ダンガンロンパ─imitation game─   作:こぴーきゃっと

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Prologue─2

 

 

 入江の背中を追い、丁字路を曲がって講堂へ向かう。

 四つの両開きの扉のうちの一つに手を掛け、入江がギィと扉を開けて中へ入っていった。俺と御庄もその後に続いて講堂の中へ入っていく。

 

「……わ、すご……これ講堂っていうかさ、コンサートホールじゃない?」

 

 中に入ると──御庄が思わず感嘆の声をもらした。いや、俺も正直驚いてしまった。

 整然と並べられた、赤い折り畳み式の椅子。その列は数十列にも及び、恐らく1000人以上が一斉に座ることが出来るくらいの量はあるだろう。

 そして最前列の更に前には立派なステージが堂々と存在しており、その上を天井からボーダーライトが煌々と照らしている。その照らされた舞台の上には──一目見ただけで一癖も二癖もありそうな、個性溢れる男女が十数人立っていた。皆、年齢は俺達と変わらないくらいに見える。恐らく舞台上にいる皆が……俺達と同じ、希望ヶ峰学園の新入生になるはずだった生徒達。超高校級の才能の持ち主だ。

 

「待たせてすまない。もう二人、希望ヶ峰学園の新入生になるはずだった生徒がいたよ」

 

 客席の階段を降りながら、入江が舞台上に大きな声で呼び掛ける。その声に反応して、舞台上の彼等は一斉に俺達の方を注目した。

 

「あら、他にも仲間がいたのね! 心強いわ」

「……ふむ、これで16人か」

「いよいよもって大所帯だな。厄介なことにならなければいいんだが」

「厄介なことって……もう皆記憶ない時点で結構厄介じゃない?」

 

 客席の階段を降り切り、舞台上へ続く木製の移動させられる小さな階段を昇る。これで俺と御庄、入江を合わせて舞台上にいる超高校級の生徒は16人。改めて近くで見ると……なんかオーラがすごいな。同年代のはずなのに、少し緊張してしまう。

 舞台上に上がった俺達に最初に言葉を掛けてくれたのは、今いるメンバーの中では一番背が低く、だが確かな存在感を放つ女の子だった。ショートカットの黒髪に大きな瞳が特徴的で、見ただけで快活そうなイメージを抱かせてくれる。

 

「来てくれてありがとうね。私は木津奈津希(キツナツキ)──後ろから読んでも同じ名前って覚えてね。超高校級の学級委員として、希望ヶ峰学園に入学する予定でした」

 

 すげえ名前だな……いや別に名前だけならおかしくはないんだが、フルネームで見ると回文になっている名前なんて初めて聞いた。

 ここにいるのは皆希望ヶ峰学園に入学する予定だった、と先に入江から聞いていたからそりゃそうなんだが、やっぱり木津も超高校級の才能を持っているらしい。超高校級の学級委員か……今の話し方や声を聞いても、ハッキリと聞こえやすいスピード、大きさで話している辺り、人前に立ってなにか発表すること自体が得意なのかもしれない。

 

「入江さんから聞いたかもしれないけど、ここにいる皆は希望ヶ峰学園に入学するはずだった高校生達で、皆いつの間にかこの妙な学園で眠っていて、その前の記憶が曖昧らしいの。今の状況や私達の境遇を考えると、あなた達もきっと同じ希望ヶ峰学園の新入生で、私達と同じように記憶が無いとは思うんだけど.……」

「……ああ、その通りだ。俺は榊真司。超高校級の才能は──ごめん、それも思い出せない。だけど、希望ヶ峰学園に入学する予定だったのは間違いない」

「ウチは御庄杏奈! 超高校級の幸運って事で、ラッキーで入学させて貰えることになっちゃった。えっと、奈津希の言う通り……なんでここに来たかは覚えてない。それは真司も一緒だよ」

 

 俺と御庄の話を聞いて、木津は少しだけ曇った表情を見せた。周りにいる超高校級の高校生達も、凡そ似たような反応を見せる。

 

「そっか、予想はしてたけど……やっぱり覚えてないよね。進展ナシってことかぁ……いや! でも仲間が二人増えたってことよね! それはとっても心強いわ」

「……悪い、何も覚えてなくて」

 

 皆そうらしいからしょうがないとは言え、やっぱりそう沈んだ顔をされると申し訳ない気持ちにはなってしまう。しかも俺に至ってはどうしてここに来たのかだけではなく、自分の才能まで忘れてしまっているんだ。正直かなり申し訳ないというか……このメンバーの中にいてもいいんだろうか? という気持ちにすらなる。

 

「取り敢えず私達は今どこにいるのか? どうしてここに集まっているのか? 目下知りたいことや調べたいことは沢山あるけれど……幸運なことに、ここには希望ヶ峰学園に入学出来るくらいの才能を持った心強い仲間が沢山いるわ。協力して、謎を解き明かしていきましょ! その為にもまずは……改めて皆で自己紹介をしない? 私と榊君、御庄さんは今したから、改めて他の皆も名前と超高校級の才能を教えてくれないかしら」

