BLEACHによって変質した『死神』の個性   作:らいこう

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第1話 入学試験

 

 2月26日。

 ついにやってきた、雄英高校の入学試験開始日。

 この日のために、今日は早朝の訓練を行わず調子を整えてきた。

 早めに電車に乗り、遅れることなく無事に雄英高校に到着した。

 

 偏差値79だとか、全国同科中最難関などと言われているが、結局のところ不安などない。

 偉大なヒーローの登竜門だとかも正直どうでもいい。

 さっさと入試実技演習が始まれば良いんだが、まずは説明会場に赴かなくてはならない。めんどくさい。

 

 俺は強くなるためにここに来た。

 優秀なヒーローが教職をしているから、有益な指導を受けられると考え、雄英を選んだに過ぎない。

 最難関だと理解して受験に来たのだから、既に準備は整っているに決まっているだろう。

 

 一応その他にも打算は存在する。

 雄英に受かれば、もしも俺の過去が知れ渡っても環境への悪影響は少なくなるだろう。

 

 小学生の頃に周囲の評判や噂を気にせず生活を送っていた時があった。

 ただ、他の人と合わせるために一応学校へ通い、帰宅次第鍛錬をしていた時期だ。

 その結果、親がヴィランであることから根も葉もない噂が広がり、いじめ問題や教師からの呼び出しなど面倒に発展した。

 更にそこから私生活にも悪影響を及ぼし、鍛錬の余裕が無くなるなど時間を無駄にする羽目になった。

 

 だからこそ面倒な事この上ないが、俺は雄英高校を選ぶに至った。

 俺は一般的な境遇ではないから、非常に面倒ではあるが評判のよくなる行動を心がけなくてはならない。 

 そうしなければ、巡り巡って俺の鍛錬の時間を確保できなくなる。

 

 非常に面倒だ。

 まるで、生まれながら不自由に縛られているように思える。

 

「だからかねぇ……いや、違うか」

 

 斬魄刀を思い浮かべると、誰に伝えるわけでもなくつぶやいた。

 言葉は白い吐息と共に宙へ消えていく。

 

 ※ ※ ※

 

 場所は変わって現在は、入試実技演習の会場だ。

 ここに来る前に、雄英の講堂で試験の説明が行われた。

 そこでは、ただプレゼントマイクがうるさかったという感想しか残らなかったが、試験の概要は理解したので問題ない。

 

 やることは0~3ポイントの仮想ヴィランであるロボットを倒すだけ。

 アンチヒーローな行動はご法度というシンプルな内容だ。

 あと、お邪魔キャラという0ポイントの仮想ヴィランも現れるらしい。

 

 倒せないことはないが、倒しても意味がないというお邪魔なギミック。

 ということはあまり倒される想定はしていないのか。

 面白そうだ。なんとも面白い。さぞかし強いのだろう。

 

 ――戦ってみたい。

 

 俺は自分の思考に気づくと、とっさに口元を右手で覆った。

 自然と口角がつり上がっていたのを隠す。

 そして、不自然にならない程度で周囲を伺う。

 

 周囲の受験生はこちらを見ておらず、これから始まる実技入試に向けて集中、または緊張している様子。

 ほとんどの受験生が善人のよう。ヒーローを夢見る人間か記念受験ばかりと見える。

 

 落ち着きを取り戻すと、口を覆っていた手を離す。

 

「はぁ……」

 

 今のうちに試験の流れを考えておこう。

 点数だが、周囲の様子を見ながら合格ラインの点数を取ればいいだろう。

 あとは適当に人助けでもしていよう。

 というよりも、俺的にはこの人助けが重要だろう。

 

 そうすれば学校での評判を高められる。

 ここで落ちた受験生でも、普通科には入れるだろうし恩を売って損はない。

 ならば、助けてくれた人という印象を植え付けておくのは将来のためになる。

 こんな流れで試験に挑むとしよう。

 

「まだか」

 

 まだ試験は始まらない。

 ひとまず時間つぶしとして、会場を観察することにした。

 実技演習に使う会場は市街地を模している。

 

 市街地を模した会場を作って、それを試験会場に使うとは。

 規模も会場もでかい。これが試験会場だとは正直驚きだ。さすが雄英というべきか。

 

 作られた町ということで、空座町のレプリカが想起される。

 ちょっとテンション上がってきたな。

 そんなことを考えていると、突如として大声量が響き渡った。

 

「ハイ、スタートー!」

 

