『ハリー・ポッターとか読んだことのないわたしが曇らせて死ぬ話』   作:銀杏鹿

9 / 59


すごいです!評価バーが赤くなってます!評価していただいてありがとうございます!しかもルーキー16位ですって!
皆様のお陰です!ありがとうございます!

間話が続いたので本編です!


2章【ダイアゴン横丁】
06 『夢判断』前


 

 ダイアゴン横丁の石畳の道はホグワーツに入学を控えた子供達や、彼らの保護者で溢れていた。

 この横丁の街路が人で埋まっていると、全くそんなことはないのに、イギリス魔法界の住民がまるで多いみたいに感じる。

 魔法使いの普段着は大体ローブだけれど、マグル生まれがそれなりにいるのか、見慣れない服装の子供が見受けられた。マグルの店ではローブも買えないという過酷な事情が窺える。

 

 今日は別に目立つ必要もないので、魔法使いらしく全身を覆うようなローブを着てきた。仕立てが良く、すべすべした生地が肌に心地よい。流石は私が変身術で作っただけのことはある。

 口の中に何か鉄の味がするけれど、まあいつものことだし、飲み込んでおけば問題はない。

 

「いいか、グリーングラス、僕らはわざわざ店に足を運ぶ必要なんてない。家に呼び寄せればいいんだからな」

 

 隣を歩く私に忠告する黒いローブ姿の少年──ドラコは、青白い顔の眉間に皺を寄せて、いかにも『僕は仕方なくここに居るんだ』とでも言いたげな顔をしていた。

 

「名前で呼ぶの、恥ずかしくなった?」

 

「っ……学校では家名の方が重要だ」

 

「まあ、確かにマルフォイって顔してるけど」

 

「……馬鹿にしてないか?」

 

「家名が侮辱になるわけないでしょう?ドラコ君」

 

「…外では名前で呼ぶな」

 

「慣れておいた方がでしょう?」

 

「何にだ?」

 

「家名が同じになった時のために」

 

「うちの養子にでもなるつもりか?」

 

「"それを決めるのは貴方"」

 

「おい、どう言う意味だ──」

 

 ドラコを放置して、目的地の扉を開ける。

 

 扉には剥がれかかった金色の文字でこう書かれていた。

 

『オリバンダーの店──紀元前382年創業 高級杖メーカー』──と。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 紀元前380年代まで、多くの魔法使いは杖とは言えない棒切れを振り回し、しばしば魔法を暴発させて死んだり、殺されたりしていた。

 一方その頃のマグルは、ゴテゴテと鎧を着込んで隊列を組み、槍と呼ぶには長過ぎる棒を振り回して殺したり、殺されたりしていたと言う。(槍は主に振り下ろして叩いて使う)

 

 オリバンダー家はその頃、"ローマ"というマグルのとても暴力的な集団が侵攻するのと同じくしてこのブリテンへ移り、安定した杖の発明によって魔法族を爆発して死ぬ杖から救った。

 そして聖28一族の純血でもあったが、今は残念ながら半純血だ。

 

 店の内装は高級メーカーとは名ばかりで、室内は狭苦しく、ショーケースは埃まみれ、天井まで続く棚には在庫を把握しているとは思えないほどの数の細長い箱が積まれている。

 ボロボロの椅子が一脚だけ置かれているのは、恐らくマグル生まれ専用だろう。ただ、純血向けのものが見当たらない。

 店と言うより倉庫か工房そのもので、杖以外への無関心さが滲み出ている。

 純血でなくなると体裁というものを失ってしまうらしい。可哀想に。私の体裁を分けてあげるべきだろうか。

 

「いらっしゃいませ」

 

 薄い銀色の目をした白髪の老人が、いつの間にか目の前に立っていた。

 

「なっ」

 

 驚いたドラコが杖の満載された棚へ倒れ込みそうに──

 

「〈アクシオ 来い〉」

 

 ──なったのを、彼の服を呼び寄せ呪文で引っ張って受け止める。

 

「ダフネ・グリーングラスさん、ドラコ・マルフォイさん。ようこそ、オリバンダーの店へ」

 

 老人の挨拶にドラコはさも何事もなかったように姿勢を正し、鷹揚を気取って頷いている。

 最近彼が父親に言いつけるだとかを言わないのは、私が揶揄ってしまったのが原因だ。彼の個性を奪ってしまい、とても後悔している。

 

「ここは試しに魔法を使っても咎められることはないのじゃ、安心すると良い」

 

「……何のことだ?」

 

「さあ?」

 

 私達二人はわざとらしく知らないフリをする。

 

「流石は純血の名家、心得ているようじゃな」

 