 

 超高校級の学級委員である木津がパン、と手を叩きながら場を進行させていく。ナチュラルに場の主導権を握り、そして滞りなく全員を纏めようとしている姿は正に学級委員だ。

 

「じゃあ、私も改めて君達に自己紹介しよう。私の名前は入江七緒。超高校級のオカルトマニアという才能で希望ヶ峰学園への入学が認められている。まあ、よろしく頼むよ」

 

 まず最初に紹介の口火を切ったのは入江だった。彼女は改まって自分の名前、そして自分の才能を明かしてくれた。なるほど、あのミステリアスな雰囲気はオカルトマニアってことか。少し納得だが、超高校級のオカルトマニアって……どういう才能なんだ? 

 

「オカルトマニアだったんだ、確かにちょっと雰囲気あるかも! ……でも、具体的にどういう才能なの?」

 

 御庄も同じ疑問に辿り着いたらしく、入江に直球な質問をぶつける。こういう時にすぐにコミュニケーションとして質問をぶつけられるのは素直にすごいと思う。

 

「大した才能じゃないさ。ただネットに転がっているようなオカルト情報、ネットロア、あとは全国各地で語られているような怪奇現象や幽霊の目撃情報……そういうのに興味があってね。怪奇現象の発生する原因を自分なりに探していたら、その原因を幾つか突き止めてしまったりしてね。いつの間にかそう呼ばれるようになっただけさ」

「怪奇現象が起きる原因を!? えっそれって……呪われない!? 大丈夫!?」

「ああ、問題ない。原因が解明できる怪奇現象やオカルトには──必ず生きた人間が科学的に証明出来る要素が含まれているからね。寧ろ呪われるとしたら、それは未だ根拠が見つからない怪奇現象に出くわした時だろう」

 

 心底楽しそうな表情で入江は笑う。超高校級のオカルトマニア……こいつ自身の方がよっぽどオカルトそのものに見えてしまうな。

 それにしても成程、解明出来るオカルトには必ず人間が科学的に証明出来る要素が含まれている、か……。そりゃ当然といえば当然なのかもしれないが、夢があるんだかないんだかわからない話だな。

 

「あまりこういうことを言うものでは無いとは解っているが……全員がここに来るまでの記憶が無い、という状況とこの不気味な学校のような建物。ククク、オカルトマニアとしては正直楽しんでしまっている自分もいる。まあ何事も起きないことを祈っているよ、よろしく頼む」

 

「ちょっと、キモいし怖いこと言わないでよね……ただでさえ変人だらけっぽくてイヤになってんのに」

 

 入江の少し不謹慎とも言える言葉に堂々と苦言を吐いたのは、茶髪のサイドテールが特徴的な女だった。不機嫌そうな表情に軽く着崩された制服は少し取っ付きにくさを感じさせるが、少したれ気味の目や安心感を覚える声質がそれを中和させている。

 

「あー、はいはい。自己紹介ね。私は満島京美(ミツシマミヤビ)。一応超高校級の家庭教師ってことになってるらしいわ」

 

 満島と名乗った彼女は、面倒くさそうに手を振ってみせた。超高校級の家庭教師っていう割には……なんというかあんまり名前も才能も親切そうに教えてはくれなかったな……。

 

「……何? なんか文句ある?」

「いや、無いけど……まあ、よろしくな」

 

 こいつ感じ悪いな。あんまり仲良くなれそうにないぞ……。

 

「ったくよォ、折角木津が「協力しよう」つってんのになんでわざわざ喧嘩腰なんだよ? いきなり敵作ってんじゃねェか、アホなんか?」

「はぁ〜? 何よ、アンタこそ私に喧嘩腰になってんじゃないの!」

 

 満島の態度に突っかかったのは、帽子を被り、制服の中にパーカーを着た男。見た目の雰囲気を一言で表すなら「ストリート系男子」といったイメージの彼は、満島に言い返されても憮然とした態度のままだった。

 

「あー、和を乱すうっせェ女は無視だ無視! 俺の名前は村上銅磨(ムラカミドウマ)! 超高校級のスケートボーダーだ、よろしくな!」

 

 成程、ストリート系のファッション風に整えた制服の着こなしにピッタリな才能だ。村上は舌を出しながらワイルドに笑い、右手でピースサインを作って見せた。その仕草が痛々しくなく、自然に見えるのは凄いな……俺にはとても真似出来ない。

 

「はっ、スケボーなんて高架下で人様に迷惑かけながら身内で盛り上がってるだけのもんでしょ? そんなんで超高校級なんて言われてもね」

「おい満島てめェ……今のは聞き捨てならねェぞ。家庭教師がどんだけ偉いんだよコラ」

「もー! やめなって……流石に今のは京美ちゃんが悪いよ! 銅磨くんも落ち着いて! ストリートでやるスポーツが楽しいのはあたしも解るからさ」

 

