ブルーアーカイブ Day After Day 作:燃え殻の灰
相変わらずキャラの口調が変ですがご容赦ください
色々と特殊タグを多用してみましたが読みにくかったら申し訳ありません。
「……ああ、私は何のためにここまでやってきたんだろう……」
沈む、沈む。ホシノの心が絶望と失意の底に沈んでいく。
黒く黒く濁った悲しみが、彼女の心を満たしていく。
黒服の与えた絶望が今まで耐えてきた少女の、ホシノの心を砕こうとしていた。
そこで諦めるのか?
誰かの声が聞こえる。
おいおい、まだ若ぇ嬢ちゃんが随分としけた面してんなぁ!
はぁ、この程度で諦めるのはまだ早いんじゃない?
その声は何処から聞こえるのだろうか。ここの部屋には、誰もいないはずなのに……?
「……ここは……砂漠?」
気が付けば、ホシノは夜の砂漠に座り込んでいた。自分は何時の間に外に出たのだろう。
そう考えていると、また何処からか声が聞こえてくる。
残念ながらここは外ではない。まぁ、特殊な空間だと思えば良い
そして他にも
まぁ、なんだ嬢ちゃんはまだ若いんだし元気だしな。騙し騙されなんて傭兵の常なんだからよ
この娘は傭兵じゃないわよ。……けど、あの裏切りは……まぁ、ひどい部類に入ると思う
その声は何処から聞こえてくるのかは分からないが、自分を心配してくれている事だけは分かる。
しかし、それでも絶望と悲しみがホシノの心を蝕み、気が付けば膝を抱えて座り込んでしまった。
「……私はなんでもっと考えなかったんだろう……少し考えれば、あんな怪しい奴の言う事なんて信じるなんてありえないのにさ……」
あー……。怪しい奴に引っかかるのは頂けねぇなぁ。俺も似た様な事、やらかした奴を知ってるよ。騙されたと言うか、自ら行ったとも言うけどよ
……ちょっと、今誰の事思い浮かべたの?
いって。何も蹴ることないだろう!! 年寄り相手に容赦ねぇなぁ!!
年寄りを自覚してるなら、そろそろ引退したら? 何時もそれを考えてたんでしょう?
残念ながら明日は雨らしくてな。俺は引退する時は晴れの日って決めてんだよ
何処かじゃれ合う様な年老いた声と若々しい女性の声。長年の付き合いがあるかのように、何処か楽し気な雰囲気が感じ取れた。
そんな二つの声を聞きながら、もう一つの霧の声は静かに笑い声をあげてる。
ははは。二人は随分と仲が良いらしい、少し憧れるよ
「……うん~。そうだね。きっと信頼し合ってる関係なんだよ」
君にも居るのだろう? そんな風に信頼し、そして大切に思える存在が。
霧の声の問い掛けに、ホシノは一瞬言葉に詰まる。大切な存在、勿論居るに決まっている。
「うん、居るよ。守りたいって、大切だって思える人達が居る。私はどうなっても良いから、守りたいって……そう思ったのに……!!」
再び涙が零れ落ちる。どうして、どうして自分が大切にしたいと願ったものは、零れ落ちていくのだろう。どうして壊れてしまうのだろう。
今まで沢山沢山頑張ってきた、耐えてきた。折れそうになる心を無視して、前に進み続けてきた。それなのに、最後にはこの仕打ちである。
何時しか年寄りの声と女性の声は口喧嘩を止めて、ホシノの口から零れていく悲しみの声を静かに聞いていた。
「どうして、どうして壊れちゃうんだろう。助けたいって、なんとかしたいって思っているのに。そう思えば思う程、私の手から零れ落ちていくんだ……」
必死に生きてきた。必死に守ろうとしてきた、それでも零れ落ちていく、壊れていってしまう。ならばと、自分の身すら犠牲にしたのにそれは最悪の引き金を、カイザーPMCの侵攻を許すという出来事に繋がってしまった。
確かに君の手からは多くの物が零れていったのだろう。だが、その全てが零れ落ちたと、そう思うのか?