 プレゼント・マイクの声。ということは。

 

「どうしたぁ!? 実践じゃカウントなんざねえんだよ!! 走れ走れぇ!! 賽は投げられてんぞ!?」

 

 その声に呼応して身体が反射的に動き始める。

 

 ――実技試験が始まった。

 

 周囲の受験生も一斉に走り出す。

 

「……っと」

 

 思わずとっさに走り出してしまったが、速度を緩めて他の受験生と合わせた。

 合格するのが目的だが、別に入試1位である必要はないんだ。

 

 これからすることは優秀な受験生を探して、その受験生よりも高い点数を取ること。

 そして、困っている受験生を助けて恩と顔を売ること。

 だから、急ぐ必要はない。

 

 気持ちを落ち着かせると、

 周りの受験生達からあまり距離を取らずに、市街地を走っていると脇道から緑色を基調としたロボットが姿を現した。

 

「標的捕捉! 標的捕捉!」

 

 大きさは、ざっと3~4メートルほど。

 移動は一輪タイヤで、腕には盾とガトリングガンのような物が装備されてる。

 

「こいつが1ポイントヴィランか」

 

 仮想ヴィランは建物にぶつかって勢いを無理やり消すと、タイヤをキュルキュルと回転させ方向転換を行う。

 そして、勢いよくこちらへ突っ込んできた。

 それに対して、こちらは左の人差し指を向ける。

 

「まずは、様子見からか。破道の一・(しょう)

 

 指先から小さな衝撃が飛ぶ。

 放たれた衝撃は真っ直ぐ1Pヴィランの胴体へ直撃した。

 ドンッ! という衝撃音が鳴り、仮想ヴィランの胴部が凹む。

 しかし、威力が足りない。

 

 出来たのは、一時的に1Pヴィランの直進を止めたのみ。

 

「衝で凹むか、随分脆いな。ならば……」

 

 続けて右手をヴィランにかざす。

 

「燃え盛る牙、消える灯籠。赤き雫は空を貫く。破道の二・炎閃(えんせん)

 

 かざした右手から扇状の炎が放たれる。

 

 ――BOOM!

 

 動力部がありそうな胴体部へ炎が直撃した。

 仮想ヴィランは爆発を伴って、中程からバラバラに飛び散る。

 

「やっぱり脆い。作業だな、これは」

 

 仮想ヴィランが爆発したことで土煙が舞い、視界を邪魔している。

 自然と顔がわずかに歪んだ。

 周りの目があることを思い出し、息を吐いて表情を繕うと口を開いた。

 

「破道の七・風走(ふうそう)

 

 俺を中心として風が起こる。

 それに伴い、地面には無数の斬撃が刻まれた。

 

「少し強すぎたか。まあ、人的被害はないから問題ないだろう」

 

 少し離れたところに人はいるが、幸い影響が及ぶ範囲には居なかった。

 一応、範囲を絞ったのが良かったのかもしれない。

 

「さて、次だ」

 

 試験会場を進むと、ふと目を向けた先に2Pのヴィランが視界に入った。

 四足歩行をしたロボットで、首や尻尾がヘビのように細長い。

 

「標的確認!」

 

 こちらを視認した2Pヴィランが、重い音を鳴らしながら迫ってくる。

 四足歩行のため、硬質な足が地面をたたきながら移動する音が耳障りだ。

 思ったより遅いその標的へ、泰然と指を向ける。

 

「破道の四・白雷(びゃくらい)

 

 こちらに迫るヴィランを指先から放たれた雷が貫いた。

 雷が通り抜けたロボの胴体には風穴が空いており、続けて慣性の法則により床を滑りながら倒れ伏す。

 機能が停止したようだ。

 

「後ろにもいたのか。二枚抜きとは運が良い」

 

 脇道から合流したのか1Pのヴィランも同時に撃破できた。

 これで5ポイント。開始からまだ1分ほどだ。

 もう少し急いだほうが良いだろうかと、周囲の受験生を観察する。

 

 何人か確認して、特に活躍している受験生を絞り込む。

 

 まず1人目、髪が茨の女。茨の髪を操る個性だろう。

 攻撃に防御、妨害も救助も出来る汎用性の高い個性だ。

 仮想ヴィランの撃破と拘束。広範囲に及ぶその効果範囲はシンプルに強い。

 

 2人目は全身を鋼で覆っている男。

 殴る蹴るのみのスタンダードな戦闘方法だ。

 個性が分かりやすいので、安定して仮想ヴィランと戦えている。

 

