ブルーアーカイブ Day After Day 作:燃え殻の灰
今回もご都合主義やら、口調が安定しませんがご容赦ください
「さて、絶望を与えてみましたが、どのように変容するのか。はたまた踏み止まるのか」
コツコツと足音を響かせながら黒服は薄暗い通路を歩きながら、手中に収めたキヴォトス最高の神秘の持ち主、小鳥遊ホシノの姿を思い浮かべて口元に笑みを浮かべている。
利害が一致したカイザーコーポレーション、否、カイザーPMCに協力し、ようやく手に入れた逸材。莫大な資金が必要になったが、その程度は問題ない。
小鳥遊ホシノを実験体として研究し、分析し、理解する。それが【ゲマトリア】に属している黒服の目的だったのだ。
「
ドミナント。最初こそ意味が分からない単語であった。しかし、それなのに何故かその言葉に惹かれた黒服は多種多様な文献を調べあげ、一つの仮説を立てた。
即ち、
誰も知らず、誰にも観測されていない存在として、黒服は強い興味を抱くようになり、そしてキヴォトスで活動しているうちに色濃く神秘を宿す存在を見つけ、それが小鳥遊ホシノであった。
彼女の背負う重さ、擦り切れそうな心に眼を付けた黒服はこれ以上、貴重な
だが、少しばかり疑問が残る。
「シャーレの先生とやら。何故、こちらに接触してこなかったのか……。そして、何故情報が入ってこないのか……。ふむ、そちらも新たな観測対象になり得る」
キヴォトスの外から来たという謎の人物、【先生】
まるで裏の世界を知り尽くしたかのように、アビドスの借金とカイザーPMCの繋がりを見つけ、この基地まで特定する程の手腕を持つ謎に包まれた存在。
恐らく小鳥遊ホシノの事で何かしらのアクションを取ると思ったが、事前の情報ではトリニティを訪れていると言う。
「……そうなると何故、小鳥遊ホシノはこのタイミングでこちらに接触してきた? 先生とやらがアビドスに居た時はまったく接触が無かったというのに……?」
もしくは、先生が居るから接触を避けていた…………?
それは何故だ……?
黒服の脳裏に漠然とした不安が過る。
自分は、自分達はもしかすると、途轍も無い見落としをしているのではないか?
「いえ、そのような事、あり得る訳がない。先生とやらは、我々とは違う。ただの大人の人物と言うだけ。興味はありますが、それはまたの機会としましょう」
なんにせよ、自分達には手が届くことはないだろう。自分達はある意味でキヴォトスの
だからこそ、黒服は知らなかった。気が付かなかった、理解出来なかった。
彼は世界が忌み嫌う唯一の例外だ。
それが意味することは、
カイザーPMC基地 指令室
「……は?」
一時的にホシノを捕えている施設、カイザーPMC基地の指令室に入った黒服の第一声であったが、誰も気にする余裕がない。
同じようにそこでモニターを見ていたPNCの兵士だけでなく、PMC理事も信じられないと言った様子でモニターに視線が注がれている。
モニターの一つでは市街地に侵攻した部隊が、何故か様々な学生服の集団に一方的に撃破されている様子が映し出されている。
特に
「モノを食べる時は、誰にも邪魔されず、自由で……なんと言うか救われてなきゃダメなんです♪」
「何より食べ物には感謝を捧げて頂かなければいけないのです。私の鯛焼き、台無しにした報いは受けてもらいますわ」
「もー、みんなで楽しいお昼なのに邪魔は許さないよー!」
「ああもう、なんで私のラーメンが来る前なのよ!! ぜっっったいに許さないんだから!!」
「柴関のアルバイト舐めんなこらー!! バイトリーダーやセリカさんが居なくてもやってやるぁ!!」
「あたしらの大切な柴関を荒らしたらどうなるか教えてやんよ!!」
その他にも、柴関で食事を楽しんでいた各学園の生徒達が迎撃に参加し、市街地に展開する部隊が壊滅に追い込まれる事態になる。
「ええい、何をやっている!! 第7基地からも戦力を出せ! 市街地を制圧し、アビドスの校舎を押さえろ!」
「り、了解しました! こちら本部基地、第7基地応答せよ、繰り返す。こちら本部基地、第7基地応答せよ」
理事が怒鳴りながら指示を出し、オペレーターがこの基地を除けば最大規模でありカイザーPMCの精鋭部隊と最新鋭装備が整っている基地へ通信を繋げようとするが、返ってくるのは悲鳴や怒号である。
『こちら第7基地!! し、至急! 至急、救援を!! 今すぐ応援……た、助けてくれ!!』
『ありったけのゴリアテと戦車を出せ!! そうしなきゃ、あれを……あの猟犬共は止められんぞ!!』
そして、響き渡る爆音を最後に通信が途切れ、慌ててオペレーターが第7基地の映像をモニターに出すが、そこに映る映像に理事や兵士達は背筋が凍り付く。
そこに映るのは幾度も幾度もカイザーPMCの部隊や基地を殲滅して来た猟犬達の姿であった。
「おのれ、
理事の怒号が指令室に響き渡るが、それは直ぐに爆音でかき消されるのであった。
カイザーPMC第7基地
走る、駆ける、前へ前へ前へ!!