 一触即発の二人を止めたのは、真っ黒な髪をポニーテールに纏めた女子だった。いや……真っ黒じゃないな。よく見るとポニーテールの内側が明るい青色に染められている。インナーカラーというやつだろうか? 少し小柄ながらハッキリした顔立ちに染められた髪は、可愛らしさよりもカッコ良さが印象として強く残る。

 

「もー、まだ半分も自己紹介が終わってないのにさ。あたしは石坂優希(イシサカユウキ)。超高校級のバスケ選手です。よろしくね」

 

 石坂は手とポニーテールをひらひらさせながら、ニコリと笑った。なるほど、村上にストリートでやるスポーツが楽しいのは知ってるって言ったのは、バスケットもストリートバスケがあるからか。いや、それにしても……

 

「ああ、よろしくな石坂。それにしても超高校級のバスケ選手って──」

「あ、今「その身長で?」って思ったでしょ。よく言われるからすぐわかっちゃうんだよね」

 

 うぐ。石坂の意地悪そうな視線が痛い。確かにそう思ってしまうのは失礼だよな……。

 だけど、石坂の身長は本当にそんなに高くない。恐らく平均的な高校生の女子と比べても、少し低いくらいに入るんじゃないかと思うくらいだ。他のスポーツならいざ知らず、バスケットにおいて身長はかなり重要なハズだが……。

 

「あたし、156センチしかないからね。対戦相手は皆あたしより全然大っきいよ。でも、バスケは身長だけじゃ決まらない。シュートの精度、ジャンプの高さ、ドリブルのスピード、チームの連携、体幹の強さ……たとえ相手が2メートルあっても、あたしは負けないよ」

「すご……めちゃくちゃカッコいい……」

 

 石坂の自信満々な宣言に、御庄が思わず感嘆の声を漏らす。なるほど、身長で勝てない相手もスキルで全部打ち負かせる程の実力があるからこその超高校級のバスケ選手ってことか。

 

「へぇ、体格で負けてもスキルで補う……いいね、そういうクレバーなスタイルは嫌いじゃない。石坂ちゃん、アンタとは仲良くなれそうだ」

「そう? クレバーかどうかはわかんないけどね。PGだから頭は使うけど」

 

 石坂の自己紹介を聞いていたのか、彼女に声をかけたのは長めの髪を後ろで纏めた男。片目は前髪で隠れているが、まるで俺の心の奥まで見透かすような鋭い瞳に、コートのような制服を羽織った姿は、とてもではないが高校生には見えない。どちらかというと違法カジノでギャンブルをしているような──そんな、危険な大人の匂いがする。

 

「失礼、自己紹介がまだだったか。俺は超高校級のボードゲーマー、山中彰(ヤマナカアキラ)だ。まぁそれなりによろしく頼むよ」

 

 山中はゆったりと頭を下げてみせる。男で髪が結べるくらいに伸ばしてしまうと、似合う顔立ちや服装が限られてくるし、少し不潔に見えてしまうことだってある。だけど、山中はその纏っている雰囲気だろうか、一挙手一投足が大人の怪しさを持っているからだろうか。声も相まって、その長い髪は見事に彼にマッチしていた。

 

「超高校級のボードゲーマーって……ボードゲームが得意ってことか?」

「ああ。チェス、オセロ、カタン、モノポリー……アナログゲームと言われるものは大体負けないな。勿論専門のトッププロには及ばないが」

「ヤバ〜。ウノとか大富豪みたいな、手札の運で変わるやつとかも勝てるの?」

「全勝……は無理だろうが、10回やれば8回は勝てるだろうね。切るカードの順番、ブラフ、持てるスキルを全部使って、運による敗北の可能性を最少まで減らすってワケだ」

「なるほど。確かに彰君とは仲良くなれそうかもね」

 

 山中の「持てるスキルを全て使って」という所が石坂にも感じるところがあったのだろうか、石坂は先程の「仲良くなれそう」発言にうんうんと頷いていた。石坂も山中も競技は違えど、自分の磨いた技術で逆境や悪運を跳ね返す、その場の不利に文句を言わないタイプなのかもしれない。カッコいいな。

 ……それはそれと、「超高校級の幸運」の御庄と、「超高校級のボードゲーマー」の山中が、運が絡むタイプのボードゲームで戦ったらどっちが勝つんだろうか。いつかやってみてほしい。

 

「ふむ……お前達の勝負に対する姿勢は興味深い」

 

 突如そうやって会話に入ってきたのは、真っ白な制服に身を包んだ、この16人の中で最も背が高い男。どんな感情を孕んでいるのか全くわからない無表情はまるで作り物のようで、その高身長と存在感に反して触れば壊れてしまいそうな、ガラスのような儚さも併せ持っている。

 

「超高校級の神職。櫛名尊(クシナタケル)だ」

 

 口元以外を一切動かさない。ぶっきらぼうとか、愛想が悪いとか、そういう感じには見えない。どちらかというと……まるで感情がないような。櫛名と名乗ったその男は、直立不動のまま必要最低限の自己紹介を済ませた。

 

「超高校級の……神職……?」

「神社とかの跡取りってコト?」

「ああ。三種の神器の管理を任されている」

「……ちょっと待て、今なんて言った?」

 

 櫛名の言葉に山中が驚いて聞き返す。三種の神器って……確か日本神話で出てくる宝物のことだったよな? それの管理を任されているって……それってめちゃくちゃ凄いことなんじゃないか!? 

