弱虫ラディッツは甥を育てたり育てられたりするようです。   作:狗堂犬一

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006 震える魔

「はああああッ」

 

 素早く距離を詰めたシュラの拳から数瞬の間に繰り出される連撃。ガーリックJrや悟飯の目を通してでは残像のようにしか捉えることの出来ないそれらを受けに回り、しかしラディッツは悠然とした笑みを絶やすことなく余裕を持って捌いていく。

 

「ば、化け物め……」

 

 たった一度の攻防を目の当たりにしただけで理解できるほどの隔絶した力量差を前に、もはやガーリックは愕然と立ち尽くすしかなかった。凄まじいまでの異星人の強さに対してガーリックの見通しは絶望的なまでに甘く、しかしそれも仕方のないことのように感じていた。地球の外の世界を知らない彼にとって、眼前のラディッツの強さはまさに人智を越えた強さと呼称する以外になかった。

 

「なるほど、思いのほか悪くないぞ」

 

「ちい、余裕ぶりおって……」

 

 繰り出されるごとに重さと鋭さを増すシュラの拳撃に対してラディッツの余裕に変わりはなく、寧ろ愉快な笑みを深めるばかりである。しばし攻勢を続けていたシュラだったが、このままでは実力差を埋めることが難しいと判断して一旦距離を取り体内の気を腕部に集中させていく。

 

「魔人の強さを侮ったこと、後悔するがいい!」

 

 両腕に纏ったエネルギーがその周囲を循環、小さな渦となったそれは徐々に加速して勢いを増し、螺旋を描く竜巻へと形態を変えていく。

 

「我が羅旋掌、とくと味わえ!」

 

 シュラはその腕に纏う竜巻の勢いそのままに、爆発的な加速で一瞬のうちに互いの距離を再びゼロへと還す。それはさしものラディッツにとっても想定していた以上の速さであった。

 

 しかし――。

 

「こ、これを躱すだと!?」

 

 仮に想定を越えた速さであったとしてもあくまで地球人を基準とした場合の話である。純粋な力量でシュラを上回るラディッツにとっては反応できないほどの速度ではない。シュラが放った渾身の一打は竜巻ごと紙一重で回避され、辛うじてラディッツの頬にかすり傷を付ける程度のものでしかなかった。

 

「くくく……褒めてやろう。地球の雑魚にしてはパワーもスピードも及第点だ」

 

「ぐ、ぬう……」

 

 未だに底の知れぬラディッツのパワーを前にして勢いを失ったシュラがたたらを踏む。ラディッツに対する有効な遠隔攻撃手段を持たないシュラは本来ならば積極的に近接戦を仕掛ける以外には自身に勝ち筋がないことを理解していたが、今になってはそれはあまりにもか細い糸のような希望でしかなかった。

 

「ほぉれ、こいつはオレからの褒美だ。くれてやる!」

 

 禍々しいエネルギーがラディッツの手のひらを中心に凝縮されていく。どこか不安定な揺らぎを抱えた光球――と呼ぶにはやや歪な形のそれが手を離れ、守りの構えのまま身を固めたシュラを喰い破るかのように炸裂した。

 

「なんという重い攻撃だ……信じられん」

 

 そのあまりの衝撃に地上へと墜落したシュラの様相はまさにぼろきれであった。致命傷と形容するにはまだ浅いが、けれども命に手のかかった感触からこれを幾度か繰り返すだけで己の命は簡単に潰えるだろうという目をつぶりたくなるような確信を得てしまう。

 吐き出した血液とともに浅くなる呼吸。静かに迫りくる死の気配を感じ取ったシュラはその表情にラディッツが浮かべるそれとはまた違った種類の愉悦を浮かべて笑った。

 




短いけどがんばった。
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