個性〝悪役令嬢〟のヒーローアカデミア 作:匿名の悪役令嬢
1 入試なんてお茶の子さいさいですわ!
かくかくしかじか。
かくして、
すなわち今日は、雄英高等学校ヒーロー科の入学実技試験の試験日である。
「うぅ……わぁ、さすが雄英高校……。バリアフリーの次元が違いますね……でも、私みたいな根暗引きこもり陰キャで家柄しか価値のない喪女にももっと配慮して全体的に通路に日よけを設置してくれてもいいと思います……あぁ陽の光が目に染みます」
一周回り、行き着くところまで行き着いた
なんか、小さくてかわいい感じである。
小さな声で、どんよりと視覚化できるほどの闇を携え、ブツブツと何か呪いでも吐きながら、
流石、国立の難関高等学校ということもあり様々な〝個性〟に配慮され、広い道幅、高い壁、そして整備と清掃の行き届いた道を
かなり小さな声でブツブツと呪詛を吐き出していたが、残念なことに
〝はぁ……本当にこの子は……。
〝うぅ、だってぇ……やっぱり私には無理だよレイちゃん! そりゃ筆記の方はやってるときにアレ? 思ったよりも簡単だ、これってひょっとしたらひょっとするかも? とか分不相応な事を考えちゃったけど、冷静になって考えると無理だよ! ヒーローって何!? それに、ひ、ヒーローになったらあんな恥ずかしいピチピチスーツ私には絶対無理!!〟
ウジウジと思考がネガティブになっていく
その声に特に振り返ることもなく、心の中で
ここで復習を一つ。
そんな
何が言いたいのかと言うと、二人は別に声に出したりしなくとも、お互いの間であるならテレパシーのように会話や思っている事などを共有することができるのだ。
もっと言うのであれば、
ウダウダと無理だなんだ言いながらも、さりげなくヒーローになったら、などと考えているところが意外と傲慢で根っからのお嬢様気質、才能ウーマン故の無意識的な自信を隠しきることができていない
〝貴女がどれほど人前で無様をさらしながら、何を言おうとももう来てしまっているのですから諦めなさいな〟
〝……でも、ね? 自分で選んだ道なら、覚悟を決めることもやぶさかなんだけど……勝手に決められた道というのは〟
〝何か、言いまして??〟
〝なんでもございません……うぅ〟
整った顔の真顔で至近距離で詰められた
ビクビクとしながらも足取りはしっかりとしており、レイと
しばらくすると、眼前では爆発頭の少年と鳥の巣のような頭髪の少年がなにやら物騒なやり取りをしていた。
〝殺すだなんて野蛮ですわね。まぁ、自身の前に立つな、という意気込みは実に結構な事ですわね〟
〝え、何? レイちゃん。ごめん、今手のひらに書いた人をたくさん飲むのに忙しくて……〟
〝……いえ、なんでもありませんわ。そろそろ玄関前ですわよ。階段がありますから気を付けなさい〟
悪役令嬢イヤーには全て筒抜けだったが、今の
(ふむ……。ヘドロ事件、聞き覚えがありますわね。確か、ヘドロの様な流動性を持つ
ここで一つ、レイという少女の話もしておこう。
彼女は
そして、レイという少女は
こと恵まれた
元来の気質などにより傲慢な面はあるが、それは断じて彼女が他者を見下しているからではない。
むしろレイの場合は、「
なぜなら、彼女は悪役令嬢。
すなわち、悪の華であるがゆえに、優雅に華麗に大胆に。そして、過激に絶対的なのだ。
――――――――
早めに雄英高校についた
まだ30分近く時間があったため、周囲の他の受験生はどうやら知り合いなどがおり、会話に花を咲かせていた。
だが、残念なことに
もっとも、いた所で学校で特別仲の良い友人などいないから誰かと会話に花を咲かせる、なんてそんな高等技能を行使することはできないが。
しばらくすると、時間通りに会場が暗くなり、説明会、いや受験票通りにいうならプレゼンテーションが始まるようだった。
「受験生のリスナー。今日は俺のライブにようこそ! エブリバディ セイ ヘイ!!」
とハイテンションで雄英高校の教員であり、現役のプロヒーローである「プレゼントマイク」が会場中に響き渡る大きく聞き取りやすい声で話を始めた。
プレゼントマイクは〝個性〟の影響もあり、ヒーロー活動以外にもよく声に関係する仕事、例えば人気のラジオ番組を持っているが、残念なことに流石に受験というライフイベントでは、皆そのテンションには着いていけないようだった。
訂正。
後ろの生徒がすごくプリプリ、ブツブツとプレゼントマイクというプロヒーローの登場に盛り上がっていた。
とはいえ、未だ手のひらに無心に人という字を指でなぞり書き連ねている
(あら? 随分と呑気ですこと。ご自分によほどの自信があるのか、ただのバカ……いえ、あぁ、なるほど?
