ブルーアーカイブ Day After Day 作:燃え殻の灰
カイザーPMC基地
「おのれ駄犬共め、そしてアビドスのガキ共が調子に乗って!! 我々に歯向かったこと、後悔させてやる……!!」
「理事、まずは脱出し体制を整えましょう。PMC本部ならば連中も手が出せないでしょう」
「分かっている!! 直ぐに脱出用のヘリを用意しろ!!」
本来、ここはPMC本部に引けを取らない戦力が駐屯していたのだが、アビドスへの侵攻とこちらに向かってくる
これ以上、ここに留まっても形勢逆転は不可能と判断し、理事はイラつきながら護衛に指示を飛ばし、ヘリポートへと足早に向かう。
理事の頭の中では、この程度の損害等、カイザーコーポレーション内の自身の権限や派閥を使えばすぐに取り戻せると考えている。実際、ほんの少し前までの権力ならば、それも可能だっただろう。
だからこそ、理事は気が付かない。最早、形勢逆転など出来る訳もないと言う事に。
ヘリが用意されているヘリポートへと続く扉が開くが、目の前に広がる光景に理事と護衛の足が止まる。
ヘリポートを警備していた兵士達は地面に倒れ伏し、中央に用意されていたヘリは完膚なきまでに破壊されていたのだ。
そして黒煙を上げるヘリの残骸に腰掛け、こちらを見下したように嗤う
「尻尾を巻いて逃げようとしていたようだが、そう都合よく事が運ぶと思ったのか? お前の様な存在に」
「貴様、どうやってここに!!」
「理事、お下がりを!!」
「大切な
「せんせぇ、あんまり挑発しない方が良いと思うよー。いや、まあ、もう怖くはないんだけどさぁ」
くくく、と喉を鳴らして嗤う先生とは対照的にホシノは何処か安心した様にふにゃりと笑う。
その対照的な二人の姿に理事だけでなく、護衛達も銃を構えた手が震える。
「黒服め、でかい口叩きながらしくじったのか!!」
「くははは、黒服とやらを責める前にお前の無能さを悔いた方が良いと思うがなぁ。それにあの程度、私にとっては捨て置いても問題はない」
先生にとって【黒服】は障害にすらなりえない。
それを理解したからこそ、あの時の黒服は膝をついたのだ。キヴォトスの理の外だろうと、関係なしに焼き尽くす。そう確信を抱くほどに深い恐怖が刻まれるほどに。
「黙れ、今ここで貴様を消せばアビドス等、どうとでもなる!!」
「まったく……、物覚えが悪いな。もう一度言うぞ? お前は自分の立場を理解出来ていないようだな。今もまだ、軍事部門の長を気取っているつもりなのか?」
「現在、カイザーPMC本部にフライトナーズ、及びヴァルキューレ公安局の部隊が突入し交戦中の模様です!!」
「どうやらカイザーPMCの武器の不正流出及び土地の不法占拠などの違反行為が発覚し──」
「各学園及び連邦生徒会からも多数の抗議が寄せられており……おおっと何やら進展があった模様です!! どうやら立て籠もっていたPMC残党が全員拘束された模様です!!」
クロノススクールを始めとした報道各社、そして各学園の広報部などがヘリや人員を総動員し取材しているのはカイザーPMC本部に強制捜査として突入したヴァルキューレ公安局の部隊と、カイザーコーポレーションの新軍事部門【フライトナーズ】。
入り口にカメラを向けると、渡り鳥のエンブレムを付けたジャケットを纏い、それぞれの隊員に指示を出す支店長の姿があった。
その両脇には大型のキャノンを背中に装備した大柄のオートマタ兵士と長銃を装備して細身の女性型のオートマタ兵士が控えている。
「ボイル、お前は公安局と共に残党の照会及び再教育センターへの輸送の準備に入れ。レミル、お前は本部内のデータを全て吸い出せ。貴重な証拠とこちらの手札となる」
「「はっ、了解しました、長官!!」」
「フライトナーズ長官、お話を聞かせていただけませんか!!」
「む、それに関しては……」
「貴方はカイザーコーポレーション内の新軍事部門の長官となったらしいですが──」
「後日改めて時間を設け……」
「PMCは武器流出だけでなく、裏金問題も絡んでいるというのは本当ですか!?」
「ああ、それも各学園にも報告を……」