嬢ちゃんのその小さい手の中には何も残ってない、なんて事はないだろう?
はぁ、お節介かもしれないけどね。案外、自分が忘れてるだけで残ってるのもあるものよ
経験者は語ると言う奴か?
黙りなさい。と言うか、どうして私や彼だけじゃなく貴方まで出てきてるのよ
ある意味で、この娘とは縁の様なものがある。それで選ばれたんだろう
「残ってる……もの? 忘れてるだけ……? えっと……」
やれやれ、深い絶望は眼を曇らすか。しかし、君もまたホルスの名を関する者だ。何時までもその瞳を曇らせておく訳にはいかない。もう一度、思い出してみると良い
悲しい出来事ばかりだった? そんな訳はない、
「悲しい出来事ばかりじゃ……なかった……?」
優し気な三つの声を聞きながらホシノは涙に濡れた顔を上げ、少しずつ少しずつ思い出していく。
「ホシノ先輩は私の膝枕が好きですもんねー☆ナデナデもしてあげますねー」
そう言って、膝枕をしてくれるノノミの姿が浮かぶ。暖かな日常の一つ。
「ん、ホシノ先輩、昼寝ばかりじゃ身体が鈍っちゃうからサイクリングに行こう。え、距離? 私の気が済むまで」
サイクリングと言いながら、自分はシロコの後ろに乗って居ただけだが風を切って走る感覚は覚えている。
「ホシノ先輩、起きてるー? ……うんーって返事してるだけで寝てるじゃないの!? ああもう、そろそろ時間だから起きてよ!」
容赦なくセリカに布団を引っぺがされて、面倒見のいい彼女にそのまま身支度を整えてもらったこともあった。
「ホシノ先輩、シャーレから今日の依頼が回ってきましたよ。……? 笑ってどうしたんですか? へ、今日も可愛いね? ……先輩、そう言ってゴマすりしてお昼寝に行こうとするのはだめですよ!!」
思えば、アヤネがシャーレに手紙を送ってくれたことで、ホシノの日常は変化していったのではないか。
「あ……まだ残ってる……? まだ私には大切な物がある……?」
そうだ。君は全てを失ったと考えているかもしれないが、その手にはまだ大切な物が残っているじゃないか
可愛くて可愛くて大切で仕方がないアビドスの仲間達。そうだ、まだ自分には大切な物が残っているじゃないか。それを守ろうとしたんじゃないか。
「やれやれ、ホシノさん。そんなに一人で無理をすることもないでしょうに。はい? 心配してくれるのかですって? ……はぁ、友達を心配するのは当然でしょう?」
「ワカモちゃん、そうだよね。私にはワカモちゃんって言う頼りになる友達が居たんだよね」
そうだ、あの日から自分には新しい出会いが、ワカモと言う友人も出来たんだ。夜にアビドスを見回りながら様々な話をした。
「……ホシノは強い。けど一つ勘違いしてる。アビドスの皆は守られるだけの存在じゃないよ。それに早く気が付いた方が良い」
「ジナイーダちゃんの言う通りだ。そうだよね、私の後輩たちは、私が守らなくたって強いんだ」
ああ、ジナイーダが言ってたじゃないか。けど、自分はそれを聞かなかった。
「ホシノ、君がどんな選択をしたとしても、私は君を守るから。だから、君も仲間に、そしてアビドスの皆を頼りなさい」
「先生は何時も優しくて、そして私の事を心配してくれていた。それなのに相談しなかった私って……馬鹿だなぁ」
そう言って優しく微笑む先生の姿が脳裏に浮かび、先ほどとは別の涙がこぼれてくる。
皆で笑って遊んだ日々もあったじゃないか。トラブルに巻き込まれ全員で乗り切って、ボロボロになりながら食べた柴関のラーメンは美味しかった。
「そっかぁ……。私が勝手に失くしたと思ってただけなんだ……。まだこの手には、こんなに沢山の大切な物が、大切な思い出が残っていたんだ……」
それに気が付ければ嬢ちゃんは大丈夫だろ。ほれ、外では仲間たちが大暴れしてるぞ
