BLEACHによって変質した『死神』の個性   作:らいこう

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プロローグ

 

 俺の自意識が明確に目覚めたのは、4歳頃だったと思う。

 それまでは記憶を受け継いで生まれ変わったことと、周囲がぼんやりとしか認識できなかった

 

 だが、漠然といわゆる転生を経験したのだということは自覚していた。

 

 ここはどこなのか、自分の容姿、性別、名前は自意識が目覚めるまで酷く曖昧だった。

 

「素晴らしい! 成功だ! 成功したんだ!」

 

 初めて明確に聞き取れのは、耳障りな騒ぎ声だった。

 粗末なベッドの上で周囲を見回し、部屋の中に3人の人間がいるのが分かった。

 後に分かったのだが、部屋にいた3人は両親と両親の所属していたカルト教団の教祖だったようだ。

 

「死の気配と神性を感じる! 死と神性! これの個性は死神だ!」

 

 祭服を着たおっさんの甲高い声が、酷く耳障りだ。

 だが、このおっさんの言葉によって幾らか分かったことがある。

 

 自分が生まれ変わっていたことは、既に理解していたことだ。

 だが、生まれ変わった世界がまさか創作物の世界だとは思いもしなかった。

 

 自分の個性を理解したからだろうか。

 海の底から陸へ上がったかのように、朧気だった意識が浮上する。

 

「神だぁ! ついに神を創り上げたのだぁ!」

 

 狂ったかのような甲高い声が、部屋に響く。

 いや、狂っているのだろう。声を聞いている限り嫌な推測が頭に浮かぶ。

 もしかすると、俺の生まれは最悪かもしれない。

 

 そんな思いを抱いていた時だ。

 俺のいた部屋のドアが蹴破られた。

 

「動くな! 指定ヴィラン団体、神性教団の者だな。身柄を拘束させてもらう!」

 

 ヒーローだ。

 救世主という意味では無い。いや、俺の状況からすると救世主に値するのだが、職業の話だ。

 個性という異能力を用いて、ヴィランという犯罪者を捕える警察的存在。

 

 それがヒーロー。

 この創作物、「僕のヒーローアカデミア」の世界において、もっとも人気のある職業だ。

 

 ※ ※ ※

 

 その後の話をしよう。

 あの後、あの場にいた3人は捕らえられた。

 更には、危険ヴィラン団体である神性教団の面々は続々と逮捕された。

 しかし、後のニュースによってあの場の3人。

 両親と教祖だけは輸送中に脱走を図り、逃げおおせたらしい。

 

 そして、現在俺が15際になった今もまだ、捕らえられたというニュースは流れていない。

 ヒーローに保護された俺はというと、孤児院に預けられ、大きな怪我もなくすくすくと成長出来ている。

 

 そして、現在はとある有名高校の受験を控えていた。

 

「君臨者よ、血肉の仮面・万象・羽搏(はばた)き・ヒトの名を冠す者よ。焦熱と争乱、海隔て逆巻き南へと歩を進めよ。破道の三十一・赤火砲(しゃっかほう)!」

 

 構えられた右手に霊子が集い、赤く光る。

 

 だが、次の瞬間。

 ドガァン! と赤の光は制御を失い爆発した。

 

「うわっ! くっ、また失敗か……!」

 

 爆破の衝撃で身体が飛ばされ、ゴロゴロと後ろへ転がる。

 これがここ最近、よくある光景だ。

 

 偉大なヒーローへの登竜門であると言われる、雄英高校ヒーロー科。

 それが俺が目指している高校。

 既に新年を迎えて冬休みも過ぎ去り、1月後半。

 高校への受験が迫る時期。

 

 最後の詰め込みとばかりに俺は、人気の少ない早朝に高架下の川辺で個性の訓練をしていた。

 

「やっぱり、三十番台からは霊力の操作が厳しいな」

 

 立ち上がると、服を軽く叩いて汚れを落とす。

 俺の個性『死神』は、本来ならばこのような能力を使える個性では無い。

 

 死神と言われて普通は何を想像するだろうか。

 一般的な想像では骸骨に黒ローブ、大鎌で死に誘う存在。

 というのが多くの人が想像する死神だろう。

 

 簡単に人の命を奪える、ヴィラン適正の高そうな個性。

 それが本来の『死神』という個性のはずだ。

 

 というか、実際に病院で診断された時、個性名と実際の個性の差に驚かれた。

 それなりに名の知れたヴィランということで判明していた両親の個性と、神性教団の捜査から俺の個性が『死神』と言えるものであることは間違いないらしい。

 

 しかし、俺の個性『死神』は一般的な想像にある、死神関連の能力は使えなかった。

 俺の推測でしかないが、俺の特異性により『死神』という個性のあり方が変化がしたのだと思う。

 

 そう、『僕のヒーローアカデミア』とはまた別の創作物。

 同じ漫画雑誌で掲載されていた『BLEACH』という作品に登場する死神。

 俺の個性は、それを基準にしたものに変化していた。

 

 まぁ、個性の変化など正直どうでもいい。

 名前に対して実際の能力が一般認識とは異なっているだけだ。

 重要なのは現在の個性の成長について。

 個性の生まれや変化など興味無い。

 