 そして3人目は尻尾が生えただけの男。

 先程と同じく殴る蹴る、投げる、尻尾と普通だ。

 お人好しなのか、周りの手助けも行っている。

 だが、戦い慣れている印象だ。

 

 最後に4人目。肘からテープを出している男。

 ヴィランを拘束して無力化している。

 一応、テープで引っ張って物とぶつけ合うことで撃破もしているが、攻撃力不足は否めない。

 

 これらの4人の受験生を基準に、ポイントを稼いでいけばいいだろう。

 パッと見で優秀そうな受験生達だ。個性を使い慣れている。

 

「少しだけ急いだほうが良いか」

 

 彼ら彼女らを見て、ポイントを稼ぐ速度をあげることを決めた。

 左の人差し指を立てると、縛道を詠唱する。

 

「消えた足音、風に舞い、波打つ影が道を描く。沈んだ星が記した(しる)べ、刻まれた傷が軌跡をたどる。縛道の七・千眼(せんがん)

 

 指先に無数の霊子が集う。

 大きな硬貨ほどになった霊子の塊を、上空へ振り放つ。

 打ち上げられた霊子の塊は、少しすると破裂するように拡散した。

 霊子の雨が試験会場に降り注ぐ。

 

「我ながら良い縛道を作れたものだ。さて、あっちの方が痕跡が多い。しかも新しいな」

 

 霊子の雨が降り注いだ場所に、仮想ヴィラン達の行動跡が映し出される。

 

 霊子が示す情報に従い、足を動かした。

 建物の間、路地裏を通って最短で目標地点まで移動する。

 

「もうすぐだな」

 

 数十秒ほど走ると数体の仮想ヴィランと遭遇出来た。

 

「おお、いたいた」

 

「標的捕捉! ブッ殺ス!」

 

 1Pヴィランはタイヤの回転速度を上げ始める。

 2Pヴィランは四足を忙しなく動かし、3Pヴィランはポッドからミサイルが発射準備を整える。

 

「数が多くて助かるよ。少し派手にやろうか」

 

 仮想ヴィラン達に右手をかざし、破道を詠唱する。

 

「荒れ狂う風、遠ざかる星、凍える刃は焔を灯す、小さき命よ巨躯を砕け! 破道の五・烈弾(れつだん)!」

 

 ドドドドッ! とエネルギー弾が連続的に放たれる。

 1発1発の威力は大したことない。

 だが、この破道の利点は連射性能の高さだ。

 

「標的……ジジッ! ホソ……ザザッ……ク!」

 

 こちらに迫ってくるロボ達が逆に押し込まれていく。

 そして、3Pヴィランの放ったミサイルは全弾撃ち落とす。

 だが、ある程度硬さがあると決定打にかけるらしい。

 

 本体を中々、行動不能に追い込めない。

 お陰で20秒も打ち続ける羽目になった。

 ロボットは脆い関節部分に当たってバラバラに、装甲はボコボコになっている。

 

「ま、これで18ポイントだ。いいね、密集地を狙っていこう」

 

 ※ ※ ※

 

「縛道の六・地縛(ちばく)

 

 地面から根のような石のツタが生え、仮想ヴィラン達を拘束していく。

 

岩壁(がんぺき)の咆哮、大地の胎動。裂けよ、山嵐(さんらん)。深く根ざせ。破道の六・地槌(ちづち)

 

 地槌は霊子を地面に流して簡単な操作ができる、六つ目の破道だ。

 操作するといっても、シンプルなことしか出来ない。

 地面を盛り上げて壁のようにしたり、柱状にして突き出したりなど。

 

 しかし、地面という質量を持ったものを操れるのは非常に強力だ。

 今も地面からコンクリートの円柱が突き出し、拘束したロボット達を貫いている。

 

 数体は複数の細い円柱で胴体を貫き、もういくつかは太くした円柱で押している。

 実践で使うのは初めてだったので、少し異なる発動を試してみた。

 結果、双方ともに有用性が確認できた。

 だが、細くした円柱のいくつかはロボットの身動きによって折れていた。

 

「今度はもう少し厚くした方がいいな。強度不足だ」

 

 ただ、これで40ポイント。

 怪我をした他の受験者に手を貸したり、緊張気味の人に声をかけたりして善行を積みつつも、いい感じにポイントも集められた。

 残り時間は約3分程度。

 

