『ハリー・ポッターとか読んだことのないわたしが曇らせて死ぬ話』 作:銀杏鹿
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感想や評価、お気に入りありがとうございます!
こちらから解説するのはカッコ悪いのですが、題名にも意味があったりなかったりします。特に間章のタイトルは曲の名前なので……
あ、今回のタイトルに深い意味はないです!
「──スリザリン!!」
黒い肌で容姿の整った純血の少年──ブレーズ・ザビニが最後にスリザリンへ組分けされた。
「……ザビニで終わりか。まあ順当な結果だったんじゃないか?」
「ドラコはあんなに緊張してたのに?」
「してないが?」
「みんな一緒だったね!よかったね!」
「……ふっ、これがスリザリンの崩壊の始まりだとは、この時の俺たちには知る由も」
「壊れるの!?」
「ああ……!」
「適当なこと言うのやめろよノット」
「静かにしようね、校長先生のお話が始まるよ」
どう見ても歳下に見える小さい先輩、ジェマ・ファーレイが保護者のようなことを言う。半純血だろうに何様のつもりだろうか。まあ、優秀じゃなければ半純血で"監督生"になれるはずもないか。
「ホグワーツの新入生の皆、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい」
白く長い髭の老爺が立ち上がり、笑みを浮かべて声を響かせた。
──アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア。
今世紀最強の魔法使い。
ホグワーツ校長でもありながら、ウィゼンガモットの主席魔法戦士でもある老人。
つまり、教育と司法を実質的に支配していると言ってもいい。間違いなく光の陣営のトップであるのに、魔法大臣ではない。何を考えているのか謎だ。
彼は一体何を言うのだろうか。
「──ハッピーハロウィン!!以上!」
……?
私の混乱を他所に、歓声と拍手が沸き上がる。
「やはり狂人か……父上の言う通りだ」
ドラコはせせら笑う。でも、もし今世紀最強の魔法使いが耄碌して狂っていたら笑い事では済まないと思う。
「ファーレイさん。校長はどうかなさったのですか?」
「え?先生はいつもあんな感じだけどなぁ。どうかしたの?」
「どうかしたも何も、どうかしていると言うか」
「じゃあいつもの先生だねぇ」
私が聞いても、小さい先輩は何事もないように食事を始める。
「ポテトがいっぱいだよ!」
「いっぱいだねぇ、嬉しいねぇ」
パンジーの頭を撫でる小さい先輩。
「──と言うより……」
私が言葉を失ったのは、姿を隠したハウスエルフ達によって、いつの間にか料理が配膳されていたからではない。その内容だ。
フレンチフライ、茹でた芋、グリルポテト、ハッシュポテト、ポテトケーキ、マッシュポテト、茹でた芋、ポテトサラダ、シェパーズパイ、ジャケットポテト、フィッシュ&チップス、茹でた芋……ポテト、茹でた芋、そしてポテト。申し訳程度のニンジン。
ラムチョップ、ローストチキン、ローストビーフ、付け合わせのトマトソース、ステーキ……その他の肉類。何故かハッカ飴。そしてポテトサラダ。
油だ……油しかない……ホグワーツは私の内臓を破壊する気なんだ……!もう壊れてるのに……!こんなの私、死んでしまう……!
これがホグワーツ……何も考えなくても死ねる場所……食べなきゃ……!
ちょっと芋を口にしただけで、もうギトギトで味も分からない。なんか鉄みたいな味がする。とてもつらい。くるしい。野菜が食べたい。芋を野菜だと言うのはアメリカ人だけだ。
でも食べる。どんどん食べる。食べれば食べるだけ死に近づくから。決して油っこい料理が好きなわけではない。くるしい。ああ、くるしいなぁ。
ラムチョップが大きすぎる。マトンの間違いではないだろうか。香辛料がかなり振り掛けられているのに、私には味が分からない。ただ、肉の油だけが口を満たして内臓が震えている。壊れそう。壊れちゃう。壊れた。
「わぁ、いっぱいたべるねぇ、すごいねぇ」
小さい先輩はのんびりした感想を言っているが、私は今かなり危機的な状態だ。もう死にそう。
「お前凄い勢いだな……口にソースが付いてるぞ」
「……?」
引き気味のドラコに言われて口の中が鉄の味になっていたことに気が付いた。道理で変な味だったわけだ。
組分けの時に変身術が上手くいってなかったらしい。まあ日記の中の人は下手くそだから仕方ない。
「拭いてあげるよ!」
パンジーが頼んでもないのにハンカチで私の口元を拭く。
「ありがとう、パンジー」
「うん!」
「……それは本当にソースかね?」
腹部から銀色の液体を垂れ流しているゴーストが訝しむように私を見た。
「ソースじゃないの!?じゃあなに!?」
「大丈夫かなぁ?」
小さい二人も私を見る。
「……流石"血みどろ男爵"。血液には詳しいらしいね」
「皮肉ってる場合かノット……ダフネ、大丈夫か?」
「心配してくれるの?」
嬉しい。もっと心配しろ。私のこと考えろ。
「当たり前のことを聞くな」
当たり前……!それは良い。とても良い。
「大丈夫じゃないからもっと心配して」
「分かった。じゃあ大丈夫だな」
……は?何故?いつも頑張って生きてるんですが?私、生きててとっても偉いんですが?褒めてくれないんですか?褒めろ。
「馬鹿。嫌い。マルフォイ」
「え、マルフォイって悪口なの!?」
「悪口な訳ないだろ!」
「マルフォイのことをマルフォイって呼ぶのはやめるんだパンジー、失礼だろ」
「そっか!ごめんねマルフォイ!」
「何なんだよお前ら!」
「……問題ないならこれ以上言うまい。何かあればそこの監督生に言うのだぞ」
「何かあったらすぐにお姉さんを頼ってねぇ」
(恐らく)胸を張ってそう言う小さい先輩。
しかし、お姉さん……?自分のことを言っているのだろうか?そう言う年頃なのかな?
