弱虫ラディッツは甥を育てたり育てられたりするようです。   作:狗堂犬一

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004 弱虫たちの荒修業

 地球の暦で一週間ほどが過ぎた。その間にカカロットの息子を戦士として育てようと幾らかの訓練を課してはみたがどれも上手くいくことはなかった。

 そもそもとして悟飯自身の自分の力で生きようとする意思──生存本能とでも呼ぶべきものが未発達すぎる。カカロットの奴め、息子のことを相当に甘やかして育てたと見えるぞ。

 

「軟弱者め。まずは自分ひとりの力で生きることを覚えやがれ!」

 

 いい加減にうんざりしたオレは荒野のど真ん中に悟飯を置き去りにして自身の修業と傷の回復に専念することを決めた。それなりに危険な猛獣や怪物が闊歩する荒野だが悟飯の身に危険が及ぶことはないだろう。何故ならアイツは戦えないのではなく戦いたくないだけなのだ。ゆえに追い込まれて生命が危機に直面すればそれを回避するために必ず力を発揮する。これは予測ではなく確信だ。この世界が0と1とで成り立っているのならば、悟飯は間違いなく1の側に立つ存在なのだ。

 

「くくく……遅かれ早かれ戦いに身を投じることになる。今のうちからしっかり追い込んでやれねばな」

 

 そうして来る日も修練の片手間に獣たちを追い立て悟飯の元へとけしかける。初めの頃は逃げ惑うしか出来なかった悟飯だが変化はすぐに訪れた。ある時は回避不可能かと思われた獣の突撃を驚異的な速度で躱し、そして時にはデタラメな身のこなしで反撃さえもしてみせたのだ。

 その瞬間、何の力もないと思っていた無垢な子供は自身の力を強烈に自覚し、そして理解した。無理だと感じていたことが、実はそうではなかったのだと気が付いた。そこから先の成長はまさに青天井。修業相手として不足ない力を付けるのにそう時間はかかるまい。全ては間違いなく順調だ。

 

 

 

 

 神が死に、地球からは多くの加護が失われた。理が乱れたことで、森は焼けて氷山は崩れ落ち、閉ざされていた筈の魔界への門までもが開かれた。

 父の無念を晴らすべく暗躍を続けるガーリックJr.にとって、それは僥倖としか言い様がないことだった。まるで魔凶星の輝きに導かれるがごとく、まるであらかじめ決まっていた運命をなぞるかのごとく。彼は力を求めて深淵──魔界の門へとたどり着いていた。

 

「おやおや、久方ぶりの客人かと思えば懐かしい顔じゃないか」

 

「ガーリックの倅め、よくもノコノコと我らの前に顔を出せたな」

 

 闇より姿を現した二つの影が道を阻むように立ち塞がる。怜悧狡猾な笑みを浮かべる美貌の女魔族・メラと、山のように巨大な体躯を持つ剛力の魔人・ゴラ。魔界へと続く門を守護する番人である。

 

「さて、お前がいったい魔界に何の用事があるのかは知ったことではないけれど、この道を通すわけにはいかないわ」

 

「神が死に、世界の理が乱れたとはいえ、いにしえよりの昔に天界と冥界にて交わされた掟だ。従ってもらうぞ」

 

 門番を務めるふたりは一般の魔族とは切り離されて特別な役目を与えられた特異点である。魔族を統べる力を持ったガーリックJr.の権能を持ってしても従わせることは叶わない。

 

「ふふふ……そういきり立つな。これはお互いに利のある話なのだ。私にとっても、シュラにとっても」

 

 それでもガーリックは不敵な笑みを崩すことはない。欲するものはすぐ目の前にある。そして彼の者が求めるものをガーリックは差し出すことができるのだから。

 




魔族のみんな! 力を合わせてがんばれ!
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