「入試要項通り、リスナーはこの後10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!」
(持ち込みは自由、とはいえ我が家の力を持ってすれば超圧縮技術を使用した兵装、更にはプロヒーローの持つスーツよりも高性能な叡智の結晶を持参することはできましたけど、今回はワタクシたちの実力を見るためですから、何一つ持ち込みはしてませんわ。それと指定会場、ですか。まぁ特に協力する知り合いもいませんし、こちらは関係ありませんわね。えーと?
何度かライブの様にプレゼントマイクは、受験生の方へとコールアンドレスポンスを投げかけていたが、一度もレスポンスが返ってくることはなく「ㇱヴィー」と無駄によい声で肩を竦めていた。
「演習場には仮想
分かりやすく試験の形式を配布資料と視覚資料を用いてプレゼンテーションを行っているプレゼントマイクの説明を聞きながら、レイは思案を続けていた。
一心不乱に人を書き続ける
レイは
(採点方式はさすがに不明ですけど、アンチヒーローな行為、とわざわざ釘をさすあたりしっかりと録画などで後ほど確認をされるのでしょうね。それに天下の雄英高校、名のあるヒーローを多く輩出するこの学校がたかだか仮想
そうこう考えていると、低く、ピンと伸びた声からして生真面目そうな男子の受験生が手を挙げて、プレゼントマイクへと試験の質問……いや慨嘆? ともかく、その男子生徒もレイと同じくまだ説明のされていない、0P仮想
そのついでに、鳥の巣のような唯一ブツブツ、いやボソボソとプレゼントマイクの登場に盛り上がっていた少年に対しても苦言を呈していた。
もっとも、この期に及んでも
クスクス、と物味遊山だと指摘された少年に対して、軽視や侮辱とような嘲笑が会場に響くが、すぐにそれを声と話術で沈めてしまったプレゼントマイクは流石と言えるだろう。
そしてそのまま、質問された0P仮想
「4種目の
(なるほど。ほぼ確実にこの試験は明言されている仮想
〝ひゃぁ……なんか凄そうな仮想
真面目に考えていたレイの思考にいきなり、おどけた気の抜ける声が割り込んでくる。
さっきまではあんなにオドオドと表情も百面相して愉快なことになっていた
〝ふふっ。正気に戻った一言目が他所様の懐事情への指摘でいいんですの? ある意味、次期財閥の当主としては……ふふ……ふ、相応しいかもしれませんけど〟
〝わ、笑わないでよレイちゃん!〟
〝ごめんなさい。でも〟
そこまで言うと、レイは肩から腕を回して、
精神体でそういう風に見えている、というだけにも関わらず
〝――いい顔になりましたわ。それでこそワタクシの
〝……いつもありがとうございます。レイちゃん〟
〝今更ですわね。でも、ワタクシは貴女の〝個性〟ですから、仕方なく助けて差し上げますわ〟
「さらに向こうへ。Plus Ultra!!――それでは皆、よい受難を」
―――― ^P^) _旦~~――――
とても広い雄英高校の移動は学内でもバスを利用する。
ちなみに、学校関係者には専用の地図アプリがあり、生徒たちはそのアプリを使用して学校での教室移動を行っているそうだ。
受験という事で、張り詰めた、ある意味ではとても良い緊張感のある空気の中で
しかし、あくまでもレイは〝個性〟であるため、普段は
そういった〝個性〟の妙ゆえに、
部屋には紅茶の良い匂いが充満しており、見慣れた人物はいつ
ワインレッド、というよりも少し黄色などの明るい色が入った様な臙脂色、と例えられるものに近い色のドレスに金髪をロールさせ、その
小さな子どもの持つ人形というには、あまりにもその人物が発する雰囲気は妖艶であり、それは少女の持つあどけなさと、大人の女のもつ艶やかさの狭間にあるひと時の幻想のような玉体だった。