 

「ああ。三種の神器の管理を任されている」

「今なんて言った? とは言ったがまさか一言一句違わずもう一度言ってくれるとは思わなんだ……だが、もしそれが本当なら──クシタケ、アンタは神社の跡取りどころか、この国の皇族とも関わりがあるんじゃないのか?」

「ふむ……そういうことになるな」

「なんで他人事なん!? えっ尊ってめちゃくちゃヤバくない!?」

 

 ……驚きすぎて声も出ない。皇族と関わりがある高校生なんて……希望ヶ峰学園に入学する高校生はすごい才能の持ち主ばかりとは知っていたし、今まで自己紹介してくれた皆も間違いなく凄かったが、こいつの凄さはちょっとレベルが違うかもしれない。

 

「ね、ねえねえ、ちょっと! そのっ……えと、今信じられないような事が聞こえた気がしたんだけど……櫛名君が三種の神器を管理してるって、ホント……?」

「ああ、本当だ」

「ひ、ひええ……これは大スクープだよ……め、メモに残しておかないと……!」

 

 流石に他の超高校級のメンバーも、櫛名の話には驚きを隠せないようで、食いつくようにオレンジ色の髪で少し気弱そうな女の子が櫛名に恐る恐るといった風に話し掛ける。怯えているのか笑っているのか解らない表情で、必死にペンをメモ帳に走らせながら。

 

「……あっ、先に自己紹介をしないとだよね、ごめんね……! えと、夕陽舞(ユウヒマイ)、です。超高校級の新聞部ってことに……なってます」

 

 そう名乗ると夕陽はペコリと頭を下げ、メモをポケットにしまった。夕陽という名前とオレンジ色の髪の毛がすごくマッチしている……なるほど、さっきメモをとっていたのは新聞部だからってことか。

 

「情報を集めてまとめたり、それを解りやすく正確に提示するのは得意だから……今みたいな、これからこの何もわからない状態を何とかするぞ! って状況なら……役に立てると、思います」

 

「へェ〜! いいじゃんいいじゃん、頼りになるじゃん! 今この場においては最強なんじゃないの!?」

 

 夕陽の言葉に反応したハイテンションな声は、メガネを掛けた男から発せられていた。一見無造作に見えるが、しっかりヘアピンでセットされたヘアースタイルは、所々緑色のメッシュも入っており、しっかりお洒落に見えるように作られているのがわかる。耳に開けられた大小のピアスに、首から掛けられたヘッドホンが印象的な彼は、見た目通りというべきか、軽そうでチャラそうな仕草が節々に現れていた。

 

「あ、そうそう自己紹介だったね。俺は超高校級のトラックメイカー、森遥(モリハルカ)でーす……って、ダメじゃんダメじゃん、本名言ってもわかんねえじゃん。Leiaって名乗った方がいいかな?」

 

 自信満々にウインクしてみせた森。超高校級のトラックメイカー、そして名乗った「Leia」という名前……俺は確かにその名前を知っていた。

 Leia──それは若者に大人気な某動画投稿SNSにて、沢山のインフルエンサーが踊ってみた動画を公開する際に使用される音源を多数作成しているトラックメイカーの名前だ。俺たち世代は、大体ほぼ皆Leiaの音楽は聴いたことがあるし、某SNSをよく観る奴らは、ほぼ皆Leiaの曲に合わせて踊れるんじゃないだろうか。正に現代のヒットメイカー……その正体が、目の前にいる高校生だなんて。

 

「ウソッ、LeiaってあのLeia!? ウチ「Orange Beat」のダンス動画めっちゃ観たよ!?」

「おっ、いいじゃんいいじゃん、嬉しいじゃん! あの曲ノリが良くて踊ってるの見ると楽しいよね、俺も自信作の曲だったからちゃんとバズって嬉しかったよ」

 

 御庄が露骨に反応する。確かにこいつはあのSNSをよく見たりしてそうではあるな……。

 だけど、森がもし本当にLeiaというトラックメイカーなら、こいつの超高校級の才能は間違いない。現役高校生ながら、幾つものバズを生み出しているのだから。俺でも知ってるくらいだしな。

 

「──成程。森遥さん、貴方がLeiaを名乗る作曲家でしたか。まさか同じ高校生だとは思いもしませんでした……私にはあまり合いませんでしたが、素晴らしい才能だと思います」