立ち塞がる兵士達に
(……本当は本部を襲撃したかったけと、そこは先生がホシノを助けに行くから、そのまま任せるらしい)
ならば、自分達はどうするか。ジナイーダが思い出すのは、出撃前のブリーフィング。
「第7基地は、我々ハウンズに対しての切り札となる部隊、装備が集められている」
ウォルターの仕入れた情報を聞きながら、隣のサオリが小さく笑いを零し、それに続くかのようにアツコもクスクスと笑い出す。
「切り札。そうか、切り札か。大盤振る舞いされているな」
「ふふ、カイザーPMCに随分怖がられてるね」
「で、その精鋭部隊とやらは……ふーん、この程度で私達を止められると思われてる訳?」
「この程度の戦車の数で、こちらを仕留めようだなんて……。それに従う兵士さんは可哀想ですね、不幸ですね」
ミサキは随分と舐められてると零し、隣のヒヨリは自分達を仕留めようと集まった兵士達の不幸を純粋に憐れんでいる。
「新型の二足歩行兵器が配備されているのが気になるけど」
「……問題ない。こんな不格好なの直ぐに鉄屑に出来る」
「不格好? ジナイーダは見たことあるのか?」
「アズサの懸念は最もだが、お前達には脅威とすらならん」
二足歩行兵器に気を向けていたアズサが、ジナイーダの言葉に首を傾げているが、その理由が分かるのはウォルターとジナイーダ、そして先生だけだろう。
二足歩行兵器と言っていうが、明らかに無理をして作られている。これに比べたら、ACがどれ程までに機能美に満ち溢れ、そして美しいことが。
ジナイーダの言いたいことに気が付いたウォルターも、確かにと静かに頷いてしまう。
「全員情報に眼を通したな? ……では、これからカイザーPMC第7基地の殲滅を開始する。容赦はいらん、全て叩き潰せ」
「了解だ、ハンドラー。ハウンズとしてだけでなく、
「直ぐに片付けてくる。この後、アル達と食事あるしね。……デザートにも期待するよ?」
「特選牛のすき焼きですものね! た、楽しみです! あと、デザートならショコラケーキが食べたいです!!」
「ヒヨリ、ヨダレが垂れてるぞ? 私はクリームたっぷりのプリンが食べたいな」
「ふふ、オペレートは任せて。みんな、いってらっしゃい。私はデザート何にしようかな。考えておかないと」
「……ウォルター、姫ちゃん、行ってくるよ。デザートも欲しいけど、すき焼きには大盛ご飯も必要」
全員の心の奥底にあるのは、一つの信念。
「心配するな。全員のリクエスト通り、しっかりと揃えておこう。だから無事に帰ってこい。お前達ならば、やれるだろう」
ここに、この
その信念を強く心に抱き、それぞれの猟犬の描かれたジャケットを身に纏った彼女たちは、何時ものウォルターの言葉を待つ。
「ハウンズ、仕事の時間だ」
兵士達を薙ぎ払いながら、前に進んでいるジナイーダの元にオペレーターを担当している
『
「……了解。直ぐに撃破する。他のメンバーは大丈夫?」
『
「……花火は楽しみだ。ウォルターは?」
『
「……そっか。向こうもそろそろ始めてるのか。こっちもさっさと片付けよう」
自分達が、そしてアル達便利屋68が負けるなど微塵も考えずに、ジナイーダは目の前に現れたゴリアテに視線を向け、地面を蹴って一足飛びで走り出す。
そのジナイーダに向けて、ゴリアテは全身の砲門から一斉掃射してくるが、雑な狙いでただ弾丸をばら撒くだけであり、脅威とすらならない。距離を詰めてきた彼女に攻撃が一切当たらないとみて、慌てて後退しようとするが巨体ゆえの鈍足、そしてジナイーダの速度を見誤った故に、それは致命的な隙をさらすことになる。
ゴリアテの懐にもぐりこんだジナイーダは、自身の左腕に装着されている巨大な兵装の撃鉄を起動させ、炸薬を装填。アッパーカットの様に振り上げてると同時に射出された鋼鉄の杭をゴリアテへとぶち当てる。
上半身を吹き飛ばされたゴリアテを踏みつけながら、ジナイーダは生き残っているカメラへと鋭い視線を向ける。こちらを見ているだろうカイザー理事へと。