そんな稀代の天才彫刻家の彫り上げた美、という概念の表出のような圧倒的な華が、優雅に紅茶をキメめていた。
〝来ましたわね。とりあえず座りなさい。百がお勧めしていた紅茶を淹れてさしあげますわ。ワタクシたちの好みとは少し異なりますが、たまにはいいでしょう〟
〝八百万さん、だとハロッズかウェッジウッド? 確か前に家で贔屓にしてるって聞いたような〟
〝えぇ。今回はハロッズのイングリッシュブレックファーストですわ〟
〝意外とレイちゃんハマりましたよね。ファインストロベリーとか、可愛らしい所ありますよね〟
〝ふふ。どうやら今日の試験は
〝ごめんなさい〟
フカフカの絨毯にアルマジロのような綺麗に折りたたまれた土下座を
フンッと鼻を鳴らしてから、首をクイッと促すレイの所作からお許しが出たことを把握して、いそいそとカウチソファに
そして、いつの間にか
〝あ、蜂蜜入りのミルクティーだ……美味しい。ありがとうレイちゃん〟
〝どういたしまして。さて、時間も迫ってますし、そろそろ真面目に話をしますわよ〟
そう言い、姿勢を正した
――――――――
試験会場に着いたようで、止まったバスから降りるように促されて、受験生たちは移動を開始した。
あえて最後尾の窓際に座っていた
「はぁ……本当にもう……。別に構わないのですけど、戦闘になればワタクシが外に出るのは決めてましたけど、試験開始前からワタクシが出る意味はありまして?」
〝あるよ! か、顔を見られるの恥ずかしいじゃん……〟
「はぁ……」
バスから出てきたのは、体の線を隠すようなジャージらしいジャージを着用し、艶はありながら、わざわざ整えた様子のない綺麗な黒髪に何故か目や表情が見えにくい昔の漫画にあるような瓶底メガネをしていた女子、ではなかった。
出てきたのは、惜しげもなくその玉体の線を出し、自らの強みを正しく理解し、利用する太陽のように輝く美しい女性であった。
じっと黙って腕を組みながら思案顔の傾国の美女を周囲の同じ会場の受験者は恐る恐る、怖いもの見たさのようにチラチラと覗き見ては、ヒソヒソと話あっていた。
もっとも、突如影も形もなかった絶世の美女、更には金髪の縦ロールに臙脂色のドレスというこれでもか、という理解のしやすいキャラ性にあんぐりともしていた。
〝今回の試験が機械相手なのは楽ですわね。力加減をしなくてもいいのですから〟
〝確かに……。レイちゃんの筋力だと当たりどころが悪かったら人相手は赤い霧になっちゃうもんね〟
〝筋力とは聞き捨てなりませんわね……。悪役令嬢力ですわよ〟
〝……はい? なんそれ??〟
〝知りませんわ。でもできるものはできる。〝個性〟なんて現代でも意味も原理も不明なモノばかりですわ。個性に理由を求めてもそれは無意味で不作法ですわよ。考えるのではなく、感じる。そういうの得意でしょ?〟
〝知りません、てふふ……あははッそれはズルいよレイちゃん〟
〝ふふ……。さて、そろそろ時間ですわね。いつも通り。ワタクシたちはただいつも通りあるがままにあればいいのです。貴女は貴女のしたいように。この程度の壁、受難はワタクシが踏み潰してさしあげます。何せ――〟
〝ワタクシこそが悪役令嬢ですから! でしょ?〟
〝えぇ!〟
花開くという言葉が似合う、しかし強者の笑みを浮かべて、
なぜなら、彼女たちは困難も災難もあらゆるものを踏み砕き、足蹴にただ歩み続けた先の頂で微笑む存在――――そう、なぜなら彼女たちは悪役令嬢だからである。
「はいスタート!」
そうよく届くプレゼントマイクの声が届いた瞬間、
もちろん、ハイヒールである。
「さぁ! 雄英高校!