「アビドス方面でも大規模な戦闘があったと確認されています!! 噂のシャーレとネストも出撃しているらしいですがご存じでしょうか!!」
一斉にマイクとカメラを向けられ支店長、いや、長官も改めて記者会見の場を設けると述べようとするのだが、特大スクープだとクロノススクールを筆頭に記者達は矢継ぎ早に質問を浴びせ、話を一切聞かない。
それが続くごとに長官の
そしてついに長官、切れる。
「ええい、こちらが喋ろうとしているだろうが、話を聞かんかぁ!! どんな教育受け取るんだ貴様ら!! 後日改めて記者会見を開き、そこで長官として挨拶を行うし今回の捜査内容も報告する!! 武器流出と裏金等についても各学園と連邦生徒会に報告書を提出し、それも報道関係に公開させる!!」
ぜーはーぜーはーと荒い息を吐きながら一気に言い切った長官に記者達はポカーンとしてるし、フライトナーズ兵士達は爆笑している。
息を整え、ふんっと鼻息一つして長官は乱れたジャケットを直し、アビドスの方に顔を向け、にやりと笑う。
「アビドスでの戦闘ならば心配はいらん。そろそろ決着も付くだろう。シャーレが、いや
グレートウォール 艦橋
「ワカモさん、どうやら支店長……じゃなくて長官は上手くPMC本部を抑えたようっすねー」
「ふむ、フライトナーズでしたか。なかなか優秀な様ですねぇ。まあ、長官が率いているのですから当然と言うべきか」
「資金力に関してもカイザーコーポレーション内でも飛び抜けて高いらしいっすねー。数は兎も角として、軍事力の質と資金力に関しては最早本社以上かもしれないっすねー」
「当然でしょう。資金に関しては先生の援助もありますし、なにより長官が目指している市場の正常化には最早カイザーコーポレーションは邪魔なだけです。恐らく、そのうち乗っ取りを行うことになるでしょうね」
「そうならない為に首輪を着けたかったコーポレーション本社も、フライトナーズに軍事力と資金力で逆に押さえつけられてると言う事っすねー。……えげつないっすねー」
アビドス市街地のカイザーPMCを殲滅して後に、ネストと対策委員会の面々は先行していたグレートウォールに輸送ヘリにて合流し、ホシノが囚われているというカイザーPMCの基地へと向かっていた。艦橋にて、艦長席に座るネスの隣に立ち、モニターに映し出される切れ散らかしている長官の姿を見て小さく笑いをこぼす。
先生から援助された資産を運用し、莫大な利益を生んだのは長官の手腕であるのだが、それ以上に先生の総資産の底が知れない。
グレートウォールの改造費用と言うキヴォトスに存在する大規模学園ですら捻出するのが困難な金額を軽く出せるのがその証拠だろう。
「相変わらず頭は切れる様ですが、これは別な意味で切れてますわね」
「根は良い人なんでしょうが、なんかこう三枚目感がぬぐい切れないっすねー。けど、あの人がコーポレーションのトップに立てば、風通しはよくなりそうっすねー」
「それにはまだまだ時間がかかるでしょうが、少しはお手伝いしてあげましょうか。まぁ、向こうは任せて問題はないでしょう。他の基地に向かったハウンズの方からは報告は届いてますの?」
「向こうも便利屋と協同して、各基地の制圧と言うか破壊を完了したと報告がきたっすねー。追伸で、これからすき焼きパーティー。ブイブイってジナイーダが送ってきたっすねー」
「あの娘は……はぁ、まったく。私達も打ち上げで何か美味しいものでも食べましょうか」
「良いっすねー。先生とワカモさんの手料理食べたいっすねー。デザートは、クレスとミラと一緒に作るっすねー」
「あの二人を抑えれるネスさんは。本当貴重な人材と言うべきか……」
そう言いながらニコリと笑うネスと口々に良いですねー。や、私もお手伝いしますよ! と賛同するネストの隊員達を見て、きょとんとしてワカモだがすぐにやれやれと言ったようにしているが、その表情は優しげな笑みを浮かべている。
「やれやれ。手間のかかる娘達ですこと。それならみんなで一緒に、美味しいお料理作りましょうか」
後ろでわーいやら、先生の手料理だー!! やら。ワカモさんのエプロン姿が見れるぞー! とか一部、業が深い声が聞こえてくるが無視である。