 言われるまでもない。私達未成年者は勝手に魔法を使ってはいけないし、魔法省に使用を検知されてしまう──けれどそれにはいくらでも抜け道が存在する。

 例えば、近くで大人が魔法を使っていたからだとか、ハウスエルフが使っただとか言えばそれで済んでしまう。

 マグル生まれでもなければ、家の中で使われる魔法の出どころは確かめようがない。

 

「懐かしいものじゃ。マルフォイさん、確か、今のお父上の杖はニレの木に、芯はドラゴンの心臓の琴線だったか。ニレは存在感と生まれつきの気品を持つ所有者を好む──」

 

「それだ!僕もそれが欲しい!」

 

「いいや、人が杖を選ぶのではなく、杖が人を選ぶのじゃよ、マルフォイさん」

 

「……それ以外、あり得るのか?僕が?」

 

「今の発言に生まれつきの品格があると思うならそうでしょうね、ドラコ」

 

「……」

 

 あ、黙った。笑ってやろう。

 

「あれ、誰か〈シレンシオ〉でも使いましたか?ドラコの声が聞こえません」

 

「黙ったんだよダフネ!」

 

「あら?家の名前で呼ぶのでは?」

 

「っ──、いや。ミスター・オリバンダー、僕にニレの杖を見せてくれ」

 

「良いじゃろう」

 

 ドラコは私に口を開きかけ──、オリバンダー氏の視線に気が付いて下手な咳払いをすると、会話を切り上げた。

 彼の品格の暴落は止まった。マルフォイ家の株を買うのなら今が最安値だろうか。

 

「では杖腕の採寸じゃ」

 

 ドラコは大人しく従って採寸されていた。

 宙に浮いた巻き尺が一人でに彼のあちこちを測り、鼻の穴の幅まで測っているが、杖に影響があるとは全く思えない。

 それでも、彼は真剣な顔で我慢している。私が煽るのが分かっているからだろう。

 その様子が余計に馬鹿馬鹿しく見えて私は笑いを堪えていた。

 

「ニレの木にドラゴンの心臓の琴線。23センチ、良質でしなりがよい。手に取って、振ってごらんなさい」

 

 一方、オリバンダーはそれとは全く関係なく、箱を呼び寄せていた。

 採寸はやはり何の意味もなかったらしい。

 

「ドラコ、鼻の穴まで計らせるなんて、杖をどう使うつもり?」

 

「──くっ!」

 

 はたき落とされた巻き尺は、部屋の奥へ消えていく。やはり最安値は更新された。他人の言葉を信用して株を買ってはいけない。

 

「振ってもらえるじゃろうか?」

 

「……勿論だ」

 

 振った杖は火花を散らして何処かへ飛んで行った。ガラスの割れる音がした。

 

「…このニレの木はマルフォイさんには合わないようじゃな」

 

「そ、そんな」

 

「大丈夫、貴方に足りない分の品格は私が持ってるから」

 

「僕が持ってなきゃ意味ないだろ……?」

 

「一緒にいれば意味あるでしょう?」

 

「そういう話……いやそういう話でもない!」

 

 その後も彼に合う杖はなかなか見つからなかった。強力で有名な組み合わせも、他のニレの杖も彼を選ぶことはなかった。

 

「サンザシ、25センチ。ユニコーンの毛、捻くれているが──」

 

 オリバンダーが思いついたように奥から取り出したものは、私の知る限りではかなり奇妙な組み合わせだった。

 

「その杖は……難しいのでは?」

 

 なるべく言葉を濁して、オリバンダー氏に尋ねる。それが私の想像通りなら──。

 

「じゃが、杖は選ぶ。その才能があるかどうかを」

 

「僕の才能なんて聞かれるまでもないな。試させてくれ」

 

 ドラコは杖を受け取り、堂々と振り上げる。すると樹木の蔓が店内を埋め尽くし、白い小さな花を咲かせた。

 

「どうだダフネ!見たか!」

 

「……ええ」

 

 ドラコは誇らしげに私を見た。杖は彼を選んだ。──選ばれてしまった。

 

「おお、良かった。サンザシは矛盾や相反する性質、意志を持つ者を選ぶ。ユニコーンの毛は一貫性が強く、安定し、忠実。そして──闇の魔術に最も感化されにくい」

 

「……は?」

 

 オリバンダー老の解説を聞いたドラコの顔は一転して曇り、複雑な感情を隠しきれないものに変わった。








続きます!

少しでも面白かったら応援して頂けると嬉しいです!
皆様の評価でモチベーションが上がります!
ちょっとした感想でも嬉しいです!
いいなって思ったところがありましたら、是非教えて下さいね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。