市街地演習場の高い壁も幸先が良いとばかりに無視して、跳び越え
「
〝個性〟の扱い、出力の高いレイを前面に、情報処理や業の巧い
レイが〝個性〟を最大限に使用し、獲得、感知した音や匂いなどの些細な情報を全て
「控えなさい。三下の強制された悪役風情が!」
レイは獰猛でいて冷たい笑みを浮かべながら、扇子をたたみ、下から上へと振り上げる。
柔らかな動作であったにも関わらず、彼女が扇子を一閃すると、大気が震え突風が巻き起こる。
眼前の仮想
そして、地面へと落下し、叩きつけられただの鉄屑と化してしまった。
〝移動します。先ほどの集計を忘れないように〟
〝分かってるよ。現在の撃破ポイントは34ポイントだよ〟
開始1分、初動で即座に移動し、仮想
「残り6分!」
演習場の各地に設置されているスピーカーからは試験官であるプレゼントマイクの声が聞こえてきて、試験の残り時間を逐一と報告していた。
〝想定よりも仮想
〝多分、音とかに反応するセンサーで仮想
〝くッワタクシたちの有能さが裏目に出てしまいましたわね。仕方ありません。一度上昇しますわよ〟
そう決めると、また地面を踏みしめ、少し陥没させ、高く跳ぶと、今度はビルの側面へと近づき、ハイヒールのヒール部分、トップリフトをめり込ませる。
ヒールをハーケンの様にビルの側面へと穿ち、さらにそこから力を込めて跳躍する。
それを3度ほど繰り返し、ビルを超えて上空へと跳び出る。
そのままレイは、手を広げ体をくるりと回転させ、地表の方を向く。
そして、仮想
「フンッ!」
扇子を再び広げ、薙ぐことで生じた風圧を利用して、空中での機動力を確保し、仮想
流星の様に跳びこんで、そのまま仮想
「おいッ! そこのパツ金ロール!! テメェなんだ! 割り込んで来やがって」
どうやら、先ほどチラッと視界に映り確認した爆発系統の派手な個性でタフネスに暴れまわっていた受験生も、この仮想
しかし、空中からかっ飛んできたレイたちの視界には狙っている姿は映っていなかった。
「? ああ、そんな所にいましたの? それは大変申し訳ございませんわ。存在感があまりにも矮小すぎて眼中にありませんでした」
〝な、ななな! こんな凶悪そうなヤンチーになんてこと言うの!? 髪型でしょ! その髪型気に入ってるからちょっとムッとしたでしょ!〟
〝そんなことはないこともないですわ。でも、
レイと前衛的な爆発した髪型の少年はレスバをしながらも、両者は淡々と周囲にいた仮想
お互いの動線には入ることなく、共にやりやすく、巧い、と思わされ、はたからみると互いに背中を預け合いながら共闘しているように見えた。
もっとも、実際には動線に入らず、どちらかがミスをしたとたんに打ちもらした仮想
「一時の共闘感謝いたしますわ。前衛芸術的な頭髪の殿方。それではワタクシはこれで」
手に持っていた扇子を一度消し、左の手でドレスをつまみ、右の手を胸の方へと折る美しい所作のカーテシーをぶつけ、足早にその少年の前からレイはまた跳び去っていく。
ボムボム、という音と先ほどの少年が何やら叫んでいる声が聞こえた気がしたが、レイは気にもとめず、
〝今の得点は?〟
〝48ポイント! やっぱりさっきのヤンチーさんの方に向かってる仮想
〝まずまず、といった所でしょうが、合格するだけでしたらペースを落としても問題ないでしょう……ですが!! ワタクシたちが目指すのは主席合格! 完膚なきまでの絶対的な勝利だけですわ! あまり長時間〝個性〟を使う経験はなかったので、少し大変ですが着いてこれますね
〝うん!〟
〝よろしい!!〟
