ
最終的には私が勝つけど」
「言ってろ」
「でも霊夢には絶対に勝てない」
「良いんだよ、 魔理沙は霊夢を殺す気が無い
魔理沙を殺したいのは霊夢だけだよ、 だから霊夢にダメージを与えて
魔理沙が霊夢を追い払える所まで消耗させる」
「馬鹿なりに考えているわね
でも上手くいってもアンタはまず間違い無く死ぬ
切り札全て切っても生きていられる可能性は極めてか細い」
「そこは運命を操る程度の能力で何とかしてよ」
「私の能力で操れる次元の話じゃない
万が一の可能性ならば掬い上げられるかもしれない
アンタが生きて帰れる確率は百万分の一の可能性でも足りない
これは最早起こる余地が無い出来事と言い換えても良い
奇跡とかそう言う次元じゃない、 起こらない事は起こらない」
「それでもやらない訳にはいかないのよ・・・・・」
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「っ、 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
周囲を覆う符を掻い潜りながらも
眼前に迫りくる針の山に
氷羽から造り出した槍を全力で叩き込むチルノ。
だが一撃では足りない!!
続けざまに二本、 三本の槍を叩き込み、 更に自分も加速する。
チルノの目算通りに針の山を相殺し霊夢に肉薄する、 筈だった。
「ちぃ!!」
スピードが出ない!! 既に氷羽は4本使い残り2本!!
常時の3分の1とまでは行かないがスピードは格段に落ちる!!
追撃の針が刺さるもチルノは止まらず霊夢を殴る!!
しかしそれは大幣に阻まれカウンターを返される!!
美鈴から教わった体裁きでダメージは軽減しているも
ダメージは甚だ大きい!!
「!! アンタ、 それ・・・」
鎧を砕いた霊夢は絶句した、 鎧の中身が無い。
否、 内部は冷気そのものであった。
「純化・・・!!」
”純化する程度の能力”
月に恨み持つ神霊が持つ能力である。
先程から感じる力はこれが原因だったのか
恐らくクラウンピースを頼みヘカーティアを経由したのだろうか
「そこまでして何で私を止めたい?」
霊夢はそう尋ねた。
クラウンピースが月面で見せた時よりも強く純化されている
妖精と言う形をギリギリで保っている様に見える。
「あたいはずっと昔から最強だった」
「はぁ? 何を「最後まで聞いて!! あたいは昔から最強だった!!
でも独りぼっちだった!! ずっと昔から!! でもあたいにも友達が出来た!!
大ちゃんにルーミアやリグル、 それから「それが如何した?」
今度は霊夢がチルノの言葉を遮った。
「友達って言うのは大事なモンだろう!!
だからそれを蔑ろにして欲しくないんだよ!!
霊夢と魔理沙も良い奴だからこんな事で「黙れ」こ「それ以上喋るな」」
チルノの言葉を強く遮る霊夢。
「「次何か一言でも喋ったら殺す」
チルノが口を開く瞬間に霊夢は怒気を持って言う。
「先に人間を辞めたのは魔理沙の方
幻想郷のルールを知りながら人間を辞めたのは魔理沙の方
ルールを破れば殺されると知っているのに人間を辞めたのは魔理沙の方
殺しに行くのは博麗の巫女だと知っているのにアイツは人間を辞めたのよ!!
先に裏切ったのはアイツ!! その始末を着けるのは私!!
それで私が傷つくと思ってもしないのがアイツよ!!
