ブルーアーカイブ Day After Day 作:燃え殻の灰
ご容赦ください
対策委員会 教室
「……で? 何故、私までここに連れてこられてるんだ?」
「やだなぁ、支店長。ここまで来たら一蓮托生でしょー? うりうりー」
「ええい、止めんか桃色小娘!! 本心から言ってないのが丸わかりだ、馬鹿者!! 警戒してるなら最初から連れてくるんじゃない!!」
ウザ絡みしてくるホシノに、支店長は
あの後、追跡を振り切った支店長は、対策委員会の面々を安全な場所で降ろしたら、そのまま本社に行く予定になっていた。
しかし、何故か対策委員会に気に入られたのか、そのままアビドスの校舎まで連れてこられたのだ。
(しかしなんだこの桃色小娘。表情と内心がまったく嚙み合っておらんぞ。……いや、資料によるとこいつの上に一人生徒がいたはずだが……ふん、小娘の癖に随分と重い物を背負っていると見える。そしてそれをこの先生とやらは……ふん、知っている所か。全て見通してそうだな。まったく……敵に回さずに済んだことだけは、代表に感謝せねばなるまい)
「それで支店長さん。銀行から持ってきた資料についてなのですが……」
「む、少し待て。貴様らが必要になるのは……ああ、これだな。アビドスの借金に関する資料と、返済した金額が流れている場所についてだ」
アヤネから資料の束を受け取ると、支店長は直ぐに必要な書類を抜き出して、それを机の上に広げて見せる。
「いいか。まずアビドスで集金したその直後に、ここに資金が流されている。つまりは……」
支店長が様々な資料とアビドスの借金の状況を照らし合わせ、何処に資金が流れたのか、何に利用されているのかを事細かくホワイトボードや資料に書き写す姿を眺めながら、先生は口元に手を当てて何やら深く考えているようだ。
そうこうしている間に、対策委員会の面々は、支店長が書き出した内容について質問を行っているようだ。
「支店長、この武器弾薬費ってのは何?」
「恐らくだが、貴様らが相手をしていたカタカタヘルメット団に横流ししていた物についてだろう。他にも戦車等も流れていたからな。随分と大盤振る舞いしているものだ」
「こちらの調査費用と言うのは、なんでしょう?」
「PMCは最近、アビドスの砂漠で何やらやっているようだ。それに使う費用の一部に使われているんだろう。それに基地建設していると噂も出ている」
「ちょ、ちょっと待ってよ!? 借金してるとは言え、ちゃんと返済してるじゃない!! それなのに、アビドスの砂漠で勝手に基地建設とか、どう言う事!?」
セリカの疑問は最もだ。近くで話を聞いていたシロコやホシノの眼つきも鋭くなっている。
まさか自分達を借金で絡めとっている存在が、砂漠で怪しい動きをしているなら気になるだろう。
「借金で学校側の動きを制限し、その間に目が付かない場所で良からぬ事を企てている――と言ったところだろう」
「ブラックマーケットの代表からも、似たような情報を購入しております。信憑性は高いかと」
先生とワカモの言葉を聞き、教室内に沈黙が下りる。
「それってつまり、私達は裏切られてるという事……? 誰もこの問題と向き合わなかったのは、無駄だってわかっていてから……?」
シロコの力の抜けた一言が響く。毎月必死に利息を返しているのに、まさか知らないところで学区を侵略されていたのだ。折れそうになるのは無理はない。
「ここで君達には選択肢がある。一つは全てを捨てて、アビドスから出ていくか。勿論、他の学区への転入手続きなどは私が責任をもって担当しよう」
ここで逃げるのも選択肢の一つだ。彼女達は必死に抗った。確かに生きる事、戦う事は尊いものだが、それは先生の勝手な考えであり、なにより彼女達はまだ若い。もっと別な道があるだろう。
「そしてもう一つは、ここで
「……ふん。小娘どもには少しばかりきつい話だろう。今日は色々とやったのだ。結論は急がずに、明日にでも出せばよい。私もそろそろ本社に行かねばならんからな」