 後は他の受験生の手助けをメインに据えていいだろう。

 ポイントは適当で問題ない。

 改めて縛道の七・千眼を発動して、目をつけていた受験生の位置を特定。

 近くまで移動して観察する。

 

「これで問題なさそうだな」

 

 ポイント数を口にした所をちょうど目撃できた。

 全身を鋼にする個性の男は、俺と同じポイント数。

 茨の髪の女は俺以下のポイント。

 テープの奴もしっぽの奴も同じくらい。

 

 視線を外して、大通りを移動する。

 

「標的ホソ――」

 

「破道の三・閃爪(せんそう)

 

 別の通りから1Pヴィランが現れたので、一瞥することなく切り裂いた。

 今更あの程度の雑魚に構う必要は無い。

 

 バラバラになった仮想ヴィランを横目に、困っている受験生が居ないか探す。

 

「痛っ……! クソッ、こんな所で……!」

 

 おっと、運がいい。少し先に瓦礫を遮蔽にして座っている男を発見した。

 足を抑えている様子から怪我をしていると分かる。

 そして、周りにはまだ戦っている受験生達もいる。

 これは視線を集めれそうだ。

 

「君、大丈夫かい!? 膝を擦りむいてるね。大丈夫、僕が治すよ」

 

 表情を繕うと、咄嗟に駆け寄って心配している声色を作る。

 

「えっ、はっ? 今は受験中だぞ……!」

 

「それがどうかしたのかい?」

 

「俺らは競い合う敵同士なんだよ!」

 

 目の前の男は激昂して声を荒らげる。

 これは不器用ながら、こちらを心配しているのか?

 手を貸さなくてもいいと。

 

「それが、怪我人を助けない理由になるのかな?」

 

「ッ……!?」

 

 霊子を操り回道を発動させる。

 一応、という副詞が着く程度でしか使えない回道だが、擦り傷を治すくらいは可能だ。

 

「さあ、これで大丈夫だ。まだ、時間はあるよ。立って」

 

 腕を引いて立ち上がらせる。

 

「……ありがとう」

 

 男は顔を少し背けながら、ぶっきらぼうに感謝を述べてきた。

 

「どういたしまして。さぁ、お互い時間一杯頑張ろうか」

 

「ああ!」

 

 さてさて、いい感じに大きな声を上げてくれ助かったよ。

 おかげで視線が集まった。

 注目されている中での人助けは、評判に直結する。

 

 残り時間約2分。

 突如として、それは現れた。

 

 大きな地鳴りと爆音が響き渡る。

 これが例の0ポイントヴィランかと推測しながら、当たりを見回す。

 

 建物を壊しながらついに姿を見せた。

 

「はははっ、デケェな……!」

 

 知らず知らずの内に、俺の口角はつり上がっていた。

 0Pヴィランの巨体は太陽をさえぎり、俺ら受験生を影が覆う。

 

「何メートルあんだよ、あれは……」

 

 思わず苦笑がこぼれる。

 少なくとも周囲の建物群よりデカイのは確か。

 ビルの上から、建物を掴むほどの巨躯を誇っている。

 

「ヤバイヤバイヤバイ!」

 

「これがお邪魔ギミックか!?」

 

「こいつはどうしようもねぇ!」

 

 次々と周囲の受験生が慌てながら逃げて行く。

 俺も0Pヴィランを視界に収めながらも、他の受験生と同じく距離を取る。

 次の瞬間、0Pヴィランが拳を振り上げた。

 

「くっ! 破道の七・風走(ふうそう)!」

 

 咄嗟に周囲を風で覆った。

 巨腕が振り下ろされたのは、誰もいない地面。

 明らかに威圧目的だろう。

 

 周囲の建物を破壊しながら巨腕は、地面に叩きつけられる。

 轟音が響き、土煙が吹き荒れた。

 

「なんだよアレ!?」

 

「おい、どけよ!」

 

「逃げろ! 逃げろ!」

 

 逃げ惑う受験生の喧騒とは裏腹に、俺は気持ちが昂っていた。

 

「ふぅ……」

 

 呼吸ひとつ吐いて心を落ち着かせる。

 ただ、今はこの気持ちに正直に行動するのみ。

 幸い受験生は逃げたんだ。

 被害を気にする必要は無い。

 

「全力で行く!」

 

 右手を前にかざす。

 そして解号を口にする。

 

(つな)げ『星鎖(せいさ)』」

 