そう意気込み、索敵した仮想
一瞬地震か、とも思ったが悲鳴と破壊音が聞こえてきて、直ぐにソレの姿も視認できるようになり、違うという事が分かった。
「!ッ お邪魔虫の0P仮想
〝!? お邪魔虫の0P仮想
幸い、ビルの屋上から索敵をしていた最中であったため、超大型の0P仮想
〝大通りに出現しましたね……アレを意識しながら、となると少々面倒ですし、当初の予定通り迂回で異論ありませんわね〟
〝え、……あ……う、うん〟
突如、受験生がまとまっていた場所に出現したため、その周囲は混乱に満ちていた。
〝個性〟で避難等を行おうとして、それぞれが行動することでかえってお互いの足を引っ張り合い、二次災害のようなものまで起きそうな程になっていた。
「試験終了まで残り1分!」
「!ッ 時間が迫ってますわね…行きますわよ
大型の仮想
良く見える悪役令嬢の目には、その瓦礫に服やら足が挟まれてしまい、0P
「!!ッ」
〝
思わず、
しかし、その姿は戦場を舞う戦姫というような出で立ちではなく、他の受験生と似たり寄ったりの動きやすい服装になっていた。
(下手な攻撃で変な方向に倒れたら、周囲の人が本当に潰されちゃう! 皆正面の方に逃げてるから、正面から殴り飛ばして、後ろに倒れさせるのがベストでマストッ!)
「ぷ、プルスウルトラッ!」
弾丸のように宙を跳び、圧倒的なスピードで超巨大な仮想
そして、そのまま移動の運動エネルギーを
しかし、大型の仮想
「あぁッ!!!」
先ほどの蹴りでめり込ませた足を起点に、もう片方の足もその仮想
そしてお腹に力を込めて、背中、肩、肘と意識をしながら仮想
その衝撃でバランスを崩し、仮想
「!ッ……やっぱり私じゃ出力が足りない」
〝何をしてますの! 後30秒ですわよ! 変わりなさいワタクシであれば付近の仮想
「でも!!」
動けなくなった人たちの前で、0P
その足も顔もお世辞にも優雅とは言えない様相で、プルプルと震え、折角の顔も元々もメガネで見えなくなっているとはいえ、涙を溜めひどいありさまだった。
しかし、その心は正に困難を前に本来の姿を曝け出していた。
「でも……違うよ。違うよ! 私が子どもの頃に憧れた
〝ッ!? 言ってくれますわね。……変わりなさい
「レイちゃん!!」
「変わりなさい。……全くこんな三下に手こずるなんて、ダメなヒーローですこと」
〝レイちゃん!!〟
「えぇ。しかし、ワタクシもまたダメなヒーローでしたわ。えぇ。では、悪役令嬢らしく、ワタクシが一つ
一つ足を踏みならすと、
バッと手を振り払って、〝個性〟によって悪役令嬢ぽい扇子を出現させ、一度口元に持って来て、広げてから、声高らかに同じ声でありながら、印象が真逆な絶対的な自信を持った声が轟く。
「このワタクシに感謝することですわね! 力のない民を護るのもまた貴族の務め。逆賊には死を! ワタクシの前に膝を折り、頭を垂れなさい!」
レイは艶やかな笑みを浮かべ、まるで舞踏会の一幕のように優雅に回転した。
しかし、その動きには一瞬の隙もなく、彼女の背後からは圧倒的な力を感じるほどだった。
レイが扇子を逆袈裟斬りのように扇子を下から上へと振り上げる。
次の瞬間、鋭い黒板を引っ掻くような風切り音が轟音と共に響き渡った。
周囲の人があまりの風圧に目を瞑ってしまい、再び瞼を開くと仮想
「試験! しゅう~りょお!」
後にはただ、ところどころ泥や汗などの汚れがついていながらも、圧倒的な美がそこにはあった。
人々を救う。実に英雄じみた行いであった。
しかし、最後まで己を貫き、あるがままに振舞った彼女たちの名は「悪役令嬢」である。