「おっと、俺の音楽が合わないって? ま、それは人それぞれだから仕方ないね。そういうアンタはどんな音楽が好きなんだい?」

 

 森に声をかけたのは、深い青色の髪に、吸い込まれそうな程強い青色の瞳。固く結んだ口から「凛」という文字が見えてきそうなほどに凛とした表情の女子だ。綺麗に着こなしたブレザーも相まって、どこかお淑やかさも兼ね備えているように見える。

 

「そうですね……私の好きな音楽を知って頂くなら、自己紹介をするべきでしょう。超高校級のヴァイオリニスト、青葉かなで(アオバカナデ)と申します」

 

 深々とお辞儀をしてみせた青葉。この場にいるどのメンバーよりも静かに、そして優雅にしてみせたお辞儀は、彼女がまるで今一曲演奏を終えて、スタンディングオベーションをする観客に向けてしたのではないかと錯覚するほど様になっていた。

 

「へぇ、ヴァイオリニスト! いいじゃんいいじゃん、カッコいいじゃん! 確かに俺の音楽はEDMっぽいのが多いし、ストリングス系の楽器は滅多に使わないなぁ」

「貴方の音楽は的確に流行を突いていますし、クオリティも高い。素晴らしいと思いますが、私はやっぱり、静かに、コンサート会場に鳴り響くヴァイオリンの音が心地良いのです」

「なるほどね! わかるなぁ〜……とは俺も勝手には言えないけどさ。昔から声楽やオーケストラがずっと残り続けてるのは、それが優れてる証拠だもんな。いいじゃんいいじゃん、面白いじゃん! 何より超高校級のヴァイオリニストにも俺の音楽は認められてるなんて、嬉しいじゃん!?」

 

 青葉と森は意気投合しているのか、はたまた喧嘩しているのか……どっちかは解らないが、どちらも音楽の才能を持っているからだろうか、二人でアツく語り始めた。音楽に限らず、芸術分野の天才って、こだわりが強そうだもんなぁ……あれは多分長くなるぞ。

 

「チッ……まだ全員の自己紹介が終わってないってのに。勝手なヤツら」

 

 そんな音楽バカ二人を見て悪態をついたのは、ブロンドヘアーに翠色の瞳、明らかに日本人離れしたルックスの男。なんというか……染めた感じの金髪じゃなくて、地毛が既に金色な気がする。背も高く、スタイルもいい為、映画の中に出てくる俳優のような雰囲気があった。

 

「そういうアンタは、自己紹介してくれないの?」

「…………冬馬エレン(トウマエレン)。超高校級の……喧嘩屋ってことになってる」

「ちょ、超高校級の喧嘩屋ぁ!?」

 

 俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。超高校級の喧嘩屋って……そんなのアリなのか!? 明らかにアブない才能過ぎる。

 冬馬と名乗った男は自己紹介はもう終わりと言わんばかりに大きなため息をついて、そっぽを向いてしまった。……確かに、あの高身長で長い手足からリーチ十分なパンチやキックを受けたらひとたまりもなさそうではあるが……。

 

「……チッ、自己紹介は終わったしもういいじゃん。まだ何かあるのか?」

「いやっ……ない……けど……冬馬はハーフなのか?」

 

 圧と勢いに押され、聞きたいことはないと言ったのに質問をしてしまった。だけど、日本人離れしたルックスと「エレン」という名前、多分こいつは外国人とのハーフなんじゃないだろうか。

 

「そうだよ。父親は日本人、母親がドイツ人だ。だから何だよ」

「いやっ……悪い、気になっただけだ。よろしくな、冬馬」

 

 人と話すこと自体があまり好きではないのか、面倒そうに教えてくれた。なんというか、そのぶっきらぼうな感じと、こいつの超高校級と才能が相まって……なんというかすごく怖い。こいつとの関わり方は少し気をつけないと……ボコボコにされるかもしれないな。

 

「んじゃっ! 俺もそろそろ自己紹介と行っときますか! 榊に御庄だっけか? 俺の名前は金久保竜太郎(カナクボリュウタロウ)! 超高校級のスタントマンだ、よろしくなっ!」

 

 冬馬の後ろから突然ガバッと現れた男子が、非常に元気よく大きな声で自己紹介をしてくれる。赤と黒が入り交じった髪色に、上下制服ではなくジャージ姿というのが印象的な金久保と名乗った男は、超高校級のスタントマンということらしい。だからジャージで、動き易い格好ってわけか? 

