弱虫ラディッツは甥を育てたり育てられたりするようです。   作:狗堂犬一

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001 さようならカカロット

「喰らいやがれ! 魔貫光殺砲!」

 

 正確に自身へと狙いを付けて迫る光線。これを咄嗟に避けようとも力の抜けた身体は思うように動こうとしない。これもすべて背後で己の尾を掴む弟のせいだ。

 

「ぐ……!!! ちくしょおおおお!!!」

 

 こんな、こんな雑魚どもにここまで追い込まれるとは屈辱だぜ……! しかしオレは一流の戦士だ。いざとなればためらうことはない! サイヤ人にとってこの尾は誇りであり象徴。とはいえ命と勝利には代えられない。

 

「貴様ひとりでくたばれ、愚かな弟(カカロット)よ!」

 

 サイヤ人の尾はその気になれば自分の意志で切り離すことが出来る。それを失念していたとは、やはり貴様は戦闘民族失格の出来損ないだ。ここで死ぬがいい!

 尾を切り離した瞬間、背後にいたカカロットに掴みかかり盾にしたオレは寸でのところで致命の一撃を回避することに成功した。無慈悲に放たれた閃光が弟の身体を貫きその生命を蝕んでいく。

 

「バ、バカな……」

 

 ピッコロと呼ばれていたナメック星人が狼狽えた様子で一歩後退りする。最後の手段である必殺技をも回避され、唯一の味方を失ったいま、奴には微塵の勝機さえも残されていない。体力も気力も失いもはや取るに足らない虫けら同然だが、カカロット諸共ここで確実に殺しておくべきだろう。

 

「ち、ちくしょう……! 悟飯……チチ……すまねえ……」

 

 すでに虫の息のカカロットがうわごとのように呟く。抗うように身をよじる姿は戦闘民族サイヤ人の名にふさわしくない、みっともない最期だ。

 

「まだ生きてやがったか、カカロットよ。兄弟のよしみだ、ひと思いに楽にしてやろう」

 

引導を渡すべく一歩、カカロットの下へ歩み寄ろうとした瞬間。警告音と共にスカウターに表示された信じられない情報にオレは目を剥く。

 

「おとうさんを……いじめるな――っ!!!」

 

 癇癪のような叫び声と共に、閉じ込めていた筈のカカロットの子供がポッドを破壊して飛び出す。さらに驚くべきはスカウターに表示された戦闘力だ。

 

「せ、戦闘力1307だと……!?」

 

 ガキのくせにサイヤ人の戦士であるこのオレにも匹敵する恐るべき数値だ。もちろんカカロットやナメック星人の戦闘力もゆうに越えている。サイヤ人と地球人の血が交わって生まれた強力な混血種(ハイブリッド)とでも言ったところか。

 

「う、うわ――ん!」

 

 地に伏す父親の姿を目にして心中の混迷はさらに深まったらしい。動きも構えも素人同然のガキが、叫びと同時に目で追い切れないほどの速度とパワーでオレの眼前に迫る。意思がある分、先程の光線なんかよりもよっぽど回避しづらい。まともに防御の姿勢を取ることも叶わないまま、重い突進を胸に受けてしまう。

 

「ぐはっ……!」

 

 高い防御性能を誇る鎧の上からの衝撃にも関わらず、骨と内臓に深刻なダメージを負ってしまったことが分かる。思わず血を吐くが、追撃に備えてすぐさま守りの構えに転じる――が、それは待てども一向に訪れることはなかった。すでに動くだけの力が残されていないカカロットとナメック星人。それに今の攻撃で力を使い果たした様子の子供。かなりの深手を負ってしまったが、この様子ではもはやオレの勝利が揺らぐことはないだろう。

 

「くくく……散々手こずらせやがって」

 

 ほとんど棒立ち同然だったナメック星人を思い切り殴り飛ばす。尾を失った影響でバランスの崩れた一撃となったが無事ではおるまい。そして気絶しながらもカカロットに寄り添う子供の首根っこを掴み上げる。

 

「ご、悟飯を返せ……!」

 

 まだ息のあったカカロットが浅い呼吸で唸り声を上げる。自身がそんな状態なのにガキの心配とはな。父親ぶりが随分と板に付いているようだ。

 

「心配するなカカロットよ、殺しはせん。こいつはオレが鍛えて戦士にしてやるさ。使い物にならなかった貴様の代わりにな」

 

 手向けの言葉のつもりでそう告げるがすでに事切れているらしく返事はなかった。まあ構わん。とりあえずこのガキを連れて新しい拠点を用意しなくては。ポッドは壊され、オレが負ったダメージも大きい。この星の連中はさほど戦闘力は高くないものの、それでも万全を期して安全に休息が取れる場所を確保する必要がある。

 

「どうせ時間は腐るほどある。ベジータとナッパが来るまでは身動きが取れんからな」

 

 そうして子供を抱えてしばらく移動した後に荒野にたどり着いたオレは、想定よりも大きかったらしい負傷の影響で昏倒しそのまま意識を失った。

 




がんばる。がんばりたい。
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