ブルーアーカイブ Day After Day 作:燃え殻の灰
今週分となります。
トリニティ総合学園
「救護!!」
「それのどこが救護なのですか!!」
ズドン、と音を立てて
最初にトリニティを訪れた際、先生の怪我の度合いを把握する為に蒼森ミネを筆頭に救護騎士団が確保しようとしたのだが、先生はやんわりと拒否。
しかし、怪我人を放置する彼女達ではなく、トリニティを訪れる度に先生の意識を刈り取り、確保しようと目論んでいるのだ。
その度に放たれるミネの拳をワカモが受け止める──というのを繰り返している。
「ははは、ミネ。こんにちは。今のは良い拳だったね」
「こんにちは先生。そう言うのでしたら、大人しく救護されてくれませんか? その様に大怪我をされているのですから!」
「先生はお忙しいのです!! それに先程の一撃、もし先生に当たれば更に大怪我してしまいます!」
「その時は私が責任を持って全快まで看護しますので、問題ありません」
自信満々に胸を張るミネの姿に、ワカモが「えぇ……?」と小さく声を漏らしてドン引きしている。
怪我人を確保する為の一撃が、手加減無しの拳なのは、流石に理解出来なかったようだ。
「心配かけてすまないが、この怪我は……まあ、気にしないでくれ」
「救護騎士団団長の私に、怪我人を見逃せと言うのですか?」
「この場合、見逃すという言葉の使い方は正しいのでしょうか……?」
「なんにせよ、先生。今日こそ覚悟してもらいます。ご安心ください、救護致します。例えこの一撃で大怪我しようとも!!」
「だから、言ってる事が矛盾しているのですよ!?」
トリニティ大聖堂
「それで、ミネさんと騒動を起こしていたのですか……?」
「ははは……。ミネは純粋に心配してくれたんだろうけどね」
「く……どうしてトリニティは、上に行けば行くほど融通が利かないのですか……!!」
「そ、それは私も入っているのでしょうか……?」
「少なくとも、言葉足らずで部下の方々に色々と勘違いされていたのは事実でしょう?」
ワカモの一言にガーン!! と言った様子でショックを受けるサクラコだが、事実なので仕方がない。
盛大にミネとワカモがやりあい始め、どうしたものかと悩んでいた先生であったが、偶然近くを通りかかったシスターフッドの長、歌済サクラコが止めに入ったのだ。
そう、止めに入るまではよかったのだが、何を勘違いしたのか一般シスター達が完全武装で登場。
それに気が付いた救護騎士団もフル装備で参戦。
なんで……? と戸惑うサクラコを尻目に、シスターフッドVS救護騎士団という構図が出来そうになったのだが、そこはある意味で原因である先生がどうにか説明し、事なきを得たのである。
「まあ、サクラコは少し誤解されやすいみたいだからね。前に言った通り、他のシスターフッドの子達と話したりしてみた?」
「は、はい。最初は怯えられていましたが、最近は少しずつ話しかけてくれる子達が増えてきました。なんと言うか……ええ、とても嬉しいです」
「はぁ。シスターフッドは秘密主義が強すぎる、とトリニティでは噂になっているようですが……実際はトップが口下手というか、誤解を受けやすいだけというか……真面目な馬鹿と言うべきか」
「ば、馬鹿とはなんですか馬鹿とは!! 結構、悩んでいたんですよ!?」
「それで更に誤解を招いては、苦労しませんねぇ」
実際、サクラコも少しは親しみを持ってもらおうと色々と試していたのだが、真面目過ぎる性格が災いし、調べた知識や知った要素をそのまま実践してしまったり、間違った知識を鵜呑みにして試したりして、更に誤解を招く──という悪循環に陥っていたのだ。
それに気が付いた先生が、「まずは少しずつ話をしてみてはどうか」と提案。
最初こそ先生も一緒に付き合ったりはしたが、ここ最近はサクラコだけで他のシスター達と穏やかに会話が出来るようになってきたのだ。
一般のシスター達も最初こそ戸惑っていたようだが、何度も話すうちにサクラコが単純に真面目で少し天然だということが分かって来たらしく、以前に比べて周囲との壁も少なくなってきている。
少し落ち込んでいるサクラコの姿を、シスター達が微笑ましそうに見守っているのがその証明だろう。うちのリーダーが可愛すぎる。そういう事なのだ。
「さっきの反応を見る限り、シスターフッド内では打ち解けてきたようだが、他の生徒達とはまだ少し壁があるかもしれないね」