 

「特撮ヒーローのやられ役、高所からの飛び降り、あっと驚くようなアクロバットアクション! どうだどうだ、男なら誰だって憧れるしテンション上がるだろ!? 俺は全部やれるぜ、見たかったらいつでも言ってくれよな!」

「マジ!? るろ剣のあの刀使うアクションとかも出来るの!?」

「勿論出来るぜ! ……まあ、相手役を付けるとなると台本がいるけどな、危険だし」

 

 男子にしてはほんの少し小柄だが、スタントマンだからなのか一つ一つの動きがオーバーで、それでいてキレがあってカッコイイ。声もハキハキとしていて大きいので、身長以上に存在感が凄いな……これでヒーローのやられ役をしていたら、主人公より目立っちゃうんじゃないだろうか。

 

「へぇ、超高校級のスタントマンか。面白そうで興味が湧いてくるな」

「おお、やっぱりそうか? いいぜ! ライダーキック見せてやろうか!?」

 

 こちらもまたよく通る男の声だった──金久保に声をかけたのは、灰色の髪に、透き通るような白い肌。悪戯っぽく上げられた口角は少年のような無邪気さを想起させるが、纏っている雰囲気は俺達よりもずっと歳上にも思えるような……なんというか、掴み所が無い。俺が声に反応して振り返った先には、そんな男が立っていた。

 ──いや。俺はこいつを知っている……気がする。というか、皆知ってるんじゃないか!? 

 

「超高校級の俳優、四宮灰(シノミヤカイ)だ。どうぞよろしく」

 

 ──やっぱりそうだったか! 

 

 超高校級の俳優、四宮灰。幼い頃から劇団に所属し、中学時代にその演技力の高さとルックスの良さから業界では次世代のスターとして超有名だったらしい。そして活躍の場は舞台だけでなく、大人気ドラマの主役としてテレビデビューを果たし、お茶の間のハートを鷲掴み、名実共に超高校級の俳優として、日本のエンタメ業界の最前線を走っているスーパー高校生だ。

 

「えっ!? 四宮灰!? 本物っ!?」

「何処かで見たことがあるとは思っていたが……そうか、テレビで見たことがあったのか」

「ウソ!? あたしドラマ見てたよ!? 全然気付かなかった……」

「俺も見てたハズなんだけどな……もっと暗くて冴えない感じの男の役だったから、そのイメージがついちまってたか……?」

 

 ……俺達は皆、この四宮灰という男をテレビで見たことがあるはずなのに、四宮が自己紹介するまで誰も彼が四宮灰だと気付いていなかった。

 実際、テレビデビューしたドラマでの役は、眼鏡をかけた冴えない男子高校生の役をしていた。その時のイメージが強すぎて、今の少し軽そうな雰囲気と脳内で合わせられなかったのかもしれない。

 

「ん? あー、俺って解らなかった? そりゃそうか、多分皆がテレビで見てたのは俺じゃなくて「東浦大河」っていう別の人間だから」

 

 東浦大河……って、確かこいつが主演で出ていたドラマの主役の名前じゃなかったか? 確かにこいつが次世代のスターって言われているのは、その演技力が評価されてるらしいけど……。

 

「俺は役を貰ったらとにかく自分を殺して、その役、人間、キャラクターを自分の身体を使って三次元に存在させるようにしているからさ。だから舞台やドラマで俺の事を観てくれてる時は、それは俺じゃなくてその舞台に生きている登場人物ってワケ」

 

 四宮はさも当然かのように言ってみせたが……それってめちゃくちゃ凄いことなんじゃないだろうか。役になり切る、とはよく聞くけど……自分を殺して、貰った役のキャラを三次元に存在させるなんて、普通の俳優が出来るとは思えない。正に超高校級だ。

 

「……確かに、TRPGみたいなキャラクターを演じて遊ぶタイプのゲームだと、感情移入するあまりキャラクターが憑依するみたいなプレイヤーがいるみたいな話は聞くが……そういうタイプの人間は「自分じゃない誰か」の感情のせいでメンタルや体調を崩すこともあるって聞く。四宮、アンタはどうなんだ?」

 

 山中が興味深そうに四宮に質問を投げかける。確かに……自分を殺して完全に他人を演じ切るとなれば──例えばその役が物語の中で命を落とすシーンなんかは一体どんな感情になるんだろうか。

 

「ん? あー、そうだね。確かに体調を崩すこともあるよ。舞台は千秋楽まで終わっているのに、しばらく役が身体から抜けなくて、高熱を出して三日くらい寝込んだりはするかな〜」

「ほう、役が抜けなくて高熱が……クク、興味深い。存在しなかったはずの人格が役目を終え、死を迎えるのを拒否しているみたいだねぇ」

「いやいや、身を削り過ぎでしょ……そこまでやる必要ある?」

 

 なんというか……凄いな。とにかく、目の前にいるこいつは有名な天才俳優、四宮灰であることは間違いないらしい。今までに自己紹介してくれた面々も間違いなく凄いヤツらだし、超高校級なんだが……やっぱり、テレビで見たことがある、知ってるヤツを目の当たりにすると、本当に皆超高校級の天才なんだなと改めて実感する。俺もなにかの才能を持っているはずなんだけどな。なんというか……不安になってくる。本当にこいつらに釣り合うような才能を持っているのか、俺は? 