先生と支店長の言葉が、静かな対策委員会の部室へと響くのであった。
その後、色々と考え込んでいる対策委員会の面々を残し、先生とワカモは本社に向かう支店長を駅まで見送りに来ていた。
「これから忙しくなりそうだな、支店長。上手くやれる自信はあるか?」
「ふん、ここまでお膳立てされたのだ。それで結果を残せんようでは、無能と言われても文句は言えん!」
「なんと言うか、話してて思うのですが……支店長、もしかして口が悪いだけで根は良い人だったりします?」
「うるさいぞ狐娘!!」
「ははは。ワカモ、そう言う事は分かっても言わない事さ」
「そう言うものでしょうか……? そう言えば、先ほど先生と新しい軍事部門の名前を考えていたようですが、何か決まったのですか?」
ふんっとそっぽを向きながら電車に乗り込む支店長を見送りながら、そう言えば新しい軍事部門はなんと名付けるのか――先程まで先生と相談していたようだ。
そのワカモの問いかけに、支店長は入り口から振り返り、先生と決めたその名前を口にした。
「フライトナーズ。それが私が作る新しい
深夜
アビドス高校 屋上
満天の星空の下、ホシノは屋上からアビドスを、その奥に広がる砂漠を眺めていた。先生が提示した選択肢。ここで抗うか、それとも逃げ出すか。
他の対策委員会がどんな選択肢を取るかは分からないが、ホシノにとって選択肢すらなかった。
「ここで逃げ出すなら、もっと前に逃げ出してたよ……」
その姿は今にも折れてしまいそうな程か弱くて、年相応の少女のもの。一体どれほどの重圧をその身に背負っているのだろうか。
幾度も幾度も折れそうになり、壊れそうになった物を必死に繋ぎ止めていたのが、このホシノと言う少女。だからこそ、今回も自分が……と、ある一つの決意を抱かせることになる。
そんな事を考えていると、後ろで扉の開く音が聞こえる。誰か来たのかと振り返ると、何時ものようににこやかな表情の先生が佇んでいた。
その姿に、何時もの様にふにゃりとした仮面をつけて、ホシノは問いかける。
「あれ~、先生。こんな時間にどうしたのさ。この時間は寒いよー、冷えるよー?」
「こんばんはホシノ。少しばかり夜風にあたろうかと思ってね。それに、ここから眺める景色は良いと聞いたからさ」
そう言って先生はホシノの隣に来ると手すりに寄りかかり、同じように砂漠を眺める。
先生の横顔を、ホシノはなんとなく見つめてみる。思えば、この人が来てから随分と色々あった気がする。カタカタヘルメット団の撃退やら、ブラックマーケットや銀行の襲撃。その全てに関わり、その中心にいた人。
穏やかで火のように暖かく、何時も優しそうな笑顔を浮かべているのに、何処か鋼鉄の冷たさと硝煙の勇ましさを宿した不思議な人。
「ホシノ、私の顔に何かついてるかい? さっきからずっと見ているようだけど」
「へっ!? あ、いやー、なんでもないよ。あ、あはは~」
少し顔を赤くしてなんでもないと手を振るホシノを、先生は小さく苦笑いしながら優しく見つめている。相変わらず穏やかな人だと思う。
ふっと、ホシノは思った。この人は自分達には無い知識を持っている。ならば、あの異形が――【黒服】と名乗った存在が、自分に接触してきた理由が分かるのではないか? と。
だが、それを全て話すとなると、この決意すら伝わってしまう。最後の最後の決意にして秘密。それだけは隠さなければならない。
故にホシノは、どうしても気になったワードだけを聞いてみることにした。自分が調べても、一切情報がなかったそのワードを。
「ねぇ~、先生。少しだけ噂で聞いたことのある言葉があるんだけど、どうしても分からなくてさ。教えてもらってもいい?」
「ん? 私で答えられることなら良いんだが……。どんな噂を聞いたんだ?」
それは【黒服】と名乗った存在が、誰よりも彼女に見出した言葉。【黒服】自身も、そう言う意味だろうと決めつけた古い、古い言葉だ。
「
そして、その意味が間違いだと――そして真の意味を知っているのは、ここにいる