目の前に浮かぶのは、アビドス対策委員の皆やワカモがカイザーPMC相手に大暴れしている映像。その姿に少しだけホシノから笑みがこぼれる。
ここが魂の場所……ね。どうしてこう言うものは繋がっていくのかしら
良いことじゃねぇか。あの娘達にとってアビドスっつう場所が本当に大切な場所なんだろうよ。お前にとっての戦場と同じようにな
「ねぇ、貴方達は一体誰なの? もしかして、先生を知ってるの?」
ずっと親身になってくれる声は一体何なのか。そもそも何故、この三つの声はこんなにも自分の事を励まそうと、支えようとしてくれるのか。それがホシノには分からなかった。
そしてなによりこの声は先生の事を知っている。そんな予感すら浮かんできた。
俺は……まぁ、嬢ちゃんの言う先生とやらと縁があってな。その繋がりでちょっとばかしお節介に出てきたんだよ
私も似た様なモノだけど、それよりも貴女との繋がりもあるわね
こちらも似た様なものだな。ホシノ、君との繋がり方が強いだろう
「私との繋がり? えっと、ごめん、覚えてないんだけどどこかで会ったことあるの?」
飄々とした声は先生との繋がりと言うが、若々しい女性の声と霧の声は自分との繋がりと言うがまったく身に覚えがない。
ホシノ、貴女はドミナント。そう呼ばれる存在の事を知ってる? 勿論、あの黒服が言ってた
「ドミナント……うん、先生に教えてもらったことがある。けど、先生は古い言葉だって……」
そうね。古い言葉よ。それこそ私達の頃には特別、なんて飾りっ気のない言葉で使われるくらいにはね。
「もしかして、貴女もそう呼ばれていたの?」
どうかしら。それに私は特別なんかより、目指して名前があるわ。……先生からも聞いたことあるんじゃない? 黒い鳥って言葉を
黒い鳥。あの夜に星空を眺めながら先生が話してくれた不思議なお話。その中でも語られた内容も覚えている。
神様すら焼き払い、世界に忌み嫌われた一羽の鴉。
私はね。それになりたかった。けどなれなかった。当然よね。私は特別なだけであり、例外にはなれないんだから。
その言葉すら拒むとはな。随分と黒い鳥とやらは世界に嫌われているらしい
嫌った所でどうにかなるもんじゃないだろうになあ。それで、そっちの声のお前さんはどう言う繋がりで来たんだい?
二つほどあるようだが……。ドミナントと言う言葉は俺の時代には存在しなかったが、どうやら俺はそれに当てはまる存在らしい。そこのホシノもな
「私が、ドミナント?」
その素質は十分あるわよ。ただ、そんな言葉なんて意味がないから気にしなくたっていいわよ。貴女の先生だってそう思ってるわ
そうだな。君は君であり、それ他の何者でもない。そしてもう一つが、同じホルスの瞳を持つ者同士。といった所か
「ホルスの瞳?」
暁のホルス。確かにホシノはそんな異名で呼ばれていることもあったが、それこそ一部の存在しか知らない異名だし、自分から名乗ったことなど無い筈。
それなのに何故、この霧の声はそんな事を知ってるのだろう。しかしこの特別な空間と良い、この声と言い、ここは本当に現実とは異なる空間の様だ。
ホルスの瞳は全てを見抜くと言われている。君の瞳は絶望で曇っていたようだが、それも少し晴れてきたようだ。今なら分かるだろう。君のお守りが少しずつ熱を、いや、火を纏い始めていることに。
随分と物騒なお守りだよな。まあ、あいつらしいっちゃあいつらしいか
それだけ大切に思っていると言う事よ
「あっ……先生から貰ったお守り……」
懐に仕舞っていた渡り鴉のお守りを取り出してみると、輪郭が燃えているように赤く熱を発している。それに触れ、優しい暖かさを感じ取りホシノはギュッと抱き締めるようにして再び涙を流す。
そうだ。先生は言ってたじゃないか。そのお守りを持って、呼べば直ぐに行くと。