 

「……あれ、もしかして私が自己紹介ラスト? やだ、四宮クンの次ってもうその時点でハードル高いよね……」

 

 ふと思い出したかのような声を上げたのは、暗い茶色の髪をカチューシャで纏めた女子だった。なんというか、ここにいるメンバーはかなり、見た目も一筋縄ではいかなさそうな連中ばかりだけど、こいつはカチューシャというアイテムを除くと、割と普通寄りな見た目をしている気がするな。ナチュラルメイクが似合う、所謂今風で可愛いとは思うが、それは良くも悪くも「街中で見掛ける可愛い子」という印象だ。

 

「コラそこ、期待はずれみたいな顔しないの。私だって今、もうちょっと早めに自己紹介しとけばよかったって後悔してるんだからね……神田恵理(カンダエリ)よ、超高校級のイラストレーター」

 

 神田と名乗った彼女は、少し面倒そうに自分の名前と才能を明かした。なるほど、多分あのカチューシャはイラストを描く時に前髪が邪魔にならないように着けてるんだな。

 

「イラストレーターってことは……お絵描きが上手な人ってこと?」

「そ。基本はデジタル専門だけど、アナログでもそこそこ描けるわよ」

「いいじゃんいいじゃん、やるじゃん! 今度俺の創ったトラックのMV描いてくれよ」

「いいけど、ちゃんと金取るし高いわよ」

「モーマンタイ! 俺も印税でそれなりに稼いでるからね」

 

 超高校級の才能同士が会話を始めると……高校生同士の会話に聞こえなくなってくるんだな。

 だが、ひとまずここにいる超高校級の才能を持った生徒達は一旦全員把握することが出来た。一癖も二癖もありそうだが……それと同時に当然ながら凄いヤツらであることも間違いない。

 

 パン、と手を叩いたのは超高校級の学級委員、木津だった。

 

「皆、個性的で楽しい自己紹介をありがとう。改めて私から現時点での問題と、これからの行動方針を提示させてちょうだい。まずは現時点での問題を三つに分けると……」

 

 ①、ここはいったい何処なのか。

 

 ②、私達は何故ここにいるのか。

 

 ③、他に人はいるのか。

 

 木津が指を立てながら、一つ一つハッキリとした声で問題を数える。

 

「私達全員が何かしらの超高校級なんでしょ? じゃあここは希望ヶ峰学園じゃないの?」

「お前バカか? だったらなんで他に人がいねえんだよ。他の生徒や先生がいるはずだろうが」

「アンタこそバカでしょ? じゃあここは何処なのよ」

「そこ! 喧嘩しないで! 話を続けるわよ」

 

 満島の発言に、村上が突っかかる。さっきの自己紹介の時でも喧嘩をしていた辺り、この二人はとことんウマが合わなさそうだ。

 

「兎にも角にも、ここは何処なのかを調べる必要があるわ。四人一組のグループを四つ作って、各自それぞれこの学校らしき建物を調べて、一時間後に成果報告という形でスタートしましょう。まだ皆完全には打ち解けていないでしょうし、私が適当にグループを決めちゃうわね」

「さっすが超高校級の学級委員! リーダーとして纏めてくれるねぇ、俺は賛成だ! 強いて言うなら満島と村上の二人は別のグループにしてやった方がいいと思うな」

 

 金久保の茶々が入るが、正直それは俺も同感だ。今の時点で既に相性最悪なあの二人を一緒に置いておく選択肢は無いだろう。

 

「そうね、じゃあ第一グループは──」

 

 

 

 ──木津が俺たちを四つのグループに分けようとした、その瞬間だった。

 

 

 ピン、ポン、パン、ポーン!

 

 

 突然響き渡った、間抜けなチャイムの音。それは今の俺達の置かれている意味不明な状況とはあまりにもミスマッチしているようで、拍子抜けを通り越して一種の不気味さすら覚えてしまうような。そんな突然の音に、俺達全員は一斉に静まり返り、身構えるように聴覚を研ぎ澄ませていた。

 

 

『──あー、あー、マイクテスっ! マイクテスっ! 大丈夫? 聞こえてるよね?』

 

「なに? 今の変な声……」

 

 石坂がボソッと呟いてしまうのも頷けるほど、間の抜けた声がスピーカーを通して聞こえる。呑気なマイクテストがやけに俺の神経を逆撫でしたのは、多分その間抜けな声も理由の一つだろう。

 だけど、一体このアナウンスはなんなんだ? 