「はい。やはり秘密主義と思われるのがいけないのでしょうか……。そうだ!! 大聖堂にお招きして、皆さんにシスターフッドの歴史について講義などしてみては!」
「お止めなさい。また要らぬ誤解を招きそうですから、少しずつ地道にいったほうがよろしいかと」
「そ、そんなぁ!?」
等々、様々な生徒達と交流している先生達であったが、今日トリニティを訪れた理由は別にあった。
学園を一望できるテラスに用意されたテーブル。そこに座り、先生とワカモを待っていたのは三人の生徒達。
「お待ちしておりました先生」
「やっほー、先生!! 久しぶりだねー!」
「やあ、先生。待っていたよ」
桐藤ナギサ、聖園ミカ、百合園セイア。
このトリニティ総合学園の生徒会【ティーパーティー】のメンバー達である。
それぞれが多数の生徒達が所属する派閥の長であり、この巨大な学園内で絶大な権力を持つ三人だ。
「三人とも、待たせたようですまないね。少しばかり他の子達と話していたから、遅くなってしまった」
「良いの良いの、気にしないでー。あ、先生、私の隣空いてるよー!」
「ミカさん。先生が来て嬉しいのは分かりますが、今日は真面目な議題です。少し落ち着いてください」
「ワカモがすごい形相しているから、離れた方が良いと思う」
「うふふ。セイアさん。すごい形相とは何のことでしょうねぇ?」
「わぁ、ワカモちゃんって相変わらずだね☆ けど、久しぶりなんだし少しは先生を借りてもいいじゃん、ね?」
「ワカモ、銃を構えないで座りなさい。ナギサも言っていたが、真面目な議題だしね」
「ミカさんも落ち着かないと、ロールケーキぶち込みますよ?」
「やさぐれナギちゃん!? す、座るからそれはやめてほしいなー!」
にこやかにしながらも、何故か手にロールケーキを構えるナギサを見て、慌ててミカが先生から離れて自身の席に座る。その様子をセイアはやれやれ、といった風にして見ていた。
「さて。今回の議題はゲヘナとの条約についてだ。ワカモ、ゲヘナから提案されている内容を出してくれるかな」
「はい。わかりました。では、お三方にも資料を配ります。まず、あちらから提案されている内容としましては……」
トリニティとゲヘナ。長年対立関係にあった両学園の全面戦争を防ぐため、中立機構を設立するための条約。
他にも不可侵条約やら、様々な内容が盛り込まれているが、メインとなるのはこれである。
一度は連邦生徒会長が行方不明となり、瓦解しかけた内容であるが、シャーレの先生、ナギサやヒナを筆頭とした主要人物達のお陰で少しずつだが形になりかけてきている。
本来ならば、両学園の首脳陣が対面して話し合うべき内容なのだが、そこは多忙を極める超巨大校の長達である。そうそう時間が取れるわけもなく、特別な権限を有している【シャーレ】の先生が間に入り、それぞれの提案のすり合わせや内容の確認事項などを行っているのだ。
ゲヘナから提案されている内容、そしてトリニティが提案した内容への返答など。
様々な事をティーパーティーの三人は話し合い、時には先生にも意見を求めて、更に内容を詰めていく。
気が付けば、それなりに時間が過ぎており、今日はここまで──という話になった。
それぞれが思い思いに用意されていたお茶や菓子に手を付け、雑談が交わされ始めた。
「そう言えば、ナギちゃんってさ。本当にゲヘナと不可侵……というか、和解が出来ると思ってるの?」
「それはどういう事でしょう、ミカさん?」
「んー、だってさ。トリニティとゲヘナって犬猿の仲じゃん? 随分と長いことバチバチ~とまではいかないけど、揉める事も多かったじゃん。それなのに、いきなり不可侵だー和解だーって言われても、んー? っとなる子達も多いからさ」
「確かに。私の派閥は、この条約に関しては中立の立場をとっている者が多くいる。それに対して、ナギサの派閥は肯定派」
「そうそう。それでうちの派閥の子達は、どちらかと言うと反対派だからねー。私にも結構、色々と意見が来てるよ?」
トリニティ総合学園に所属する生徒達の数は膨大であり、それ故に様々な思想や派閥が存在する。
先にも述べたように、ここにいる三人はその巨大派閥の長達であり、【ティーパーティー】というトリニティの最高意思決定権を持つ存在であると同時に、自派閥に所属する生徒達の意見も代弁する存在なのだ。