 現状、俺の個性が行えるのは三十番台までの破道(はどう)

 二十番台までの縛道(ばくどう)

 これらは、いくつかオリジナル鬼道を作り出せた。

 

 そして、不完全な斬魄刀(ざんぱくとう)の始解。

 それが俺の個性の現状だ。

 受験までに残されているのは1ヶ月ほど。

 正直、破道の三十一番を使えるまで成長するとは思えない。

 

 これまでの経験則だ。

 鬼道を扱ってきて、十番と十一番では習得難易度に大きな差がある。

 1度でも成功すれば一気に感覚が掴めるのだが、それまでが酷く難しい。

 

「はぁ……」

 

 疲労を吐き出し、周囲を見回す。

 人はいなさそうだ。問題ない。

 こうして、人目を気にしないといけないのが面倒だ。

 

 しかし、個性の無断使用はルール違反な事柄だ。

 バレれば場合によっては警察に注意を受ける羽目になる。

 私有地なら規制は緩いが、そもそもここは私有地じゃない。

 それに俺の境遇的に警察の厄介になるわけには行かない。

 また(・・)、迷惑な噂が流れでもしたら非常に迷惑だ。

 

 それに、こうしたプライベートな時間で周囲に人がいては困る。

 他者がいると気遣う必要が出てくるし、素を隠す必要が出てくる。

 色々な要因が重なり、時折こうして周囲に注意を払うようにする癖がついた。

 

「はぁ……クソッ。息苦しいものだ」

 

 思わず、またため息が零れた。

 

 結局、残り1ヶ月で行えるのは既に覚えている鬼道の熟練度上げになるだろう。

 それと恐らく無理だろうが、新しくオリジナルの鬼道も作り出せれば万々歳。

 

 斬魄刀に関しては現状から鑑みて、成長は望めないだろう。

 こいつを完全に解放してやれない理由は、薄々理解している。

 故に、試験までにモノにするのは不可能だと断言できる。

 だが、試験中になら呼びかけに応えてくれる可能性がある。

 

 だからといって、鍛錬中に解号を唱えない訳では無い。

 個性訓練の締めにはいつも斬魄刀の始解を試みている。

 

「はぁ……ふぅ……」

 

 深呼吸を行い、右手を前につきだす。

 自然体で前に突き出した手を開くと解号を口にした。

 

(つな)げ『星鎖(せいさ)』!」

 

 右手から放たれた光が細長く変形していく。

 そして、光は杖の形を象るが数瞬後、光は発散して消えていった。

 

「クソッ、今日はダメか……」

 

 壁に背をあずけ、息を吐いた。

 白い吐息が宙に消えていく。

 太陽が完全姿を現し、もう帰る時間だと思い浮かんだ。

 

「そろそろ帰るか」

 

 持ってきたものは何もない。身一つで高架下の川辺まで来ている。

 だから、このまま帰るだけだ。

 軽いジョギングをしながら帰路に着く。

 

 20分ほどで、孤児院に到着した。

 玄関のドアを開けて、中に入ると声が掛けられた。

 

「あら、おかえり神斗(しんと)

 

「ただいま戻りました、美羽(みわ)さん」

 

 声をかけてきたのは、この孤児院の副院長先生だった。

 妙齢の女性で、現役ヒーローとして活動している。

 ヒーローと孤児院の副院長の二足のわらじを履いており、万人か善人と思える人だ。

 

 だから俺も、尊敬していると見える様に振舞っている。

 

「今日も個性の練習?」

 

「ええ、受験まであまり時間も残されていませんからね」

 

「いつも早起きして、頑張り屋さんね。無理はしないように気をつけてね」

 

「美羽さんも、たまの休日くらいはちゃんと休んでくださいね。ヒーローと孤児院経営の二足のわらじは、普通のヒーローよりも疲れるでしょうから」

 

「ちゃんと休めているわ。それに子供たちから元気を貰ってるから毎日元気一杯なのよ」

 

 美羽さんは、二の腕の力こぶを見えるように腕を上げる。

 

「心配してくれてありがとうね」

 

 彼女は微笑みながらそう言葉を返した。

 その後、一言二言会話を交わしてから美羽さんと別れ、自室に戻ると、早々に学校の支度を済ませた。

 

 そして、起きてきた子供たちの世話をして、朝食の準備を行う。

 

「他の子たちを起こしてあげてくれないか? その間に朝食の用意もできるだろうから」

 

「うん、分かった!」

 

「頼んだよ」

 

 ご飯も食べ終わると、登校時間がやってくる。

 これが平日の日常風景だ。

 

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

 

「行ってきます」

 

 カバンを背負い、玄関まで来ると送り迎えに来ていた美羽さんに言葉を返す。

 

 この変わり映えしない陳腐な日常も、もうすぐ終わりを迎えられる。

 高校からは家を借りて一人暮らしをする予定なのだ。

 

 高校からは心機一転、知り合いの居ない学校で少しは気楽に生きられるだろう。

 願わくば、今よりも息のしやすい高校生活を遅れるようにと思う。

 これは転生を経験した俺が、ヴィランの子として生まれ、ヒーローになるまでの物語だ。

 

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