爆炎を背負い、
「ば……化け物共が……!! 近隣の基地から全戦力を出撃させろ!!」
「だ、ダメです!! 付近の基地も同時に襲撃を受けています!!」
「超長距離砲撃を受けてる基地もあります!! 馬鹿な、どこから撃たれてる!?」
アビドス砂漠
目の前にある基地を眺め、ウォルターに依頼された便利屋68のアルは自分達の仲間の他に雇われた戦力へと視線を向ける。
「さて、全員準備はいいかしら?」
「くふふ~♪ 何時でも行けるよー」
「同じく。全員配置についてるよ。後は社長の合図待ち」
「爆薬の準備も出来ました。盛大に、盛大に爆破できます!」
「はーはっはっは!! こちらも爆薬と砲撃の準備は出来ている!!」
「……心強いんだけど、なんと言うか少しの不安があるのよね……あの人たち」
ウォルターが雇ったという傭兵……と言うか、何処をどう見ても
まあ、話を聞く限りここ付近に上質な源泉が存在し、そこの採掘やら開発やらの資金を提供する事で合意しているらしい。
(あれ、けどこの人達、何処だろうが誰が相手だろうが容赦なく蹴散らして温泉開発するって噂だし、ほっとけばカイザーPMCの基地爆破してたんじゃないのかしら……?)
なんとなくそんな事を考えつつ、依頼はきっちり熟せば問題ないかと直ぐに思考を切り替えて、何時もの様に口元に不敵に、そしてクールな笑みを浮かべる。
「最高のアウトロー、便利屋68のお披露目よ。諸君、派手に行くわよ」
本部基地 指令室
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!」
理事はワナワナと震えて怒り、そして恐怖を誤魔化すようにダンとテーブルに拳を叩きつける。
楽勝だったはずだ、生徒会最後の小娘もアビドスから引き剝がし、自治権の喪失を理由として、残っている連中は自称アビドス生徒と名乗る不良として処理して、完全にこのアビドスを抑える手はずだった。
それなのに、何故こうも邪魔ばかりされるのか。あの忌々しい【先生】とやらがアビドスから離れている内に始めたというのに!!
だが理事としては認めたくなかったのかもしれない。心の奥底に刻まれた【先生】に対する恐怖を。それ故にアビドスから離れ、介入できないだろうタイミングでアビドス全域の掌握に乗り出したのだ。
しかし、その全ては悉く打ち砕かれ、今回の為に用意して戦力は凄まじい勢いですり潰されていく。
どうにかして打開しなくては、と焦る気持ちで理事はモニターに視線を移すが、一番大きな中央モニターに映し出された戦車部隊、そしてそれに向かってくる巨大な物を見て思考が止まる。
指令室の入り口付近で、何事なのかと事態を見守っていた黒服ですら唖然としてしまう。
「……なんだ、あれは……」
黒服の口から洩れる唖然とした言葉。戦車部隊の一斉掃射が直撃しようが、一切速度を落とさず前進してくる巨大な壁。
多数の大型ミサイルランチャー、そして馬鹿としか言いようがない巨大なガトリング砲を搭載し、側面に描かれたシャーレの文字と渡り鴉のエンブレム。
アビドスの捨てられた車両基地に眠っていたそれの名は【グレートウォール】
重装甲、大火力を誇る超巨大装甲列車である。
グレートウォール 艦橋
「そんな豆鉄砲でグレートウォールを破壊できると思うとは、舐められたもんっすねー」
グレートウォールの操縦指令室にいるネストの隊員たちは、多数の戦車砲の砲撃を受けようが一切の損傷が無いことを確認しつつ、取り付けられた多数の火器を制御して前方に展開している戦車部隊へと攻撃を加えている。
少し眠たげな表情で語尾が特徴的な少女は、元はカタカタヘルメット団だがシャーレに拾われ、そこで整備適性や操縦技術、指揮能力の高さを認められ、このグレートウォールの指揮に抜擢されたのだ。
「アビドスの連中もワカモさんやネスト本隊と合流して、戦闘を始めた模様!!」
「あっちは問題ないっすねー。ワカモ姐さんがいるなら負けないっすねー」