だからこそ、ミカは条約を推進するナギサに問い掛けねばならない。
「ナギちゃんはさ。トリニティとゲヘナが手を組んだら、キヴォトス最大規模の組織力と武力を手に入れるってわかってる? それでキヴォトス全域を掌握しようとか考えてたりする?」
ミカ自身、ゲヘナの事を少し毛嫌いしている雰囲気もある。そうだから反対派が多いのか、ミカに影響されてなのかは分からないが、ミカの派閥にはゲヘナとの条約に反対派が多く所属している。
その中で多いのは、【ティーパーティー】のホストのナギサはゲヘナと手を組んで、連邦生徒会以上の影響力を確保しようとしているのではないか──というもの。
流石に突拍子もない内容ではあるが、両学園の力を考えればそれも可能とすら思えてしまう。
だからこそミカは、その疑問をナギサへと問いかけてみたのだが、返ってきたのは……。
「はい……? えっ……はい!?」
「あ、あれー? 思ったような反応とちょっとちがーう?」
ポカーンと口を開けるナギサに対して、話を聞いていたセイアは頭を押さえながら、苦笑いを浮かべている先生とワカモに視線を向ける。
「……先生、どうしよう。もしかするとこの二人、馬鹿かもしれない」
「わーお、セイアちゃん辛辣ぅ☆ てか、馬鹿ってなにさ馬鹿って!!」
「セイアさんの言う通りですね。二人とも『私達幼馴染です、話さなくても分かってます!』みたいな雰囲気出しておいて、物の見事にすれ違ってるじゃありませんか」
「すれ違いというか、なんと言うべきか……。まあ、こればかりは私達の口から言うべきことではないからね」
苦笑しながら、先生はカップをテーブルに置くと、視線をナギサやミカ、セイアへと向けて優しく微笑む。
先生がこの条約の締結に向けて協力するのは、ゲヘナの風紀委員やトリニティのティーパーティーに頼まれたというのもあるが、一番の理由は──一人の少女の夢の為。
ミカの問い掛けと先生の優しい視線を向けられたナギサの、小さくて、とても
「あ……う。せ、先生、どうしたら良いですか……?」
「ふふ、ナギサ。これはちゃんと答えてあげた方が良いよ」
何故か顔を赤くして視線をミカとセイアの両方を行ったり来たりしているナギサの姿に、先生は更に笑みを深くする。
疑問符を浮かべる二人に観念したのか、ナギサは消え入りそうな、しかし届くようにハッキリと、この条約にかける小さな
「その……ゲヘナとの諸々の問題が無くなれば、昔の様にミカさ……ミカと遊んだり、セイアさんともお買い物に行けるかな……と思って……」
ただ一人の少女が願った、小さくて小さくてとても
自分と同じように多忙極まる
「……わーお☆」
「うん……うん。こう言う時はどんな顔をすべきなのかな」
同じように顔を真っ赤にして視線をあっちこっちに向けるミカと、取り乱してませんよ──という風な態度を取っているが、セイアも耳が真っ赤に染まっている。
まさかそんな単純な事の為に、ここまで頑張っていたとは二人も想像がつかなかったのだろう。
「な、なんですか! 良いじゃないですか!! 私だって友達と遊んだり出掛けたりしたいんですよ!! けど忙しいし、ティーパーティーで皆ナギサ様ナギサ様で、気軽に話しかけてくれる方もいませんし!!」
「わ、わぁわぁ!! ナギちゃんステイステイ、落ち着いて!! 分かったから分かったから!! そうだね、うん!! みんなで条約を上手くまとめて、セイアちゃんも一緒にお買い物行こうね!! だからロールケーキは──むぐぅ!?」
「まてナギサ、落ち着くんだ。ロールケーキはミカだけで充分だ。それに私はそんなキャラじゃ──もぐぅ!?」
物の見事に混乱状態に陥ったナギサが目をグルグルとさせながら、ミカとセイアの口にロールケーキをぶち込む姿を、先生とワカモはやれやれ、といった様子で見守るのであった。
それから少し経てばナギサも落ち着いたのか、何時もの様に優雅に佇まいを直すが、やはりまだ顔が赤い。
視線の隅ではミカがロールケーキを恵方巻の様にムグムグしながら食べているし、セイアはミカの様にして食べて自身のキャラ崩壊を起こすか、はしたないが一度口から出すべきかで悩んでいるのが見えるが──無視である。
そんな三人を見て、先生は何時もの様に優しく微笑みを浮かべるだけだ。