 

『うぷぷぷぷ……只今より、希望ヶ峰学園新入生の入学式を講堂にて執り行います! 新入生の皆さんは、講堂にお集まりください! ……って、もう集まってるね。そんなに入学式が楽しみなんだね! オマエラの自主性と積極的な姿勢は素晴らしいよ!』

 

「……どういうことだ? 今確かにこのアナウンスは──」

「希望ヶ峰学園、と言いましたね。つまり木津さんの仰っていた、目下調べなければならない事項のうちの一つの答えは得られたということでしょうか?」

「このアナウンスを信じるなら、だろ。こんなバカみたいな放送、怪しいに決まってる」

「ふむ……一理あるな。信用に値するかは、一考の余地がある」

 

 何も分からない状態で、突然の情報を与えられた時、どうやら人は警戒するようになっているらしい。声や口調が明らかに間抜けで怪しいという点も含まれてはいるが、俺達は放送から聞こえてくる情報を鵜呑みには出来なかった。

 

 

『うぷぷ。それじゃ、早速始めちゃおうか! オマエラ、ステージに注目してくださ〜い!』

 

 

 その声と同時に──舞台上の明かりが一気に全て消えた。辺りを暗闇が包み込み、視界は真っ黒に染め上げられる。

 

「きゃっ!?」

「うおおお落ち着け! 照明が落ちただけだ!」

「ククク.……動かない方がいいだろうね。足を踏み外して舞台から落ちてしまったら怪我をするよ」

「皆落ち着いて! 目が慣れるまで静かに!」

 

 女子の悲鳴、男子の叫び声、混乱と恐怖が入り交じる暗闇の中、俺は舞台の中心だけが突然強く照らされるのを見た。スポットライトというやつだろうか。真っ暗闇から、一部分だけ煌々と照らされた光を見て思わず目をしかめ、手で視界を遮り──

 

 

 ──次に俺がその光の射す方を見た時には、そこには……何か得体のしれないものが鎮座していた。

 

 

「ねえ、何アレ!?」

 

 

 一際目立つ声は御庄だろうか。暗くてよくわからないが、恐らく彼女もスポットライトに照らされているあの得体のしれないものを見つけたのだろう。そしてきっと、御庄のあげた声で、他の超高校級の皆もその存在に気付いていくことになる。

 

 白と黒のツートンカラー。短い手足に寸胴のようなボディ。膨れた腹の中心には出べそがついており、その全体の大きさと見た目を総合するなら……「趣味の悪いクマのぬいぐるみ」と称するのが正確だろうか。

 

 いつ、どうやって、この暗闇の一瞬の中でそのクマのぬいぐるみを舞台の真ん中に置くことが出来たのか。俺達の中の誰かの私物なのか? と俺が考えていたその時──俺の思考は全く意味が無く、そしてこの状況は常識では測れないことを理解させられた。

 

「うぷぷぷ……オマエラ、入学おめでとうございます!」

 

 先刻、放送から聞こえていた声が、ライトに照らされているぬいぐるみから聞こえてきたのだ。その声と見た目はこの状況に於いて全てがマッチしておらず、一層俺達をイラつかせつつ、不安にもさせてくる。

 

「ぬ、ぬいぐるみが……喋った?」

「ヌイグルミじゃないよっ!」

 

 おまけにレスポンスまで返ってくる。中にスピーカーでも内臓されているんだろうか……? 少なくとも、その見た目からして生き物でないことは確かだ。だが、奇抜な外見と状況のミスマッチ具合がそうさせているのだろうか──その存在感は生物を遥かに超えていた。

 

「ボクはモノクマだよ! この希望ヶ峰学園の学園長なのだっ!」

「……は? 学園長?」

「百歩譲ってマスコットだとしてもデザインが良いとは言えないわね……希望ヶ峰学園の要素がどの辺りに入っているのかわからないし、やっつけ仕事過ぎるわ」

 

 未だに舞台が暗いから他のメンバーがこのモノクマとかいう物体にどんな反応をしているのかは解らないが、多分今の反応はイラストレーターの神田なんだろうな。

 

「うぷぷぷ……! ホントは今の発言に対してものすごーく落ち込んだり、オマエラと楽し恥ずかしなコミュニケーションを取ってあげたいところなんだけど……オマエラが長々と自己紹介をしちゃったせいで文字数が嵩んでるから、さっさと次のステップに進まないといけないんだよね」

「はァ? なんだよお前、言ってる意味がわかんねーよ! そもそもまずお前が学園長って何なんだよ、そこから説明しろよ!」

「あのね、人の話をちゃんと聞きましょうって教わらなかった? ボクはクマだから人じゃないし聞いてないなんて、そんな動物愛護団体も黙ってないような言い訳するつもりじゃないよね? さっさと次のステップに進まないといけないから、説明してる暇なんて無いんだよっ! ……まあ、ボクがこの学園の学園長であること以上に説明できることなんて無いんだけどね!」

 

 モノクマと名乗ったよくわからないヌイグルミは……まるで人間のように感情豊かに、そして生きているかのように手足を動かし、時には顔を赤くしながら言葉を紡ぎ捲し立てる。だがその言葉はどれも、日本語としては理解出来るがその言葉の意味を理解できない。こんなふざけたヌイグルミが、学園長? 馬鹿げてる。

 

 

 

 

 ──だが、その次にこいつから放たれた言葉は、そんなことがどうでも良くなるくらいに信じられないものだった。

 

 

 

 

「希望ヶ峰学園に入学したオマエラには──この学園で一生の共同生活を行ってもらいます!」

 

 

 

 

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