「私、他の子達も見てくるからねぇ、良い子にしててねぇ」
ちびっこ先輩が席を立つと、"血みどろ男爵"もそれを追って他の席へ向かった。
その姿を目で追っていると、どこからか視線を感じた。……グリフィンドールの席か。
スリザリンのことでも話題にしているのか、グリフィンドールのゴーストとハリー、ついでにロナルドがこちらを見ている。
彼らに手を振ってあげると、ハリーは小さく手を振り、ゴーストは首と殆ど繋がっていない頭を手に持って会釈を返し、その隣でロナルドが嫌そうな顔をしていた。
「知り合いなの?ハリー・ポッターと?」
興味津々に乗り出して聞いてくるパンジーの口元には、ソースが付いている。でも私はハンカチを持っていない。仕方ないな。
「わ、わ、くすぐったいよ……?」
何故かパンジーの顔がトマトみたいに赤くなっている。
「……ダフネ、そいつは妹じゃないぞ」
ドラコが何か呆れたような言い方をした。
「私、何か変なことした?」
ドラコも"同じこと"をして欲しかったのだろうか?でもそうすると……まあ良いか。
「寄るな。勘違いされるだろ」
「私は気にしないから」
「……ふっ、食堂は何をする場所か教わってないらしいね、聖28一族の先が思いやられるよ。なぁパンジー」
ノットが大袈裟に私達を嗜めた。周囲の同級生や上級生からの顰蹙を買わないようにという、純血らしい心遣いだろう。さもなければ私の邪魔をするなんて許される行為ではない。しかし私は寛大なのだ。
「……え……あ……ご飯はお行儀良く食べなきゃダメなんだよ……?」
まだ顔が赤い。しかしソースを頬につけていたのに、お行儀とか吐かしているのは何だろう。
「……仕方ないから、ノット家とパーキンソン家の顔を立てましょう」
「マルフォイ家の顔も立てろ」
「私が貴方に"服従"しているのを見たら、ドラコと"お友達"になれる人はいなくなるでしょう?まあ、下僕や取り巻きに囲まれた派閥ごっこで、優雅に暮らしたいならそうするけど」
「……!おお、偉大なるマルフォイ様、俺たちの度重なるご無礼をお許し下さい!ノット家はマルフォイ家に絶対服従しております!」
「おおー?マルフォイ様ぁー?」
ノットの言葉に従い、パンジーはキョトンとした表情のまま真似をした。
「お前らって0か100しかないのか?」
「まだ10くらいでしょう。もっと崇めなさい。ドラコはホグワーツの王になるの」
「……仮に王様が居るとしたらあそこに座ってる爺さんのことだろ」
ドラコの言うホグワーツ王を見ると、山盛りのポテトとラムチョップを何事もなく食べていた。今世紀最強の魔法使いは胃袋も最強なのかも知れない。私は苦しくて山盛り5回くらいしかおかわりしてないのに。
「校長って王様だったんだ!」
「……ふっ、冗談じゃないのが恐ろしいね。魔法界の教育と司法を掌握してる上に、魔法大臣に助言すらしてるんだ。実質、魔法界の王だよ」
賢しらに語るノットの言葉は、どうせ親の受け売りだろう。
「つまり、矢面に立つ魔法大臣は政策の失敗や情勢に対して民衆から文句を付けられるけど、後ろから操る分には自分はいつまでも身綺麗な英雄でいられると。とすると、あのふざけた振る舞いは自分の無害さの演出と油断を誘うためでしょうね」
「よくわかんないけど、校長先生は悪い奴なの……?」
「ふっ……半ゴブリン、半巨人、義手義足、厳しい老魔女、見るからに頭のネジが外れてそうな丸メガネ、ゴースト、陰気臭いターバン、醜い用務員、そしてさっきの闇の魔法使い……あんな連中を従えているなら悪者に違いないね……」
「私、凄いところにきちゃった……!?」
ノットの言葉を鵜呑みにしたパンジーは、教師の方を見て身震いした。
「……スネイプ教授は闇の魔法使いかも知れないが、僕らの寮監だ。少なくとも僕らの敵じゃない」
「ドラコ、あの〈死喰人もどき〉と面識あるの?」
「もどきというか……いや、父上の後輩だし、たまに屋敷に来る時もある。ダフネやアストリアが来る日と被ったことはないけどな」
社交界に顔を出さない純血がいる訳がない。半純血かマグル生まれのどちらかだろう。……その割にルシウス氏と懇意にしていると言うことは、まず間違いなく闇の帝王の僕だったと考えられる。
「……へぇ」
しかも私のことをカケラも気遣わない無神経な大人。絶対に悪人。
闇の教師は臭そうなターバン頭と話しているけれど、ターバン男は見るからに萎縮している。あれだけ闇の気配を漂わせて威圧していれば当然だろう。感覚の鋭くない私ですら分かるくらいだ。
「──全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある」
油で限界だった胃袋にデザートを詰め込み終わり、周りの子供達が私を化け物でも見るような目で見ていた(何故かはわからない)頃、魔法界最強の胃袋の持ち主が立ち上がった。