だから、ホシノは言われた通り、涙で顔をグシャグシャにしながらお守りを抱きしめて、言葉を紡ぐ。
「先生ぇ……助けて……!!」
その言葉を紡いだ瞬間、砂漠の夜が明ける。地平線の果てから太陽が昇ると同時に、一羽の渡り鴉がホシノの元に舞い降りてきた。
不思議なことに、その渡り鴉も先生から貰ったお守りの様に輪郭が燃える様に光っており、そして優し気な眼差しでホシノを見つめていた。
かつて神話の時代。渡り鴉はあらゆる獣、植物、そして人間を創造したという。そして最後には隠されていた太陽と月と星を見つけ出し、世界を照らしたという。故に渡り鴉は太陽と深い繋がりを持つ
さあ、涙を拭いて立ちなさい。貴女はまだ
嬢ちゃんはまだ若いんだ。そろそろ好きなように生きて良いんだぞ
「うん……うん……!!」
涙をぬぐいホシノは立ち上がる。ここで折れてなんかいられない。アビドスの仲間たちが
ならばホシノ、君に加護を渡そう。少しでも君に行く末の助けとなるようにな
渡り鴉から火の粉が舞い、暖かな火が世界を覆い始める。そして少しずつ景色が火に包まれていく中で、ホシノは霧の声を聞き後ろを振り返る。
そこにいたのは、ダークグリーンで塗装され
では、また機会があればまた会おう。同じホルスの瞳を持つ者よ。霧の中で君の旅路の幸運を願っている
かつて、とある世界において彼は努力と才能を持ってAランク3と上り詰めた。その強さは対戦相手が霧の中に迷い込んだかのように、彼の姿を見失う程だと言う。
そしてそのエンブレムはホルスの瞳。
名前はフォグシャドウ。霧と影を名を持つ1羽の
パチパチと火の粉が舞う。その音を聞き、ホシノが顔を上げれば助けてと願った人の、先生の姿があった。
何時もの様にシャーレのコートを身に纏い、痛々しい包帯を右目に巻き、左腕も吊るして固定している。しかし。それでも優し気に笑みを浮かべてフワリと大切そうに、そして壊さないようにホシノを抱きしめた。
「待たせてすまなかったホシノ。約束通り、助けに来たよ」
「せん……せえ……先生、先生……!!」
気が付けば自分を拘束していた光は焼け落ち、無我夢中で先生の背中へと手を回す。次から次へと涙がこぼれ落ち、そんなホシノを先生は変わらずに優しく抱きしめている。
「わた……わた、し。守りたくって……けど、もう一人じゃダメで……けどせん、せいに助けて欲しくって……!!」
「大丈夫。もう大丈夫だ。アビドスの皆もこちらに向かってる。だからもう大丈夫だ。ホシノ、君が助けてと言うなら、私はどんな事だろうと助けて見せる。だから安心して、沢山泣きなさい」
「う……ああああ、先生先生……!!」
今まで我慢してきたものを吐き出しながらホシノは涙をこぼし、そんな彼女をまるで薪の様に火の粉を纏いながら先生は優しく抱きしめるのであった。
渡り鴉の神話、世界各地にあるらしいですね。
太陽と月と星の話がとても印象に残っています。
先生
薪の王状態。
ホルスの加護
君に加護を与えよう。例え霧の中だろうと、全ての見抜く瞳の加護を。
俺は君の幸せを願っている。
飄々とした年老いた声
好きなように生きて、好きなように死ぬ。誰の為でもなく、それが俺達のやり方だ
若々しい女性の声。
ホシノ、貴女の魂の場所は探しなさい。そこが貴女の戦場よ
フォグシャドウ
ACネーム シルエット
ACサイレントラインのAランク3のランカー。
凄まじいまでのテクニックで縦横無尽に飛び回り、対戦相手は霧の中に迷い込んだかのように、彼の姿を見失ってしまう。
無強化人間でありながら、凄まじい強さを誇り軽量二脚でダブルショットガンを愛用している。
作者的にはこの人もドミナントであると思っている。
エンブレムはホルスの瞳。
本作ではドミナント設定であり、ホルス繋がりでホシノに加護を与えた模様。