何で私が無二の親友を殺しても平気だと思ってるのよアイツ!!」
博麗の巫女としてでは無く一人の少女として霊夢は叫んだ。
滂沱の波を流しながらも絶叫する。
「もう止めようよ・・・」
「止める!? 私とアイツの間にアンタが『友達は大事』とか
そんな言葉で割り込んでるんじゃないわよ!!」
陰陽玉を出す霊夢。
霊夢の切り札とまでもいかないが早々に切れない持ち札の一つ。
陰陽玉に力を込めて放つ霊夢。
弾幕の様な美しさは感じられない、 殺す為の一撃。
その一撃はあっさりとチルノを貫いた。
「っ!!」
絶叫すら上げられない苦痛。
貫かれ落下する下半身、 漏れ出る冷気。
バケツの中にかき氷を落とすが如く、 チルノは霧散するだろう。
「・・・・・」
チルノは俯いた、 影でチルノの顔は見えない。
「通るぞ」
「・・・・・」
チルノは黙って氷羽の一本を手に取り槍に変化させる。
そして残り一本の氷羽を射出した。
「!?」
自分ごと氷の槍で貫きながら突貫するチルノ。
「馬鹿ね、 この程度」
霊夢は博麗の巫女として百戦錬磨。
即座に違和感を看破する。
影でチルノの顔が見えなくなっているのではない。
チルノが真っ黒になっているのが。
霊夢は知る由も無いが
これは”秘神”摩多羅隠岐奈の"あらゆるものの背中に扉を作る程度の能力"による
力のブースト否、 暴走である。
看破に成功したが遅過ぎた霊夢は咄嗟に結界を展開し受け止める。
「っ!!」
まるでタイタニック号に激突した氷山の様な冷気の塊を受け止める霊夢。
これが霊夢で無ければ、 間違い無く必殺の一撃だっただろう。
旋律はしたが消耗はしたが、 それでも霊夢には届かなかった。
力を全て使い果たしたチルノは力なく落下していった。
それと同時に霊夢の通り道を遮っていた巨大な氷の壁も湖に落下していった。
「チルノの癖に良くやったわ」
侮蔑と賞賛の言葉を浴びせて先に進む霊夢。
氷の壁が地面に落ちた水飛沫の中を突っ込んでいく。
と同時に戦慄した、 浴びた水飛沫が凍る!!
「っ!!」
完全に油断していた。
最後の全力を受け止めたと思ったら、 こんな隠し玉を残していたとは!!
霊夢は知る由も無いパチュリーによる魔術指導。
それによりこの高度なトラップを実現したのだった!!
「夢想・・・」
霊夢は自身の切り札を使う事にした、 既に攻撃は当たっている。
ここからの脱出は並の結界では無理である。
そして霊夢の脳裏に在りし日の魔理沙の言葉がリフレインする。
『なぁ、 霊夢、 それは余りにも無体過ぎるぜ、 そんなん誰も勝てねぇよ
もうちょっと遊びを持たせようぜ? そうだな夢想封印からあやかって』
一瞬発動が遅れ氷の冷たさに気を切られながらも叫んだ。
「天生!!」
ありとあらゆるものから浮くことで
全ての因果から解き放たれる博麗霊夢の奥義である。
彼女に纏わりついていた氷は全て霧散し、 霊夢は周囲を見やる。
既にチルノは見えない、 湖に落ちていたとしても助からない。
助かっていても追撃して湖に近付けばどうなるか分からない。
「・・・ここはアンタの勝ちよ、 チルノ、 負け犬はさっさと逃げさせて貰うわ」
称賛の言葉を浴びせて霊夢は先に進んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
チルノが負ったダメージは重篤であり
自然の力で元に戻れないダメージを負う事になってしまったのだった。
生きていられるはずは無かった。
のだが・・・
「・・・・・」
霧の湖のほとりでチルノは目を覚ました。
下半身所か体の8割近くを無くしてはいるがまだ自分が生きている事にチルノは驚いた。
「何で・・・」
「目が覚めた?」
クラウンピースが松明を持ちながら倒れているチルノをみる。
「何で・・・アンタが?」
「気になって様子を見に来た、 運が良かったね
あたしの松明の力であんたは自分の本来の力を出し切った
そのお陰で何とか助かった、 って所ね」
「・・・・・」
「じゃあ入れるよ」
「え?」
そう言って氷のたくさん入ったクーラーボックスにチルノを入れる
クラウンピース、 これで冷気は補充され応急処置になるだろう。
「なぁ、 チルノ」
「何?」
「あたし達、 一緒に戦ってやれなくて悪いな」
「・・・・・」
チルノは目を閉じた、 無理もない。
全力の博麗の巫女相手では妖精達では間違い無く勝ち目が無かった
幻想郷最強の妖精であるチルノだから
ここまで霊夢を消耗させる事が出来たのだ。
「良いよ、 アタイ、 最強だから」
チルノはクーラーボックスの中で眠りに着いたのだった。
霊夢VS魔法使いと成った魔理沙からちょっと捻ってみました。
親友同士の擦れ違いガチ戦闘はイイ・・・
とは言え、そもそも霊夢と魔理沙では実力差が大きいので
霊夢と魔理沙がガチで戦うにはまず霊夢の消耗は必須。
そこでマターラと純狐にパワーアップされたアーマーチルノが
レミリア達に鍛え上げられて戦いに行くと言う風にしてみました。
久々に大量に文字を書いたので後日談はまた今度という事に・・・