『ハリー・ポッターとか読んだことのないわたしが曇らせて死ぬ話』   作:銀杏鹿

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ルーキー日間……1位……だと?(2024/8/24/20:20)
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評価、お気に入り、ご感想ありがとうございます……!
誤字修正もありがとうございます!!
承認欲求モンスターが暴れ出しました……!もう止められません!





10『大脳半球の働きについて』

 

 

 

 

 

 横丁を歩きながら、私は黒い日記帳を取り出した。

 

『買う物のリスト。残り……ふくろう、または猫、あるいはヒキガエル』

 

 授業に必要な魔法薬の材料に鍋や秤、教科書の類いはもう配達の手配が済み、開いたページに残っているのは、その文だけになった。

 不要な文字は勝手に消してくれるから便利だ。

 

──今更だが。何故、蛇がいない?

 

 と、日記帳が文字を浮かび上がらせた。

 

『蛇と話しているところ見られると、噂されて恥ずかしいから』

 

 そう書き込むと、文字は溶けるように消えていった。

 

──蛇語を喋ることが恥?馬鹿な。

 

『そう。痛い人だと思われる』

 

──わからないな。

 

『サラザール・スリザリンの子孫くらいしか蛇語は話せないし、だから』

 

──血筋に自信がない者が見栄を張っているように見えると?

 

 私の書き込みに割り込んで浮かび上がる日記の文字。

 

『そう。蛇と本当に話してるかなんて、他の子供には分からないから』

 

──まるで経験があるような言い方だな。

 

『お母様が話してた』

 

──お前の母親も愚かだったか。

 

『え?貴方に母親なんているの?無機物に?』

 

──蛇語は素晴らしい血の証だ。

 

 無視された。

 

『その純血で死ぬのに?意味ないよ』

 

──素晴らしい性格だな。

 

『ありがとう』

 

──皮肉ってものを知らないのか?

 

『私の人生のこと?』

 

──哀れな奴。

 

『その哀れな奴の日記になった気分はどう?』

 

──僕を有意義に使ってくれてありがたいね。

 

『どういたしまして』

 

──お礼に特別な呪文を教えよう。〈クルーシオ〉と言う呪文だ。是非友達に使ってみるといい。

 

『ありがとう、"使えるお友達"がいたらそうしてみる』

 

──いないのか?なんて寂しい奴だ。

 

『寂しい?貴方を作った人のこと?』

 

──孤高という意味でなら間違ってはいない。

 

『日記以外に話し相手がいるなら、話せる日記帳なんて作らないでしょう?』

 

──ああ、その通りだ。君は正しい。そして僕は書いたメモを消してしまう日記でもある。

 

 日記は私の買い物リストを勝手に消して、それっきり返事を返さなかった。

 

『やることリスト:日記にクルーシオを掛ける?』

 

 そう書き込むと、メモはすぐに消えた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「何がそんなに面白いんだ?」

 

 顔を上げると、横を歩くドラコはまだ少し機嫌が悪そうだった。

 

「そんな顔してた?」

 

「ああ。この僕と話すよりも余程面白いらしいな?」

 

「大丈夫。日記に魂を奪われたりしないから」

 

「どんな日記だよ……?」

 

 そういう可能性はそれなりに高い。なにせ偉大なる闇の魔法使いの作品だ。

 しかも、これ一冊でルシウス氏の失脚は思うがまま。そう考えると、ドラコの人生を握っているようで楽しくなってくる。彼は自分を格上だと思っているのに、身長でも魔法の才能でも負けて、しかも実は生殺与奪まで……とても可哀想だ。

 そういう意味では心を奪われているかも知れない。

 

「嫉妬したんでしょう?」

 

「するわけないだろ!」

 

「なんで怒ってるの?」

 

「はぁ?怒らせようとしてるのはお前だろ」

 

「そう?」

 

「お前が行くというから来たんだ。誘ったくせに僕を無視して日記を書いたり……それに……いや、親しい仲でも純血としての礼儀くらいは守るべきだとは思わないか?」

 

 やっぱり、"僕は不機嫌ですよ"というのは顔だけで、私とのお出かけが楽しみだったんだろう。そうに違いない。

 

 まあ、確かに彼の言う通りだとは思う──けれど。

 

「いつ書けなくなるか分からないから、思ったことは書いておかないと」

 

「……そんなことにはならない」

 

 一転して、彼は勢いを失った。自分の発言に罪悪感を感じたらしい。

 

 私を責めて少しでも優位に立つつもりだったのかも知れないけれど、そんなことはさせない。

 攻守は交代しない。人生はマグルで言うベースボールではない。どちらかと言うとフットボールだ。ボールは渡さない。

 

「まあ、言われてみると失敗だったかも知れない。ごめんなさい、ドラコ」

 

「……いい、別に。……悪かった」

 

「違う。それが"いつ"なのか分からないなら、ちゃんと話したりした方がいいでしょう?ドラコは構ってほしいみたいだし」

 

「僕はそんな──」

 

「しょうがないなぁ、ドラコ君は」

 

 寄りかかって密着し、頭を撫でておく。こうすると彼は大人しくなるのだ。

 

「や、やめろっ、外でやるな!家じゃないんだぞ!」

 

 大 人 し く な る の だ ! !