そして、ワカモは自身の胸元で先程から熱を持つ【渡り鴉のお守り】を優しく手に取り、ぎゅっと抱きしめながら、自身の端末を手に取り、繋がっている
「アロナ、聞こえてますか」
『はい、なんでしょうか!』
「そろそろ先生が動き出す頃でしょう。先生の姿と、声を拾って各所に届けられますか?」
『はい、このアロナちゃんに任せてください!! ……あのー、私もワカモちゃんの抹茶ケーキが食べたいんですけどー……?』
「……うーん、データ上としてどうにか再現してみましょうか」
『わーい!!』
「ば、馬鹿な……!! 私が、この私が切り捨てられたと!?」
「ただ無意味にハウンズと戦闘し被害を拡大し、アビドス砂漠にてあるか分からない存在の捜索に資金を投入。挙句の果てには武器の不正流出や裏金問題だ。それに比べて、長官はハウンズとの和解、そして資産運用で莫大な利益を上げ、お前が押さえつけていた様々な商会や会社とも良好な関係を構築。さて、どちらが選ばれるか……誰でも分かる事だろう?」
手元の端末に映し出される映像、そして本社に通信を試みようともアクセスすら拒否されるありさまだ。最早、理事の味方は何処にも存在しない。
「貴様が、全て貴様の策略か、シャーレぇ!!」
「策略と言う程の物ではないだろう。お前の頭が足りなかった。所詮はその程度の事でしかないだろう?」
「黙れ黙れ黙れぇ!! この私が、このPMC理事が!! こんな場所で終わる等認められるか!! 私は何れはコーポレーショントップに立つべき存在だぞ!! それが、それがこんな所でぇぇぇ!!」
取り乱し叫ぶ理事の姿に、先生だけでなくホシノの視線すら冷たくなる。先生のお陰とは言え、自分がこんな奴相手に良いようにされたのかと。もっと自分に、自分達に立ち向かう勇気があれば、もっと早くに解決できたのではないか。そんな考えが浮かぶホシノの頭を、先生がポンと優しく撫でる。
「……せんせぇ、ありがとー。大丈夫だよ、うん私は大丈夫。先生と、そして
そう言い、ホシノはふにゃりと笑い残骸から飛び降りて理事と護衛達の前に立ちふさがる。その手には右手に愛用のショットガンを、そして左手には
君の幸せを願っている
それは確かに、同じホルスの眼を持つ
「私はもう逃げないし、二度と大切な物を手放したりなんかしない。そして今、私は前に進むためにカイザーPMC。お前達を超えていく……!!」
何時ものふにゃりとした表情とは違う。覚悟を決めアビドスの仲間と、そして先生やワカモと一緒に前に進むための決意の表情。それに気圧されていながらも、誤魔化すように再び口を開いた。
「ただのちっぽけな存在が!! 我々、大人に利用されだける子供が未来に進むだと!? ふざけるな、貴様らは我々の踏み台になる存在なのだ!! それが一丁前に歯向かうなど!! シャーレの先生、貴様もだ!! 貴様も打算があって助けているのだろう!? 利用し、そして最後には使い捨てるために。我々と何の違いがある!?」
それは本当に薄汚く、そして悪い大人の言葉。それは、未来を信じる
「アビドスを潰すために、これまでありとあらゆる手段を講じてきた。だが、滅びゆく学校に残り、しつこく粘り借金を返済しようとして!! あれほど徹底的に懲らしめ、苦しめたというのに毎日毎日楽しそうに!! 貴様らと、シャーレのせいで計画が、私の計画がぁぁぁ!! なぜそこまでして、このアビドスに拘る!! 希望も、未来も何も残っていない場所を守る価値が、何処にあると言うんだ!?」
「我々大人がキヴォトスを支配すべきなのだ!! 貴様らの様な子供が権力を持つ世界など、歪んでいる!! それが理解できないのか!?」
そんな言葉を聞き、ホシノは両手のショットガンを構えようとするが、その隣に
「ちっぽけな存在か……。ふん。かつてお前の様に自分を、そして他人をそう評価した人間が居たよ」
かつて然るべき地位に居ながら、企業の暴走を止めることが出来なかった傭兵が居た。もし彼が何か行動を起こしていたら、世界は
だが、所詮は夢物語である。
「だがな、そんなちっぽけな存在こそ世界を変えるのだ。この世界は希望と可能性、そして夢に満ち溢れている」
その声は、その姿は、アロナが通信網を駆使してキヴォトス全域へと届ける。