「むぐ……もぐ。ぷはぁ!! もうナギちゃん酷い!! ロールケーキは武器じゃないんだよ?」
「人の気も知らないで好き勝手言う口は、ロールケーキでふさいでも良いと校則にも書いてあります!!」
「ナギサ、流石にそれは職権乱用過ぎるんじゃないか……?」
「ふふ。けどこれでミカも、どうしてナギサがこの条約を推し進めているのか、わかったかな?」
「あ。あはは~。うん、ナギちゃんの口からちゃんと聞いたし、それになんかそう思ってくれるのが嬉しい☆」
ミカとナギサはお互い大切な幼馴染だと思っているし、セイアは大事な共通の友人だ。
そんな三人で穏やかに、そして楽しく買い物や遊びに出かけられたら、どれ程までに素晴らしい日々になるだろう。
そう思ったのはミカだけではなく、セイアも小さく口元に笑みを浮かべる。
「私の中立派の生徒達にも、この条約に関してもう一度説明をしてみようか。ふふ、私もこれまで以上に頑張らないとな」
「うちの子達は反対派が多いからなぁ。納得するのは無理かもしれないけど、なんとか理解してもらえるように説明するよ。反対意見もこの学園の意思だからね」
何時の日か、この三人が気兼ねなく遊べる日々が来ますように。そんな青春を、そして優しい日々を先生は願うのであった。
「ホシノが姿を消した……?」
トリニティからシャーレに戻ろうとした先生に、その通信は突如として入ってきた。アビドスのアヤネからの通信であり、ホシノが何処にも居ないというものだ。
カイザーPMCの基地の偵察からの帰り、ホシノは自身に持ち掛けられていた取引の内容を、対策委員の面々に語っていた。
自身の身柄を引き渡せばアビドスの借金を帳消しにする──という破格の条件。
しかし、それを知った対策委員会の面々は誰もそんな事を望まず、絶対にそんな事はさせないと必死に説得。
その時はホシノも頷いた様に感じたのだが、先生がトリニティに出向くためアビドスから離れた直後、ホシノは姿を消したのである。
『もしかするとホシノ先輩はカイザーPMCの所に……!?』
「その可能性は高いな。……ホシノ、それが君の選択なのか……」
確かに自分はホシノの選択を応援すると言った。しかしこれは余りにも……そう、余りにもつらい選択だ。
だからこそ、対策委員会も必死にホシノの行方を捜しているのだ。
『先生、セリカよ!! さっき柴関のお客さんに聞いたけど、カイザーPMCの車両が市街地に集まってるらしい!』
「……奴ら、どうやら約束を守る気はないようだな」
『ど、どう言う事ですか!? だって、もしホシノ先輩がカイザーPMCの所にいるなら、アビドスから手を引くんじゃ……』
「ホシノさんは生徒会の唯一の正式メンバー。そのホシノさんが姿を消した=退学したものと見なし、生徒会、そしてアビドスの自立・存続が不可能と判断し、大多数の土地を所有するカイザーPMCが自治に乗り出した。そんなところでしょう」
『そんな……そんな事って!!』
『先生、何か方法はないんですか!?』
『あいつら……ホシノ先輩だけでなく、学校まで奪うつもりだったのか……!!』
ワカモが情報を整理して伝えれば、返ってくるのは戸惑いや怒りの声。
このまま大切な物を奪われるだけでいいのか。悪い大人に騙されるだけで、利用されるだけでいいのか。
否、断じて否。ここには一羽の
「みんな、大切な事だからもう一度聞くよ。このまま……ホシノは私が責任をもって助け出す。だからこのまま学園から──」
逃げてもいい。そう伝えようとした先生だが、それを遮るように、そして力強い声が返ってくる。
『逃げません、負けません!! ここは、アビドスは私達の学校です!! だって私はアビドスが、ここが大好きだから!!』
『はい。そしてホシノ先輩は私達の先輩です!! カイザーPMCなんかに絶対にあげません!!』
『もうあったまに来た!! カイザーだろうがなんだろうが、みんなぶっ飛ばしてホシノ先輩を助けるんだから!! 先生だってそのつもりでしょう!?』
『ん。それに先生が前に聞いてきたけど、ここで
『『『『だって、ここが! このアビドスが!! 私達の魂の場所だから!!!』』』』
その言葉は、懐かしく……そしてとても気高い言葉であった。
その言葉を聞いた先生は優しく、そしてその瞳に火を宿らせて微笑みを浮かべる。
ああ、ああ! これが!! これこそが人の持つ可能性!!!