 右手に光が集い、数瞬後、俺の斬魄刀が現れた。

 

「サンドバッグにしてやるよ。デカブツ」

 

 俺の斬魄刀『星鎖(せいさ)』は杖の形をしている。

 大きさは片手で振れるほどで、色は青く夜空の色しており、そこに星の模様。

 そして、その上から杖全体を拘束するように鎖の模様が刻まれている。

 

 つまり、星空を鎖が覆っている見た目だ。

 心做しか、星の数少なく見えるがそういうものだろう。

 

「さぁ、まずはその腕から縛ってやる」

 

 振り下ろされたままの腕を駆け上がる。

 駆け上がりながらも、杖で突きを放った。

 

 ガンッ! とまるで効いていなさそうだが、杖で着いた場所には星の模様が刻まれている。

 

「まだまだ」

 

 駆け上がりつつ何度も突きを放つ。

 

「星が複数刻まれたな」

 

 次の瞬間――

 

 ――ガシャン! と俺の真下で金属質な音がなる。

 

 視線を下げて確認すると、星鎖で刻んだ星の模様同士が線を繋ぐように鎖が現れていた。

 

「オラァ! どんどん行くぞォ!」

 

 0ポイントヴィランの身体をどんどん昇って行く。

 時には霊子を使って巨体を縦横無尽に移動する。

 胴体と腕、更には肩と頭部。左腕と右腕。

 様々な場所に星の模様を刻み、それらは星座を描くように鎖で繋がれていく。

 

「っと、これでいいだろう。さぁ、動けるかデカブツ?」

 

 地面に降り立った時には0Pヴィランの身体には、大量の星の模様が刻まれていた。

 

 ギチッギチッ。と体表が鎖で繋がれ、巨大ロボは身動きが封じられた。

 鎖をちぎる為に体を動かす度に、金属のこすれる音が響く。

 

「更にこいつもくれてやる」

 

「縛道の四・這縄(はいなわ)。縛道の五・鎖星(かせい)。縛道の六・地縛(ちばく)

 

 黄色の縄状の霊子が0Pヴィランに絡みつく。

 更に霊子で出来た鎖が地面から現れ、地面に縛り付け。

 最後に地面から根のような石のツタが生え、雁字搦めに拘束した。

 

「やはり、攻撃力に欠けるな。ここからどう破壊したものか……」

 

 残りはサンドバッグになった巨大ロボを破壊するのみ。

 破道の五・地槌(ちづち)で押しつぶすか、破道の三・閃爪(せんそう)でバラすか。

 単純な攻撃力なら破道の三の方が高いが、範囲が小さい。

 破道の十はどうかと考えるが、あれは奇襲性が高いだけだ。

 どちらも同じ斬撃系だが、攻撃力は破道の三の方が高い。

 

「いっその事、霊圧でゴリ押すか?」

 

 破道の五・地槌(ちづち)に大量に霊力を込めるか、と考えていると。

 

「終了〜!!!!」

 

 プレゼントマイクの大声量が届き、試験の終わりが宣言された。

 

「しまった。終わってしまったか。惜しいことをした」

 

 思わず、ハッとして顔を上げる。

 せっかく自由に個性が使える機会だったのだが、終わりを迎えた。

 最大限楽しもうとあれこれ考えていたのが、仇となってしまうとは。

 

「はぁ……勿体ない」

 

 これ以上は無理だろう。最後に八つ当たりでもと考えたが、やめた方がいい。

 チラホラと受験生達がこちらに向かってきている。

 恐らく、0Pヴィランの様子を見に来たのだろう。

 

「クソッ……」

 

 小さく愚痴を零すと同時に、俺の斬魄刀『星鎖(せいさ)』が独りでに消え去った。

 

「勝手に消えたな。何だ、機嫌でも損ねたか?」

 

 星鎖(せいさ)は戦いの中だけでしか顕現できない。

 今回俺の呼び掛けに答えたのだって、実技試験が戦闘系のものだったからだ。

 だとすると、戦いが終わったから消えたのかもしれないな。

 

「まあいいか」

 

 俺は勝手に納得して、会場の入口へと歩き始めた。

 後は適当に話しかけてきた受験生の相手をしながら帰るか。

 今日はそれなりに楽しかったな。

 良いストレス発散になった。

 

 雄英では戦闘では戦闘の授業とかあるのだろうか。

 だとしたら、今から楽しみだ。




「破道の六・地槌」の詠唱を変更しました。
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