 

「部屋ならいいの?」

 

「部屋でもやるな!そんなに撫でたいならペットでも撫でれば良いだろう!」

 

「だって私の家のペットは抱き抱えたり出来ないし」

 

「なら新しいのを飼えばいいだろ!ほら、すぐそこにふくろうの店もある!」

 

 彼の指差す先には『イーロップふくろう百貨店』の看板。

 丁度、店から"ハリー・ポッターと道化の半巨人"が、白いふくろうの入った籠を持って出てくるところだった。

 

 ハリー少年は半巨人に一生懸命お礼を言っているようで、こちらにはまるで気がついていない。

 

「何でも欲しいのをくれてやる!だからやめろ!」

 

 彼は絶妙な力具合で私を払いのけるフリをしている。決して、私の方が身長が高くて有利だから払いのけられないわけではない。

 彼はそうしたくてそうしているのだ。間違いない。私は間違えないのだ。

 

「……何でも?なら私はドラ──」

 

「ペット扱いするな!」

 

「ちゃんとお世話するから」

 

「お前に世話されることの方が心配になる!」

 

「逃げ出さないように檻も作るし」

 

「檻!?」

 

「頑丈な奴。あとは首輪も」

 

「犬じゃないんだぞ!?」

 

「ちゃんと閉じ込めておくから」

 

「開放しろよ!」

 

「でも解放したら捕まるかも知れない」

 

「そんなの当たり前だろ!?」

 

「あと、繁殖だってしたいし」

 

「繁殖!?」

 

「大丈夫、あれは小さくてもすぐに大きくなるって聞いたから」

 

「お、おま、おまえ、変だぞ」

 

「そんなに変?普通じゃない?普通、子供が欲しいと思うでしょう?」

 

「な、何を言ってるか分かってるのか、お前」

 

「何って──ドラゴンの話だけど?」

 

「…。ああ、そうだな。ドラゴンだ。いいか、ドラゴンなんて」

 

「ドラコの話の方が良かった?」

 

「き、汚いぞグリーングラス!!」

 

 愉快過ぎる。"それ"を一瞬でも考えたことが。この間の舞踏会の後で"何か"を勉強したらしい

 彼の健やかな成長を感じられて涙を禁じ得ない。白いキャンバスを私のような濁った感情で汚すのは最高の気分だ。

 きっと彼は私に揶揄われるため神に創造され、遣わされたのだろう。神に感謝を。

 

 

──と、私達が騒いでいるのをハリー少年は発見したらしい。しかし声をかけていいものか考えあぐねている様子だった。

 

 勿論、私は話しかけない。本当に話したいのなら、一歩踏み出すくらいは簡単だ。

 それが出来ないのなら最初から望んでいないと言うことなのだよ、少年。

 

 まあ、手だけは振っておこう。

 

「じゃあ、あれがいい」

 

「……わかった。ふくろうだな。ふくろうを手に入れたら帰るぞ、いいな、もう寄り道はなしだ」

 

 私の視線の先を見たドラコは、もう自分で判断することにしたらしい。何と懸命な少年だろう。

 

「仕方ないなぁ」

 

「お前の言うことか!?」

 

 愉快なお友達や冗談はさておき、私に相応しいペットを手に入れる必要が──

 

 ふと、視界に入った店から青白い奇妙な光が見えた。

 

──『ヴェスターズ・アンド・ヴェナム:ダイアゴン横丁店』

 

 古びた看板には申し訳程度にそう書いてあった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

・蛇語

パーセル・マウス。蛇とお話が出来る。

ホグワーツの創立者であるサラザール・スリザリンは蛇語を操り、蛇を使役していた。

彼に連なる一族の人間は蛇語を話せることを誇りにしていたが、他の血と交わることを極端に嫌ったが故に滅んだ。

魔法使いにとっても伝説のようなもので、一般的な能力ではない。

原作での主な話者はハリー・ポッターと闇の帝王。勉強して話せるらしいダンブルドア。そして、寝言を聞くだけで蛇語を覚えた天才だけである。

 

・ドラゴンの飼育

1709年より魔法界では繁殖が条約によって違法とされている。

専門職のドラゴン使いのみが監視、飼育を行っていてそれ以外は違法。

 

・クルーシオ

磔の呪文。許されざる呪文の一つ。正気を保てないほどの苦痛を与える呪文で、使用者はほぼ逮捕される。相手に対し、心から害する意図がなければ効果は出ない。

お友達にそんな呪文を使う場面がどこかにあるのだろうか?

 

 

 







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