アビドス近郊の敵勢力を撃破したら、直ぐにこちらに合流してくるだろう。なにより自分達が向かっている先の本部基地には既に【先生】が侵入しているらしい。
「どんな方法かはわかんないけど、先生なら出来そうっすねー。うちらも手早くちゃちゃっとサクッとバシッと片付けるっすねー」
そうだ。あの人が、あの先生は自分達を救ってくれた、助けてくれた。日のあたる場所へと連れてきてくれた。
きっとこれからも自分達と同じように、多くの生徒達を助けてくれると確信している。それ程までに、強くて優しい先生が、ネストの皆は大好きなのだ。
「だから、先生の邪魔する匹夫共は、まとめて消し飛ばすっすねー」
バっと手を前に突き出し、少女【有澤ネス】はグレートウォールが誇る最大火力、グレネードガトリング砲を起動させ、射撃指示を出す。
轟音を立てて巨大なガトリング砲台から放たれる多数のグレネード砲弾が戦車部隊を一瞬で薙ぎ払い、その残骸を蹴散らしながらグレートウォールは前へと進む。
本部基地
まずいまずいまずい。非常にまずいことになっている。
何時もの落ち着きようが嘘の様に、黒服は足早に指令室を後にして、ホシノを捕えている施設へと向かっている。
「あの様な兵器、見た事すらない……!! デカグラマトン……いや、あれはそれすら凌駕するでしょう……!!」
子供でも分かる事だが、大火力、重装甲を両立し実現出来たならば、確かに強いだろう。しかし、何処かで妥協しなければ、運用などできるわけがない。そう、出来るわけがないのだ。
しかし、先ほど見たあれは、グレートウォールはそれをやってのけている。どんな技術力があれば可能なのだ、どんな情熱があればやろうと思えるのか!?
脳が理解を拒絶して止まってしまった身体を無理矢理動かし、黒服は早急にホシノを回収しこの基地から離れることを決めたようだ。
恐らくこの基地、いや、カイザーPMCは消滅する。その前に脱出し、裏へと身を隠さねばならない。
折角、最高の研究対象を手に入れたのだ、ここで計画に支障を出すわけにはいかない。
そんな焦りと共に、ホシノが捕えている施設へとたどり着く黒服であるが、ふっと何かに気が付いて周囲を見渡す。
「火の粉……? 火の気などないのに、これは一体?」
気にしながらも時間がないと施設の扉を開けて、中に入ろうとするが、目の前の光景を見て動きが止まる。
「……はっ……?」
紅蓮の火を背負い、こちらに巨大な銃を向ける
今日何度目かわからない驚愕、そして戸惑いで黒服は後ずさり首を振る。そんな訳がない。この施設に、内部に入る大きさではない!!
そしてもう一度視線を向けると、そこには拘束されていたはずのホシノを優しく抱きしめている人物、【先生】の姿しかなかった。
「理解が出来ない……。先程の兵器は一体……!? そして、どうやってここに入ったというのです」
そして黒服に気が付いた先生は、胸に顔を埋めホシノがこちらを見えないことを確認し、その顔に口が裂けたような壮絶な笑みを浮かべ視線を黒服へと向ける。
「その異形。そうか、お前が【ゲマトリア】か。随分、コソコソ隠れてやっていたようだな」
その日、黒服は
グレートウォール
ACフォーアンサーに登場するアームズフォート。
全長7キロの超巨大な装甲列車型である。
武装は多数の大型ミサイルランチャー。そして巨大がグレネードガトリング砲を搭載。
文字の如くガトリングの様にグレネードを連発する凄まじい兵装。
本作ではアビドス外れの捨てられた列車基地に放置されていたが、先生が回収し整備して、シャーレ戦力として登場。
7キロと言う長大さを生かし、生徒達が快適に暮らせるように宿舎やらコンビニやらお風呂やらを増設し、移動型拠点としても使う予定。
有澤ネス
本作オリジナル生徒。
常に眠たげな表情な元百鬼夜行の生徒。
「~すねー」と少し特徴的に語尾を持つ模様。
グレートウォールの総指揮官であり、愛用武器はグレネードランチャー。