「この娘達の未来を否定すると言う事は、世界の未来を否定することだ。可能性を汚すのならば、それは世界の可能性を拒絶することだ。この娘達の夢を嗤うと言う事は、世界の夢を奪う事だ」
マザーウィルの艦橋にて、ウォルターは手に持っていた杖の取っ手を強く握る。
「未来……か。そうだな。今度こそ俺は、621が……いや、ハウンズ達が未来を掴む為に生きねばな……」
「彼女達には未来がある。例え歪んでいようと、その尊い輝きがある限り世界とは綺麗なものだ」
ゲヘナで風紀委員と一緒に聞いているヒナは優しく笑顔を浮かべる。それでこそ先生だという様に。
「私は、彼女達の未来を、夢を、希望を、そして可能性を信じる者」
トリニティでは、何時ものテラス席でナギサは口元に笑みを浮かべながら紅茶を飲み、セイアはうんうんと頷いている。そしてミカはキラキラと目を輝かせながら先生の声と姿を見つめていた。
「彼女達の選択を信じ、可能性を慈しみ、幸せを願う者。それが、先生と言うものだ」
グレートウォールでは、その言葉を聞き多くのネストの隊員達が泣き笑いを浮かべていた。自分達を助けてくれた人は、こんなにも優しくて、そして信じてくれているのだと。
艦橋に居るワカモは当然ですと言う様に胸を張りながらも、とても優しい透き通った笑顔を浮かべてモニターに映る先生に見つめていた。
「そして何よりも、頑張っている女の子は、幸せになるべきなんだ」
その言葉は、多くの未来を諦めていた生徒達に遍く降り注ぐ優しい光。キヴォトスを照らす優しい言葉であった。
その姿にホシノは魅入られていく。魂にその言葉が、その姿が焼き付いて離れない。だからこそ、隣に立ちたいと、そう焦がれたのだ。そして今の自分には、それが出来るだけ力がある。
「ぐ……!! だが所詮、貴様は裏でコソコソする程度の
その理事の言葉を聞き護衛が一斉に銃を構えるが、先生は再び喉を鳴らして嗤う。
「少しばかり訂正しておこう」
軋む、軋む。世界が軋む。
「まず一つ目。何時から私が狙撃しかできないと勘違いしていた? だから教えておいてやろう、私は全距離対応型だ」
叫ぶ、叫ぶ。世界が叫ぶ。止めろ、目覚めさせるな。と
「二つ目、例え万全ではないとはいえ、私にとってお前ら等ただの有象無象にすぎん」
奪ったのに、ようやく奪ったというのに何故また甦らすのか。
「三つ目。腕の怪我などたった今、治ったところだよ」
それは生徒達の、ホシノの願い。助けてと願われたのならば、全力で先生を遂行すると言う意思。
吊るしていた左腕の布を捨て去り、左手を目の前で持ち上げて動かして見せる。
「うへぇ~。せんせぇ、腕の怪我はもう大丈夫なんだねぇ」
「ふふ、ホシノのお陰かな。さて、そろそろアビドスの皆やワカモ達が迎えに来る時間だ。さっさと片付けてしまおうか」
先生の右手には
そして先生とホシノは、ニッと笑い同じ言葉を口にするのであった。
「「ターゲット確認、排除開始」」
その日、カイザーPMCは解体され、ネストが基地にたどり着く頃には理事と護衛はズタボロにされた後であった。
「みんなぁ、ただいま。心配かけてごめんね」
「「「「おかえりなさい、ホシノ先輩!!」」」」
そう言って、泣き笑いを浮かべて抱きしめ合う対策委員会の姿があったという。
小鳥遊ホシノ
Wショットガン使用可能に。戦闘スタイルは小柄な体を生かしたフォグシャドウと同じような高速戦闘。
先生
左腕解禁。右目は未だ使用不能
MWG-MG/800またはWR07M-PIXIE3
前者の型式番号はアーマードコアサイレントライン。後者はNシリーズの型式番号。
通称800マシンガン。由来は装弾数が800発だから。サイレントラインでは連射性能、攻撃力に弾速の全てが高水準であり、大会禁止武器に指定された模様。めっちゃ強い
Nシリーズでは弱体化された模様
04-MARVE
アーマードコア4に登場した突撃ライフル。
高威力で高い連射性能を誇る武器。
銃剣の様に尖ったブレード部分を持つが、設定的には空気抵抗対策の整流用との事。
OPムービーではゲーム以上の連射性能とブレード部分での突き刺しを披露しているが、何時ものOPマジックである。