「そうか……そうか。ああ、うん。そうだったね。なら私も持てる全てを使うとしようか。直ぐにカイザーPMCが攻撃を仕掛けてくる。みんなは私が送る増援と合流し、迎撃にあたってくれ」
『はい、わかりました!! 先生、ホシノ先輩の事、どうか……どうかよろしくお願いします!!』
そして通信を終えると、先生はワカモ、そして端末の中のアロナへと指示を飛ばす。
「ワカモ、ネスト総員に出撃命令を。整備の終わった【あれ】も出撃させるように」
「はい、了解しました。……こちらワカモ、ネスト総員に伝達。これよりアビドスにてカイザーPMC殲滅作戦を実施します。今すぐに出撃準備を……」
「アロナは何でも屋ハウンズのウォルターに連絡。向こうも準備が出来ているはずだ」
『はい、了解しました!! えーっと、確か連絡先はこっちに……』
今ここに、失った日々を取り戻すための戦いが始まるのであった。
「よーし、ネスト全員出撃だ、いくぞぉ!! しかも相手はあのカイザーPMCだ!! 散々利用してきた恨みを倍返しすんぞ!!」
「みんな気合いれるっすねー。機関良好。各種兵装も異常なし。それじゃいくっすねー」
「シャーレ特別部隊ネスト出撃ぃ!!」
「グレートウォール出撃っすねー」
そして【
「うーん、今日のお昼はどうしましょう」
「また柴関のラーメン食べに行こうよー!! あそこのDXスペシャル盛り食べたーい!」
「あ、そう言えば柴関でたい焼きも始めたって、ヒヨリがバイトリーダーから聞いたって言ってたよ。しかも凄い上手に焼ける人がいるんだって」
「まぁ! それなら食べに行かないと失礼に当たりますわね!」
なお、彼女たちの逆鱗に触れる
「シャーレから連絡が入った。これよりアビドス全域に点在するカイザーPMCの基地、補給地点に一斉攻撃を仕掛ける」
『了解したわ、ウォルターさん。……けど、雇った戦力って……この人たち?』
「はーっはっはっは!! 新しい温泉の気配がするぞー!!」
「あの基地邪魔だったもんねー!! しかも砂風呂も作れそー!」
「何か問題でもあるのか?」
『いやー、問題と言うかなんと言うか……ま、まぁ良いわ!! アウトローらしく全員をまとめて見せるわ!!』
「ああ、よろしく頼む。さて、お前達──準備はできたか」
ウォルターが振り返れば、そこにはジナイーダを筆頭にした猟犬達が勢ぞろいしていた。
紅い猟犬、帽子を被った猟犬、ランチャーを構えた猟犬、スコープを覗き込む猟犬、翼の生えた猟犬、花冠を被った猟犬。
それぞれのマークが描かれたジャケットを身にまとった猟犬達が、闘争心むき出しで笑みを浮かべる。
その姿を見て、ウォルターは何時もの様に言葉を続ける。
「ハウンズ、仕事の時間だ」
「これより新軍事部門及び内部監査特別部隊、フライトナーズの初任務を行う!!
内容は旧軍事部門カイザーPMCの違法行為及び武器の不正流出による強制調査である!
各位、存分に教育してやれ!!」
新たなる渡り鳥達が翼を広げて飛び立つ。
「……そっか。私はまた……大人に騙されたんだ……」
零れ落ちる。なぜこうなったのか。どうしてこうなってしまったのか。後悔の言葉が零れ落ちる。
「ごめんね……みんな……全部、全部私のせいで……」
ただひたすらに零れ落ちる。
「シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん……」
零れ落ちる。それと同時に、少しずつ、少しずつ熱を持つ。
それはホシノが気が付かないほど小さな熱。
「……ユメ先輩」
だが確実に、熱を持つ。
黒い羽根が、渡り鴉の羽根の輪郭が燃える様に熱を持つ。
「先生……助けて……」
その言葉が零れ落ちると、パチリと火の粉が舞うのであった。
あと少しでアビドス編は終わりになります。